薄肉レンズの公式
$$\frac{1}{f}= \frac{1}{d_o}+ \frac{1}{d_i}$$
$$m = -\frac{d_i}{d_o}$$
$d_i > 0$:実像(スクリーンに投影可能)
$d_i < 0$:虚像(スクリーンに映らない)
$m < 0$:倒立像 $m > 0$:正立像
焦点距離と物体距離を変えるだけで、3本の主光線が動きリアルタイムに像の位置・倍率・実像/虚像を計算。凸レンズ・凹レンズの光学特性を直感的に理解できる。
$$\frac{1}{f}= \frac{1}{d_o}+ \frac{1}{d_i}$$
$$m = -\frac{d_i}{d_o}$$
$d_i > 0$:実像(スクリーンに投影可能)
$d_i < 0$:虚像(スクリーンに映らない)
$m < 0$:倒立像 $m > 0$:正立像
薄肉レンズの核心となる公式です。レンズの焦点距離、物体の位置、像の位置の3者の関係を規定します。
$$\frac{1}{f}= \frac{1}{d_o}+ \frac{1}{d_i}$$$f$: レンズの焦点距離(凸レンズで正、凹レンズで負)
$d_o$: 物体距離(レンズから物体までの距離、常に正)
$d_i$: 像距離(レンズから像までの距離。実像で正、虚像で負)
像の大きさや向きを決める倍率の式です。像距離と物体距離の比で定義されます。
$$m = -\frac{d_i}{d_o}$$$m$: 横倍率(絶対値が1より大きければ拡大、小さければ縮小)
符号の意味: $m < 0$ なら倒立像、$m > 0$ なら正立像。$d_i$の符号が直接倍率の正負に影響します。
カメラ・スマートフォンカメラ:被写体(物体距離)に応じてレンズ群の位置を微調整し、センサー上(像距離)にピントの合った実像を結ばせています。オートフォーカスはこの公式に基づく制御の応用です。
眼鏡・コンタクトレンズ:近視用には凹レンズ(f<0)を用いて、網膜の手前にできてしまう像を後ろに引き戻し(虚像を調整)、遠視用には凸レンズで像を手前に引き寄せます。処方度数は焦点距離の逆数(屈折力)で表されます。
顕微鏡・望遠鏡:対物レンズで一度実像を作り、接眼レンズ(虫眼鏡として働く)でその実像をさらに拡大した虚像として観察します。二段構えのレンズ系によって高い倍率を実現しています。
プロジェクター:スライドや液晶パネル(物体)から出た光を凸レンズで集光し、スクリーン上に拡大された倒立実像として投影します。像距離と物体距離を精密に調整することで鮮明な映像を得ています。
まず、「薄肉」という言葉に惑わされないでください。これは「レンズの厚みが焦点距離に比べて無視できる」という理想化されたモデルです。実物のレンズ、特にスマホカメラの複雑なレンズ群では、この計算だけでは設計できません。あくまで「第一近似」の考え方として使いましょう。
次に、物体距離 $d_o$ を「焦点距離 $f$ より少し大きい値」に設定した時の挙動に注意です。例えば $f=50mm$ のレンズで $d_o=55mm$ とすると、公式から $d_i$ は $550mm$ と非常に大きくなります。この状態は倍率が大きく(約-10倍)、像が遠くにできるため、ほんの少しの $d_o$ の誤差(例えば1mm)で $d_i$ が数十mmも変動し、ピントが大きくずれます。実務では、高倍率のマクロ撮影時にピント合わせがシビアになるのはこのためです。
また、「凹レンズは常に虚像」と覚えがちですが、物体を「虚物体」(つまり、他のレンズから来る収束光束)として扱うと、凹レンズでも実像を作れるケースがあります。これは複数レンズを組み合わせる光学系設計で重要になる、一歩進んだ概念です。NovaSolverで単体の凹レンズをいじる限りは「常に虚像」でOKですが、頭の片隅に置いておきましょう。
この薄肉レンズの計算は、実は「光学」に留まらない広がりを持っています。例えば、音響工学では、音波の集束に使う超音波レンズの設計に同じ公式が応用されます。医療用の超音波診断装置の探触子内部などで使われていますね。
半導体製造の核心技術であるフォトリソグラフィは、まさにレンズ系の極致です。回路パターンを縮小投影するため、巨大で複雑な投影レンズが使われます。ここでは、収差(理想からのズレ)を限りなくゼロに近づけることが求められ、薄肉レンズ公式はその出発点となります。
さらに、電磁波工学やアンテナ設計の分野では、電波を集束させるパラボラアンテナやレンズアンテナの設計思想が、幾何光学と非常に似ています。光の代わりに電波ですが、「焦点」に給電部を置いて平行波を放射する原理は、レンズの考え方そのものです。
薄肉レンズに慣れたら、次は「レンズメーカーの公式」を学ぶのがおすすめです。これはレンズの焦点距離 $f$ を、レンズの曲率半径、厚み、材質の屈折率から計算する式で、$$ \frac{1}{f} = (n-1)\left( \frac{1}{R_1} - \frac{1}{R_2} + \frac{(n-1)d}{n R_1 R_2} \right)$$ と表されます。これが理解できれば、なぜレンズが凸や凹の形をしているのか、材質がどう影響するのかが腑に落ちます。
その次に挑戦したいのは「収差」の理解です。薄肉レンズ公式は理想的な「近軸光線」だけを考えたもの。実際のレンズでは、色による焦点位置のずれ(色収差)や、像の歪み(歪曲収差)などが発生します。高性能カメラレンズが何枚ものレンズを組み合わせているのは、これらの収差を打ち消すためです。シミュレーションツールでパラメータを極端に動かした時に現れる光線のバラつきが、収差の萌芽だとイメージすると良いでしょう。