デジタルスレッド — CAE用語解説
デジタルスレッド
先生、デジタルスレッド(Digital Thread)ってデジタルツインと何が違うんですか?
デジタルツインは「実物と同期したデジタル複製」という存在(名詞)だが、デジタルスレッドは「製品のライフサイクル全体のデータをつなぐ仕組み」(仕組み・手法)だ。設計CADモデル→FEM解析モデル→製造プロセスデータ→品質検査データ→フィールド運用データ——これら全部が切れ目なくリンクされた「情報の糸(スレッド)」だと思えばいい。デジタルスレッドがあると「設計変更がどの製造工程に影響するか」「フィールドの故障が設計上のどの仮定の誤りに起因するか」を追跡できる。
定義
どんな産業でデジタルスレッドが実用化されていますか?
航空宇宙が最も進んでいる。F-35戦闘機の開発でLockheed Martinがデジタルスレッドを採用——設計CAD(CATIA)・FEM解析(Abaqus/Nastran)・製造プログラム(CNC)・MBT(モデルベーステスト)が一本のデータラインでつながっている。設計変更が製造NCデータに自動波及して手動転記ミスがゼロになる。民間では国際宇宙ステーションの保守でBoeingがデジタルスレッドを使って交換部品の設計履歴を追跡している。日本でもMRJ(後のスペースジェット)開発でPLMシステムを中心にデジタルスレッドの構築が試みられた。
CAEとの統合
CAEの観点からデジタルスレッドを実装するにはどうするんですか?
鍵になるのはModel-Based Engineering(MBE)とPDM/PLMシステムの統合だ。具体的には——①CADモデルと解析モデルをJT/Step AP242でセマンティックに紐付け(形状だけでなく材料・拘束条件・荷重も持つ)、②シミュレーション結果をSILO(SIM Data Management)等のデータベースに格納してCADのリビジョンと紐付け、③製造検査結果(CMM計測データ)を同じPLM基盤に格納して設計仮定との差を自動照合——という基盤を作る。SIEMENS TeamcenterやPTC WindchillがこのPLM基盤として使われることが多い。
デジタルスレッドの実現が難しい理由は何ですか?
異種ツール間のデータ標準化が最大の障壁だ。CADはCATIA/SolidWorks/NXが混在し、FEMはAbaqus/Nastran/Ansysが共存し、製造はSiemens NX/Mastercam/Fanucがある——それぞれ独自フォーマットを使っていてデータの意味(セマンティクス)が一致しない。STEP AP242(PMI付き製品データ標準)やSYSML(システム設計言語)での標準化が進んでいるが完全ではない。大企業でも「データが某システムにあって他と繋がっていない」という「データサイロ」問題は現在進行形の課題だよ。
関連用語
デジタルツインが「存在」でデジタルスレッドが「仕組み」という整理、わかりやすかったです! データ標準化の難しさも実感できました。
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