ISO はめあい公差セレクタ 戻る
機械要素設計

ISO はめあい公差セレクタ

ISO 286 の穴基準はめあいで、基準寸法と公差クラス(H7/g6 など)を選ぶと、穴と軸の寸法許容差・最大すきま・最小すきま・はめあいの種類がリアルタイムで分かります。公差域図で穴と軸の位置関係も可視化します。

パラメータ設定
基準寸法 D
mm
穴と軸の呼び寸法(共通)
穴の公差クラス
穴基準(記号 H、下の許容差 = 0)
軸の基本偏差(記号)
公差域の位置。d〜g=すきま側、js〜n=中間側
軸の公差等級 IT
公差の幅。数字が小さいほど高精度
計算結果
はめあい記号
はめあい種別
最大すきま (μm)
最小すきま (μm)
穴公差 (μm)
軸公差 (μm)
公差域図(ゼロ線・穴域・軸域)

中央の破線がゼロ線(基準寸法)。青が穴の公差域、橙が軸の公差域。両域の上下関係がはめあいの種類を決めます。

基準寸法 D に対するすきまの変化
軸クラス別のはめあい比較(最小すきま)
理論・主要公式

$$\text{最大すきま} = ES_{\text{穴}} - ei_{\text{軸}}, \qquad \text{最小すきま} = EI_{\text{穴}} - es_{\text{軸}}$$

ES・EI は上・下の寸法許容差。穴基準では EI_穴 = 0、ES_穴 = +IT_穴。

$$IT = k\cdot i, \qquad i = 0.45\sqrt[3]{D} + 0.001\,D \;\;[\mu m]$$

公差等級 IT。i は公差単位、D は寸法区分の幾何平均。本ツールの IT 値は ISO 286 標準表に基づきます。

$$es_{g} = -2.5\,D^{0.34},\quad es_{f} = -5.5\,D^{0.41},\quad ei_{n} = +5\,D^{0.34}$$

軸の基本偏差の例(ISO 286)。最小すきま≥0で/すきまばめ/、最大すきま≤0で/しまりばめ/、中間なら/中間ばめ/。

ISO はめあい公差セレクタとは

🙋
図面で「Ø50 H7」とか「H7/g6」って見るんですけど、あれは何を意味してるんですか?
🎓
いい質問だ。部品は必ず寸法にバラつきが出るから、「Ø50ちょうど」には作れない。そこで「Ø50で、許される誤差はここからここまで」と幅を決める。それが公差だ。「H7」のアルファベットは公差域の位置、数字 7 は公差の幅(IT等級)を表す。「H7/g6」なら穴がH7、軸がg6。穴と軸を組み合わせたときの「はまり具合」が、はめあいだよ。
🙋
なるほど。じゃあ穴と軸、両方とも好きに公差を決めていいんですか?
🎓
原則は「穴基準」といって、穴を H に固定するんだ。穴は専用のリーマやゲージで加工するから種類を増やしたくない。だから穴は H7 などに固定して、削りやすい軸の方を g6・k6・n6 と変えて、はめあいを作り分ける。左で「軸の基本偏差」を d から n へ動かしてみて。公差域図の橙色の帯が、すきま側からだんだん上(締まり側)へ移動していくのが見えるよ。
🙋
本当だ、橙の帯が上がっていきます。g だとすきまばめ、n だと中間ばめになるんですね。これってどう使い分けるんですか?
🎓
用途で決まる。回転する軸受や滑り軸なら、必ずすきまが要るから g6・f7 みたいなすきまばめ。位置決めピンや歯車のように「ガタなく、でも分解はしたい」なら k6・js6 の中間ばめ。圧入して二度と外さないならしまりばめ(p6・s6など)だ。このツールは「最小すきま」がプラスかマイナスかで種別を自動判定する。最小すきまがマイナス=どこかで締め代が出る、ということだね。
🙋
中間ばめって、すきまになることも締め代になることもあるんですか?それだと不安定じゃ…
🎓
そこが中間ばめの本質だ。部品の個体差で、ある組み合わせはわずかなすきま、別の組み合わせはわずかな締め代になる。だから「確実に動かしたい」用途には向かない。中間ばめは「位置がきっちり決まること」を優先し、組立・分解は軽い圧入や打ち込みで対応する箇所に使う。確実な固定が要るならしまりばめ、確実な可動が要るならすきまばめ、と割り切るのが安全だよ。

よくある質問

穴基準はめあいは、穴の公差を基準(記号 H、下の許容差が常に0)に固定し、軸の公差クラスを変えることではめあいの種類を作る方式です。穴は H7 のように1種類の工具・ゲージで加工でき、軸は旋盤などで調整しやすいため、ISO・JISでは穴基準が標準です。例えば H7/g6 はすきまばめ、H7/k6 は中間ばめになります。
最小すきまが0以上なら「すきまばめ」(常にすきまがあり相対運動できる)、最大すきまが0以下なら「しまりばめ」(常に締め代があり圧入が必要)、その中間(最小は負・最大は正)なら「中間ばめ」(個体差で締め代にもすきまにもなり得る)です。本ツールは最大・最小すきまから種別を自動判定します。しまりばめの応力評価は圧入・焼きばめの専用ツールを参照してください。
IT(International Tolerance grade)は公差の幅(精度)を表す等級で、数字が小さいほど高精度です。同じ等級でも基準寸法が大きいほど公差幅は広がります。例えば IT7 は Ø50 で 25μm、Ø200 で 46μm です。一般的な機械部品では穴 IT7・軸 IT6 程度、精密部品では IT5、粗い部品では IT9〜11 が使われます。
「H7/g6」は穴が公差クラス H7、軸が g6 という意味です。アルファベットは基本偏差(公差域の位置)、数字は IT 等級(公差の幅)を表します。穴は大文字、軸は小文字で書きます。H は穴基準(下の許容差0)、g は軸の上の許容差がわずかに負(小さめ)でわずかなすきまを生む位置を意味します。H7/g6 は「軽くはまり滑らかに動く」代表的なすきまばめです。

実世界での応用

回転軸と軸受・ブッシュ:滑り軸受やブッシュの内側を回転する軸には、潤滑油膜を保つわずかなすきまが必須です。H7/f7・H8/e8 のようなすきまばめを選び、回転速度と荷重から必要なすきまを確保します。すきまが小さすぎると焼き付き、大きすぎると振れや騒音の原因になります。

位置決めピン・キー・歯車:ガタは困るが分解はしたい部品には中間ばめ(H7/k6・H7/js6・H7/n6)が使われます。歯車のボス、カップリング、ノックピンなどが代表例です。組立は軽い打ち込みやプレスで行い、必要なら分解もできる絶妙なバランスを狙います。

幾何公差・図面指示との連携:はめあい公差は寸法公差の一部であり、実際の図面では同軸度・円筒度などの幾何公差と組み合わせて指示します。本ツールで穴・軸の寸法許容差を決めたうえで、機能に応じて幾何公差を追加するのが設計の流れです。過剰に厳しい公差はコストを跳ね上げるため、機能上必要な範囲にとどめます。

コストと加工性の検討:IT等級を1段階厳しくすると加工コストは大きく増えます。研削が必要か旋削で足りるか、ゲージ検査が要るかは IT等級で決まります。本ツールで基準寸法を変えると、同じ等級でも大物ほど公差幅が広がることが分かります。機能を満たす最も緩い等級を選ぶのがコスト最適設計の基本です。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「中間ばめなら必ずちょうど良くはまる」という誤解です。中間ばめは、部品の個体差によって「わずかなすきま」にも「わずかな締め代」にもなり得る範囲です。平均すれば中央付近でも、最悪の組み合わせでは数 μm のすきま、別の組み合わせでは数 μm の締め代になります。確実に動かしたい・確実に固定したい用途では、中間ばめではなく、すきまばめ/しまりばめを明確に選んでください。

次に、「公差は厳しいほど良い」という思い込み。IT等級を1段階厳しくするだけで、研削工程の追加や検査の厳格化でコストが跳ね上がります。機能上 50μm のすきまで足りるのに 5μm の精度を要求するのは、設計者の自己満足です。必要なはめあいを満たす最も緩い等級を選ぶのが正しい姿勢で、本ツールはその「ちょうど良い等級」を探すために使えます。

最後に、「温度を無視する」こと。はめあいは常温(20℃)基準で規定されています。アルミの穴に鋼の軸など線膨張係数が異なる材料を組み合わせると、運転温度ですきまが大きく変わります。高温で使う軸受では、常温ですきまばめでも高温で締まる、あるいはその逆が起こります。重要部位では運転温度での寸法変化を別途計算し、常温のはめあい記号だけで判断しないでください。なお、確実な締め代を持つしまりばめ(圧入・焼きばめ)の接触圧力や応力評価は、本ツールの範囲外です。専用の圧入・焼きばめツールを併用してください。