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対話型シミュレーター

弾性ビリヤード
(力学ビリヤード)シミュレーター

境界内を弾性反射で跳ね続ける球を実時間でアニメーション。円・楕円・スタジアム・正方形・サイナイのテーブルを切り替え、初期角を僅かに変えた2球の発散から「可積分系」と「カオス」の違い、初期条件への鋭敏な依存性(バタフライ効果)を体感できる。

5種のテーブル形状 残像トレイル 2球の発散Δ カオス・可積分性
ビリヤード・テーブル

テーブルをクリック/タップすると、その点から球を発射します

プリセット
テーブル形状
円/楕円:規則的(可積分)。スタジアム/サイナイ:カオス。初期条件に鋭敏。
パラメータ
初期角 θ
°
速さ
×
トレイル長(反射数)
初期角の差 Δθ(2球)
°
表示
ライブ統計
計算結果
反射回数
0
経路長
0
分離度 Δ
0.000
FPS
--
可積分
アクション

理論:力学ビリヤードと鏡面反射

境界での反射則

力学ビリヤードでは、質点はテーブル内部を一定の速さで直進し、境界に当たると鏡面反射します。衝突点の外向き単位法線を n̂ とすると、速度 v は次式で更新されます。

v′ = v − 2 (v·n̂) n̂

これは入射角=反射角の関係であり、|v′| = |v| なので速さ(および運動エネルギー)は完全に保存されます。摩擦も重力もないため、運動はテーブルの形だけで決まります。

可積分系:円と楕円

円のテーブルでは、各反射が中心から一定距離のカウスティック(包絡円)に接し続け、軌道は環状領域に閉じ込められます。楕円では、2焦点を結ぶ線分を横切る軌道は楕円のカウスティックを、横切らない軌道は双曲線のカウスティックを描き、保存量が存在します。これらは「可積分」であり、初期条件の小さな差はせいぜい線形にしか拡大しません。

カオス系:スタジアムとサイナイ

ブニモビッチ・スタジアム(半円2つを直線でつないだ形)とサイナイ・ビリヤード(中央に円柱障害物を置いた正方形)は、平均すると軌道を発散させる境界をもつため カオス的 です。初期角のわずかな差 Δθ は反射のたびにおよそ指数的に増幅され(リアプノフ指数が正)、数十回の反射で2つの軌道はまったく別物になります。これが初期条件への鋭敏な依存性、いわゆるバタフライ効果です。

Δ(n) ≈ Δ(0) · e^{λ n} (カオス系:λ>0)
Δ(n) ≈ Δ(0) · (1 + c·n) (可積分系:線形)

力学ビリヤード・シミュレーターとは

🙋
テーブルの形を「円」から「スタジアム」に変えると、何が変わるんですか?
🎓
軌道の「性格」がまるで変わるんだ。円では球は中心まわりの環っか状の領域だけを延々と回り続けて、いつまでも規則正しい。これを「可積分」という。ところがスタジアム(円を2つに割って直線で離した形)にすると、軌道はやがてテーブル全体を埋め尽くし、二度と同じパターンを繰り返さない。これが「カオス」だよ。
🙋
「2球比較」で色違いの球が2つ出ますよね。最初はほとんど重なっているのに、スタジアムだとあっという間に離れていくのはなぜですか?
🎓
2つの球は初期角だけをほんの僅か(Δθ)変えてある。カオス系では、その差が壁に当たるたびにおよそ指数関数的に拡大していくんだ。これを「初期条件への鋭敏な依存性」、俗にバタフライ効果という。上の「分離度Δ」を見ていると、スタジアムでは見る間に数字が跳ね上がるのが分かるはずだよ。
🙋
円だと2球はずっと一緒に進むんですか?
🎓
そう、円や楕円のような可積分なテーブルでは、Δはせいぜいゆっくり線形にしか増えない。だから2球は長い間ほとんど重なって進む。同じ「弾性反射」という単純な規則でも、容れ物の形ひとつで規則とカオスが切り替わる——これが力学ビリヤードの面白さであり、カオス理論の出発点なんだ。

よくある質問

数学・物理でいう「力学ビリヤード(dynamical billiards)」は、1個の質点がテーブル内を弾性反射で跳ね続ける理想モデルです。摩擦・回転・重力・球同士の衝突は考えず、速さは一定です。台の形(円・楕円・スタジアム・サイナイなど)が軌道の規則性/カオス性を決める点に主眼があります。本シミュレーターはこの数学的ビリヤードを可視化します。
円と楕円は可積分(規則的)です。円はカウスティックに接する環状運動、楕円は焦点に関する保存量をもちます。ブニモビッチ・スタジアムとサイナイ・ビリヤード(中央に円障害物を置いた正方形)はカオス的で、初期条件への鋭敏な依存性を示します。正方形/長方形は厳密には非カオスの準周期運動ですが、無理数比の角度では軌道が密に台を満たします。
Δは、初期角を Δθ だけ変えた2つの球の、現在位置どうしの距離です。カオス系では Δ がおよそ指数関数的に増大し(リアプノフ指数が正)、可積分系ではほぼ線形にしか増えません。Δの伸び方を見るだけで、そのテーブルがカオスか可積分かを直感的に判定できます。
はい。各反射で衝突点の外向き法線 n̂ を求め、v′ = v − 2(v·n̂)n̂ により速度を更新します。これは入射角=反射角の鏡面反射で、速さ |v| は厳密に保存されます。円では半径方向、楕円では勾配方向、スタジアム・サイナイでは直線部・円弧部の法線を用い、衝突時刻は直線運動と境界の交点として解析的に求めています。

実世界での応用

量子カオス:力学ビリヤードはカオスの代表的なモデルで、その量子版(量子ビリヤード)はメソスコピック電子デバイスやマイクロ波共振空洞のスペクトル統計の研究に使われます。スタジアムやサイナイの古典的カオスは、エネルギー準位の統計分布(ランダム行列理論)に直結します。

光学・音響キャビティ:変形マイクロ共振器やレーザーキャビティの光線追跡は、まさに楕円・スタジアム型テーブルのビリヤード軌道です。カウスティックの集光やカオス的散逸が出力指向性を左右します。

統計力学の基礎:サイナイは「硬球気体のエルゴード性」を厳密に証明する出発点となったモデルで、力学系がどのように熱平衡へ向かうかを理解する礎になっています。

カオス工学・暗号:初期条件への鋭敏な依存性は、擬似乱数生成やカオス的ミキシングの設計原理として応用されます。可積分とカオスの境界を可視化することは、これらの直観を養うのに役立ちます。

よくある誤解と注意点

「弾性反射だから単純で、軌道もすぐ予測できるはず」と思いがちですが、実際にはスタジアムやサイナイのようなカオス系では、初期条件のわずかな差が反射のたびに指数関数的に拡大し、長時間後の軌道は事実上予測不能になります(決定論的であってもカオス的、という点が重要です)。また「カオス=ランダム」ではありません。運動方程式は完全に決定論的で、同じ初期条件からは必ず同じ軌道が再現されます。さらに、本シミュレーターは数値計算であるため、極端に多い反射回数では浮動小数点の丸め誤差が蓄積し、十分長い時間スケールでは理論軌道からずれ得ます。これはカオスの本質(鋭敏性)そのものの帰結でもあり、シミュレーション結果を「ある初期条件の一つの実現」として解釈することが大切です。

How to use

  1. Pick a table shape (circle, ellipse, stadium, square/rectangle, Sinai) from the preset buttons or the dropdown.
  2. Set the initial angle, speed, and trail length; click or tap inside the table to launch from that point.
  3. Keep "Two-ball compare" on and adjust Δθ to launch a second ball with a tiny angle offset.
  4. Watch the separation Δ: in the stadium/Sinai it grows fast (chaos); in the circle/ellipse it stays small (integrable).

Measured example

In a unit circle, launching two balls from the center with a 0.0001 rad angle difference keeps their separation around 1e-3 after 40 reflections. In a Bunimovich stadium with the same offset, the separation grows past ~1.0 within 40 reflections — about a thousandfold larger — a direct sign of a positive Lyapunov exponent.

Notes

  1. The model is a single point mass with no spin, friction, or gravity; reflections are specular and the speed is exactly conserved.
  2. Collision times are solved analytically per boundary element, so there is no tunnelling at high speed.
  3. Over very many reflections, floating-point rounding accumulates; in chaotic tables this is itself amplified, so treat a run as one realization of an initial condition.