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半導体信頼性

ボンディングワイヤ電流容量・溶断シミュレーター

ダイパッドとリードを結ぶボンディングワイヤに電流を流し、ジュール発熱で温度が上がり、溶断電流(Preece則)に近づくと赤熱して溶断する様子をリアルタイムに可視化。線径・材料・電流を変えて電流容量を直感的に理解できます。

パラメータ設定
ワイヤ材料
線径 d
µm
スパン L
mm
通電電流 I
A
周囲温度 T_amb
°C
操作
判定中...
I_fuse = K · d^1.5(Preece則)
R = ρL/A, ΔV = IR
P = I²R, J = I/A
Au K=253, Al K=170, Cu K=280
計算結果(ライブ)
通電電流 I
A
溶断電流 I_fuse
A
溶断限界に対する%
%
温度上昇 ΔT → ワイヤ温度
°C
電流密度 J
A/mm²
抵抗 R
IR電圧降下 ΔV
mV
ジュール発熱 P
mW
通電・ジュール発熱アニメーション

電流(流れる粒子)→ ジュール発熱でワイヤが赤熱 → 溶断電流に達すると溶断。下のバーは温度/溶断限界に対する電流。

電流 vs 溶断電流(材料別 Preece曲線)
理論・主要公式

$$I_{fuse} = K \cdot d^{1.5} \quad (\text{Preece 則})$$

溶断電流 [A]。d:線径 [mm]、K:材料定数(Au≈253, Al≈170, Cu≈280, d は mm)。線径が太いほど溶断電流は1.5乗で急増する。

$$R = \frac{\rho L}{A}, \quad \Delta V = I R, \quad P = I^2 R$$

抵抗 R [Ω]、ρ:抵抗率 [Ω·m]、L:スパン、A=πd²/4:断面積。IR電圧降下 ΔV とジュール発熱 P を生む。

$$J = \frac{I}{A}, \quad \Delta T \approx (T_m - T_{amb})\left(\frac{I}{I_{fuse}}\right)^{2}$$

電流密度 J [A/m²]。温度上昇は電流比の2乗に比例し、I=I_fuse でワイヤ温度が融点 T_m に達して溶断する(簡略な定常熱モデル)。

ボンディングワイヤ電流容量・溶断シミュレーターとは

🙋
半導体チップの中の細いワイヤって、電流を流しすぎると切れるって本当ですか?どのくらいで切れるんですか?
🎓
本当だよ。ボンディングワイヤは髪の毛より細い金属線で、電流を流すと抵抗で発熱する。電流が大きすぎると温度が融点まで上がって「溶断」する。目安はPreece則 I_fuse = K·d^1.5 で、線径dの1.5乗で効く。上のシミュレーターで「通電電流I」を上げていくと、ワイヤがだんだん赤熱して、溶断電流に達するとパチンと切れるのが見えるよ。
🙋
え、赤くなるんですね!線を細くするとどうなりますか?太い方が安心な気がするんですけど…。
🎓
いい直感だね。細いワイヤは断面積が小さいから、同じ電流でも電流密度 J=I/A が跳ね上がる。抵抗 R=ρL/A も大きくなって、発熱は P=I²R で電流の2乗で増える。だから「細線×大電流」プリセットを押すと、25µmどころか15µmの金線がすぐ真っ赤になって溶断するのが分かる。逆に「パワーデバイス」プリセットの300µm太線なら9Aでも余裕がある。
🙋
材料を金からアルミや銅に変えると、溶断電流も変わるんですか?
🎓
変わるよ。Preece定数Kは材料ごとに違って、銅(K≈280)と金(K≈253)は大きく、アルミ(K≈170)は小さい。だから同じ線径ならアルミが一番先に溶断する。下の「材料別Preece曲線」グラフで、線径に対する溶断電流を3材料で比べてみて。動作点(赤い四角)が曲線を超えたら溶断、というのが一目で分かるはずだ。実務では、コストの銅・アルミと、信頼性の金を、電流容量とのバランスで選ぶんだ。

物理モデルと主要な数式

ボンディングワイヤの電流容量を支配するのは「溶断(fusing)」です。電流を流すとジュール発熱でワイヤ温度が上がり、融点に達すると溶けて切れます。定常状態での溶断電流は、経験則であるPreece則で近似されます。

$$ I_{fuse} = K \cdot d^{1.5} $$

ここで $I_{fuse}$ は溶断電流 [A]、$d$ は線径 [mm]、$K$ は材料定数です。線径の1.5乗で効くため、線径を2倍にすると溶断電流は約2.8倍になります。本ツールでは Au $K\approx253$、Al $K\approx170$、Cu $K\approx280$ を用いています(細線ボンディングワイヤの空気中溶断データに整合)。

抵抗・電圧降下・発熱は、断面積 $A=\pi d^2/4$ を介してつながります。

$$ R = \frac{\rho L}{A}, \qquad \Delta V = I R, \qquad P = I^2 R, \qquad J = \frac{I}{A} $$

$\rho$ は抵抗率 [Ω·m]、$L$ はスパン、$\Delta V$ はIR電圧降下、$P$ はジュール発熱、$J$ は電流密度です。温度上昇は簡略な定常熱モデルで $\Delta T \approx (T_m - T_{amb})\,(I/I_{fuse})^2$ とし、$I=I_{fuse}$ でワイヤ温度が融点 $T_m$ に達して溶断します。抵抗は温度係数 $\alpha$ で $R(T)=R_0\,[1+\alpha(T-20)]$ と補正します。

よくある質問

Preece則 I_fuse = K·d^1.5 を用います。d は線径[mm]、K は材料定数(金・銅は大きく、アルミは小さい)です。線径が太いほど溶断電流は線径の1.5乗で急増します。本シミュレーターは Au/Al/Cu のそれぞれについて溶断電流を計算し、流す電流が溶断限界の何%かをリアルタイム表示します。
抵抗は R = ρL/A で決まり、線径が細く長いワイヤほど大きくなります。電流 I を流すと IR 分の電圧降下が生じ、同時に P = I²R のジュール熱でワイヤが発熱します。パワーデバイスでは1本あたり数アンペアを流すため、IR降下と自己発熱が効率と信頼性の両方に影響します。
電流密度 J = I/A は溶断やエレクトロマイグレーションの指標です。連続通電では数百〜数千 A/mm² が上限の目安ですが、許容値は放熱条件・パルス幅・周囲温度で大きく変わります。本ツールでは J を表示し、溶断電流に対する余裕度と合わせて確認できます。
細いワイヤは断面積が小さいため、同じ電流でも電流密度とジュール発熱密度が大きくなります。発熱は P = I²R で電流の2乗に比例し、抵抗も細いほど大きいため、温度上昇は急激です。温度が融点に達するとワイヤは溶断します。シミュレーターで線径を細くするか電流を上げると、赤熱から溶断までの様子が確認できます。

実世界での応用

パワーデバイスモジュール:IGBTやSiCモジュールでは1本のアルミ太線(200〜500µm)に数アンペア〜十数アンペアを流します。溶断電流に対する余裕度と自己発熱を見積もり、複数本の並列ボンディングで電流を分担させて設計します。

サージ・突入電流耐性:電源投入時やショート故障時には定常値の何倍もの電流が瞬間的に流れます。Preece則は定常溶断の目安であり、短時間パルスではOnderdonk式(I²t 耐量)で評価して、ワイヤが「ヒューズ」として機能するか/しないかを設計します。

センサ・微小電流回路:金25µm線などの細線では溶断電流が1A前後と小さいため、想定外の大電流が流れると保護素子より先にワイヤが切れることがあります。電流密度とIR降下を確認して安全側に設計します。

ヒューズワイヤ/保護設計:あえて細いワイヤを過電流保護のヒューズとして使う場合、Preece則で「狙った電流で確実に溶断する」線径・材料を選びます。本ツールで動作点が溶断曲線を超えるかを確認できます。

よくある誤解と注意点

このツールを使うときに気をつけてほしいポイントがいくつかあるよ。まず、「Preece則は定常状態の目安」だということ。Preece則 I_fuse=K·d^1.5 は、電流を流し続けて熱平衡に達したときの溶断電流を与える経験式だ。だから電源投入時の数ミリ秒の突入電流のような短時間パルスには、そのまま当てはめられない。短時間ではOnderdonkのI²t耐量で評価するべきで、定常溶断電流より大きな電流でも一瞬なら耐えられることが多いんだ。

次に、放熱条件で許容電流は大きく変わる。このツールの温度上昇モデルは簡略化したもので、ワイヤの両端パッドへの熱伝導や、封止樹脂・周囲ガスへの放熱を一律に扱っている。実際にはモールド封止品と裸線、あるいはループ高さや隣接ワイヤとの距離で放熱が変わり、同じ線径でも許容電流が2倍違うこともある。本ツールはあくまで相対比較と傾向把握のための一次近似だと考えてほしい。

最後に、「1本で流す」設計を避けること。パワーモジュールで大電流を1本のワイヤに集中させると、溶断余裕が小さいうえ、1本切れた瞬間に残りに電流が集中して連鎖溶断(ドミノ破壊)が起きやすい。実務では複数本を並列にして電流を分担し、各本が溶断限界の50%以下になるよう設計するのが定石だ。シミュレーターで「溶断限界に対する%」を50%以下に保てる線径・本数を探してみよう。

使い方ガイド

  1. ワイヤ材料(Au、Al、Cu)を選び、線径 d [µm] とスパン L [mm] を設定します
  2. 通電電流 I [A] と周囲温度 T_amb [°C] を入力します
  3. アニメーションで電流(青い粒子)が流れ、ジュール発熱でワイヤが赤熱します。電流が溶断電流に達するとワイヤが溶断します
  4. 溶断電流 I_fuse、溶断限界に対する%、温度上昇、電流密度、抵抗、IR降下、ジュール発熱がライブ更新されます。プリセットで安全動作域/溶断間近などを切り替えられます

具体的な計算例

初期値のAlワイヤ(線径25 µm、スパン1.5 mm)の溶断電流は I_fuse = 170 × 0.025^1.5 ≈ 0.67 A です。冷間抵抗は R₀ = ρL/A ≈ 86 mΩ。通電電流 I=0.4 A のとき溶断限界の約60%、温度上昇は (660−25)×0.6² ≈ 225 °C(ワイヤ温度約250 °C)で要注意域です。温度上昇で抵抗が R≈164 mΩ に増えるため、IR降下 ≈ 65 mV、ジュール発熱 ≈ 26 mW となります。線径を75 µmに太くすると I_fuse≈3.5 A に増え、同じ0.4 Aなら余裕十分です。

実務での注意点

  1. Preece則は定常溶断の目安です。突入電流やショート時の短時間パルスにはOnderdonk式(I²t耐量)で評価してください
  2. 放熱条件(モールド封止/裸線、ループ高さ、隣接ワイヤ間隔)で許容電流が2倍程度変わります。本ツールは一次近似です
  3. パワーモジュールでは複数本を並列にして電流を分担し、各本が溶断限界の50%以下になるよう設計してください
  4. 細線(15〜25µm)の金線は溶断電流が1A前後と小さいため、保護素子より先にワイヤが切れないか確認してください