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Microwave Engineering

マイクロ波伝送線路計算機

同軸線路・マイクロストリップ・ストリップラインの特性インピーダンスZ₀を計算し、反射係数Γ・VSWR・リターンロスをリアルタイム表示。スミスチャートで整合状態を視覚的に確認できます。

線路タイプ
内径 d (mm)1.0
外径 D (mm)3.0
比誘電率 εr2.1
回路条件
周波数 f (GHz)2.4
線路長 l (mm)30
負荷抵抗 Z_L (Ω)75
計算結果
50.0
Z₀ (Ω)
1.50
VSWR
14.0
RL (dB)
0.28
IL (dB)

主要公式

同軸: $Z_0 = \frac{60}{\sqrt{\varepsilon_r}}\ln\frac{D}{d}$

反射係数: $\Gamma = \frac{Z_L - Z_0}{Z_L + Z_0}$

VSWR: $S = \frac{1+|\Gamma|}{1-|\Gamma|}$

入力インピーダンス: $Z_{in}= Z_0\frac{Z_L + jZ_0\tan\beta l}{Z_0 + jZ_L\tan\beta l}$

スミスチャート — Γ点(青)とZ_in点(橙)を表示

マイクロ波伝送線路計算機とは

🧑‍🎓
特性インピーダンスZ₀って何ですか?ツールで「同軸」を選ぶと、内径dと外径Dを変えられるけど、これがZ₀に関係するんですか?
🎓
ざっくり言うと、伝送線路の「太さ」と「形」で決まる、電圧と電流の比率だね。同軸ケーブルは、中心導体(内径d)と外側のシールド(外径D)の間を信号が走るんだ。この二つの導体の太さの比(D/d)が大きいほど、Z₀は高くなる。上のスライダーでdを小さくしてみて。Z₀が上がるのが見えるよ。実務ではテレビのアンテナ線は75Ω、無線機の接続には50Ωが多いんだ。
🧑‍🎓
え、そうなんですか!じゃあ「マイクロストリップ」の線幅wや基板厚hを変えると、どうなるんですか?プリント基板の配線みたいな形ですよね。
🎓
その通り!スマホの基板の中の高周波配線はほとんどこれだ。線幅wが細いほどインダクタンスが強くなってZ₀は高くなる。逆に、基板厚hが厚いと、信号線とグランド面の間のキャパシタンスが減るから、やっぱりZ₀は高くなる。シミュレーターで「マイクロストリップ」を選んで、wを1mmから0.2mmに変えてみ。Z₀が50Ωから一気に100Ω近くまで跳ね上がるのがわかる。現場では、目標のZ₀(例えば50Ω)になるようにwとhを設計するんだ。
🧑‍🎓
なるほど!でも、Z₀が合ってないと何がまずいんですか?下に表示されてるVSWRやスミスチャートが赤くなったりしますけど。
🎓
それが一番大事なところだよ。Z₀と負荷インピーダンスZLが合ってないと、信号が反射しちゃう。例えば、50Ωの線路に100Ωのアンテナをつなぐと、反射係数Γが0.33になって、スミスチャート上で中心から外れた点として表示される。VSWRは1.0(理想)から離れて大きくなり、電力がうまく伝わらなくなるんだ。5Gの基地局でこれが起きると、せっかくの高出力が熱に変わって故障の原因になる。ツールで「負荷インピーダンスZL」の値をいじって、VSWRの値とスミスチャート上の点がどう動くか確かめてみよう。

物理モデルと主要な数式

伝送線路の基本特性を表す特性インピーダンスZ₀は、単位長あたりのインダクタンスLとキャパシタンスCで決まります。構造ごとに近似式が異なります。

$$Z_0 = \frac{1}{v_p C}= \sqrt{\frac{L}{C}}= \frac{1}{v_p \sqrt{LC}}$$

ここで、$v_p$は位相速度、$L$は単位長あたりのインダクタンス[H/m]、$C$は単位長あたりのキャパシタンス[F/m]です。比誘電率$\varepsilon_r$が大きいと$C$が増え、$v_p$が遅くなり、Z₀は低下します。

具体的な構造の計算式です。同軸線路は厳密解、マイクロストリップは基板の影響を考慮した近似式が使われます。

$$Z_{0,\text{coax}}= \frac{60}{\sqrt{\varepsilon_r}}\ln\left(\frac{D}{d}\right), \quad Z_{0,\text{microstrip}}\approx \frac{87}{\sqrt{\varepsilon_r+1.41}}\ln\left(\frac{5.98h}{0.8w+t}\right)$$

$D$: 外導体内径, $d$: 内導体外径, $\varepsilon_r$: 比誘電率, $h$: 基板厚さ, $w$: 導体幅, $t$: 導体厚さ。D/dやh/wの比がZ₀を支配します。

実世界での応用

5G/スマートフォン:マイクロストリップ線路はスマートフォンの高周波プリント基板(PCB)の心臓部です。アンテナとRFチップ間の配線のZ₀を50Ωに整合させることで、ミリ波帯の巨大な信号損失を防ぎ、高速通信を実現します。

衛星通信・レーダー:大電力を扱う地上局のパラボラアンテナ給電部には、低損失な同軸線路や導波管が使われます。VSWRを極力1.0に近づける設計が必須で、反射電力が増幅器を破壊するのを防ぎます。

高速デジタル回路:CPUとメモリ間の信号伝送路(ストリップラインなど)では、インピーダンス整合が信号の立ち上がり時間と反射ノイズに直結します。整合が悪いとデータエラーが発生し、クロックスピードの向上を阻害します。

計測器・ネットワークアナライザ:被測定デバイス(DUT)の特性を正確に測るため、測定器のポート自体が厳密な50Ω(または75Ω)の特性インピーダンスを持っています。校正技術の根幹を成す概念です。

よくある誤解と注意点

まず、特性インピーダンスZ₀は「抵抗値」と同じΩですが、直流抵抗とは全くの別物だという点を押さえよう。Z₀は信号の伝わりやすさを表す「波動的な」パラメータで、周波数が高くなるほど、導体の表皮効果や誘電体の分散特性の影響を受けて変化し始めるんだ。このツールの計算式は主に「十分に低い周波数」または「TEMモードが支配的な領域」での近似だから、例えばミリ波帯(30GHz以上)の精密設計では、より高度な電磁界シミュレータでの検証が必須になるよ。

次に、マイクロストリップの「比誘電率εr」の設定ミス。これは基板材料(FR-4、ロジャース社の基板など)によって決まる値で、データシートに記載されている「公称値」をそのまま使うのは危険な場合がある。特にFR-4は組成のバラつきが大きく、公称4.3~4.7の値が、実際の製造ロットでは4.0から4.8まで変動することもある。例えば、目標50Ωで設計した線幅が、実基板では47Ωや53Ωになってしまう原因だ。重要な回路では、実基板の誘電率を実測して設計にフィードバックするプロセスが欠かせない。

最後に、ツールで簡単に計算できるからといって、「Z₀さえ合っていれば全てOK」と考えるのは大きな落とし穴。実際の基板上では、曲がり角、ビア(層間接続)、分岐などで不連続性が生じ、そこで局部的な反射やモード変換が起きる。例えば、50Ωの線路が直角に曲がる部分だけ、キャパシタンス性の不連続が生じてインピーダンスが乱れる。こうした「分布定数回路としての振る舞い」全体を考慮したレイアウトが、高周波設計の真髄なんだ。

関連する工学分野

このツールの計算ロジックは、純粋な伝送線路理論を超えて、様々な先端工学分野の基盤技術として応用されている。まず挙げるのは「アンテナ工学」だ。アンテナの給電点インピーダンスと給電線(フィーダー線)のZ₀を整合させることは、放射効率を最大化する生命線。例えば、パッチアンテナの給電点は通常、50Ωよりも高いインピーダンスを持つため、マイクロストリップ線路の線幅を徐々に変化させる「テーパー」構造を使って整合を取る。このツールでテーパーの両端のZ₀を計算すれば、整合回路の設計指針が立てられる。

次に「高速デジタル回路設計」との深い関わり。CPUやメモリ間を流れる数GHzのクロック信号やデータ信号は、もはや単なる0/1のデジタル情報ではなく、マイクロ波そのもの。信号の立上がりエッジが伝送線路を反射すると、データのタイミングが狂ったり(ジッタ)、誤動作の原因になる。ここで重要なのが「インピーダンス整合」と「終端技術」。ツールで計算する反射係数ΓやVSWRの概念は、デジタル回路の「信号完全性(SI)」解析において、アイパターンの劣化を予測する基礎として直接的に使われているんだ。

さらに「MEMS(微小電気機械システム)」「集積光エレクトロニクス」といった分野でも、基本原理は同じ。シリコン基板上に作製される微小な伝送路や光導波路では、幾何学形状と材料定数から「特性インピーダンス」に相当する波動伝搬定数を計算する必要があり、その考え方は本ツールと完全にパラレルだ。

発展的な学習のために

まず次の一歩としておすすめなのは、「分布定数回路」の時間領域・周波数領域の両方からの理解だ。ツールでいじっている反射係数やVSWRは周波数領域での定常状態の見方。これに加えて、時間領域で「信号が線路をどう進み、反射して戻ってくるか」を考えると、現象の直感的理解が深まる。例えば、長さが波長の1/4の線路がインピーダンス変換器として働く理由($$Z_{in} = \frac{Z_0^2}{Z_L}$$)は、時間領域の往復反射を重ね合わせると見えてくる。

数学的背景を固めたいなら、ツールの背後にある微分方程式「電信方程式」に立ち戻ろう。電圧と電流の波動方程式:$$\frac{\partial^2 V}{\partial z^2} = LC \frac{\partial^2 V}{\partial t^2}$$ から出発して、その一般解(前進波と後退波の和)を導く過程を追うことで、特性インピーダンス$$Z_0 = \sqrt{L/C}$$や伝搬定数γの物理的意味が腹に落ちる。この理解があれば、損失のある線路(R, G成分が無視できない場合)への拡張も自力でできるようになる。

実務に直結する次のトピックは、「スミスチャートの実践的使い込み」「整合回路(L型、π型、スタブ)の設計」だ。このツールのスミスチャート表示は「可視化」の第一歩。そこから一歩進んで、チャート上をインピーダンス点がどのように移動するかを、直列/並列のリアクタンス素子を追加することで追跡し、目標の整合点(チャート中心)にどう導くかを学べば、実際の整合回路設計ができるようになる。まずは、ツールで任意の負荷ZLを設定し、それに直列または並列のキャパシタンス/インダクタンスを追加した時の入力インピーダンスの変化を、スミスチャート上で追いかけてみるのが最高の練習だよ。