損失・帯域幅の式
$$P_{\text{dBm}}= P_{\text{in}}- \alpha L - N_s l_s - N_c l_c$$ $$\sigma_t = D \cdot \Delta\lambda \cdot L$$ $$\text{BW}= \frac{0.44}{\sigma_t}$$スプライス損失 ls=0.1 dB、コネクタ損失 lc=0.5 dB。SMF色分散 D=17 ps/(nm·km)@1550nm。
光ファイバーの伝送損失と受信電力をリアルタイム計算。ファイバー長・スプライス・コネクタ損失を入力してリンクパワーマージンと最大伝送距離を求めよう。
スプライス損失 ls=0.1 dB、コネクタ損失 lc=0.5 dB。SMF色分散 D=17 ps/(nm·km)@1550nm。
光ファイバーリンク全体での受信電力は、送信電力から、ファイバー伝送中の損失、スプライス点での損失、コネクタ接続点での損失をすべて差し引いて計算されます。この総損失をデシベル(dB)単位で足し算するのがポイントです。
$$P_{\text{dBm}}= P_{\text{in}}- \alpha L - N_s l_s - N_c l_c$$$P_{\text{dBm}}$: 受信電力 [dBm], $P_{\text{in}}$: 送信電力 [dBm], $\alpha$: ファイバー減衰係数 [dB/km], $L$: ファイバー長 [km], $N_s$: スプライス数, $l_s$: スプライス1ヶ所あたりの損失 [dB] (典型値0.1 dB), $N_c$: コネクタ数, $l_c$: コネクタ1個あたりの損失 [dB] (典型値0.5 dB)
光パルスの時間的な広がり(パルス幅)は、ファイバーの「色分散」によって生じます。分散係数、光源のスペクトル幅、伝送距離に比例して広がりが大きくなり、これが通信可能な最大帯域幅(速度)を制限します。
$$\sigma_t = D \cdot \Delta\lambda \cdot L$$$\sigma_t$: パルス広がり [ps], $D$: 分散係数 [ps/(nm・km)], $\Delta\lambda$: 光源のスペクトル幅 [nm], $L$: ファイバー長 [km]。パルス広がりが大きいと隣のパルスと干渉(アイパターン閉眼)を起こし、帯域幅 $BW \approx 0.44 / \sigma_t$ [GHz] で制限されます。
長距離バックボーン通信:大陸間を結ぶ海底ケーブルや国内の基幹通信網では、SMF(シングルモードファイバー)が使用されます。低損失(1550nm帯で0.2 dB/km以下)と低分散を実現するために、光源はスペクトル幅の狭いレーザーが用いられ、数十kmごとに光増幅器で信号を増幅しながら数百~数千kmを伝送します。
データセンター内ネットワーク:サーバーラック間を接続する短距離(数百m以内)の高速リンクでは、OM3/OM4などのマルチモードファイバー(MMF)とVCSELレーザーが多用されます。コネクタ損失が支配的になるため、高精度なコネクタと低損失の接続が求められ、ツールでコネクタ数を2~4個に設定して設計検証が行われます。
FTTH(ファイバー戸別導入):家庭まで光ファイバーを引くサービスでは、分岐点(スプリッタ)での大きな損失と、家屋への導入部分での曲げ損失が課題です。設計では、ツールで計算した総損失が、ONU(光回線終端装置)の受信感度に対して十分なマージン(リンクパワーマージン)を持つことを確認します。
工場内・車載ネットワーク:自動車の車載ネットワークや工場の制御システムでも、耐ノイズ性に優れた光ファイバーが採用され始めています。振動や熱の影響でコネクタ接続が緩む可能性を考慮し、設計段階で余裕を持った損失マージンを設定することが現場では重要です。
まず、「dBm」と「dB」を混同しないでください。dBmは「1mWを0dBmとする絶対的な電力値」、dBは「2つの電力の比を示す相対値」です。ツールで「送信電力 0 dBm」と設定し、「コネクタ損失 0.5 dB」と入力した場合、受信電力は -0.5 dBm になります。0.5 dBmではないんです。次に、パラメータの典型値は状況で変わるという点。例えば、コネクタ損失のデフォルト0.5dBは、清掃が行き届いた新品のLCコネクタなら現実的ですが、汚れたSCコネクタでは1dBを超えることも珍しくありません。ツールで「余裕を持って設計しよう」と思ったら、各損失値に1.5倍程度のマージンを乗せて計算するのが実務の知恵です。最後に、帯域幅計算は「損失」とは独立した別の制約であることを理解しましょう。損失計算だけではリンクが成立しても、帯域幅が足りなければ所定の速度で通信できません。例えば10GbEでOM3ファイバーを使う場合、損失的には数百m伝送可能でも、規格で定められた最大伝送距離は300m程度です。ツールではこの「2つの異なる制約(損失と帯域幅)のうち、厳しい方が最終的な最大距離を決める」様子を確認できます。
このツールの計算ロジックは、実は様々な工学分野の基礎と直結しています。まず通信システム工学。ここで計算している「リンクパワーマージン」は、無線通信のリンクバジェット計算と本質的に同じです。電波の代わりに光、アンテナ利得の代わりに増幅器(光アンプ)を考えれば、同じシステム設計の枠組みが適用できます。次に材料科学。ファイバーの減衰係数が波長によって異なる(例えば1550nm帯は850nm帯より低損失)のは、シリカガラスの光吸収・散乱特性に起因します。また、信号処理・情報理論とも深く関わります。帯域幅計算で出てくるパルス広がりは、通信路の「インパルス応答」そのものです。これが大きいと、高速なデジタル信号(連続する「1」「0」のパルス)が互いに干渉する「シンボル間干渉」を起こし、誤り率が上昇します。この現象を数学的に解析し、等化器などの技術で打ち克つことが、現代の高速光通信の核心です。
このツールに慣れたら、次は「なぜそうなるのか」の物理と数学を深めましょう。第一歩はデシベル計算の本質を理解すること。対数スケールであるdB計算は、乗算を加算に、べき乗を乗算に変換します。これがリンク損失を単純に足し算できる理由です。数式で書くと、電力比 $R = P_{out}/P_{in}$ のdB表現は $10 \log_{10} R$ です。第二に、分散の物理を学びます。ツールで使っているシンプルな式 $\sigma_t = D \cdot \Delta\lambda \cdot L$ は、材料分散が支配的な場合の近似です。実際には、ファイバー構造自体が波長ごとに伝搬速度を変える「導波路分散」も存在し、両方を合わせた「総合分散」が重要になります。学習の次のトピックとしては、損失を補償する光増幅技術(EDFAなど)や、分散そのものを打ち消す分散補償ファイバー(DCF)、さらにそれらを高度に制御するコヒーレント光通信技術に進むと、現代の長距離・大容量光ネットワークの全体像が見えてくるでしょう。まずは、このツールでパラメータを徹底的にいじり、「感覚」を養うことが全ての基礎です。