矩形導波管モード計算 戻る
電磁気・マイクロ波工学

矩形導波管モード計算シミュレーター

矩形導波管のTE/TMモードの電磁界分布をリアルタイム可視化。カットオフ周波数・導波管波長・位相速度・群速度を自動計算。分散図も表示。

規格プリセット
導波管寸法
長辺 a (mm)
mm
短辺 b (mm)
mm
動作周波数 f (GHz)
GHz
モード選択
計算結果
f_c (GHz)
λ_g (mm)
v_p / c
v_g / c
波動インピーダンス Z (Ω)
場の分布
理論・主要公式
$$f_c = \frac{c}{2}\sqrt{\left(\frac{m}{a}\right)^2+\left(\frac{n}{b}\right)^2}$$ 導波管波長: $\lambda_g = \lambda / \sqrt{1-(f_c/f)^2}$
群速度: $v_g = c\sqrt{1-(f_c/f)^2}$

矩形導波管モード計算シミュレーターとは

🙋
矩形導波管って、中が空洞なのにどうやって電波を伝えるんですか?普通のケーブルと何が違うの?
🎓
大まかに言うと、金属の壁で電波を反射させながら進ませる「電波のパイプ」だね。同軸ケーブルは中心導体があるけど、導波管は中が空気だ。シミュレーターで「WR-90」を選んでみて。これが実務で一番よく使われる10GHz帯の規格だ。長辺aが約23mmに設定されるよ。
🙋
「TE10モードが基本モード」って説明を見ました。この「10」って何の数字?上のスライダーでmとnを変えると何が起こるんですか?
🎓
mとnは、長辺と短辺方向の電界・磁界の山の数(半波長の数)なんだ。TE10なら、長辺方向に1つの山、短辺方向に変化なし。m=2にすると、長辺方向に山が2つ現れる「TE20モード」になる。シミュレーターでmを1から2に変えてみると、電界パターンが大きく変わるのがわかるよ。カットオフ周波数も跳ね上がる。
🙋
なるほど!でも、カットオフ周波数より低い周波数では伝わらないって、どういうことですか?動作周波数fを下げてみたら、導波管波長がすごく長くなりました。
🎓
それが導波管の最大の特徴で、ハイパスフィルタのように働くんだ。fがfcに近づくと、分母が0に近づくからλgは無限大に発散する。つまり、波が進めなくなる。逆にfをどんどん上げると、λgは自由空間の波長λに近づく。右の分散図で、fc付近で曲線が急激に立ち上がっているのが確認できるね。

よくある質問

その周波数では導波管内で電磁波は伝搬できず、指数関数的に減衰するエバネッセントモードとなります。シミュレーター上では電磁界分布が表示されず、分散図でも伝搬領域外としてグレー表示されます。
TEモードは電界が伝搬方向に成分を持たず(Ez=0)、磁界がz成分を持ちます。TMモードは磁界がz成分を持たず(Hz=0)、電界がz成分を持ちます。シミュレーターではモード選択で切り替え可能です。
aは長辺、bは短辺で、必ずa > bとなるように入力してください。一般的な矩形導波管ではa = 2bが標準です。寸法を変えるとカットオフ周波数やモードの順序が変化するため、目的の周波数帯に合わせて調整します。
横軸に周波数、縦軸に位相速度や群速度をプロットしたグラフで、各モードの伝搬特性が一目で分かります。カットオフ周波数付近で位相速度が急増し、群速度がゼロに近づく様子を確認できます。

実世界での応用

衛星通信・レーダー送受信機:地上局のパラボラアンテナと送受信機を結ぶマイクロ波伝送路として広く使用されます。低損失で大電力伝送が可能なため、WR-137(5.8GHz帯)やWR-28(26.5-40GHz帯)など、周波数帯に応じた規格導波管が用いられます。

加速器(粒子線源):電子線形加速器では、高周波電力を導波管で伝送し、加速管内部で強力な加速電界を形成します。ここでは位相速度を電子の速度に同期させる設計が重要になり、円盤荷重導波管などの特殊な構造が採用されます。

無線機・測定器の内部回路:ミリ波帯の周波数シンセサイザやスペクトラムアナライザ内部では、局部発振信号をフィルタやミキサに分配するために、小型の導波管(例えばEバンド用WR-12)がプリント基板上に実装されることがあります。

工業用加熱装置:電子レンジ(2.45GHz)は最も身近な例です。産業用では、プラスチック溶着や食品殺菌のために、マグネトロンで発生したマイクロ波を導波管で処理室へ導き、均一に照射します。

よくある誤解と注意点

まず、「導波管はただの金属の筒」と思っていませんか?実は、内面の導電率と表面粗さが損失に直結します。シミュレーターでは理想的と仮定していますが、実物では銅や銀メッキが使われ、特に高周波では表面が鏡面のように仕上げられます。例えば、10GHzで導電率が1割落ちると、伝送損失は数%増加する可能性があります。

次に、動作周波数の選定。カットオフ周波数より高ければ何でもOKというわけではありません。基本モード(TE10)以外の高次モードが伝搬し始める周波数も考慮が必要です。例えばWR-90(a=22.86mm, b=10.16mm)では、TE10モードのfcは約6.56GHzですが、次に現れるTE20モードのfcは約13.1GHzです。実務では、単一モードで安定して伝送するため、「1.25×fc ~ 1.9×fc」あたりを動作帯域の目安とすることが多いです。シミュレーターでm=2, n=0に切り替えてfcを確認し、「混信しない安全地帯」を探す練習をしましょう。

最後に、寸法の「名目値」と「実効値」の違い。解説で出てくる寸法a, bは「内寸」です。しかし、特に角Rがついていたり、フランジ接続部で不連続性が生じたりすると、実効的な電気的寸法はわずかに変わります。高精度が要求されるフィルタや共振器の設計では、このずれをシミュレーションで補正する必要が出てきます。

使い方ガイド

  1. 導波管の短辺a(mm)と長辺b(mm)をスライダーで設定します。標準的なWR-90型は22.86×10.16mm、WR-62型は15.8×7.9mmです
  2. 動作周波数f(GHz)を入力します。例えばX帯(8-12GHz)での設計時はf=10GHzを設定
  3. TE₁₀モード(最低次)またはTE₂₁などのモード選択後、計算ボタンを押すとカットオフ周波数f_cが自動算出されます
  4. 導波長λ_g、位相速度v_p、群速度v_gの値を確認し、波動インピーダンスZを用いて結合効率を評価します

具体的な計算例

WR-90導波管(a=22.86mm、b=10.16mm)でTE₁₀モードの場合、カットオフ周波数はf_c=6.56GHzです。f=10GHzで動作させると導波長λ_g=32.4mmになり、位相速度v_p/c=1.31、群速度v_g/c=0.544となります。波動インピーダンスは約501Ωとなり、同軸ケーブル(50Ω)との接続時には四分波長整合器が必要です。f_c以下の周波数では信号が減衰するため実用不可となります

実務での注意点

  1. マイクロ波通信アンテナ設計では、使用周波数がf_cの1.2倍以上であることを確認し、不要なモード励振を防ぎます
  2. 同一導波管内で複数モード(TE₁₀とTE₂₁など)が共存する場合、最高周波数がTE₂₁のf_c以下に制限されて帯域幅が狭まります
  3. 加工公差がa,bの±0.1mm程度あるとf_cが数%変動するため、電子ビーム加工またはプレシジョン切削が必須です
  4. 室温25℃での計算値が標準ですが、極低温やmmWaveでは誘電率変化を補正する必要があります