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化学工学

物質拡散シミュレーター — Fick則・Arrheniusモデル

Fick拡散方程式の厳密解(erfc関数)で濃度プロファイルを計算。温度スライダーでArrheniusモデルを試し、鋼中炭素や半導体酸素の浸透挙動を直感的に把握できます。

材料プリセット
拡散パラメータ
温度 T (°C)
°C
初期濃度 C₀ (mol/m³)
mol/m³
観察時間 t (s)
s
x範囲 (mm)
mm
Arrheniusパラメータ
頻度因子 D₀ (m²/s)
活性化エネルギー Q (kJ/mol)
kJ/mol
統計サマリー

一時停止中はスライダーを動かすと結果が即座に更新されます。

膜を通る定常拡散 — 分子が濃度勾配を下る
モル流束 N (mol/m²·s)
勾配 dC/dx (mol/m⁴)
拡散係数 D (m²/s)
透過率 N·A (mol/s)

Fickの第1法則 $N=-D\,\dfrac{dC}{dx}$。定常膜では $N=D\,\dfrac{C_1-C_2}{L}$。矢印の長さ ∝ フラックス。左の高濃度側から右の低濃度側へ正味のドリフトが見えます。

計算結果
D (m²/s)
浸透深さ 2√Dt (mm)
C/C₀=0.1到達時間 (s)
x_L位置 (mm)
1000
初期濃度 C₀ (mol/m³)
濃度プロファイル — C(x) at multiple t
ArrheniusプロットD vs 1/T
理論・主要公式
$$C(x,t) = \frac{C_0}{2}\,\mathrm{erfc}\!\left(\frac{x}{2\sqrt{Dt}}\right)$$ $$D(T) = D_0\,\exp\!\left(-\frac{Q}{RT}\right)$$

R = 8.314 J/(mol·K)

物質拡散シミュレーターとは

🙋
「Fick拡散方程式の厳密解」って何ですか?教科書で見た数式が、実際にどう動くのかイメージが湧かないんです。
🎓
大まかに言うと、物質が時間とともにどれだけ深く、どのくらいの濃度で染み込んでいくかを表す式だよ。例えば、鉄の表面に炭素を染み込ませる「浸炭処理」の設計に直接使われるんだ。上のシミュレーターで「観察時間 t」のスライダーを動かしてみて。時間が経つほど、濃度の高い部分が右(内部)に広がっていくのがわかるよね。
🙋
え、そうなんですか!でも、温度のスライダー「T」を動かしても、グラフが変わりますね。拡散係数Dは固定なのではないんですか?
🎓
いいところに気づいたね。実務では、拡散係数Dは温度によって大きく変わるんだ。これが「アレニウスモデル」で、$D(T) = D_0 \exp(-Q/RT)$で表される。温度Tを上げると指数関数的にDが大きくなり、物質が速く深くまで拡散する。シミュレーターでは、Tを変えると裏でこの計算が行われて、グラフがリアルタイムで更新されているんだよ。
🙋
なるほど!でも、「頻度因子D₀」や「活性化エネルギーQ」って、現場ではどう決めるんですか?鋼とシリコンでプリセットが違うみたいですが。
🎓
それが材料ごとの「個性」なんだ。鋼中への炭素拡散は比較的活性化エネルギーQが小さく、シリコン中への酸素拡散は大きい。この値は実験で測定するんだよ。シミュレーターで材料を切り替えて、同じ温度でも拡散の仕方が大きく異なることを確かめてみて。設計者はこの値を使って、必要な温度と時間を逆算するんだ。

よくある質問

温度スライダーを変更すると、Arrheniusモデルに基づいて拡散係数Dが再計算されます。温度が高いほどDが大きくなり、同じ時間でもより深くまで物質が浸透する濃度プロファイルをリアルタイムで確認できます。
初期値は鋼中炭素の代表的な値(例:1000℃で約1e-11 m²/s)を設定しています。温度スライダーで変更すると、Arrhenius式(D = D0 exp(-Q/RT))に従い自動計算されます。材料種に応じたパラメータは内部で固定されています。
半無限体・一定表面濃度という理想条件の厳密解であるため、おおよその浸透深さの目安を得るには有用です。ただし、実際の工程では有限厚さや複雑な境界条件が影響するため、詳細設計には数値シミュレーションを推奨します。
横軸の距離はミリメートル(mm)単位で表示されます。鋼中炭素の浸炭ではµm〜mmオーダー、半導体ドーピングではnm〜µmオーダーと用途で桁が大きく異なるため、x範囲スライダーで表示幅を調整しながらご利用ください。

実世界での応用

金属の表面硬化(浸炭・窒化処理):歯車や軸などの鋼製部品の表面のみを硬くする処理です。シミュレーターで「鋼中炭素」を選び、温度(例:900°C以上)と時間を調整することで、目標の硬化深さを得るための工程条件を設計します。

半導体デバイスの製造(ドーピング):シリコンウェハーにホウ素やリンなどの不純物を拡散させ、p型やn型の領域を作ります。「シリコン中酸素」の挙動を参考に、精密な拡散プロファイルを予測し、トランジスタの特性を決定します。

電池材料開発:リチウムイオン電池の電極内では、リチウムイオンの拡散速度が充放電性能を左右します。異なる材料の活性化エネルギーQを比較評価し、高速充電可能な次世代材料の探索に活用されます。

腐食・酸化挙動の予測:金属が高温環境で酸素と反応して酸化皮膜(スケール)を形成する速度は、酸素の拡散によって制御されます。材料の寿命予測や耐熱コーティングの設計にこの拡散モデルが応用されています。

よくある誤解と注意点

このシミュレーターを使い始める際、特に初学者が陥りがちなポイントがいくつかあります。まず、「拡散係数Dは材料の固定値ではない」という点。これは本当に大事です。ツール上で「鋼中炭素」を選んだ時、表示される初期のDは、あくまで初期温度(例えば900°C)での一つの値に過ぎません。温度スライダーを動かすとDが激変しますが、これは材料が変わったのではなく、同じ材料でも温度で拡散のしやすさが指数関数的に変わるからです。実務で「この材料のDはこれ」と記憶するのは危険で、必ず「何度でのDか」をセットで考えましょう。

次に、表面濃度C₀を現実的に設定すること。シミュレーターでは自由に変えられますが、実際の浸炭処理では、炉内の炭化ガス濃度と温度によって決まる「その温度での平衡表面濃度」が上限になります。例えば、鋼を950°Cで浸炭する場合、表面炭素濃度はせいぜい1.0〜1.2 wt%程度が限度です。ここを2.0%などと非現実的な値にすると、計算結果は全く参考になりません。

最後に、「半無限体」というモデルの限界を理解しましょう。この厳密解は、材料が十分に厚く、反対側の端の影響を無視できる場合に成立します。薄い板(例えば厚さ1mmのシート)の両面から拡散させる場合は、この解は使えません。計算結果が現実とずれる場合は、モデルの適用条件自体を見直す必要があります。