2つの振動を直交させると何が見える?周波数比・位相差・減衰を操作して、オシロスコープに現れる数学的な美しさを体験しよう。
シミュレーターの中身は、2つの独立な減衰調和振動子です。軌跡点の水平方向(X)と垂直方向(Y)の位置は、サイン波と指数減衰項を組み合わせた次の式で表されます。
$$x(t) = A_x e^{-d_x t}\sin(2\pi f_x t + \varphi)$$ $$y(t) = A_y e^{-d_y t}\sin(2\pi f_y t)$$変数の意味:
$A_x, A_y$:初期振幅(揺れの大きさ)。
$f_x, f_y$:周波数(1秒あたりのサイクル数)。
$d_x, d_y$:減衰係数(運動が減衰する速さ)。
$\varphi$:位相差(XとYの振動の時間的なずれ)。
$t$:時間。
得られる図形は $y(t)$ を $x(t)$ に対してプロットしたパラメトリック曲線です。周波数比 $f_x : f_y$ が有理数(例:3:2)で減衰がゼロの場合に限り、図形は閉じて周期的に繰り返します。位相差 $\varphi$ はパターンの「回転」や向きを制御します。
$$ \frac{f_x}{f_y}= \frac{m}{n}\quad \text{(安定した閉曲線の条件)} $$ここで $m$ と $n$ は整数です。1:1($m=n$)の比は楕円を、2:3の比はより複雑なループ状の図形を生み出します。減衰がある場合、図形は閉じずに内側へと螺旋を描いていきます。
アナログオシロスコープの校正:デジタルオシロスコープが普及する前、技術者は未知の周波数を測定するためにリサジュー図形を活用していました。既知の周波数を一方のチャンネルに、未知の信号をもう一方に入力し、現れる図形の形から周波数比を読み取ります。安定した円が描かれれば、両者の周波数が完全に一致しているという意味です。
機械振動解析:CAEでは、互いに直交する2方向の振動をシミュレートすることが重要です。たとえばタービンブレードの振動解析ではリサジュー的なパターンが現れ、その形状から異なる平面内の振動が同期しているかどうかが分かり、疲労や破壊の予兆を予測できます。
レーザー光線によるライトショー:レーザーディスプレイの幻想的な模様は、直交配置されたミラーを精密に振動させて作られていることが多いです。ミラーの周波数と位相を調整することで(本シミュレーターのスライダーと同じ要領で)、単純な渦巻きから蝶のような複雑な図形まで、さまざまなパターンを生み出せます。
電気信号の位相比較:交流回路の解析では、電圧と電流の位相差を比較することが極めて重要です。X-Yプロットで両者を表示すると、リサジュー楕円が描かれます。楕円の傾きや形状から直接位相差が読み取れ、力率に関する問題の診断に役立ちます。
まず、周波数比が単純な整数比に限られると思い込まないでください。1:2や3:4のような比は確かに美しく閉じた図形を生みますが、1:√2のような無理数比では図形は決して閉じず、時間とともに描画領域全体を徐々に埋め尽くしていきます。これは「準周期運動」と呼ばれ、現実世界の非調和振動の解析で重要になります。次に、「位相差」の解釈にも注意が必要です。位相差 φ は y 方向の振動に対する x 方向の「進み」と説明されることが多いですが、本ツールの数式モデルでは「x 方向の振動に φ が加算される」形を採用しています。この定義の違いを意識せずに文献を読むと混乱の原因になるので、実務ではどちらの定義が使われているかを必ず確認してください。
パラメータ設定のコツとしては、「描画点数」と「シミュレーション時間」のバランスに注目しましょう。描画点数を最大にしても、シミュレーション時間が短すぎれば図形は完結しません。逆に、減衰モードで長時間シミュレートすると図形が中心の1点に収束し、見えなくなってしまいます。たとえば 5:4 のような少し複雑な比では、図形が閉じるまでの時間(2つの振動の最小公倍数)が長くなるため、十分なシミュレーション時間を確保する必要があります。最後に、振幅 Ax と Ay は図形の「見かけの大きさ」だけでなく「形状」にも影響します。特に減衰係数 dx と dy が非対称な場合、振幅の違いが螺旋の引き込まれ方に劇的な影響を与えます。両者を組み合わせて調整してみてください。
リサジュー図形シミュレーター — 振動合成とパターンは、工学と応用物理における基礎的なテーマです。このインタラクティブなシミュレーターでは、パラメータを直接操作してリアルタイムに結果を観察することで、主要な振る舞いと関係性を直感的に探究できます。
数値計算と視覚的なフィードバックを組み合わせることで、抽象的な理論と物理的な直感のあいだの溝を埋めます。学生にとっては効果的な学習ツールとなり、現役のエンジニアにとっては素早く検証を行うためのツールになります。
Fx=3 Hz、Fy=2 Hz、位相=45°、振幅比=1.0、減衰=0 と設定します。3:2 の周波数比により、6 つのローブを持つ古典的なリサジュー曲線が描かれます。位相を 90° にすると図形は傾いた楕円に変わります。減衰=0.08(振り子+ダンパー系で典型的な値)を加えると、外側の軌跡は 8〜10 周期かけて徐々に内側へ螺旋を描き、中心付近の小さなループに収束します。これは免震ダンパーや制振装置など、現実の機械系における調和振動の減衰挙動を模倣しています。