安全弁設計(API 520) 戻る
流体工学

安全弁・圧力リリーフ弁設計(API 520)

API 520規格に基づき、必要オリフィス面積を計算してAPIオリフィス記号を選定。気体・液体・蒸気の各フェーズに対応し、背圧補正・排出係数を考慮した実務設計ツール。

パラメータ設定
フェーズ 気体/蒸気
設定圧力 P_set
kPa
背圧 P_back
kPa
分子量 MW
g/mol
温度 T
K
必要流量 Q
kg/h
計算結果
必要面積 A (mm²)
APIオリフィス選定
背圧補正係数 Kb
絶対排出圧力 P₁ (kPa)
流量 vs 必要オリフィス面積
APIオリフィス面積一覧(選定結果ハイライト)
記号面積 (mm²)in²適合
可視化
理論・主要公式

$A = \dfrac{W}{C \cdot K_D \cdot P_1 \cdot K_b}\sqrt{\dfrac{TZ}{M}}$

$C = 0.03948\sqrt{k\left(\dfrac{2}{k+1}\right)^{\frac{k+1}{k-1}}}$

■ 液体(API 520 Part I)
$A = \dfrac{Q}{38 K_D K_w K_v K_c}\sqrt{\dfrac{G}{P_1 - P_2}}$

P₁:絶対排出圧力 = P_set × 1.1 + 101.325 [kPa abs]
K_D = 0.65 (液体), 0.975 (気体/蒸気)

安全弁・圧力リリーフ弁設計(API 520)とは

🙋
安全弁の「必要オリフィス面積」って何ですか?弁の大きさを決める数字ですか?
🎓
その通り!大まかに言うと、過剰な圧力がかかった時に、どれだけの量の流体を逃がす穴(オリフィス)が必要かを計算する値だ。例えば、化学プラントの反応器が暴走して圧力が上がりそうな時、この弁が作動して中身を大気に逃がして爆発を防ぐんだ。このシミュレーターの「質量流量 W」のスライダーを動かすと、逃がすべき量が変わるから、必要な穴の大きさがどう変わるか、すぐに体感できるよ。
🙋
え、そうなんですか!でも式に「Kb」とか「Kd」とか係数がたくさんありますね。これらは全部何を補正してるんですか?
🎓
良いところに気が付いたね。実務では、教科書通りの理想的な流れなんてまずないから、様々な「割引係数」を掛けるんだ。「Kd(排出係数)」は弁内部の摩擦などの損失、「Kb(背圧補正係数)」は弁の出口側の圧力が高いと流れにくくなる効果を表す。このツールで「背圧補正係数 Kb」を1.0から0.8くらいに下げてみて。同じ条件でも必要な面積が大きくなる、つまり弁の性能が落ちることが分かるはずだ。
🙋
「気体・蒸気」と「液体」で計算式が大きく異なるみたいです。フェーズ(気体か液体か)でそんなに変わるものなんですか?
🎓
圧倒的に変わるよ!気体は圧縮性があるから、流れるときに密度が大きく変化する。その挙動を記述するのが「比熱比 k」だ。上の「フェーズ」セレクトボックスで「気体・蒸気」と「液体」を切り替えてみて。入力パラメータが大きく変わるだろ?現場で多いのは蒸気用の弁の設計で、ボイラーから過熱蒸気が噴出するようなシナリオをこれでシミュレーションできるんだ。

よくある質問

はい、異なります。気体・蒸気の場合は圧縮性流体の等エントロピー流れを仮定した式を用いますが、液体の場合は非圧縮性流体としてベルヌーイの定理に基づく別の式を使用します。本ツールは流体のフェーズを選択することで自動的に適切な式を適用します。
API 520では、通常の安全弁で0.975、予備弁なしの場合は0.9を推奨しています。ただし、実際の弁メーカーの試験値があればそちらを優先してください。本ツールではデフォルトで0.975が設定されています。
バランスベローズ型安全弁を使用する場合に必要です。背圧が設定圧力の10%を超えると流量が低下するため、K_bで補正します。本ツールでは背圧の入力値に応じてAPI 520の表から自動的にK_bを算出します。
ツールが算出した必要面積以上の最小のAPIオリフィス記号(D, E, F, G, H, J, K, L, M, N, P, Q, R, T)を自動選定します。選定後は、実際の弁メーカーカタログで該当記号の弁が使用可能かご確認ください。

実世界での応用

石油化学プラント:原油の蒸留装置やエチレン製造の高温高圧反応器に設置されます。プロセス異常時の緊急放散を安全に行うために、API 520に基づいた弁選定が法律・規格で義務付けられていることが多いです。

発電所・ボイラー設備:過熱蒸気や再熱蒸気の配管系統に設置されます。タービンへの蒸気供給が止まった場合などにボイラー内の圧力が上昇するため、大量の蒸気を瞬時に大気または復水器に逃がす必要があります。

LNG(液化天然ガス)基地:極低温の液化天然ガスを扱う設備では、熱の侵入による急激な気化(フラッシュ)が起こる可能性があります。この時に発生する大量のガスを安全に処理するためのリリーフ弁設計に適用されます。

製薬・食品工場:殺菌や洗浄用の純蒸気(クリーンスチーム)システムにも小型の安全弁が用いられます。製品への汚染を防ぐため、弁の材質(サニタリー仕様)や排気の処理方法が特に重要になります。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始める際、特に現場経験の浅いエンジニアが陥りがちな落とし穴がいくつかあるんだ。まず第一に、「設定圧力」と「作動圧力」を混同しないこと。ツールに入力する「絶対設定圧力 P1」は、弁が開き始める圧力(設定圧力)に大気圧を足した絶対圧だ。例えば、ゲージ圧で10 bargに設定するなら、P1は約11 baraになる。これを間違えると計算が全て狂うから要注意。

次に、「背圧は常に大気圧」と思い込まないこと。弁の出口が閉鎖系やフレアヘッダーにつながっている場合、背圧は常に変動する。特にバランスベローズ型ではない通常の安全弁では、背圧が上がると弁の開く力が弱まる「バックプレッシャー」の影響を強く受ける。ツールでKbを1.0のままにしておくのは、ほぼ理想状態だけだと思っておこう。

最後に、計算結果の「必要オリフィス面積」そのままの弁は存在しないという点。算出された面積に最も近い、かつそれ以上の流れ能力を持つ標準サイズ(例えばD0.5インチ、D1インチなど)の弁をカタログから選ぶ。ここで「ギリギリ」を選ぶのは禁物。プロセスの変動や将来の増産を見越して、ある程度のマージンを持たせるのが実務の知恵だ。

使い方ガイド

  1. 設定圧力(Pset)をスライダーで入力します。通常、API 520ではゲージ圧で0~35 MPaの範囲を設定します
  2. 背圧(Pback)を指定します。背圧がある場合は補正係数Kbが自動計算され、オリフィス面積が増大します
  3. 流体の分子量(MW)と温度(T)を入力し、気体・液体・蒸気の物性に基づいて排出係数Cを決定します
  4. 計算ボタンを実行すると、必要なオリフィス面積(mm²)と対応するAPI規格サイズが自動選定されます

具体的な計算例

石油化学プラントのプロパン貯蔵タンク(圧力容器)で、設定圧力Pset=1.8 MPa、背圧Pback=0.2 MPa、分子量MW=44(プロパン)、温度T=40°C、排出流量Q=500 kg/hの場合を想定します。API 520計算式:A = Q/(Kd·Kb·C·√(T·M))では、背圧補正係数Kb≈0.88、排出係数C≈0.65が適用され、必要なオリフィス面積は約45~50 mm²となり、API規格J(25.4 mm²)または規格K(38.1 mm²)の組み合わせが選定されます。

実務での注意点

  1. 背圧が設定圧力の50%を超える場合、背補正型(pilot-operated)安全弁の採用を検討してください。標準型ではPback/Pset>0.5で性能低下が生じます
  2. 蒸気の場合、乾き度(品質)x=0.95以上を確認してから計算を実施してください。湿り蒸気では排出係数Cが大幅に減少します
  3. 液体(ガソリン、灯油など)では排出係数C=1.0で固定し、分子量の代わりに密度ρを使用する計算系統に切り替えます
  4. 周囲温度が-30~60°C範囲外の場合、安全弁本体の材質選定(ステンレス鋼、鋳鋼など)を見直してください