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熱解析

熱疲労寿命評価ツール — Coffin-Manson 則

温度変動幅・熱膨張係数差からCoffin-Manson則で熱疲労寿命を推定。はんだ接合部・タービンブレード・排気マニホールドに対応。

材料・条件設定
温度範囲 ΔT (°C)
°C
平均温度 T_mean (°C)
°C
熱膨張差 Δα (ppm/°C)
弾性率 E (GPa)
GPa
疲労延性係数 ε'f
疲労強度指数 c
サイクル数/日
推定寿命(年)
計算結果
Δε_th (×10⁻³)
Nf (サイクル)
安全率
10年
目標寿命
sigma th amp (MPa)
熱疲労寿命 vs Δε

青点:現在の動作点 / 縦軸:塑性ひずみ振幅 Δεp/2(対数) / 横軸:反転数 2Nf(対数)

理論・主要公式
熱ひずみ範囲:
$\Delta\varepsilon_{th}= \Delta\alpha \cdot \Delta T$

破壊サイクル数:
$2N_f = \left(\dfrac{\Delta\varepsilon_p / 2}{\varepsilon'_f}\right)^{1/c}$

寿命 $= N_f / (\text{cycles/day} \times 365)$

熱疲労寿命評価とは

🙋
「熱疲労寿命」って何ですか? 普通の金属疲労と何が違うんですか?
🎓
大まかに言うと、温度が上がったり下がったりするだけで壊れてしまう現象だよ。普通の疲労が「力」の繰り返しなら、熱疲労は「温度」の繰り返しが原因なんだ。例えば、エンジンをかけるたびに熱くなる排気マニホールドは、この熱疲労でひびが入りやすいんだよ。このシミュレーターの「適用部品」を「排気マニホールド」に変えてみると、初期パラメータが実用的な値に変わるから確認してみて。
🙋
え、温度が変わるだけで壊れるんですか? どれくらいの温度差で危険なの?
🎓
それが、材料の組み合わせによるんだ。キーは「熱膨張係数差(Δα)」だね。例えば、スマホの基板にはんだ付けされたチップは、シリコンと基板(FR4)で熱膨張係数が大きく異なる。温度が変わると、くっついてるからお互いを引っ張り合って、内部に大きなひずみが生じるんだ。上の「温度範囲 ΔT」のスライダーを動かして、ΔTを大きくしてみてごらん。破壊サイクル数が一気に減るのがわかるよ。
🙋
「疲労延性係数」とか「疲労強度指数」って、シミュレーターに入ってる難しいパラメータはどこから決めるんですか?
🎓
良い質問だね。これらは材料固有の値で、実際には実験で求められるんだ。例えば、はんだの疲労延性係数ε'fは約0.3、疲労強度指数cは約-0.5とかだね。実務では材料メーカーのデータシートや論文から引っ張ってくることが多いよ。このツールでは「適用部品」を選ぶと、代表的な材料の値が自動入力されるようになっている。タービンブレード用の耐熱合金に変えて、寿命がどう変わるか比べてみるといいよ。

よくある質問

接合する2つの材料の線熱膨張係数の差を入力します。例えば、はんだと銅基板では、はんだのα(約21~25×10⁻⁶/°C)と銅のα(約17×10⁻⁶/°C)の差、約4~8×10⁻⁶/°Cを目安にしてください。
いいえ、はんだ接合部に加え、タービンブレードや排気マニホールドなど、温度変動と熱膨張差が疲労原因となる異種材料接合部や高温部品にも適用可能です。ただし、材料の塑性挙動がCoffin-Manson則に従うことが前提です。
はい、その通りです。実際の動作サイクルにおける最高温度と最低温度の差をΔTとして入力してください。ただし、急激な温度変化(熱衝撃)がある場合は、平均的な温度振幅よりも最大振幅を採用すると安全側の評価となります。
Coffin-Manson則は経験則であり、材料定数(延性係数・疲労延性指数)が適切であれば、オーダー精度(±2倍程度)で一致することが多いです。ただし、クリープや酸化の影響が大きい高温環境では誤差が拡大するため、安全率を考慮してください。

実世界での応用

電子機器・半導体パッケージ:スマートフォンや車載ECUなど、電源のON/OFFによる発熱サイクルが絶え間なく発生します。シリコンチップと樹脂基板(はんだ接合)の熱膨張差が大きな課題で、Coffin-Manson則を用いて信頼性寿命(例えば10年)を満たす設計が行われています。

自動車エンジン・排気系部品:エンジン始動時の急激な温度上昇と停止後の冷却を毎日繰り返します。特に鋳鉄製マニホールドとステンレス製排気管の接合部など、異種材料接合部の熱疲労寿命評価に本則が不可欠です。

発電・航空宇宙用タービン:ガスタービンブレードは高温燃ガスにさらされ、冷却空気孔周辺などで大きな温度勾配が生じます。超合金などの高価な材料の寿命を予測し、保守間隔を決定するために精密な熱疲労解析が実施されます。

太陽光発電設備:屋外に設置されるパワーコンディショナーなどの金属筐体は、昼夜や季節による大きな温度サイクルに曝されます。溶接部やボルト締結部の熱疲労による劣化を評価する際の指針として利用されています。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始めるとき、いくつか気をつけてほしいポイントがあるよ。まず、「計算結果の寿命サイクル数は絶対的な破壊日時ではない」ということ。これは特に重要。例えば、計算結果が10,000サイクルだったからといって、10,000回目の温度変化で確実に壊れるわけじゃないんだ。Coffin-Manson則はあくまで「目安」や「比較のための指標」。実際の製品寿命は、計算値に安全率(例えば3や10)をかけて決めることが多い。材料のバラつきや製造プロセス、想定外の過酷条件を考慮するためだね。

次に、パラメータ「温度範囲ΔT」の取り方。一番多い間違いは、単に最高温度と最低温度の差を使うことだ。実際には、部品が定常状態に達するまでの温度変化、つまり「安定した高温状態」と「安定した低温状態」の差を使う必要がある。例えばエンジン始動時、排気マニホールドは室温から800°Cまで上がるけど、すぐに800°Cで安定するわけじゃない。暖機中の過渡的な温度揺らぎを全部含めると、必要以上に厳しい評価になってしまうから注意して。

最後に、「熱ひずみ」が全て塑性ひずみになるわけではないという点。ツールの内部では、計算された全熱ひずみ $\Delta\varepsilon_{th}$ の全てが塑性ひずみ振幅 $\Delta\varepsilon_p / 2$ として扱われているけど、現実には弾性ひずみも含まれる。材料が硬かったり、拘束が弱かったりすると、ひずみの大部分が弾性で済んでしまい、計算より実際の寿命が長くなることもある。逆にはんだのように柔らかい材料では、ほぼ全てが塑性ひずみになるから計算と現実が近くなる。材料の「降伏強さ」を意識することが、結果を正しく解釈するコツだ。

使い方ガイド

  1. 温度変動幅(ΔT)を入力:排気マニホールドの場合、始動時から定常運転までの温度差(例:20℃~600℃で580℃)を設定します
  2. 材料の熱膨張係数(α)と弾性率(E)を選択:アルミニウム合金A356なら α=21×10⁻⁶/℃、鋳鉄ならα=12×10⁻⁶/℃を入力してください
  3. 平均温度(Tm)を指定:はんだ接合部は-40℃~125℃の用途なら平均42℃、タービンブレードは平均800℃などと設定してから計算を実行します

具体的な計算例

鋳鉄製排気マニホールド:ΔT=500℃、α=12×10⁻⁶/℃、E=160 GPa、平均温度=350℃の場合、熱ひずみΔε_th=6.0×10⁻³(0.6%)と算出されます。Coffin-Manson則c=-0.5を適用すると、寿命Nf≒3,200サイクルと推定され、年間1,000始動なら3年程度の耐久性です。はんだ接合部(SAC305:E=50 GPa、α=24×10⁻⁶/℃、ΔT=160℃)では熱ひずみ3.8×10⁻³、Nf≒15,000サイクルになります。

実務での注意点