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高分子流動 / レオロジー

ポリマー粘度・流動解析ツール

Carreau-Yasudaモデルとべき乗則でポリマーの粘度曲線をリアルタイム計算。ゲート圧力損失・冷却時間まで算出し、射出成形CAEの初期検討を支援する。

材料・モデル設定
ポリマープリセット
粘度モデル
モデルパラメータ
ゼロせん断粘度 η₀ (Pa·s)
Pa·s
緩和時間 λ (s)
s
流動指数 n
Yasuda指数 a
ゲート設計パラメータ
ゲート半径 R (mm)
ゲート長 L (mm)
流量 Q (cm³/s)
cm³/s
製品肉厚 t (mm)
計算結果
—
設計点粘度 (Pa·s)
—
ΔP ゲート (MPa)
—
冷却時間 (s)
粘度曲線(log η vs log γ̇)
温度依存性(3材料比較)

溶融温度±40°Cの範囲でゼロせん断粘度のアレニウス依存性(近似)

理論・主要公式

$$\eta = \eta_0\left[1+(\lambda\dot{\gamma})^a\right]^{\frac{n-1}{a}}$$

べき乗則: $\eta = m\,\dot{\gamma}^{n-1}$、$m=\eta_0\lambda^{\,n-1}$(Carreau-Yasuda の高せん断側漸近線)。ゲート圧力損失: $\Delta P = 2L\,\tau_w/R$、$\tau_w=\eta(\dot{\gamma}_w)\,\dot{\gamma}_w$、$\dot{\gamma}_w=\frac{3n+1}{n}\frac{Q}{\pi R^3}$(壁面せん断速度。Carreau-Yasuda では近似)

ポリマー粘度・流動解析とは

🙋
「ポリマーの粘度」って、温度が決まれば一定なのではないんですか?このツールで「粘度曲線」って書いてあるけど。
🎓
大まかに言うと、プラスチックの溶融樹脂は「せん断速度」で粘度が大きく変わるんだ。例えば、ゆっくり混ぜる(低せん断)とドロッとしてて、高速で射出する(高せん断)とサラサラになる。このツールの上のグラフは、その変化をモデルで計算してるんだよ。まず「ポリマープリセット」でHDPEとかPCを選んでみて、グラフがどう変わるか確認してみて。
🙋
え、そうなんですか!確かにPCに変えたらグラフのカーブが変わった…。で、この「Carreau-Yasuda」と「べき乗則」って、どっちを使えばいいんですか?
🎓
実務では広い範囲を正確に捉えたい時にCarreau-Yasudaモデルを使うことが多いね。べき乗則は計算がシンプルで、特に高せん断域の近似に使われる。ツールの「粘度モデル」で切り替えてみて、低せん断速度(グラフ左端)の挙動がどう違うか確認してみよう。Carreau-Yasudaは左端が平らになる(第一ニュートン域)のが特徴だ。
🙋
なるほど!で、下の「ゲート圧力損失」とか「冷却時間」の計算は、この粘度とどう関係してるんですか?
🎓
良いところに気づいたね。金型に樹脂を流し込む「ゲート」ではせん断速度が非常に高くなる。このツールは、君が選んだ粘度曲線から、設計したゲート寸法(半径Rや長さL)と流量Qでの圧力損失をリアルタイムで計算してるんだ。パラメータを動かして、ゲートを細く(Rを小さく)すると、圧力損失がどう跳ね上がるか確認してみて。現場で詰まりトラブルになるのはまさにこの計算ミスなんだ。

よくある質問

べき乗則は高せん断域のみを扱う簡易モデルで、低せん断域の精度は劣ります。Carreau-Yasudaモデルは低せん断から高せん断まで連続的に粘度を計算できるため、ゲート通過時の高せん断からキャビティ内の低せん断までを扱う射出成形解析にはCarreau-Yasudaモデルを推奨します。
η₀は溶融状態のポリマーデータシートに記載されることが多いです。λは粘度低下が始まるせん断速度の逆数(1/γ̇)が目安です。不明な場合は、η₀を実測値、λを0.01〜1秒程度から試し、実機の流動長や圧力損失と合うように調整してください。
主な原因は、樹脂温度や金型温度の実測値と設定値のずれ、または流路断面形状の簡略化です。特にゲート部のせん断発熱による粘度低下を考慮していない場合、圧力損失を過大評価します。また、Yasuda指数aの値を小さくしすぎると遷移が急峻になり、実挙動と乖離する可能性があります。
冷却時間は主に樹脂の熱拡散率、金型温度、製品肉厚に依存します。本ツールでは、選択したプリセットの溶融温度 Tm と熱拡散率 α、金型温度 50°C・取出し温度 100°C(固定)を用いて、板の1次元熱伝導の近似式 t_c≈t²/(π²α)·ln(4/π·(Tm−Tw)/(Te−Tw)) で計算します。肉厚が大きいほど冷却時間は肉厚の2乗に比例して増加するため、設計段階での肉厚均一化が重要です。

実世界での応用

射出成形金型設計:ゲートサイズやキャビティレイアウトを決定する際、このツールのような計算で圧力損失を予測します。圧力損失が大きすぎると成形機の能力不足でショートショット(充填不足)が、小さすぎるとジェッティング(乱流)が発生するため、最適設計に不可欠です。

成形材料の選択・評価:異なるメーカーの同じ材質(例えばPP)でも、添加剤や分子量分布により粘度曲線は異なります。既存金型で新規材料を使用する際、粘度曲線と圧力損失をシミュレーションし、成形可能性を事前検証します。

成形条件の最適化:射出速度(流量Qに相当)を変更した時の、ゲート通過時の粘度と発熱量の変化を推定できます。これにより、焼けや分解を防ぎつつ、最短充填時間を求める条件設定に役立ちます。

CAEソフトウェアの前処理・検証:本格的な3D充填解析を行う前に、代表的なゲートでの圧力損失を簡易計算し、入力した材料データ(Carreau-Yasudaパラメータ)や境界条件が妥当かどうかを手軽にチェックする目的で利用されます。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始める際、特にCAE初心者が陥りがちな落とし穴がいくつかあります。まず一つ目は、「プリセット材料のパラメータは絶対的な定数ではない」という点。例えば「PC」と一口に言っても、メーカーやグレード(高流動、難燃など)によって粘度特性は大きく変わります。ツールのプリセット値はあくまで代表値。実際の成形材料のデータシートにある粘度曲線と見比べて、必要ならλやnを微調整する姿勢が大切です。

二つ目は、ゲート圧力損失計算の前提条件を見落とすこと。計算式は「完全に発達した円形流路内の層流」が前提です。つまり、実際のゲート入口部の絞り込み損失や、金型温度による壁面での固化層(フローズンスキン)の影響は含まれていません。計算値はあくまで理論上の最小圧力損失と考えるべきで、実際には1.5倍から2倍の安全マージンを見込むのが現場の知恵です。

三つ目は、冷却時間計算を過信しないこと。ツールの冷却時間は、一定温度の金型壁面への熱伝導のみに基づいた理論計算です。しかし実成形では、冷却水路の配置や流量、樹脂の結晶化発熱など複雑な要素が関わります。この計算値は「冷却のオーダーを把握する」ための参考値。例えば計算が10秒なら、実際のサイクルタイムは12〜15秒程度になることが多い、といった相関で捉えましょう。

使い方ガイド

  1. 「ポリマープリセット」から HDPE・PP・PA6・PC・PET を選ぶと、Carreau-Yasuda の 4 パラメータ(ゼロせん断粘度 η₀、緩和時間 λ、流動指数 n、Yasuda 指数 a)が代表値に設定されます。「カスタム」またはスライダー・数値欄で自由に変更できます
  2. 「粘度モデル」で Carreau-Yasuda とべき乗則を切り替えます。粘度曲線(10⁻²〜10³ s⁻¹)には両モデルが同時に描かれ、選択中のモデルで設計点が計算されます
  3. ゲート半径 R(0.2〜5 mm)・ゲート長 L・流量 Q(1〜200 cm³/s)を設定すると、壁面せん断速度 γ̇_w=(3n+1)/n·Q/(πR³) における設計点粘度(緑の印)とゲート圧力損失 ΔP=2Lτ_w/R が更新されます
  4. 製品肉厚 t(0.5〜10 mm)を設定すると、プリセットの溶融温度と熱拡散率、金型温度 50°C・取出し温度 100°C を用いた 1 次元冷却時間が表示されます。下のグラフは 3 材料のゼロせん断粘度の温度依存(アレニウス近似)です

具体的な計算例

PA6 プリセット(η₀=1500 Pa·s、λ=0.005 s、n=0.60、a=1.5)を選び、ゲート半径 R=1.3 mm(径 2.6 mm)、ゲート長 L=3 mm、流量 Q=10 cm³/s、肉厚 t=2 mm とします。粘度曲線は γ̇=100 s⁻¹ で約 1,380 Pa·s、1,000 s⁻¹ で約 770 Pa·s と緩やかに低下し、ゲートの壁面せん断速度 γ̇_w≈6,800 s⁻¹ では設計点粘度 ≈366 Pa·s、ゲート圧力損失 ΔP≈11.4 MPa、冷却時間 ≈6.7 s と表示されます。流量を Q=20 cm³/s に倍増すると γ̇_w≈13,500 s⁻¹、粘度 ≈278 Pa·s、ΔP≈17.3 MPa となり、流量 2 倍に対して ΔP は約 1.5 倍(2^n、n=0.6)にしか増えません。

実務での注意点