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流体工学

配管の副損失(局部損失)シミュレーター

バルブ・エルボ・ティー・急縮小など「配管の形が変わる箇所」で局所的に生じる副損失を、K係数法でリアルタイム計算するツールです。流速・配管径・ΣK・直管長さを変えると、副損失と直管摩擦損失の寄与率が一目で分かり、ポンプ動力を抑える配管設計の判断に使えます。

パラメータ設定
流速 v
m/s
配管内径 D
mm
副損失係数の合計 ΣK
継手・バルブ・入口出口などの K の和
流体密度 ρ
kg/m³
水≈1000、ガソリン≈740、海水≈1025
直管の長さ L
m
継手間の直管部分の総延長
計算結果
速度水頭 v²/(2g) (m)
副損失水頭 h_minor (m)
直管摩擦損失水頭 h_major (m)
全損失水頭 h_total (m)
副損失の圧力降下 (kPa)
副損失の寄与率 (%)
配管系の可視化 — 継手で段階的に下がる圧力

配管を流れる流体は、直管部では緩やかに圧力が下がり(直管摩擦=主損失)、エルボ・縮小・バルブ・ティーといった継手では段差状に圧力が落ちます(局所=副損失)。上のグラフが配管に沿った圧力プロファイル、下が配管断面と流れの粒子です。

損失の内訳 — 主損失 vs 副損失
副損失寄与率 vs 直管の長さ L
理論・主要公式

$$h_{minor}=K\,\frac{v^{2}}{2g},\qquad h_{total}=h_{minor}+h_{major}$$

配管継手で生じる副損失 h_minor は速度水頭 v²/(2g) に無次元の損失係数 K を掛けたもの。「副」は歴史的に「局所(local)」を意味し、短い配管では副損失が直管摩擦損失を上回ることも珍しくありません。

$$h_{major}=f\,\frac{L}{D}\,\frac{v^{2}}{2g}$$

直管壁との摩擦で生じる主損失(Darcy-Weisbach 式)。f は摩擦係数(本ツールでは代表値 f = 0.020 を使用)、L は直管長さ、D は配管内径。

$$\Delta p_{minor}=\rho\,g\,h_{minor},\qquad \text{share}=\frac{h_{minor}}{h_{total}}\times 100\,\%$$

副損失の圧力降下と、副損失が全損失に占める寄与率。短くて継手が多い配管ほど share が大きくなります。

副損失(局部損失)とは

🙋
「配管の副損失」って、なんとなく「メインじゃない、小さい損失」って意味だと思ってたんですが、それでいいんですか?
🎓
じつはその名前、けっこう誤解されてるんだ。配管をポンプで流すと圧力(=動力)が2種類のところで失われる。ひとつは直管の壁との摩擦——これは長さに比例してずっと続くやつで、これが「主損失(major loss)」。もうひとつは、エルボ・ティー・バルブ・急縮小・配管の入口出口みたいに「形が変わる場所」で、流れが乱れて渦ができて、その一点で圧力がポンと落ちる。これが「副損失(minor loss)」だ。だけど、ここでいう「minor」って実は「小さい」じゃなくて、もともとの英語のニュアンスでは「局所的(local)」って意味なんだよ。
🙋
え、「副」って小さいって意味じゃないんですか?じゃあ実際にはどっちが大きいことが多いんですか?
🎓
いい質問。たとえば長距離の送水管みたいに、配管が何キロもあって継手はほとんどない場合は、確かに主損失(摩擦損失)が支配的になる。でも工場の中の配管とか、ビルの空調配管、ポンプまわりの取り回しみたいに「短い距離にバルブとエルボがびっしり並ぶ」配管では、副損失が全損失の半分以上を占めて、しかも主損失を超えることがほとんどなんだ。上のスライダーで直管長さ L を 5 m と 200 m で比べてみて。寄与率がガラッと逆転するのが見えるよ。
🙋
じゃあ副損失ってバカにできないんですね。具体的にはどうやって計算するんですか?
🎓
基本は「K係数法(K factor method)」だ。各継手ごとに、実験で求まった無次元の損失係数 K が決まっていて、損失水頭は h = K·v²/(2g)。v²/(2g) は速度水頭、つまり流れの運動エネルギーを高さに換算したもの。K は便覧やメーカーカタログに表で載っていて、たとえば90°標準エルボなら K≈0.75、グローブ弁全開なら K≈6〜10、ゲート弁全開なら K≈0.15、ティーの分流なら K≈1.0、配管入口は K≈0.5、出口は K=1.0。同じ系の中の継手の K を全部足したのが ΣK で、それを v²/(2g) に掛ければ系全体の副損失水頭が出る。これがいちばんよく使う方法だね。
🙋
なるほど、足し算でいいんだ。じゃあバルブを少し閉めたらどうなるんですか?K は変わるんですか?
🎓
そう、開度で K がガラッと変わる。グローブ弁を全開から半開にするだけで K は数十倍に跳ね上がるし、ボール弁を 1/4 だけ閉めると K が 100 を超えることもある。バルブで流量を絞るとポンプの動力がそこで熱に変わって失われているわけで、本当はインバータで回転数を絞ったほうが省エネ。プラントの省エネ診断では「いつも半開のバルブはないか」を真っ先にチェックするのは、まさにこの副損失が効いてるからなんだ。
🙋
設計でできる工夫としては、どんなものがありますか?
🎓
3つあるよ。(1) ルートを工夫してエルボ本数を減らす。90°のシャープなエルボ(K=0.75)を長半径のスイープエルボ(K=0.45)にするだけでも効く。(2) 全開時の K が小さいバルブを選ぶ。グローブ弁(K=6〜10)よりゲート弁・ボール弁(K=0.05〜0.15)のほうが全開時の損失は桁違いに小さい。(3) 急拡大・急縮小を避けて、なめらかなテーパで径を変える。これだけで K が 1/3〜1/5 になることもある。シミュレーターの ΣK を 10 から 3 に下げてみて。同じ流速でも圧力降下がガクッと小さくなるはずだよ。

よくある質問

配管系では圧力損失が2種類に分かれます。直管壁との摩擦で長さに比例して生じるのが「主損失(摩擦損失)」、エルボ・バルブ・継手・急拡大・急縮小など「形状が変わる箇所」で局所的に生じるのが「副損失(局部損失)」です。副損失は各継手ごとに無次元の損失係数 K で表され、損失水頭は h = K·v²/(2g) で計算します。短い配管網ではこの副損失が全損失の大半を占めることもあり、「副」という呼び名はあくまで「局所」という意味合いです。
K は継手の形状ごとに実験で求められた無次元数で、教科書・便覧に表として載っています。代表値は、90°エルボ(標準)≒0.75、90°エルボ(長半径)≒0.45、ティー(直流)≒0.4、ティー(分流)≒1.0、グローブ弁(全開)≒6〜10、ゲート弁(全開)≒0.15、配管入口(鋭角)≒0.5、配管出口≒1.0 などです。複数の継手があれば全部の K を足し合わせて ΣK として使い、損失水頭は ΣK·v²/(2g) で求めます。
配管長さに大きく依存します。直管摩擦損失は f·(L/D)·v²/(2g) で長さ L に比例して伸び、副損失は ΣK·v²/(2g) で長さに無関係です。プラント内・HVAC・建築設備のような「短くて継手が多い配管」では副損失が支配的になり、長距離パイプライン・送水管のような「長くて継手が少ない配管」では摩擦損失が支配的になります。本ツールでは直管長さ L のスライダーで、その寄与率の入れ替わりが可視化できます。
副損失の計算には2つの流儀があります。K係数法(速度水頭法)は損失を K·v²/(2g) と書き、摩擦係数 f に依らない直接的な定義です。等価長さ法は「この継手は同じ径のまっすぐな配管 Leq m 分の摩擦に等しい」と表し、Leq/D の表を使って摩擦損失式にまとめて代入します。両者は K = f·Leq/D の関係で換算できます。実務では K係数法のほうが汎用的で、特に層流・粗さの違いがある系では K係数法が推奨されます。

実世界での応用

プラント・化学工場の配管設計:反応器・熱交換器・ポンプ・タンクをつなぐ配管網には、流量調整弁・遮断弁・サンプリングティー・流量計・ストレーナがびっしり並びます。直管部分はせいぜい数十メートルでも、ΣK が 30〜80 に達するのは珍しくありません。プロセスエンジニアはまずこの副損失を K係数法で見積もり、ポンプの全揚程と動力を決めます。副損失を取りこぼすと、ポンプが回っても規定流量が出ない致命的なミスにつながります。

建築設備(HVAC・給排水):ビルの空調ダクトや給水・給湯配管は、各階・各部屋までの分岐が多く、エルボ・ティー・調整弁・チャッキ弁の塊です。給水配管の場合 ΣK は系全体で 10〜30 程度になり、副損失だけで数十 kPa の圧力降下を生みます。設計時に副損失を読み違えると最上階で給水圧が足りなくなり、増圧ポンプの追加工事という手戻りになります。

ポンプ選定とエネルギー診断:同じ流量・揚程でもポンプは「全閉付近」「定格点」「過大流量」で効率がガラッと変わります。副損失が大きすぎる配管にポンプを付けると、運転点が左に寄って効率が落ち、動力をムダに食います。省エネ診断では、まず系の ΣK を見直して、本当に必要な揚程を再計算し、インバータ化・配管改修・バルブ更新で副損失を削るのが定番の改善メニューです。

CFD解析の前段見積もり:OpenFOAM や ANSYS Fluent で配管系全体の流量分布を解く前に、本ツールのような K係数法で「どこにどれだけ副損失があるか」を当たり付けします。CFD で得られた圧力降下と K係数法の手計算が桁違いに違っていたら、メッシュ品質・乱流モデル・境界条件のどこかにミスがある可能性が高い、というサニティチェックに使えます。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「副は副だから無視してよい」という思い込みです。配管設計の初期検討で副損失を抜くと、短い配管ほどポンプ揚程の見積もりが大きく外れます。たとえば直管 10 m、ΣK=20 の系で副損失だけを抜くと、揚程の半分以上を見落とします。「副」という日本語訳が誤解を招いていますが、原語の minor は「副次的に小さい」ではなく「局所的(local)」の意味なので、実務では「局部損失」と呼んだほうが感覚に合います。配管が短く継手が多い系では、副損失は必ず計算に入れてください。

次に、「K係数は配管径と流量によらず一定」という誤解。教科書の K 表は「乱流域(Re>10⁴)で十分発達した流れ」の前提で作られています。層流域や、ベンドの直後でまだ流れが整っていない区間では K は表値の数倍にもなりえます。また、同じ「90°エルボ」でも径が小さいほど相対粗さが効いて K が大きく出る傾向があります。重要な設計では、想定する Re 域での実測値・メーカー実機データに当たることが必須です。

最後に、「副損失を等価長さで足せば直管と同じ式で済む」という安易な思考。等価長さ法 Leq/D は摩擦係数 f に依存するため、流体・配管材質・流量域が変わると本来 Leq も変わるべきです。表に書かれた Leq を機械的に使うと、低Re域や非ニュートン流体(高粘度流体・スラリー・粉体輸送)では大きく外します。物理的に独立した量である K を直接使う K係数法が、現代の設計では推奨されます。本ツールも K係数法で実装しています。