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振動解析

周波数応答関数(FRF)計算

固有周波数と減衰比を入力してFRFのボード線図をリアルタイム描画。共振周波数・Q値・半値幅・動的増幅率を自動計算。2次モードを追加して多自由度系も確認できる。

1次モードパラメータ
固有周波数 fn₁50 Hz
減衰比 ζ₁3.0 %
質量 m₁10.0 kg
2次モードを追加
計算結果(1次モード)
共振周波数 fr (Hz)
Q値(品質係数)
半値幅 Δf (Hz)
動的増幅率 DAF
最大レセプタンス (μm/N)
剛性 k (kN/m)

伝達関数(レセプタンス)

$H(\omega) = \dfrac{1/k}{1 - r^2 + 2j\zeta r}$


$r = \omega/\omega_n,\quad |H| = \dfrac{1/k}{\sqrt{(1-r^2)^2+(2\zeta r)^2}}$

ボード線図 — 振幅(レセプタンス |H|)
ボード線図 — 位相 (°)

周波数応答関数(FRF)計算とは

🧑‍🎓
周波数応答関数って何ですか?振動の教科書で見たけど、具体的に何がわかるんですか?
🎓
ざっくり言うと、構造物に力を加えた時に、どれくらい揺れるかを周波数ごとに表した「振動の特性表」みたいなものだよ。例えば自動車のエンジンが特定の回転数でガタガタ振動するのは、その周波数でFRFの振幅が大きい、つまり共振しているからなんだ。このシミュレーターでは、上のスライダーで「固有周波数」や「減衰比」を変えると、グラフの共振ピークの位置や鋭さがどう変わるか、すぐに確認できるよ。
🧑‍🎓
え、そうなんですか!「減衰比」のスライダーを動かすと、グラフの山の形が変わりました。これが「Q値」とか「半値幅」ってやつですか?
🎓
その通り!減衰比ζ(ゼータ)を小さくすると、共振ピークが鋭く高くなるだろ?これがQ値が大きい状態で、エネルギーが溜まりやすいんだ。逆にζを大きくすると山が低く丸くなる。現場でよく使うのが「半値幅」で、ピークの高さの半分の幅を測ることで、実験データから減衰の大きさを逆算できるんだ。シミュレーターでζを0.01と0.1で比べてみると、その違いが一目瞭然だよ。
🧑‍🎓
2自由度系に切り替えると、グラフに山が二つできますね。これは実務ではどんな現象に対応するんですか?
🎓
現実の構造物は多くの共振モードを持つから、2自由度はその一番簡単なモデルだね。例えば、車体とサスペンションのように、二つの部分がばねで結合された系を想像してごらん。「質量比」のパラメータを変えると、二つの共振ピークの大きさのバランスが変わってくる。これがモードの「関与」の大きさを表していて、CAEでモード解析する時の基礎的な感覚を養えるんだ。

物理モデルと主要な数式

1自由度の質量-ばね-ダンパ系の運動方程式です。外力 $f(t)$ に対する変位 $x(t)$ の応答を表します。

$$ m\ddot{x}(t) + c\dot{x}(t) + kx(t) = f(t) $$

$m$: 質量 [kg], $c$: 減衰係数 [Ns/m], $k$: ばね定数 [N/m], $f$: 外力 [N]

上の運動方程式をフーリエ変換し、周波数領域での入力(力)と出力(変位)の比を取ったものが周波数応答関数(レセプタンス)$H(\omega)$ です。

$$ H(\omega) = \frac{X(\omega)}{F(\omega)}= \frac{1/k}{1 - r^2 + 2j\zeta r}$$

ここで、$r = \omega/\omega_n$ (周波数比), $\omega_n = \sqrt{k/m}$ (固有角周波数), $\zeta = c/(2\sqrt{mk})$ (減衰比), $j$: 虚数単位。この式の絶対値が振幅、偏角が位相遅れを表し、シミュレーターのボード線図で可視化されています。

実世界での応用

構造物の振動試験:ハンマーやシェーカーで構造物を叩き、加速度計と力センサで実測したFRFから、固有周波数、減衰比、モード形状を同定します。航空機や橋梁の健全性診断に不可欠です。

回転機械の振動解析:タービンやモータなどの回転機械では、回転数(周波数)に応じた振動を常時監視します。FRFを用いて、特定の回転数で共振が起きないように設計段階で対策を講じます。

電子回路のフィルタ設計:機械系と電気系はアナロジー(類似性)があります。機械のFRFは、電気回路の周波数伝達特性(フィルタの特性)を理解するのにも役立ち、カットオフ周波数や鋭さ(Q値)の設計に応用されます。

自動車の乗り心地(NVH)評価:エンジンや路面からの振動が車室内にどう伝わるかをFRFで評価します。サスペンションやボディ剛性の設計は、不快な共振周波数を避け、振動を低減するためにFRFデータを多用します。

よくある誤解と注意点

まず、「FRFは1つだけ」と思い込まないで。実は入力と出力の組み合わせで、変位/力(レセプタンス)、速度/力(モビリタンス)、加速度/力(インアクセラランス)など、複数のFRFが定義されます。シミュレーターで見ているのは変位ベースの「レセプタンス」です。例えば振動試験で加速度計を使う場合はインアクセラランスを扱うことになり、低周波数域ではノイズが目立つなど特性が異なります。次に、減衰比ζと共振ピークの高さは単純な比例関係ではないこと。ζが0.1から0.2に倍増しても、ピークの高さは半分より少し大きめに減衰します。具体的に、ζ=0.01の時のピーク振幅は約50(1/(2ζ))、ζ=0.1では約5になります。最後に、2自由度系の「質量比」や「結合ばね」の設定は慎重に。例えば質量比を極端に大きく(例:m2/m1=100)すると、低い方の共振モードはほぼ小さい質量(m1)だけが振動する「局部振動」状態になり、高い方のモードでは二つの質量が逆位相で振動します。実務でパラメータを設定する時は、想定する物理的な部材の質量と剛性をしっかり見積もらないと、実際とは全く異なるモードを解析してしまう落とし穴があります。

関連する工学分野

このFRFの考え方は、音響工学にそのまま応用できます。スピーカーのユニットやヘッドホンの振動板は、まさに機械的な振動系。そのFRF(この場合は音圧/入力電圧)を測定・設計することで、フラットな周波数特性や低音の増強を実現しています。また、制御工学とは切っても切れない関係です。ロボットアームの位置制御や工作機械のサーボ制御では、「プラント」(制御対象)のFRFを同定し、それに基づいてフィードバック制御器のパラメータ(ゲインや位相補償)を設計します。共振ピークの近くで位相が急激に回ることは、制御系の不安定性(発振)の原因になるため、特に注意が必要です。さらに、材料力学の分野では、複合材料や粘弾性材料の動的特性評価にFRF測定が使われます。例えば、振動子に材料試料を取り付けてFRFを測り、その共振周波数と減衰の変化から材料の複素弾性率(貯蔵弾性率と損失弾性率)を算出するのです。このように、一見シンプルな1自由度モデルが、多岐にわたる工学分野の「共通言語」として機能しています。

発展的な学習のために

まず次のステップは、「モード解析」と「モード座標」の概念を理解することです。2自由度のFRFに二つの山が現れた理由は、系が二つの「モード」(特定の周波数で起こる、質量間の定まった振動パターン)を持つから。この各モードは、あたかも独立した1自由度系のように振る舞います。つまり、複雑な多自由度系のFRFも、実は複数の1自由度系FRFの重ね合わせ(線形和)として表現できるのです。これを理解する鍵が「モード座標への変換」です。数学的には、運動方程式を行列の固有値問題として解くことになります。質量行列と剛性行列から固有値(固有周波数の二乗)と固有ベクトル(モード形状)を求め、これを用いて連立方程式を解く代わりに、独立な方程式のセットに分解します。シミュレーターで質量比やばね定数を変えて二つのピークがどう動くか観察した後は、ぜひ教科書でこの行列による定式化を追ってみてください。それが理解できれば、CAEソフトウェアが出力する「モード別寄与率」の意味も深く理解できるようになり、実務での振動トラブルシューティングや設計改良が格段に進められるようになります。