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材料・熱処理

熱処理CCT図シミュレーター

炭素量・合金系・冷却速度を変えてCCT図と冷却曲線をリアルタイム表示。マルテンサイト変態点・推定硬さ・組織分率を即座に確認できます。

鋼材パラメータ
炭素量 C (wt%)
wt%
冷却速度 (°C/s)
°C/s
マルテン
—%
ベイナイト
—%
パーライト
—%
計算結果
Ms温度 (°C)
推定 HV
推定 HRC
CCT線図
理論・主要公式
$M_s = 539 - 423C - 30.4M_n$
$\quad - 17.7N_i - 12.1C_r - 7.5M_o$ (°C)
マルテンサイト分率(Koistinen-Marburger):
$f_M = 1 - \exp(-0.011(M_s - T_q))$

熱処理CCT図シミュレーターとは

🙋
CCT図って何ですか?冷却速度を変えると、鋼の組織がどう変わるんですか?
🎓
大まかに言うと、鋼を焼き入れしたときの「組織の地図」だね。例えば、このシミュレーターで「冷却速度」のスライダーを一番遅くすると、パーライトという軟らかい組織になる。逆に一番速くすると、硬いマルテンサイトがたくさんできるんだ。実際に動かしてみると、グラフの線が大きく変わるのがわかるよ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、炭素量(C%)も変えられるけど、これは何が変わるんですか?
🎓
炭素量は、マルテンサイトが生まれる温度(Ms点)を大きく左右するんだ。炭素が多いほどMs点は下がる。シミュレーターでC%を0.2%から0.8%に上げてみて。右側に表示される「Ms点」の値が下がるでしょ? これが下がると、同じ冷却速度でもマルテンサイトができにくくなるんだ。
🙋
なるほど!「合金系」を選ぶと、NiとかCrとか出てきますが、これらは現場でどう使われてるんですか?
🎓
実務では、強度と靭性を両立させるために合金元素を組み合わせるんだ。例えば、自動車のギアにはCr-Mo鋼がよく使われるよ。シミュレーターで「Cr-Mo鋼」を選んで、炭素量を0.4%くらいにしてみよう。Niを入れるとMs点が下がって焼き入れ性が良くなるけど、コストが上がる。このツールで成分をいじりながら、硬さと組織のバランスを探れるんだ。

よくある質問

冷却速度を速くすると冷却曲線の傾きが急になり、Ms点以下の低温域まで変態が遅れます。逆に遅くするとフェライトやパーライト変態が起こりやすくなり、CCT図上の変態開始線と交差する位置が変わります。
炭素量を増やすとAndrews式によりMs点が大きく低下します。また、マルテンサイトの硬さが上昇するため、推定硬さも高くなります。ただし、残留オーステナイトが増える可能性もあるため、組織分率も併せて確認してください。
はい、化学成分と冷却速度を変えてCCT図を確認することで、焼入れ条件の目安を得られます。ただし、実際の熱処理では素材の寸法や炉の特性も影響するため、シミュレーション結果は参考値として扱い、実試験で検証することを推奨します。
CrやMoなどの合金元素を添加すると、変態開始線が右側(時間が長い側)にシフトし、焼入れ性が向上します。これにより、同じ冷却速度でもマルテンサイトが得られやすくなり、Ms点も低下します。各元素の影響をリアルタイムで比較できます。

実世界での応用

自動車部品の熱処理設計:エンジンやトランスミッションに使われるギアやシャフトは、高い強度と耐摩耗性が要求されます。CCT図を用いて、部品のサイズ(冷却速度に影響)と材料成分から、芯部までマルテンサイトが得られる焼入れ条件を決定します。

工具鋼の開発:切削工具や金型用の鋼は、非常に高い硬度が必要です。シミュレーターで様々な合金元素(タングステン、バナジウム等)の影響を加味したCCT図を予測し、焼入れ時の変形や割れを抑えつつ最高硬度を得る組成を探索します。

溶接部の組織制御:溶接では溶接部とその周辺(熱影響部)が急熱急冷されます。母材のCCT図を参照することで、溶接後の熱影響部に硬くてもろいマルテンサイトが生成するリスクを評価し、予熱や後熱の条件を最適化します。

省エネルギー熱処理の実現:従来の水焼入れではなく、油焼入れや空冷で所望の硬度を得られれば、省エネルギーかつ変形・割れが少なくなります。目標硬度を得られる限界の冷却速度(臨界冷却速度)をCCT図から読み取り、より温和な熱処理プロセスを設計します。

よくある誤解と注意点

このシミュレーターを使い始めるときに、特に現場経験の浅いエンジニアが陥りがちな落とし穴がいくつかあります。まず一つ目は、「冷却速度」の値の現実的な意味を理解していないことです。シミュレーター上で「100℃/s」と設定しても、実際の部品でその冷却速度が実現できるかは別問題。例えば、直径50mmの丸棒を水焼入れした場合、表面と芯部では冷却速度が10倍以上違います。ツールで理想的な組織を得られても、部品のサイズ(質量効果)を無視した熱処理設計は失敗します

二つ目は、合金元素の効果を単純に足し算して考える誤解です。確かにAndrews式は線形ですが、元素間には相互作用があります。例えば、CrとMoを同時に添加すると、焼入れ性の向上効果は単独添加の和よりも大きくなる(相乗効果)ことが知られています。シミュレーターはあくまで標準的なモデルに基づくため、特殊な高合金鋼では予測と実測がずれる可能性がある点に注意が必要です。

三つ目は、硬さだけを見て組織を判断すること。マルテンサイト分率90%と10%では硬さが大きく違いますが、同じマルテンサイト分率90%でも、残りの10%が微細なベイナイトか粗大なフェライトかで靭性は雲泥の差です。シミュレーターの組織分率は重要な指標ですが、「硬さが合格ならOK」ではなく、想定される組織の形態まで想像することが、割れや脆性破壊を防ぐコツです。

使い方ガイド

  1. 炭素含有量(0.2~1.5 wt%)を入力し、基準となるCCT図を生成します
  2. 冷却速度(1~1000 °C/s)を設定して、オーステナイト分解経路を追跡します
  3. 計算結果のMs温度、推定HV硬さ、推定HRC硬さをリアルタイム表示して組織相を判定します

具体的な計算例

S55C(炭素0.55 wt%)鋼において、冷却速度50 °C/sでシミュレーションした場合、Ms温度は約340°C、推定硬さはHV 450相当、HRC 42程度となります。同じ鋼を500 °C/sで急冷すると、Ms温度は変わりませんが組織がマルテンサイト優先となり推定硬さはHV 680、HRC 62に上昇します。対照的に冷却速度が5 °C/sの徐冷では、パーライト・フェライト混合組織となり推定硬さはHV 200程度に低下します。

実務での注意点