核結合エネルギー計算ツール 戻る
核物理

核結合エネルギー計算ツール

ベーテ-ヴァイツゼッカーの半経験式で原子核の結合エネルギーをリアルタイム計算。BE/A曲線で核分裂・核融合のエネルギー源を直感的に探求できます。

核種パラメータ

⁵⁶Fe
質量数 A
陽子数 Z
プリセット核種
各項の内訳 [MeV]
体積項 aᵥA
+878.9
表面項 −aₛA²/³
−208.1
クーロン項
−98.4
対称性項
−79.5
対エネルギー δ
+1.6
合計 B
492.3
計算結果
結合エネルギー B
492.3
MeV
核子当り BE/A
8.790
MeV/核子
中性子数 N
30
N = A − Z
核種の安定性
安定
(N/Z比)
Bea
Valley
理論・主要公式

$B = a_V A - a_S A^{2/3} - a_C \dfrac{Z(Z-1)}{A^{1/3}} - a_A \dfrac{(A-2Z)^2}{A} + \delta$
$a_V=15.67,\ a_S=17.23,\ a_C=0.714,\ a_A=93.15$ [MeV]

なぜ鉄が「最も安定な元素」なの?

🙋
先生、核融合でエネルギーが取り出せるっていうのはわかるんですが、核分裂でもエネルギーが出ますよね?どうして両方でエネルギーが出るんですか?逆じゃないの?って思って。
🎓
鋭い疑問だね。これを理解する鍵が「結合エネルギー」だ。原子核をバラバラの陽子・中性子に分解するのに必要なエネルギーのことで、核子1個あたりのBE/Aが大きいほど「安定な核」なんだ。グラフを見ると、Be-4あたりから増え始めて、鉄(A=56)付近で最大になり、その後ゆっくり減っていく山型になる。
🙋
鉄が山のてっぺんなんですね。それで、鉄より軽いものは核融合でてっぺんに近づくからエネルギーが出る、鉄より重いものは核分裂でてっぺんに近づくからエネルギーが出る、ということ?
🎓
完璧な理解!まさにそう。例えば水素の核融合(H-2 + H-3 → He-4)は、BE/Aが約1 MeV/核子から約7 MeV/核子に増える。4核子分で約24 MeVのエネルギーが出る。ウランの核分裂(U-235 → Ba-141 + Kr-92)は、BE/Aが約7.6から約8.4 MeV/核子に増えて、235核子分で約200 MeVが出る。
🙋
核融合の方が核子あたりのエネルギーは大きいけど、核分裂は一度に多くの核子が反応するからトータルで大きいんですね。ベーテ-ヴァイツゼッカーの式の「クーロン項」って何ですか?
🎓
陽子はみんなプラスの電荷を持ってるから、互いに反発し合う。その「クーロン斥力によるエネルギーロス」がクーロン項 $-a_C Z(Z-1)/A^{1/3}$ だ。Zが増えるほど大きくなる。これが重い元素ほど不安定になる原因の一つ。一方で「対称性項」は陽子数と中性子数が等しいほど安定という傾向を表す。軽い核ではN=Z付近が安定で、重くなるとN>Zの核が安定になるのはクーロン項の影響だよ。
🙋
ということは「安定の谷」という言葉も聞いたことあるんですが、N-Z平面で安定な核が谷になって並んでるということですか?
🎓
そう!N-Z図で見ると、安定な核種が細い帯状に並ぶ「安定の谷(valley of stability)」が見える。その谷から外れた核(N/Zが極端な核種)は放射性で、ベータ崩壊などで谷の方向に落ちていく。このシミュレーターの「安定の谷タブ」で確認してみて。BE/Aの大きさを色の濃さで表してあるから、どの辺りが安定か一目でわかるよ。

よくある質問

核結合エネルギーとは何ですか?
原子核をバラバラの陽子と中性子に分解するために必要なエネルギーです。例えばHe-4(アルファ粒子)の場合、2陽子+2中性子をバラバラにするには約28 MeV必要です。核子1個あたりの結合エネルギー(BE/A)が大きいほど安定な核種で、鉄(Fe-56)で約8.8 MeV/核子と最大になります。
なぜ鉄が最も安定な元素なの?
Fe-56(Ni-62も実は最大)は核子当たりの結合エネルギーが最大になります。これより軽い核は核融合で、より重い核は核分裂で鉄付近に近づく変換が起きるため、両方向からエネルギーが放出されます。宇宙で鉄が豊富なのも、恒星内部の核融合反応が最終的に鉄で止まるためです(鉄以降の核融合はエネルギーを消費する)。
ベーテ-ヴァイツゼッカーの式はどのくらい正確?
中程度の質量数(A = 20〜200)の安定核に対して数%以内の精度があります。ただし非常に軽い核(He-4など)や、魔法数(2, 8, 20, 28, 50, 82, 126)と呼ばれる特別に安定な核種には「殻模型効果」があり、液滴模型ベースのこの式では説明できません。より精密な計算には核構造モデルや数値計算が必要です。
核融合と核分裂、どちらが核子あたりのエネルギーが大きい?
核子あたりでは核融合の方が約3〜4倍大きいです。D-T核融合(重水素+三重水素→ヘリウム+中性子)は約17.6 MeV / 5核子 ≈ 3.5 MeV/核子。U-235核分裂は約200 MeV / 235核子 ≈ 0.85 MeV/核子。しかし一回の反応で動く核子数は核分裂の方が多いため、単純な反応あたりのエネルギーは核分裂の方が大きいです。
「魔法数」とは何ですか?
陽子数または中性子数が 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126 になる核種は特別に安定です。これは核の「殻模型」で説明されます。原子の電子殻(閉殻が安定)と同様に、核子も閉殻配置になると特別に安定になります。例えばHe-4(Z=2, N=2)、O-16(Z=8, N=8)、Pb-208(Z=82, N=126、二重魔法数)が典型例です。

核結合エネルギー計算ツールとは

核結合エネルギー計算ツールは、工学・物理の重要なトピックの一つです。ベーテ-ヴァイツゼッカーの半経験式で原子核の結合エネルギーをリアルタイム計算。BE/A曲線で核分裂・核融合のエネルギー源を直感的に探求できます。

このシミュレーターでは、パラメータを直接操作しながら、現象の本質的な挙動を体験的に理解できます。計算結果はリアルタイムで更新され、数値と可視化の両面から直感的な理解を深めることができます。

ベーテ・ヴァイツゼッカーの半経験式は、原子核の結合エネルギー \( B \) を質量数 \( A \) と原子番号 \( Z \) の関数として次のように与える。 \[ B = a_v A - a_s A^{2/3} - a_c \frac{Z(Z-1)}{A^{1/3}} - a_a \frac{(A-2Z)^2}{A} + \delta(A,Z) \] ここで \( a_v, a_s, a_c, a_a \) は体積項、表面項、クーロン項、非対称項の係数であり、\( \delta \) は対項である。この式により、核子あたりの結合エネルギー \( B/A \) が \( A \) に対して描く曲線は、鉄付近で最大約8.8 MeVに達する。このピークを境に、軽い核の核融合と重い核の核分裂がエネルギーを放出する物理的根拠が説明される。本ツールでは、パラメータを調整しながら \( B/A \) 曲線をリアルタイムで描画し、核反応のエネルギー収支を直感的に探求できる。

実世界での応用

産業での実際の使用例
原子力発電業界では、燃料設計企業(例:三菱重工や仏フラマトム)が本ツールを用いて、ウラン235やプルトニウム239の核分裂時の結合エネルギー変化をリアルタイムで評価。燃料棒の濃縮度や燃焼度設計の初期検討に活用し、安全かつ高効率な炉心構成の迅速なスクリーニングを実現している。

研究・教育での活用
大学の原子核物理学実験や大学院の核エネルギー工学コースで、ベーテ-ヴァイツゼッカー式の各項(体積項・表面項・クーロン項など)の寄与をBE/A曲線で視覚的に確認する教材として利用。学生は核分裂と核融合のエネルギー放出量を直感的に比較でき、安定核種の理解が深まる。

CAE解析との連携や実務での位置付け
核結合エネルギー計算ツールは、詳細な中性子輸送解析や熱流動CAE(例:ANSYS、STAR-CCM+)の前処理段階に位置づけられる。簡易的な核反応Q値や核種安定性の事前評価を行い、大規模シミュレーションの計算負荷を低減。設計変更時の迅速なフィージビリティチェックツールとして実務で重宝されている。

よくある誤解と注意点

「結合エネルギーが大きいほど原子核は安定」と思いがちですが、実際には「核子あたりの結合エネルギー(BE/A)」が安定性の指標です。総結合エネルギーだけでは核子数が多い重い核ほど値が大きくなるため、比較には注意が必要です。

「ベーテ-ヴァイツゼッカー式は全ての原子核に正確」と思いがちですが、実際には魔法数付近の核や変形核では誤差が大きくなります。半経験式は平均的な傾向を捉えるモデルであり、個々の核種の精密な値には実験データとの乖離がある点に注意が必要です。

「BE/A曲線のピーク(鉄付近)より軽い核は全て核融合でエネルギーを得られる」と思いがちですが、実際にはクーロン障壁を超えるための高温高圧条件が必要で、軽い核同士でも反応断面積が小さい場合は実用的なエネルギー源になりません。理論上のエネルギー利得と実現可能性は別物である点に注意が必要です。