アンテナ利得・指向性 戻る
電磁気工学

アンテナ利得・指向性シミュレーター

アンテナ種別・周波数・送信電力・距離を変えてフリス伝達方程式と自由空間伝搬損失をリアルタイム計算。極座標放射パターンで指向性を視覚的に確認しよう。

開口(アパーチャ)設定
開口径 D (m)
m
周波数 f (GHz)
GHz
開口効率 η
プリセット

アニメーション中は開口径 D が自動で増減します。D が大きいほどビームは細く・長くなり、利得が上がる様子を観察してください。スライダーを動かすと自動アニメは停止します。

計算結果(ライブ)
利得 G (dBi)
指向性 D₀ (dBi)
半値ビーム幅 (°)
実効開口 Aeff (m²)
放射パターン(極座標・dBスケール)
利得バー:ビーム幅が狭いほど利得が高い
理論・主要公式

$$G = \eta\,D_0,\qquad G = \frac{4\pi A_{\text{eff}}}{\lambda^2},\qquad A_{\text{eff}}=\eta\frac{\pi D^2}{4}$$

$$D_0 \approx \frac{4\pi}{\theta_E\,\theta_H},\qquad \theta_{3\text{dB}} \approx 70\frac{\lambda}{D}\ \text{[°]}$$

G=利得(真値)、D₀=指向性、η=開口効率、Aeff=実効開口面積、λ=波長、D=開口径、θ_3dB=半値ビーム幅。開口を広げる・周波数を上げる(λを縮める)ほどビームは細く、利得は高くなります。

アンテナ利得・指向性シミュレーターとは

🙋
アンテナの「利得」って何ですか?数字が大きいほど良いアンテナなんですか?このシミュレーターで開口径Dを大きくすると、利得がぐんぐん上がっていきますね。
🎓
利得は「電波をどれだけ一方向に集中できるか」の指標だね。アンテナがエネルギーを生み出すわけじゃない。同じ電力を狭い範囲に絞り込むほど、その方向では強くなる。パラボラ皿みたいな開口アンテナだと、利得は $G=4\pi A_\text{eff}/\lambda^2$ で決まる。開口面積 Aeff が広いほど、波長 λ が短いほど利得が上がる。だから D を大きくすると利得が伸びるんだ。
🙋
あ、開口Dを大きくすると、極座標のビームがどんどん細く尖って、オレンジの「半値ビーム幅(HPBW)」の角度が狭くなりました。これと利得は関係あるんですか?
🎓
まさにそこが核心!利得とビーム幅は表裏一体だ。指向性は $D_0\approx 4\pi/(\theta_E\theta_H)$ で、ビームの立体角が小さい=細いほど指向性(利得)が高い。パラボラ皿では半値ビーム幅が $\theta_{3\text{dB}}\approx 70\lambda/D$ 度。D を倍にするとビーム幅は半分、利得は約4倍(+6 dB)になる。グラフの「利得バー」と「ビームの細さバー」が連動して動くのを見てごらん。
🙋
じゃあ利得は高ければ高いほど良い、ってわけでもないんですね?
🎓
その通り。ビームが細いほど「狙いを正確に合わせる」必要が出てくる。例えば直径1mのパラボラを10 GHzで使うと利得は約38 dBi、半値幅はわずか2°ほど。衛星通信ならこの鋭さが武器だが、スマホのように相手がどこにいるか分からない用途では、むしろ広いビーム=低い利得の方が使いやすい。用途に応じて「利得とビーム幅のトレードオフ」をどこで取るかが設計の腕の見せどころなんだ。

よくある質問

いいえ、このシミュレーターでは放射パターンはアンテナ種別ごとに固定された理論形状を表示しています。周波数や送信電力を変えてもパターンの形は変わりませんが、利得の数値や計算される受信電力・伝搬損失はリアルタイムで更新されます。
利得は直接入力ではなく、アンテナ種別と八木宇田の素子数Nから自動決定されます。dBi表記の利得をフリス式のリンクバジェットにそのまま加算します。
dBmは1mW基準なので1mW未満で負の値になります。dBWは1W基準なので1W未満で負の値になります。負のdBm値は微弱信号を表し、無線通信では一般的です。
あくまで教育・理解用のツールです。実設計では、アンテナ周囲の反射・回折・障害物の影響や、インピーダンス整合、偏波損失などを考慮する必要があります。本ツールは自由空間という理想条件での基本特性を直感的に把握するためにご利用ください。

実世界での応用

移動通信(5G/6G基地局):都市部ではセルを小さくし、高周波数帯(ミリ波)を利用するため、高いアンテナ利得と鋭い指向性が要求されます。シミュレーターのようなツールで、ビームフォーミングの効果や最適なアンテナ配置を事前検討します。

衛星通信:静止衛星と地上局との間は距離が非常に長いため、伝搬損失が膨大です。この損失を補うため、地上局ではパラボラアンテナ(非常に高い利得)を用い、正確に衛星方向へ指向性を合わせることが生命線です。

無線LAN(Wi-Fi):家庭用ルーターの内部アンテナや、オフィスで使われる「パッチアンテナ」の設計に活用されます。広い範囲を均一にカバーするためには、適度な利得と指向性パターンの設計が重要です。

車載レーダー・センサー:自動運転を支えるミリ波レーダーは、物体までの距離と方向を検知します。ここではアンテナの指向性が分解能(どれだけ細かく方向を識別できるか)に直結するため、シミュレーションによる精密な設計が不可欠です。

よくある誤解と注意点

このシミュレーターを使うときに気をつけてほしいポイントがいくつかあるよ。まず「利得が高いほど絶対に良い」という誤解だ。確かに開口を大きくすれば利得は上がるが、その代償としてビーム幅が狭くなる(半値幅 θ_3dB≈70λ/D)。スマートフォンのように相手の方向が決まっていない端末では、あらゆる方向から電波を受ける必要があるため、むしろ低利得・広ビームのアンテナが向いている。指向性アンテナは「どこに向けるか」が命なんだ。

次に、利得 G と指向性 D₀ を混同しないこと。指向性 D₀ はビームの立体角だけで決まる理論値で、利得 G はそこに開口効率 η を掛けた実際の値だ(G=η·D₀)。η は給電やスピルオーバー、表面精度の損失を含み、現実のパラボラ皿では 0.5〜0.7 程度。同じ口径でも η が低ければ利得は数 dB 下がる。スライダーで η を動かすと、D₀ は変わらず G だけが下がるのが確認できる。

最後に、「開口を広げる」と「周波数を上げる」は利得に対して同じ向きに効くという点。$G=4\pi A_\text{eff}/\lambda^2$ を見ると、利得は λ² に反比例する=周波数の2乗に比例する。例えば口径を一定にして 6 GHz から 24 GHz へ4倍にすると、利得は +12 dB 上がり、ビーム幅は 1/4 になる。ミリ波帯(28 GHz など)で小さなアンテナでも高利得が得られるのはこのためだ。

使い方ガイド

  1. アンテナタイプを選択します。等方性0dBi、半波ダイポール2.15dBi、八木宇田はN=2〜20で約8.14〜18.14dBi、パッチは7dBiです。
  2. 周波数は100〜3000MHz、送信電力は0.1〜100W(20〜50dBm)、距離は0.1〜50kmの範囲で設定します。
  3. 受信アンテナ利得を設定し、フリス伝送式による受信電力とリンクマージンを確認します。

具体的な計算例

920MHz、送信電力0.1W(20dBm)、送信・受信アンテナ利得を各12dBi、距離0.5kmとすると、自由空間損失FSPLは85.7dB(正の損失)です。受信電力はPr=20-85.7+12+12=-41.7dBmで、8dBのフェーディング余裕を差し引くと設計値は-49.7dBmになります。

実務での注意点