薄膜・メンブレン応力解析 戻る
構造解析・殻理論

薄膜・メンブレン応力解析シミュレーター

内圧を受ける球殻・円筒殻・円錐殻の経線応力 σφ と周応力 σθ をラプラス・ヤング方程式に基づきリアルタイム計算。Von Mises 応力・安全率を算出し、圧力容器・タンクの板厚設計に活用できます。

形状選択

設計パラメータ

経線応力 σφ (MPa)
周応力 σθ (MPa)
Von Mises σvm (MPa)
安全率 SF
最小板厚 t_min (mm)
R/t 比

断面図と応力の向きを模式的に表示。青矢印 = 経線応力 σφ、赤矢印 = 周応力 σθ。

内圧 p を変化させた際の σφ・σθ・σvm の変化(現在の R, t, 形状で計算)。

板厚 t を変化させた際の安全率 SF の変化(現在の R, p で計算)。横点線 = SF = 3(設計目標)。

薄肉殻の膜応力 — 会話で理解する

🧑‍🎓
「メンブレン応力」って何ですか?普通の応力と違うんですか?
🎓
薄い殻(板厚が径に比べて薄い、R/t > 10 程度)では曲げ応力が無視できるくらい小さくなって、「面内応力だけで内圧に抵抗する」という状態になる。これがメンブレン(膜)状態で、経線方向(σφ)と周方向(σθ)の2方向の引張応力で内圧を支えるんだ。プロパンガスボンベや球形タンクがその典型例だよ。
🧑‍🎓
球殻と円筒殻でどちらが有利なんですか?
🎓
球殻が圧倒的に有利だ。球殻では σφ = σθ = pR/(2t) で2方向が等しいけど、円筒殻では σθ = pR/t(周応力)、σφ = pR/(2t)(経線応力)で周応力が2倍になる。つまり同じ内圧・内径なら、球殻は円筒殻の半分の板厚で設計できる。ガスタンクを球形にする理由はこれだ。円筒の方が製造しやすいから現実の圧力タンクは円筒が多いけどね。
🧑‍🎓
ラプラス・ヤング方程式って何ですか?聞いたことがないんですが。
🎓
殻の膜応力の基本方程式で σφ/R1 + σθ/R2 = p/t という形だ。R1・R2 は2つの主曲率半径。球殻なら R1 = R2 = R なので σφ = σθ = pR/(2t) が出る。円筒なら軸方向の曲率半径 R1 = ∞(平面)なので σφ = pR/(2t)、R2 = R(円筒)なので σθ = pR/t。この1つの式から全ての殻形状に対応できるんだ。
🧑‍🎓
圧力容器の設計では安全率はどのくらいが必要ですか?
🎓
ASME規格(Section VIII)では設計圧力に対して引張強度の1/4(つまり安全率4)を許容応力として使う設計が基本だ。降伏応力に対しては 0.67 倍が許容応力上限。高温・水素環境・疲労荷重がある場合はさらに余裕をとる。このツールでは降伏応力に対する Von Mises 応力比として安全率 SF = σy/σvm を計算しているので、SF ≥ 3 を目安に設計することをお勧めする。
🧑‍🎓
円錐殻って、どんなところで使われますか?計算式はどう変わるんですか?
🎓
圧力容器の端板(鏡板)、ロケットノズル、化学プラントのホッパーなどに使われる。半頂角φに対して、R1 = ∞(経線方向は直線)、R2 = r/cos(φ)(rは特定位置の半径)となる。つまり σφ = pr/(2t cos φ)、σθ = pr/(t cos φ) で、φ が大きくなるほど(扁平な円錐ほど)応力が急増する。φ → 90° は平板に近づくので膜応力仮定が成り立たなくなる。
🧑‍🎓
FEMで薄肉殻を解析するとき、どんな要素を使えばいいですか?
🎓
シェル要素(Shell element)を使う。Abaqus では S4R(4節点減次積分)や S8R(8節点)が代表的だ。ただし開口部・ノズル接続部・サポート取り付け部などの「局所的な不連続部」では曲げ応力が発生するので、その周辺はメッシュを細かくしたり、軸対称ソリッド要素と組み合わせる設計が実務では多い。純粋に均一な球殻・円筒殻ならメンブレン理論の結果とFEMはほぼ一致する。

理論メモ — 薄肉殻の膜応力公式

ラプラス・ヤング方程式(薄肉殻の平衡方程式):

\[\frac{\sigma_\varphi}{R_1} + \frac{\sigma_\theta}{R_2} = \frac{p}{t}\]

球殻(R₁ = R₂ = R):\[\sigma_\varphi = \sigma_\theta = \frac{pR}{2t}\]

円筒殻(R₁ = ∞, R₂ = R):\[\sigma_\varphi = \frac{pR}{2t}, \quad \sigma_\theta = \frac{pR}{t}\]

円錐殻(半頂角 φ、頂点からの距離 s、半径 r = s sin φ):\[\sigma_\varphi = \frac{pr}{2t\cos\varphi}, \quad \sigma_\theta = \frac{pr}{t\cos\varphi}\]

Von Mises 応力(平面応力 σz=0):

\[\sigma_{vm} = \sqrt{\sigma_\varphi^2 - \sigma_\varphi\sigma_\theta + \sigma_\theta^2}\]

よくある質問

R/t ≥ 10(薄肉条件)かつ荷重・形状が滑らかに変化する領域で有効です。不連続部(開口部・接線部・板厚変化箇所)では曲げ応力が発生し、メンブレン理論では過小評価になります。また座屈(圧縮荷重)は別途考慮が必要です。
球殻:t = pR/(2SE − 0.2p)、円筒殻:t = pR/(SE − 0.6p)。S は許容応力(降伏応力の2/3か引張強度の1/4の小さい方)、E は溶接継手効率(0.6〜1.0)。このツールの t_min は SF=3 を達成する最小板厚を目安として計算しています。
半球形鏡板は最も効率的ですが製造コストが高い。楕円体(2:1楕円)は実用的で圧力容器端板の標準形状。皿形(Flanged and Dished)はコスト低いが応力集中注意。円錐形は大径-小径接続部に使用。設計では鏡板と円筒部の連結部(knuckle)での不連続応力に特に注意が必要です。
高温圧力容器では熱応力が内圧応力に重畳します。板厚方向の温度勾配で曲げ熱応力、周方向の温度分布で膜熱応力が発生します。ASME Section III(原子炉格納容器)では熱応力分類(一次・二次・ピーク)を区別し、疲労評価(累積損傷則)まで行う設計が求められます。材料の高温強度劣化も重要です。
厚肉殻(R/t < 10)では Lamé の厚肉筒理論を適用します。σθ = p(R_i²+R_o²)/(R_o²−R_i²)(内面最大)。また不連続部では「境界効果」として曲げが発生し、減衰距離は β = (3(1-ν²))^(1/4) / √(Rt) 程度です。この影響が大きい部分はFEMで詳細解析することが推奨されます。
水素はバウシンガー効果・水素脆化のリスクがあり、高強度鋼では特に注意が必要です。液化ガスタンクは超低温(LNG: −162°C、LH₂: −253°C)での材料靭性確保が必須で、オーステナイト系ステンレス鋼やアルミニウム合金が多用されます。繰り返し充填排出による疲労評価も必要で、安全率は通常より高く設定されます。