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構造解析

斜張橋ケーブルの張力シミュレーター

斜張橋の床版を主塔から吊り下げる斜めのステイケーブルを設計するツールです。床版荷重・ケーブル角度・長さ・断面積を変えると、ケーブルに生じる張力・水平分力・応力・安全率・弾性伸び・自重サグがリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
床版荷重 W_deck
kN
このステイが支持する床版荷重
ケーブル角度 θ
°
ケーブルの水平からの角度。浅いほど張力が急増
ケーブル長さ L
m
床版と主塔をつなぐケーブルの長さ
ケーブル断面積 A
mm²
鋼ストランド束の有効断面積
計算結果
ケーブル張力 T (kN)
水平分力 (kN)
ケーブル応力 (MPa)
安全率(対1860MPa)
弾性伸び (mm)
自重によるサグ (mm)
斜張橋セグメント — 張力ベクトルの分解

主塔・床版・斜めのステイケーブルを描き、ケーブル張力を鉛直成分(床版荷重を支える)と水平成分(床版を圧縮する)に分解して表示します。ケーブルには自重による緩やかなサグが付きます。

ケーブル張力 vs ケーブル角度
ケーブル応力 vs ケーブル断面積
理論・主要公式

$$T=\frac{W_{deck}}{\sin\theta},\qquad H=T\cos\theta,\qquad \sigma=\frac{T}{A}$$

ケーブル張力 T、水平分力 H、ケーブル応力 σ。W_deck:床版荷重、θ:ケーブル角度、A:断面積。張力は支える荷重を上回り、ケーブル角度 θ が浅くなるほど急激に増大する。

$$\Delta L=\frac{T\,L}{E\,A},\qquad n=\frac{\sigma_u}{\sigma}$$

弾性伸び ΔL と安全率 n。E:鋼の弾性係数(195GPa)、σ_u:ストランド引張強度(1860MPa)。

$$f=\frac{w\,\ell^{2}}{8\,H},\qquad w=\rho\,A\,g$$

自重による放物線サグ f。w:単位長さあたりのケーブル自重、ℓ:水平スパン、ρ:鋼の密度(7850kg/m³)。サグが大きいほどケーブルは見かけ上柔らかく振る舞う。

斜張橋のケーブル張力とは

🙋
斜張橋って、主塔から扇みたいに何本もケーブルが出ているあの橋ですよね。あのケーブル1本1本は、いったい何をしているんですか?
🎓
いい質問だ。斜張橋は、床版(橋を渡る板)を、主塔(パイロン)からまっすぐ伸びる鋼ケーブル=「ステイ」で吊って支えている。ステイ1本の仕事はシンプルで、床版のある一区画分の重さと、そこを通る車の荷重を受け持って、それを主塔からぶら下げているだけなんだ。1本の力学は純粋な静力学で説明できるよ。
🙋
床版の重さを支えるなら、ケーブルの張力はその重さと同じくらいなんですか?
🎓
ここが面白いところでね。ケーブルは斜めに張られているから、床版の重さ(鉛直方向)を支えているのは張力の「鉛直成分」だけなんだ。だから張力 T = W_deck / sin θ で、張力は支える荷重より必ず大きくなる。左で「ケーブル角度」を30°に下げてみて。床版荷重800kNでも張力は1600kN、つまり2倍になる。角度を浅くするほど、張力はどんどん跳ね上がっていくよ。
🙋
じゃあ、主塔の近くの急なケーブルと、橋の真ん中あたりの寝たケーブルでは、ぜんぜん違うんですね。
🎓
そのとおり。主塔近くの急なステイは角度が大きく sin θ も大きいから効率がいい。逆に支間中央へ伸びる長くて浅いステイは sin θ が小さく、同じ床版荷重でも張力が大きく出る。だから外側のステイほど太く強くしないと持たないんだ。グラフ「張力 vs 角度」で角度を15°まで下げると、ほとんど無限大に向かって張力が立ち上がるのが見えるよ。
🙋
張力の水平成分は、どこへ行ってしまうんですか?消えるわけじゃないですよね。
🎓
消えないよ。水平成分 H = T cos θ は、床版に大きな「軸圧縮力」として、そして主塔に水平力として押し込まれる。斜張橋の床版は、実は何本ものステイから水平力を受け取って溜め込む「巨大な圧縮ストラット」なんだ。だから桁も塔も、この累積した水平力にちゃんと耐えられるよう設計しないといけない。下の図で、張力ベクトルが鉛直と水平に分かれる様子を見てごらん。
🙋
最後に、ステイケーブル自体が垂れ下がっているのも気になります。あれは設計上どう扱うんですか?
🎓
ステイは長くて張力もそこそこだから、自分の重さで完全な直線にならず、緩い放物線にたわむ。これがサグだ。サグがあると、ケーブルを引っ張ったときまずサグが伸びてから本来の弾性変形が始まるので、ケーブルは鋼の断面が示すより「少し柔らかく」振る舞う。これをエルンストの等価弾性係数で補正する。大スパンの長いステイほど、この効果が効いてくるんだよ。

よくある質問

ステイケーブルは床版の重さを斜めに吊り上げるため、ケーブル張力の鉛直成分だけが床版荷重を支えます。したがって張力は T = W_deck / sin θ で求まります。W_deck はそのケーブルが受け持つ床版荷重、θ はケーブルの水平からの角度です。sin θ で割るため張力は常に支える荷重より大きくなり、θ が浅くなるほど急激に増大します。例えば床版荷重800kN・角度30°なら張力は800/0.5=1600kNになります。
斜めケーブルの張力には鉛直成分と水平成分があり、水平成分 H = T cos θ は消えてなくなりません。これは橋桁(床版)に大きな軸圧縮力として、また主塔(パイロン)に水平力として伝わります。斜張橋の床版は事実上の巨大な圧縮ストラットであり、各ステイから次々と水平力を受け取って累積するため、桁も塔もこの蓄積した水平力に耐えるよう設計しなければなりません。
ステイケーブルは極めて高応力の鋼であり、ストランドの引張強度(一般に1860MPa)に対して2.0〜2.5程度の余裕ある安全率を確保するのが普通です。これは交通による無数の繰り返し荷重による疲労、腐食、風などの不確定要素をカバーするためです。このツールでは安全率が2.0未満なら不可、2.5未満なら注意、それ以上なら良好と判定します。
ステイケーブルは長く、張力もそれほど高くないため、自重で完全な直線ではなく緩やかな放物線状にたわみます(サグ)。このサグがあると、ケーブルに引張力を加えたときまずサグが伸びてから本来の弾性変形が始まるため、見かけ上は鋼の断面が示すより少し柔らかく振る舞います。この効果はエルンストの等価弾性係数補正で表され、大スパンの長いステイで重要になります。

実世界での応用

長大橋の主構造設計:多々羅大橋やフランスのミヨー橋のような斜張橋では、何十本ものステイケーブルが床版を支えます。設計者は各ステイが受け持つ床版区画の荷重と角度から張力を求め、ストランドの本数(断面積)を決めます。本ツールのような単一ステイの静力学計算は、橋全体の詳細な構造解析モデルを組む前の概算や、解析結果のサニティチェックに使われます。

ケーブルの架設・調整:斜張橋は架設時にケーブル張力を1本ずつ調整して、床版が設計通りの形状(キャンバー)になるよう追い込みます。各ステイの張力・伸び・サグを把握しておくことは、ジャッキで導入する初期張力を決めるうえで欠かせません。完成後も定期的にケーブル張力を計測し、設計値からのずれを監視します。

主塔・桁への水平力の集約:各ステイの水平分力は床版に圧縮力として、主塔に水平力として累積します。床版を「圧縮ストラット」として、主塔を「水平力に耐える柱」として設計する際、本ツールで1本ずつの水平分力を足し合わせることで、桁や塔が受ける総水平力の見当をつけられます。これは座屈や塔の曲げ設計に直結します。

疲労・耐久性の検討:ステイケーブルは交通荷重による無数の応力変動を受けます。本ツールで定常時の応力レベルと安全率を確認しておけば、変動応力幅が疲労限度に対してどの程度かを評価する出発点になります。実務では定着部(アンカレッジ)の応力集中や、防食・防振対策と合わせて総合的に耐久性を検討します。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「ケーブル張力は支える荷重と同じくらいだ」という思い込みです。ステイは斜めに張られているため、床版荷重を支えるのは張力の鉛直成分 T sin θ だけです。張力そのものは T = W_deck / sin θ で、支える荷重より必ず大きく、しかもケーブル角度が浅くなるほど急激に増大します。15°のような浅いステイでは張力が荷重の3〜4倍になることもあります。「軽い荷重だから細いケーブルで足りる」と角度を考えずに判断すると、応力過大で危険な設計になります。

次に、「水平分力は床版や主塔に関係ない」という誤解です。水平分力 H = T cos θ は消えず、床版に軸圧縮力として、主塔に水平力として伝わります。斜張橋の床版は何本ものステイの水平分力を受け取って累積する巨大な圧縮ストラットであり、この軸力を無視すると床版の座屈照査が成り立ちません。ケーブル単体の張力だけ見て満足せず、必ず床版・主塔への水平力の流れまで追ってください。

最後に、「ケーブルは弾性係数どおりにまっすぐ伸びる」という単純化です。実際のステイは自重でサグ(放物線状のたわみ)を持ち、引張時にはまずこのサグが伸びてから弾性変形が始まります。その結果、ケーブルは公称の弾性係数 E より小さい等価弾性係数で振る舞います(エルンスト補正)。短いステイでは無視できますが、大スパン橋の長く張力の低いステイでは、この見かけの柔らかさが床版のたわみや橋全体の挙動に効いてきます。長いステイを直線バネとして扱う近似には注意が必要です。