結晶格子変形シミュレーター 戻る
材料・破壊

結晶格子変形シミュレーター

スプリング-質点モデルで金属結晶の格子変形を可視化。ひずみ・格子タイプ・欠陥を操作し、弾性変形から転位核生成・塑性変形までリアルタイムでシミュレート。

印加ひずみ ε
弾性域塑性域
表示オプション
欠陥操作
原子数
欠陥数
0
最大応力
変形状態
弾性
Display
B/S/-
理論メモ
L-J ポテンシャル:
$$V(r) = 4\varepsilon\left[\left(\frac{\sigma}{r}\right)^{12}- \left(\frac{\sigma}{r}\right)^{6}\right]$$ 力:$F = -dV/dr$

Verlet積分:
$$x_{n+1}= 2x_n - x_{n-1}+ \frac{F_n}{m}\Delta t^2$$
可視化
応力:
低→高
理論・主要公式

ペアポテンシャル(Lennard-Jones):

$$V(r) = 4\varepsilon\left[\left(\frac{\sigma}{r}\right)^{12} - \left(\frac{\sigma}{r}\right)^{6}\right]$$

線形弾性域の応力(フックの法則):$\sigma = E\,\varepsilon$

転位密度 $\rho$ と降伏応力(Taylor則):$\sigma_y \approx \sigma_0 + M\alpha G b \sqrt{\rho}$

$\varepsilon$:ポテンシャル深さ、$r$:原子間距離、$G$:せん断弾性率、$b$:バーガースベクトル

結晶格子変形シミュレーターとは

🙋
このシミュレーターで「格子タイプ」を変えると、何が変わるんですか?FCCとかBCCって何が違うの?
🎓
大まかに言うと、原子の並び方(結晶構造)が変わるんだ。例えばFCC(面心立方格子)はアルミニウムや銅、BCC(体心立方格子)は鉄(常温)の構造だよ。上の「格子タイプ」スライダーを動かすと、原子の配列が変わるのがすぐに見える。FCCは押しつぶしに強く、BCCはねじれに強い、といった特性の違いが生まれるんだ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、引っ張ったり押したりすると、どうやって「弾性」と「塑性」に分かれるんですか?シミュレーターで見分けるコツは?
🎓
シミュレーターの右側に力を加えてみて。小さな力なら、原子間のバネが伸び縮みするだけ(弾性変形)。力を除けば元の格子に戻る。でも、力を大きくしていくと…ほら、原子の列に「段差」ができて動き始めるだろ?これが転位の動きで、これが起きると力を除いても元に戻らない。これが塑性変形だ。パラメータで「欠陥」を入れると、もっと転位が生まれやすくなるよ。
🙋
転位って、実際の金属の「変形しやすさ」と関係あるんですか?例えば、自動車の鋼板の強度を決めるのに関係してる?
🎓
大いに関係ある!実務では、転位が動きにくい材料を作ることが高強度化のカギなんだ。例えば、自動車用高張力鋼板は、炭化物などの微細な粒子を散りばめて転位の動きをジャマする(ピン止めする)。シミュレーターで「欠陥」密度を上げて引っ張ってみて。転位が動きづらくなって、より大きな力(=高い強度)が必要になるのが体感できるはずだよ。

物理モデルと主要な数式

原子間の相互作用をモデル化した「レナード・ジョーンズ・ポテンシャル」です。近づきすぎると強い斥力が、離れると引力が働き、ある距離で釣り合います。

$$ V(r) = 4\varepsilon\left[\left(\frac{\sigma}{r}\right)^{12}- \left(\frac{\sigma}{r}\right)^{6}\right] $$

$V(r)$: ポテンシャルエネルギー, $r$: 原子間距離, $\varepsilon$: ポテンシャルの深さ(結合エネルギー), $\sigma$: 原子間力がゼロになる距離。右側の$r^{-12}$項が近距離斥力、$r^{-6}$項が引力を表します。

各原子の運動は、このポテンシャルから求まる力$F_n$を用いた「ベルレー法(速度ベルレー法)」で時間発展させています。

$$ x_{n+1}= 2x_n - x_{n-1}+ \frac{F_n}{m}\Delta t^2 $$

$x_{n+1}$: 次の時間ステップの位置, $x_n$: 現在の位置, $x_{n-1}$: 前のステップの位置, $F_n$: 現在の原子に働く合力, $m$: 原子の質量, $\Delta t$: 時間ステップ幅。この式で原子の動きを逐次計算しています。

よくある質問

ひずみを大きくかけすぎると、原子間の結合が切れて転位が核生成したり、局所的に融解が起きることがあります。これは現実の塑性変形や破壊の初期過程に対応しており、シミュレーションの正しい挙動です。ひずみを小さくすると弾性変形に戻ります。
FCC(面心立方)はすべり系が多く、延性を示しやすいです。BCC(体心立方)は降伏応力が高く、脆性的な挙動が出やすい傾向があります。シミュレーター上で同じひずみを加えて比較すると、転位の発生パターンや応力-ひずみ曲線の違いがリアルタイムで確認できます。
空孔を入れるとその周辺で原子が緩和し、局所的なひずみ集中が起こります。転位を初期配置すると、外部ひずみに対して転位が移動・増殖する様子が見え、降伏応力が低下するなど現実の材料強度低下を再現できます。
時間ステップは通常0.001~0.005(無次元化単位)が安定です。大きくしすぎるとエネルギーが発散します。原子数は100~500程度が推奨で、多すぎると計算が重くなります。まずはデフォルト値で試し、挙動を確認しながら調整してください。

実世界での応用

材料設計:自動車の軽量化に不可欠な高張力鋼板の開発では、転位の動きを抑制する微細な析出物の最適配置を、このような原子スケールのシミュレーションで予測します。これにより、強度と加工性を両立させた新材料を効率的に設計できます。

金属加工プロセスの最適化:鍛造や圧延などの塑性加工では、材料内部で無数の転位が発生・移動します。シミュレーションで変形挙動を予測することで、割れやひずみの発生を抑え、均一な製品を得るための加工条件(温度、速度、変形量)を決定します。

半導体デバイスの信頼性評価:シリコン結晶中では転位が電気的特性を劣化させます。微細な配線や薄膜に生じる応力による転位の発生・伝播をシミュレーションで評価し、デバイスの長期信頼性を向上させる設計に役立てています。

疲労破壊のメカニズム解明:航空機エンジン部品など繰り返し荷重を受ける部材では、転位の集積から微細なき裂が発生し、疲労破壊に至ります。その初期過程を原子レベルで可視化・理解することで、より耐久性の高い材料開発の指針が得られます。

よくある誤解と注意点

まず、このシミュレーターは「原子そのもの」を完全に再現しているわけではない、という点を押さえておこう。あくまで「原子間の結合をバネで近似したモデル」だ。例えば、実際の金属では温度が上がると原子の熱振動が激しくなり、転位が動きやすくなる(加工が楽になる)けど、このツールでは温度の影響は直接は考慮されていない。あのバネ定数やポテンシャルが、暗黙的に「ある一定温度での挙動」を表していると思ってね。

次に、パラメータ設定で「欠陥密度」を上げると、必ず強度が上がると思いがちだ。確かに転位の動きは阻害されるけど、欠陥が多すぎると逆に材料は脆くなる。現実の材料設計でも、析出物を入れすぎると割れの起点になってしまうんだ。シミュレーターでも、欠陥を極端に多くして引っ張ると、転位が動かずに別の場所からいきなり破断が始まる様子が観察できるはずだよ。強度と靭性のトレードオフを体感する良い例だ。

最後に、シミュレーションの「スケール」を意識しよう。ここで見ているのはナノ〜ミクロンの世界。自動車のボンネット一枚の変形を予測するには、この結果を「どう積み上げてマクロな挙動にするか」が次の大きな課題になる。このツールはその第一歩、「変形の根源的なメカニズム」を学ぶためのものだと理解しておくことが大事だ。

使い方ガイド

  1. strainValNumまたはstrainSliderで歪み値を0~0.3の範囲で入力・調整する。FCC構造またはBCC構造を選択してシミュレーション開始
  2. showBondsチェックボックスで原子間結合を可視化し、結晶構造の変形過程を観察する
  3. showStressとshowDispを有効化してVon Mises応力分布と変位ベクトル場をリアルタイムで確認し、転位核生成位置を特定する

具体的な計算例

アルミニウム(FCC、格子定数a=4.05Å)に歪み値0.15を加えた場合:初期原子配置から約600個の原子モデルで計算。弾性変形領域では等方弾性率μ=26GPa相当の応答を示し、最大主応力が約3.9GPaに達する。歪み値0.25を超えると格子欠陥が核生成され、特定スリップシステム({111}面,<110>方向)で転位が進展。変位場の不連続性が明確に現れ、塑性ひずみが蓄積される

実務での注意点