PMSMモーター設計計算 戻る
電磁気

PMSMモーター設計計算ツール

dq軸モデルに基づくPMSMモーター(SPM/IPM)の設計計算。電磁トルク・銅損・逆起電力・効率・MTPA角をリアルタイムで算出します。

モータートポロジー
タイプ
極対数 p
電気パラメータ
固定子抵抗 Rs
Ld(d軸インダクタンス)
mH
Lq(q軸インダクタンス)
mH
PM磁束鎖交数 ψPM
Wb
動作点
回転数 n
rpm
d軸電流 Id
A
q軸電流 Iq
A
電磁トルク Te (N·m)
効率 η (%)
銅損 Pcu (W)
逆起電力 E (V)
MTPA角 (°)
力率 cosφ
トルク–速度特性(現在点 ●)
Iq変化に対する電磁トルク(Id固定、現在点 ●)
Iq vs 電磁トルク
理論・主要公式

$$T_e = \frac{3}{2}p[\psi_{PM}i_q + (L_d-L_q)i_d i_q]$$

第1項:マグネットトルク、第2項:リラクタンストルク

PMSMモーター設計計算ツールとは

🙋
PMSMって何ですか?普通のモーターと何が違うんですか?
🎓
大まかに言うと、ロータに強力な永久磁石を使った高効率なモーターだよ。例えば電気自動車の走行用モーターはほとんどがこれ。このツールでは、上の「タイプ」を「表面磁石」か「埋込磁石」に切り替えると、自動でLdとLqの関係が変わるから確認してみて。
🙋
え、LdとLqって何ですか?それと、トルクの式にd軸電流とq軸電流って出てきますけど、どう使い分けるんですか?
🎓
d軸は磁石の磁極方向、q軸はそれと90度ずれた方向のインダクタンスだ。実務では、トルクを出したい時は主にq軸電流を増やす。でも、高速回転させたい時は弱め磁束制御といって、わざとd軸に負の電流を流すんだ。ツールでIdをマイナスにしてみると、逆起電力が下がるのが確認できるよ。
🙋
なるほど!じゃあ「埋込磁石」を選ぶとリラクタンストルクも使えるということですか?設計で一番気をつけるパラメータは何ですか?
🎓
その通り!埋込磁石型は(Ld-Lq)がマイナスになるので、IdとIqを両方うまく使ってトルクを最大化する「MTPA制御」が可能だ。設計で最もシビアなのは「PM磁束鎖交数ψPM」。これを大きくしすぎると高速で逆起電力が電源電圧を超えて制御不能になる。回転数nのスライダーをMAXまで動かして、逆起電力の値を確認してみよう。

よくある質問

SPM(表面磁石型)ではLd≒Lqのためリラクタンストルク項(Ld-Lq)id iqがほぼ0になり、マグネットトルクのみでトルクが決まります。IPM(埋込磁石型)ではLd<Lqのためリラクタンストルクが発生し、MTPA制御でidに負の電流を流すことで効率的なトルクを引き出せます。本ツールは両方に対応しています。
逆起電力が電源電圧を超えると、モーターを駆動するために必要な電圧が不足し、電流制御ができなくなります(弱め磁束制御の限界)。本ツールでは回転数と磁束鎖交数からEをリアルタイム計算し、制御限界を事前に確認できます。設計時にはEが電源電圧の90%以下になるよう推奨します。
MTPA(最大トルク/電流制御)角は、同一電流で最大トルクを発生する電流位相角です。本ツールではトルク式をid,iqで偏微分して解析的に算出します。この角度に従って電流指令値を与えることで、銅損を最小化し高効率運転が可能になります。特にIPMモーターの設計で重要です。
Ld, Lqはトルクやリラクタンストルクの計算に必須のパラメータです。不明な場合は、モーターの形状(SPMならLd≒Lq、IPMならLd<Lq)から推定値を入力してください。本ツールは入力値に応じて結果が変わるため、実測値やFEM解析値を使うとより正確な設計が可能です。

実世界での応用

電気自動車・ハイブリッド車のトラクションモーター:高トルク・高効率・広い速度範囲が要求されます。埋込磁石型PMSMが主流で、低速ではMTPA制御、高速では弱め磁束制御を組み合わせて、バッテリー電圧の制限内で最大性能を引き出します。

産業用サーボモーター:工作機械やロボットの関節駆動に使われ、高速応答性と位置決め精度が命です。表面磁石型も多く、$\psi_{PM}$とインダクタンスのバランスを最適化して、電流からトルクへの応答を速く設計します。

家電製品(エアコン・洗濯機):省エネルギー規制に対応するため、従来の誘導モーターからPMSMへの置き換えが進んでいます。特にエアコンのコンプレッサーは連続運転が多いため、ツールで計算される銅損と効率が設計の重要な指標になります。

ドローン・電動航空機の推進モーター:軽量・高出力が絶対条件です。極対数$p$を増やして低速高トルク化し、ギアを省略して直接駆動する設計や、$\psi_{PM}$を大きくして同じトルクをより小さい電流で達成する設計が追求されます。

よくある誤解と注意点

まず、「インダクタンスは固定値」と思い込むこと。実際のモーターでは、磁気飽和によって電流が増えるとLdやLqの値が大きく変わります。ツールで「定格電流」と「過負荷電流」の両方でシミュレーションを走らせ、トルク定数がどのくらい変動するか確認する癖をつけましょう。例えば、埋込磁石型でIdを負に大きく流す弱め磁束制御時は、特にLdが飽和して変動し、計算値と実機で差が出る原因になります。

次に、効率マップの「最高効率点」だけを追い求める設計。確かに95%の点は気持ちいいですが、実運用で重要なのは常用運転領域全体の平均効率です。電気自動車なら、市街地走行に相当する中低速・中トルク域が高い効率の「丘」になっているか、ツールで生成した特性を広く評価してください。

最後に、「逆起電力が電圧を超えなければOK」という単純な判断。安全マージンが必須です。バッテリー電圧は負荷変動で変動しますし、インバータの変調方式(例えば正弦波PWMと過変調)で利用できる最大電圧も異なります。ツールで計算した逆起電力 $E$ に対して、 少なくとも直流リンク電圧の $1/\sqrt{3}$ 倍(空間ベクトル変調の最大出力)より十分低く抑えることを心がけましょう。例えば、電源電圧300Vなら、逆起電力は170Vを大幅に下回る値に設計するのが現実的です。

使い方ガイド

  1. 極対数(sPNum)と極数(sP)を入力。例:3相モーターで極対数4の場合、極数は8になります
  2. 電機子巻線抵抗(sRs)をΩ単位で設定。銅線径φ1.0mmで巻く場合、一般的に0.5~2.0Ωの範囲です
  3. d軸インダクタンス(sLd)とq軸インダクタンス(sLq)をmH単位で入力。埋込型PMSMではsLq>sLdとなるため、例えばsLd=8mH、sLq=12mHと設定します
  4. シミュレーション実行後、トルク-速度特性グラフと効率分布を確認し、設計パラメータを最適化します

具体的な計算例

永磁同期モーター(PMSM)で極対数3、定格電流10A、永磁束密度0.8Tの設計事例:電機子抵抗sRs=1.2Ω、sLd=10mH、sLq=15mHと設定すると、銅損は約1.2kW、電磁トルク は約15N・m、定格速度3000rpmで出力約4.7kWが得られます。このとき力率は0.92、全体効率は約88%になります

実務での注意点