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材料力学

粘弾性モデル計算シミュレーター

Maxwell・Kelvin-Voigt・SLS モデルのクリープ・応力緩和をシミュレーション。バネ-ダッシュポットのアニメで変形を可視化し、貯蔵弾性率 E' と tanδ の周波数依存性も計算します。

モデル選択

材料パラメータ

解析設定

計算結果
緩和時間 τ (s)
E' @ ωτ=1
E'' @ ωτ=1
tanδ @ ωτ=1
クリープ(一定応力下のひずみ)& 応力緩和(一定ひずみ下の応力)
バネ-ダッシュポット モデルアニメーション — クリープ挙動

一定荷重 σ₀ を印加したときのモデル変形をアニメーションで表示します。

動的弾性率 E' および E'' vs 角周波数 ω(ログスケール)
理論・主要公式

粘弾性モデルシミュレーターとは

🙋
「粘弾性」って、弾性と粘性が両方ある材料ということですか?ゴムとかプラスチックがそうなんですか?
🎓
その通り!簡単に言うと「ゴムのように引っ張るとすぐ伸びるけど、長時間荷重をかけると少しずつ変形が増えていく」という挙動をする材料だよ。バネ(瞬間的な弾性)とダッシュポット(時間依存の粘性)を組み合わせたモデルで表現する。「モデルアニメーション」タブに切り替えると、実際のバネとダッシュポットが荷重を受けて動く様子が見えるよ。
🙋
MaxwellとKelvin-Voigtの違いが分かりません。どっちもバネとダッシュポットのセットですよね?
🎓
違いは「直列か並列か」だよ。Maxwellは直列で、バネが即座に変形した後、ダッシュポットが流れ続ける(クリープが無限大に続く)。Kelvin-Voigtは並列で、ダッシュポットがバネの変形を「遅らせる」から、クリープは最終的に平衡値に収まる。「クリープ/緩和」タブで両方を確認してみて。Maxwellのひずみが直線的に増え続けるのに対し、KVは飽和するのがよくわかるよ。
🙋
「緩和時間τ」がパネルに表示されています。これが大きいとどういう意味ですか?
🎓
緩和時間τ = η/E は「応力が初期値の約37%(e⁻¹)まで落ちるのにかかる時間」の目安だ。τが大きいほど長い時間をかけてゆっくり緩和する。例えば天然ゴムはτが数秒〜分のオーダー、金属クリープでは何時間・何日にもなる。シミュレーターでηスライダーを大きくするとτが増えて、グラフの緩和曲線の「減り方」がなだらかになるのが見えるよ。
🙋
「動的特性」タブに「E'とE''」が出てきます。振動数が上がるとE'が増えるのはどういうことですか?
🎓
高速な振動(高周波)だと、ダッシュポットが「流れる暇がない」からバネだけが働いて硬く感じる。遅い変形(低周波)だと粘性成分が効いて柔らかくなる。タイヤのゴムで言うと、急ブレーキ(高速)時は硬めで制動力が出やすく、長時間の一定荷重(低速)ではじわじわ変形するんだ。SLSモデルにして「動的特性」タブを見ると、低周波ではE∞(平衡弾性率)に収束して、高周波ではEに収束する様子が確認できる。
🙋
tanδが大きい材料って、何に使われるんですか?
🎓
tanδ(損失正接)は振動エネルギーを熱に変換する効率の指標だ。大きいほど制振・吸音性能が高い。具体的には自動車のマウント部品(エンジン振動の遮断)、防振ゴム、吸音材など。逆に構造部品では繰り返し荷重で発熱して劣化するからtanδを小さくしたい。面白いのはタイヤで、wet グリップには高tanδが必要だが、転がり抵抗(燃費)の低減には低tanδが必要というトレードオフがある。

物理モデルと数式

Maxwellモデル(直列接続)

$$\text{クリープ: } \varepsilon(t) = \frac{\sigma_0}{E} + \frac{\sigma_0}{\eta} t$$ $$\text{応力緩和: } \sigma(t) = E\varepsilon_0 \exp\!\left(-\frac{t}{\tau}\right), \quad \tau = \frac{\eta}{E}$$

Kelvin-Voigtモデル(並列接続)

$$\text{クリープ: } \varepsilon(t) = \frac{\sigma_0}{E}\left(1 - e^{-t/\tau}\right), \quad \tau = \frac{\eta}{E}$$

応力緩和はδ関数的(瞬間的)で、以降はE·ε₀ 一定(弾性体と同様)。

SLS(標準線形固体)モデル

$$J(t) = \frac{1}{E_\infty} - \left(\frac{1}{E_\infty} - \frac{1}{E+E_\infty}\right) e^{-t/\tau}$$

動的弾性率(正弦振動 $\omega$ に対して)

$$E'(\omega) = E_\infty + \frac{(E-E_\infty)\,(\omega\tau)^2}{1+(\omega\tau)^2}, \quad E''(\omega) = \frac{(E-E_\infty)\,\omega\tau}{1+(\omega\tau)^2}$$ $$\tan\delta = \frac{E''(\omega)}{E'(\omega)}$$

$\omega\tau = 1$(つまり振動周期が緩和時間に等しいとき)でtanδが最大になります。

よくある質問

高分子材料(プラスチック・ゴム・エラストマー)、生体組織(腱・軟骨・血管)、アスファルト、食品ゲル、粘土など、時間依存の変形挙動を示す材料全般に適用されます。金属でも高温・高応力下では粘弾性的(クリープ)挙動が無視できなくなります。
SLSモデルでは、長時間荷重を続けると変形は有限の値に収束します。その収束先での弾性率がE∞(平衡弾性率)です。Maxwellモデルでは流動が続くためE∞→0ですが、SLSでは固体的な剛性が残ります。スライダーでE∞を変えると長時間のクリープ挙動が変化するのが確認できます。
DMAは試験片に正弦波変位を与え、応力の振幅と位相差を計測してE'・E''・tanδを求める試験です。「動的特性」タブの横軸ωがDMAの周波数(Hz×2π)に対応し、縦軸がDMAの出力値に対応します。実測したDMA曲線のピーク周波数や高周波漸近値をシミュレーターのEやηに当てはめることでモデルパラメータの推定ができます。
実際の高分子材料は単一の緩和時間ではなく、複数の緩和時間が重畳した広い緩和スペクトルを持ちます。このとき$G(t) = G_\infty + \sum_i G_i e^{-t/\tau_i}$の形で表すのがProny系列です。本ツールは1つの緩和時間を持つ最も単純なモデルですが、概念理解の入門として有用です。FEA(有限要素法)ソフトでは材料定義にProny係数を直接入力する場合が多いです。
高分子材料では温度が上がるとダッシュポットの粘性ηが低下し、緩和時間τが短くなります。この関係は「時間-温度換算則(WLF則)」で記述でき、低温での長時間挙動と高温での短時間挙動は等価です。つまり、夏のアスファルト(高温・低τ)と冬のアスファルト(低温・高τ)は、それぞれ異なる粘弾性状態にあります。
AnsysやAbaqusなどのFEAソフトでは、材料定義にProny系列のパラメータ(剛性比giと緩和時間τi)を入力します。まずDMA試験でE'・E''のデータを取得し、Prony係数にフィッティングして入力値を決めます。本ツールで求めたE・η・E∞をSLSモデルの出発点として、より複雑な多項Prony系列のフィッティング初期値として使えます。

実世界での応用

産業応用例:自動車用タイヤの制振設計
自動車業界では、タイヤのゴム材料にSLSモデルを適用し、走行時のクリープ変形と応力緩和をシミュレーション。具体的には、ブリヂストンやミシュランが開発する低燃費タイヤのトレッドゴム配合最適化に活用。周波数依存のtanδを解析し、乗り心地とグリップ性能のバランスを数値的に評価している。

研究・教育での活用:高分子材料の粘弾性特性理解
大学の材料工学実験では、本シミュレーターを用いて学生がMaxwell・Kelvin-Voigtモデルの違いを視覚的に学習。バネ-ダッシュポットのアニメーションにより、クリープ曲線と応力緩和曲線の物理的意味を直感的に理解できる。研究では、新規バイオポリマーの動的粘弾性測定結果とモデルフィッティングに利用。

CAE解析との連携:構造解析ソフトへの物性値提供
実務では、本シミュレーターで算出した動的弾性率とtanδの周波数依存データを、ANSYSやAbaqusなどのFEM解析に受け渡す。例えば、電子機器の樹脂ケースにおける衝撃吸収設計や、建築用シーリング材の長期耐久性評価において、粘弾性パラメータを事前に決定する前処理ツールとして位置づけられている。

よくある誤解と注意点

「バネとダッシュポットの直列(Maxwell)はクリープで無限変形する」と思いがちですが、実際は応力緩和の挙動を正確に記述するためのモデルであり、クリープ試験では負荷直後に瞬間弾性変形が生じた後、ダッシュポットが粘性流動を起こして時間とともに変形が増大し続けます。定常クリープ領域では変形が止まらないため、長時間のクリープ評価には注意が必要です。

「Kelvin-Voigtモデルは応力緩和を正しく再現できる」と思いがちですが、実際はこのモデルでは瞬間的な弾性変形が発生せず、負荷時に変形が遅れて現れる「遅延弾性」を表現するのに適しています。応力緩和では、瞬間的なひずみを与えてもダッシュポットが即座に変形を妨げるため、応力が無限大に発散する非現実的な結果になります。したがって、緩和現象の解析にはSLS(標準線形固体)モデルを用いるのが適切です。

「動的弾性率とtanδの周波数依存性は材料の種類によらず同じ傾向を示す」と思いがちですが、実際はモデルによって貯蔵弾性率・損失弾性率の周波数応答が大きく異なります。例えばMaxwellモデルでは低周波で貯蔵弾性率がゼロに近づくのに対し、Kelvin-Voigtモデルでは低周波でも有限の値を保ちます。tanδのピーク周波数もモデルによって変化するため、実測データと照合する際はモデル選択とパラメータ同定に注意が必要です。

使い方ガイド

  1. 材料モデル選択:Maxwell、Kelvin-Voigt、SLS(Standard Linear Solid)から構成モデルを選択します
  2. 材料定数入力:初期弾性率E(Pa)、長時間弾性率Einf(Pa)、粘度η(Pa·s)をそれぞれ入力フィールドに設定します
  3. 応力条件設定:初期応力sig0(Pa)の大きさを指定し、クリープまたは応力緩和の計算タイプを選択します
  4. 周波数範囲設定:貯蔵弾性率と損失正接の周波数依存性を計算する場合、0.01~1000Hzの周波数範囲を指定します
  5. 計算実行:シミュレーション実行ボタンを押下し、時間領域および周波数領域の応答曲線を表示します

具体的な計算例

アクリル樹脂のSLSモデルによるクリープシミュレーション:E=3.2GPa、Einf=2.1GPa、η=1.5×10^11Pa·sで初期応力2MPa負荷時、10秒後のクリープひずみは約0.15%、100秒後は0.32%に到達します。同じ条件で応力緩和では1Hzで貯蔵弾性率E'=2.8GPa、損失正接tanδ=0.08となり、タイムスケール log(η/E)により低周波側での応力低下を正確に予測できます

実務での注意点

  1. Maxwell液体モデルは無限クリープを示すため、長期変形予測が必要な場合はKelvin-VoigtまたはSLSモデルを採用してください
  2. ゴム材料ではηが10^7~10^9Pa·sと小さく、ポリマーフォームでは10^10を超えるため、材料カタログから正確な粘度値を取得してください
  3. 温度依存性はWLF則で補正し、基準温度からの温度変化ΔTごとにηを再計算する必要があります
  4. 金型充填や衝撃吸収設計では、ピーク周波数での tanδ最大値に注目し、減衰効率を評価してください