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電磁気・光学

マイクロストリップライン設計計算機

基板パラメータから特性インピーダンスZ₀・実効誘電率・減衰量を瞬時計算。分析モード(寸法→Z₀)と合成モード(Z₀→幅W)を切り替えられます。

設計パラメータ

ストリップ幅 W (mm)
mm
基板高さ H (mm)
mm
導体厚さ t (μm)
μm
比誘電率 εr
損失正接 tan δ (×10⁻³)
×10⁻³
周波数 f (GHz)
GHz
εeff
位相速度 vp/c
波長 λg (mm)
αc (dB/m)
αd (dB/m)
計算結果
Z₀ (Ω)
断面
Z0
伝送損失
理論・主要公式

$$Z_0 = \frac{87}{\sqrt{\varepsilon_r + 1.41}}\ln\left(\frac{5.98h}{0.8w + t}\right)$$

マイクロストリップ特性インピーダンス(Schneider近似):\(h\) 基板厚、\(w\) 線路幅、\(t\) 銅厚 [mm]、\(\varepsilon_r\) 比誘電率

$$\varepsilon_{eff} = \frac{\varepsilon_r+1}{2} + \frac{\varepsilon_r-1}{2}\left(1+\frac{12h}{w}\right)^{-1/2}$$

実効比誘電率:電磁波の伝播速度 \(v_p = c/\sqrt{\varepsilon_{eff}}\) に影響

$$\alpha_c = \frac{R_s}{Z_0 w}$$

導体損失:\(R_s\) 表面抵抗 [Ω]

マイクロストリップライン設計計算機とは

🙋
マイクロストリップラインって何ですか?プリント基板の上に見える細い銅の線路のことですよね?
🎓
その通り!大まかに言うと、絶縁体の基板の上に導体の線路を載せ、裏面をグラウンド面にした構造だ。このツールの左側にある「基板厚さ h」や「比誘電率 εr」のスライダーは、その基板の材質と厚さを設定するパラメータだよ。例えばFR-4という一般的なガラスエポキシ基板なら、εrは約4.3だ。
🙋
え、そうなんですか?で、その線路の幅「W」を変えると何が変わるんですか?上の「線路幅 W」スライダーを動かしてみました。
🎓
いいところに気づいたね!線路幅Wを変えると、一番重要な「特性インピーダンス Z₀」が大きく変わるんだ。Z₀は信号がスムーズに流れるための線路の“太さ”みたいなものだ。スライダーでWを細くするとZ₀は高く(例えば90Ω)、太くすると低く(例えば20Ω)なる。実務では、多くのRF回路でZ₀=50Ωに合わせるのが一般的だよ。
🙋
「合成モード」って何ですか?「分析モード」と何が違うんですか?
🎓
それがこのツールの実用的なところだ!「分析モード」は線路幅Wから特性インピーダンスZ₀を求める計算。逆に「合成モード」は、作りたいZ₀(例えば50Ω)から、必要な線路幅Wを逆算するんだ。実際の回路設計では「50Ωの線路が作りたい」という要求が多いから、合成モードでパラメータをいじりながら、最適なWを見つけることになるね。

物理モデルと主要な数式

マイクロストリップラインの特性インピーダンスZ₀と実効誘電率εeffは、線路幅Wと基板厚さhの比(W/h)によって、幅広線路と幅狭線路で異なる近似式が用いられます。

$$Z_0 = \begin{cases}\frac{60}{\sqrt{\varepsilon_{eff}}}\ln \left( \frac{8h}{W}+ \frac{W}{4h}\right) & \text{for }W/h \leq 1 \\ \frac{120\pi}{\sqrt{\varepsilon_{eff}}}\left[ \frac{W}{h}+ 1.393 + 0.667 \ln \left( \frac{W}{h}+ 1.444 \right) \right]^{-1}& \text{for }W/h \geq 1 \end{cases}$$

Z₀: 特性インピーダンス [Ω]
εeff: 実効誘電率 (基板と空気の混合領域の平均的な誘電率)
W: 線路幅 [m]
h: 基板厚さ [m]

実効誘電率εeffは、電界が基板内と空気中にまたがる効果を考慮した値で、以下の式で近似されます。これにより、伝搬速度や波長が計算できます。

$$\varepsilon_{eff}\approx \frac{\varepsilon_r + 1}{2}+ \frac{\varepsilon_r - 1}{2}\frac{1}{\sqrt{1 + 12h/W}}$$

εr: 基板の比誘電率 (材料固有の定数)
このεeffを使うと、伝搬定数βは \(\beta = \frac{2\pi f}{c}\sqrt{\varepsilon_{eff}}\) で求められ、位相速度や波長の計算に使われます。

よくある質問

分析モードは、線路幅Wや基板厚さhなどの寸法から特性インピーダンスZ₀を計算します。合成モードはその逆で、目標とするZ₀から必要な線路幅Wを逆算します。設計の段階に応じて切り替えてご利用ください。
実効誘電率εeffは、基板の比誘電率と空気の誘電率の影響を平均化した値です。マイクロストリップラインでは電磁界が基板と空気の両方に分布するため、この値を使って波長や伝搬速度を正確に見積もります。
導体損(銅箔の表面抵抗による損失)と誘電体損(基板の誘電正接による損失)の両方を考慮しています。周波数が高くなるほど減衰量は増加するため、高周波設計では特に重要なパラメータです。
単位はmm(ミリメートル)を推奨していますが、hとWの比(W/h)が正しければ、μmやinchなど任意の同一単位でも計算可能です。ただし、減衰量計算では周波数と共に単位系が影響するため、mm単位で入力することをお勧めします。

実世界での応用

無線通信機器(スマートフォン、Wi-Fiルータ): 基板上のアンテナとRFチップを接続する給電線や、フィルタ、増幅器間の結合線路として使用されます。小型化のために高誘電率基板が用いられ、ツールで正確な線路幅を設計します。

レーダー・衛星通信システム: 高周波(マイクロ波・ミリ波)で動作するため、低損失な専用基板(例:Rogers RO4003)が選ばれます。ツールの「周波数 vs 損失」グラフで、使用周波数帯域での伝送損失を事前評価できます。

高速デジタル回路(サーバー、ルータ): 数Gbpsを超える高速信号伝送では、信号の整合(インピーダンスマッチング)が波形劣化を防ぐ鍵です。クロックやデータラインの特性インピーダンスを50Ωや100Ω(差動)に設計する際に必須です。

自動車の車載カメラ・センサー: 車載ネットワーク(LVDS等)で画像データを伝送するケーブルの代わりに、基板上のマイクロストリップラインが使われます。狭い空間に収めるため、薄い基板(hが小さい)での設計が求められます。

よくある誤解と注意点

まず、「比誘電率εrはデータシートの値そのまま使えばOK」と思いがちですが、実は製造バラツキと周波数依存性があります。例えばFR-4基板のカタログ値はεr=4.3と書かれていても、実際のロットでは4.0〜4.7の範囲にばらつくことがあります。特に10GHzを超える高周波では、樹脂とガラスの混合比率で値が変動するため、厳密な整合を取る場合は実測値で補正する必要があります。もう一点、「線路幅Wだけを変えればインピーダンスは自由に決まる」という誤解。実際には、基板厚さhが製造可能な範囲(例えば0.2mm〜1.6mm)で固定されていることが多く、その中でWを調整することになります。h=0.4mmの薄い基板で50Ωを作ろうとするとWは約0.75mmになりますが、これが製造限界(例えば0.1mm)より細い場合は、そもそもその基板厚さでは実現不可能なインピーダンス値だった、という落とし穴に陥ります。最後に、計算結果のZ₀は「静電界近似」による理論値であることを忘れないでください。特に高周波(目安として基板厚さhが波長の1/10以上)では、表面波や放射損失の影響で実測値と計算値が乖離します。例えば3GHz、h=1.6mmならほぼ一致しますが、30GHzでは注意が必要です。

使い方ガイド

  1. 基板厚さH(mm)と導体幅W(mm)を入力します。FR-4基板の場合H=1.6mm、W=0.3mmが標準値です
  2. 導体厚さt(μm)と比誘電率を設定します。銅箔18μmおよびεr=4.3を推奨値として設定してください
  3. 目標特性インピーダンスZ0(Ω)を指定し計算ボタンをクリックすると、Hammerstad-Jensen近似式により特性インピーダンスと伝播定数が即座に算出されます

具体的な計算例

FR-4基板(εr=4.3)でマイクロストリップラインを設計する場合、基板厚さH=1.6mm、導体幅W=0.5mm、導体厚さt=35μmの条件下では特性インピーダンスZ0≈50.2Ωが得られます。同じ基板でZ0=75Ω設計とする場合はW=0.18mmに設定調整が必要となり、このシミュレータで幅パラメータを段階的に変更しながら目標値への収束を確認できます。5GHz帯域での減衰量は約0.8dB/mとなります。

実務での注意点