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インスリンポンプって、注射と何が違うんですか?ボタンを押すと自動で打ってくれるイメージなんですけど、なんで「ベーサル」と「ボーラス」って分けるんですか?
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いいところを突いてるね。ポンプは正式には CSII(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)といって、お腹に刺したカニューレからチビチビとインスリンを流し続けてるんだ。健康な人の膵臓は「常にちょっとずつ出す(基礎分泌)」+「食事のたびに大量に出す(追加分泌)」の二段構えで血糖を保ってる。これを真似るために、ポンプも 1 日 24 時間ずっと流す「ベーサル」と、食事や血糖補正のときだけドンと打つ「ボーラス」を分けてるんだよ。
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なるほど!じゃあ TDD っていうのは 1 日に使うインスリンの合計ですよね。これってどうやって決まるんですか?体重で決まるって書いてあるけど、ホントにそれだけで?
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ざっくり言うと「体重 × 0.5〜0.7 U/kg」が出発点。例えば 65kg の 1 型なら 65×0.7 ≒ 46 U/日 から始める。これを Holman の経験式って呼ぶ。ただし、運動量が多い人や体脂肪率が低い人は 0.3 U/kg で済むこともあるし、思春期や妊娠中は 1.2 U/kg まで必要になることもある。最終的には CGM の TIR(Time in Range)と HbA1c を見て 2 週間ごとに ±10〜20% で微調整するんだ。
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それで TDD が決まると、左パネルで自動的に ICR と ISF が出てきますよね。500 Rule とか 1800 Rule って、なんでそんなキリのいい数字なんですか?魔法の定数?
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魔法じゃなくて、何千人もの 1 型患者を観察した結果から逆算された経験定数だよ。500 Rule(ICR = 500 / TDD)は「1 U のインスリンが代謝できる炭水化物 g 数」。例えば TDD=45 なら 500/45 ≒ 11 g/U、つまり 11 g の糖質に 1 単位打つ。1800 Rule(ISF = 1800 / TDD)は「1 U で下がる血糖値 mg/dL」。レギュラーインスリン(古いタイプ)だけは 1500 Rule を使う。これらは速効型アナログ(Lispro、Aspart)を前提にしていて、運動・体温・ストレスで ±20% は普通にズレるから、CGM で実測して個別チューニングする必要があるんだ。
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右側に「活性インスリン IOB」っていうスライダーがあって、これを増やすと最終ボーラスが減るんですけど、これは何ですか?
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それが重要!Insulin on Board、つまり「まだ体内で効いている前回ボーラスの残り」のこと。速効型でも作用は 4〜5 時間続いて、注入後 90 分でピークになる。例えば 2 時間前に 5 U 打って、まだ 3 U くらい残ってる状態で「血糖高いから」と追加で 4 U 打つと、ピークが重なって 30 分後に重症低血糖になるんだ。これを「インスリンスタッキング」と呼んで、ポンプ初心者の事故原因 No.1。だから Smart Pump のボーラスウィザードは IOB を自動計算して、補正ボーラスから自動で引いてくれる。本ツールでも同じロジックを使ってる。
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最近「人工膵臓」って言葉を聞くんですけど、それも同じポンプですか?
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ほぼ同じハードに「自動制御アルゴリズム」を載せたもので、ハイブリッドクローズドループ(HCL)と呼ばれる。Medtronic 780G、Tandem t:slim X2 Control-IQ、Insulet Omnipod 5、Beta Bionics iLet が代表例。CGM(Dexcom G7、Libre 3)が 5 分ごとに皮下グルコースを測って、PID 制御や MPC(モデル予測制御)でベーサル率を勝手に上下させる。食事ボーラスだけはユーザーが申告するけど、就寝中の低血糖回避は完全自動。TIR が 80% を超えることが多くて、HbA1c も 6.5% 台が狙える。ただし日本ではまだ Medtronic 770G/780G とテルモ Medisafe Insulink が中心で、Omnipod 5 や iLet は未承認だよ。
本シミュレーターは Holman らの体重ベース経験式を採用し、TDD = 体重 × 1日あたり U/kg で算出します。係数は 1 型 0.7、2 型インスリン依存 0.4、LADA 0.6 を初期値としています。実臨床では年齢・運動量・インスリン抵抗性により 0.3〜1.0 U/kg の幅で個別化され、CGM の TIR と HbA1c を見ながら 2 週間ごとに微調整します。新規導入時は低めから始め、ベーサルを 50% 程度に設定して空腹時血糖が平坦になるかを確認してください。
500 Rule は ICR(Insulin-to-Carbohydrate Ratio)= 500 / TDD で、1 単位のインスリンが代謝できる炭水化物のグラム数を求める式です。1800 Rule は ISF(Insulin Sensitivity Factor)= 1800 / TDD で、1 単位のインスリンが下げる血糖値(mg/dL)を表します。レギュラーインスリン(速効ではない)の場合は 1500 Rule を使うのが標準です。これらは速効型アナログを前提とした近似値で、運動・ストレス・月経周期によって ±20% 変動します。
速効型インスリンの作用は約 4〜5 時間続き、注射後 1〜2 時間後に効果が最大になります。前回ボーラスがまだ作用中に追加で打つと、ピークが重なって重症低血糖を起こす可能性があります。これを防ぐためポンプは IOB(Insulin on Board)を計算し、補正ボーラスの量から残存量を自動的に減算します。本シミュレーターでも「活性インスリン U」を入力し、合算ボーラスから引いて最終投与量を出しています。Smart Pump のボーラスウィザードと同じロジックです。
Medtronic 780G、Tandem t:slim X2 Control-IQ、Insulet Omnipod 5、Beta Bionics iLet などのハイブリッドクローズドループは、CGM(Dexcom G7、Libre 3 等)からの 5 分ごとの血糖値を読み取り、PID 制御や MPC(モデル予測制御)でベーサル率を自動調整します。食事ボーラスは依然ユーザーが申告しますが、就寝中の低血糖回避や食後の補正は自動です。TIR(Time-in-Range 70〜180 mg/dL)が 75〜85% に達することが多く、本シミュレーターのような手動計算より優れた血糖変動の平坦化を実現します。
1 型糖尿病の標準治療:日本国内だけでもインスリンポンプ装着者は 1 万 5 千人を超え、世界では 100 万人以上が CSII を使用しています。とくに小児・若年成人の 1 型では、ペン注射の MDI(Multiple Daily Injection)よりも HbA1c が 0.3〜0.5% 低下し、重症低血糖が 30〜70% 減ることが大規模 RCT(DCCT、STAR-3)で示されています。本ツールの ICR/ISF 自動算出は、外来でカーボカウントを学ぶ最初のステップとして利用できます。
カーボカウント教育:米飯 150g(茶碗 1 杯)≒ 55g carb、食パン 6 枚切 1 枚 ≒ 26g carb、バナナ 1 本 ≒ 23g carb といった食品ごとの糖質量を覚え、ICR で割って必要ボーラスを暗算するのが日常運用です。本シミュレーターは carb 入力スライダーで「60g 食べたら何 U 必要か」を即座に可視化するため、栄養指導の場面で教材として活用できます。
ハイブリッドクローズドループの理解:Medtronic 780G の SmartGuard、Tandem Control-IQ、Omnipod 5 SmartAdjust などの自動補正アルゴリズムは、内部で本ツールと同じ TDD/ICR/ISF を使っています。違いは「CGM の血糖トレンドを読んでベーサル率を 5 分ごとに自動調整」する点だけ。HCL を理解する前提として、手動の TDD/ICR/ISF 計算を体験することが重要です。
2 型糖尿病・LADA の強化療法:経口薬・GLP-1 で目標 HbA1c に到達できない 2 型糖尿病や、緩徐進行型自己免疫性糖尿病(LADA)でも、内因性インスリン分泌が低下した時点で CSII の適応となります。2 型では TDD が体重あたり 0.4〜0.6 U/kg と低めで、インスリン抵抗性が高いため ICR は数値以上に厳しめに設定する必要があります。
まず最大の落とし穴は 「教科書値の TDD/ICR/ISF をそのまま使う」 こと。500 Rule・1800 Rule は数千人の平均値から導出された近似式で、個人差は ±50% に及びます。同じ体重・同じ年齢でも、運動量が多い人は ICR が 20 g/U、座位中心の人は 8 g/U ということが普通にあります。本シミュレーターの数値はあくまで「初期推定値」であり、CGM で 2 週間トラックしながら 10〜15% 刻みで実測ベースで調整する必要があります。担当医・糖尿病療養指導士の指示なしに教科書値だけで運用するのは厳禁です。
次に、「ベーサル率を一定にしておけば良い」 という誤解。健康な人の基礎インスリン分泌は早朝(dawn phenomenon)に増加し、深夜に低下します。1 型患者でも午前 4〜8 時はベーサル必要量が 30〜50% 高くなることが多く、Smart Pump では時間帯別ベーサル率(24 個のセグメント)を設定できます。本ツールは平均ベーサルだけを表示しますが、実際の運用ではベーサルテスト(食事抜きで 6 時間の血糖変化を見る)で時間帯ごとにチューニングします。さらに運動時は 50〜80% に一時減量、シックデイ(発熱)は 150% に増量、と動的調整が必要です。
最後に、「ボーラス予測式 = 食後血糖が確実にこの値になる」 という思い込み。本ツールの 4 時間後血糖予測は、カーボ吸収速度を平均 4 mg/dL/g、インスリン作用を線形と仮定した粗いモデルです。実際は GI 値(白米とおにぎりで吸収速度が 2 倍違う)、脂質・タンパク質(晩発性血糖上昇)、注入部位の吸収率(腹部 vs 大腿でピーク時刻が 30 分ズレる)、運動の有無で大きく変動します。本ツールは「設計の感度」を学ぶ教育用ツールであり、臨床判断に直接使うものではないことを強調しておきます。