› 光弾性応力解析 戻る
実験的応力解析

光弾性応力解析 — 等色縞パターン可視化

試験片形状・荷重・縞感度定数を変えて、主応力差に対応した等色縞(アイソクロマティック)パターンをリアルタイムで可視化。FEM検証の基礎を体感しよう。

試験片・荷重条件
試験片形状
荷重 P
N
試験片径/幅 D
mm
厚さ t
mm
縞感度定数 f
N/mm
計算結果
計算結果
—
σ₁ (MPa)
—
σ₂ (MPa)
—
τmax (MPa)
—
縞次数 N
等色縞パターン(Canvas)
波長560 nm
N=0(等応力点) 高次ほど縞が密 荷重 P
荷重軸上の応力分布
理論・主要公式

縞次数:$N = \dfrac{(\sigma_1 - \sigma_2)\,t}{f}$

円板中心(Frocht の解):
$\sigma_x = \dfrac{2P}{\pi D t},\quad \sigma_y = -\dfrac{6P}{\pi D t}$($x$:荷重と直交、$y$:荷重方向)

最大主応力差が大きい領域ほど縞が密になる。

光弾性応力解析とは

🙋
光弾性法って、どうして色の縞で応力がわかるんですか?
🎓
大まかに言うと、透明な材料に力を加えると、ガラスが歪んで光の進み方が変わる「複屈折」という現象が起きるんだ。その歪みの度合いが、主応力の差($\sigma_1 - \sigma_2$)に比例して、それが色の縞(等色縞)として見えるんだよ。シミュレーターで「荷重P」のスライダーを動かしてみると、力が強くなるほど縞が増えて密になる様子がわかるよ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、縞がたくさんあるところは危ないということ?
🎓
その通り!縞が密に集まっている領域は、主応力差が大きく、応力が集中しているサインなんだ。例えば自動車の部品の角や、穴の縁なんかでよく見られるよ。このシミュレーターで「試験片形状」を「円板」から「矩形板(中央孔あり)」に変えてみると、孔の縁で急に縞が混み合うのが観察できるはずだ(孔の縁では応力が遠方の3倍になる)。
🙋
なるほど。でも、実際のCAE(FEM)とどう関係あるんですか?
🎓
実務では、FEMで計算した応力分布の「傾向」を、この光弾性の縞パターンと比べて検証するんだ。FEMのメッシュの切り方や境界条件が間違ってると、縞のパターンが全然違ってくる。シミュレーターの「縞感度定数f」を変えると、同じ応力でも縞の見え方が変わるから、材料の違いの影響も体感できるよ。

よくある質問

光弾性では主応力差に比例した次数Nが整数になるたびに同じ色列が繰り返されます。白色光では N=0 が黒、N が 1 に近づくと赤から青へ急に変わる境目(tint of passage)が現れ、これが整数次数の目印です。N=1、2、3…と色列が繰り返し、高応力部ほど縞が密になります。本ツールでは整数次数の位置に「N=1」などのラベルを表示します。
材料縞値fは材料が応力に対してどれだけ敏感に複屈折を示すかを表す定数です。fが小さいほど小さな応力差でも大きな複屈折が生じ、同じ応力差でも高い次数Nが現れます。つまり、感度が高い材料ほど縞が密に発生します。
荷重Pを増やすと円板内の主応力差が比例して大きくなり、縞次数も比例して増えます。円板の中心でも σ₁−σ₂ = 8P/(πDt) でゼロではなく、荷重点に近づくほど応力差が急増して縞が密になります。既定の D=50 mm・t=10 mm・f=12 N/mm では、P=1000 N で中心の次数 N≈4.2、P=4000 N で約 17 です。
本シミュレーターは理論解(円板は直径方向圧縮の Frocht の解、孔あき板は Kirsch の解、梁は初等曲げ理論)に基づいており、理想的な条件下では実際の光弾性実験と高い一致を示します。ただし、現実の試験片には材料の不均一性や残留応力、端部効果があるため、定性的な傾向把握やFEM検証の基礎学習に適しています。

実世界での応用

製品設計の初期検証:自動車のリンク機構や航空機の窓枠など、複雑な形状の部品について、実物大の透明モデルを作成し、光弾性実験を行います。これにより、設計段階で応力集中が起こりやすい危険箇所を視覚的・直感的に特定できます。

数値解析(CAE/FEM)の検証:有限要素法(FEM)などで得られた応力解析結果の信頼性を確認するためのベンチマークとして利用されます。光弾性で得られた等色縞パターンとFEMの主応力差のコンター図を比較し、その分布傾向が一致するかを確認します。

材料評価・品質管理:異なる材料(エポキシ、ポリカーボネートなど)の縞感度定数(f値)を測定したり、鋳造部品や溶接部の内部残留応力を評価するために用いられます。応力が残留している部分は、荷重を加えなくても初めから縞が観察されます。

教育・研究:力学や材料工学の教育現場で、目に見えない「応力」という概念を、美しい色の縞として可視化する強力な教材となります。破壊力学の分野では、き裂先端の応力拡大係数を光弾性縞パターンから求める研究が行われています。

よくある誤解と注意点

まず、「縞が濃い=応力が大きい」と思いがちですが、厳密には違います。等色縞は主応力「差」を表しているので、例えば一様な引張り(σ1が大きく、σ2=0)と一様なせん断(σ1とσ2が絶対値同じで符号逆)では、同じ応力差でも全く異なる応力状態です。シミュレーターで「円板」を選び、荷重をかけて中心を確認してみてください。縞が現れますが、これは引張りと圧縮の組み合わせによる大きな応力差です。一方、一様な単純引張りでは σ2=0 なので縞次数は σ1 に比例しますが、試験片全体が同じ次数(同じ色)になり、縞の「模様」は現れません。縞が密に見えるのは応力差の勾配が大きい場所です。応力の「大きさ」ではなく「差」とその分布を見ていることを常に意識しましょう。

次に、縞感度定数「f」の扱い。この値は材料固有で、例えばポリカーボネートで約 7、エポキシで約 10、アクリル(PMMA)では 100 以上(いずれも kN/m・縞 = N/mm・縞)と、材料で大きく異なります。シミュレーターでこの値を変えると、同じ荷重でも縞の本数が大きく変わりますよね?実務で既知の材料(エポキシ)で実験して得た知見を、別の材料(例えばアルミニウム)の設計に直接当てはめることはできません。f値の違いが「見かけの危険度」を変えてしまうからです。

最後に、「2次元の面内応力」しか評価できないという根本的な限界。この手法の前提は、光が通過する厚さ方向の応力は一定(平面応力状態)であることです。実際の厚みのある部品では、表面と内部で応力状態が異なる「3次元応力」が生じます。そのため、複雑な3次元形状の精密評価には向かず、あくまで傾向把握やFEMの検証用という位置づけを理解しておくことが大切です。

使い方ガイド

  1. 「試験片形状」で円板(直径方向圧縮)・矩形板(中央孔あり、孔径は幅の 15%)・梁(3点曲げ、高さは長さの 15%)のいずれかを選びます。プリセットでは形状と荷重をまとめて設定できます。
  2. 「荷重 P」(100〜5000 N)、「試験片径/幅 D」(20〜150 mm)、「厚さ t」(3〜30 mm)、「縞感度定数 f」(2〜50 N/mm)を設定します。再生中は荷重が 0 から P まで周期的に変化し、縞が増減します。
  3. 代表点(円板中心・孔の縁・梁の下面中央)の σ₁・σ₂・τmax・縞次数 N と、荷重軸上の応力分布グラフを確認します。「白色光/単色光」と「等傾線」の切替で見え方の違いも試せます。

具体的な計算例

円板試験片(直径 50 mm、厚さ 10 mm)に直径方向の圧縮荷重 5 kN を加えた場合:円板中心では荷重と直交する方向に σ₁=2P/(πDt)=2×5000/(π×50×10)≈6.4 MPa の引張、荷重方向に σ₂=−6P/(πDt)≈−19.1 MPa の圧縮が生じ、主応力差は約 25.5 MPa、τmax≈12.7 MPa です。縞感度定数 f=12 N/mm なら中心の縞次数は N=(σ₁−σ₂)·t/f=25.5×10/12≈21.2 で、荷重点に向かって縞はさらに密になります。孔あき板(P=3000 N、D=50 mm、t=10 mm)では孔の縁の応力が遠方応力 P/(Dt)=6 MPa の3倍の 18 MPa になり、応力集中係数 Kt=3 の検証に使えます。

実務での注意点

  1. 試験片の初期複屈折を確認してください。成形や加工で残留応力があると無負荷でも縞が見え、荷重による縞と区別できなくなります。使用前に焼なまし(アニール)するのが一般的です。
  2. 縞感度定数 f は材料ロットや温度で変わるので、円板の直径方向圧縮など応力が既知の校正試験片で実測した値を使ってください。
  3. 樹脂は粘弾性なので、荷重を保持すると縞がゆっくり変化(クリープ)します。読み取りは荷重後の決まった時間に行い、高速の加力や温度変化を避けてください。