応力テンソル [MPa]
青: 垂直応力 / オレンジ: せん断応力(対称のため上三角のみ入力)
純引張り
純せん断
2軸応力
複合荷重
降伏応力 σy [MPa]: 250
計算する
特性方程式
$$\sigma^3 - I_1\sigma^2 + I_2\sigma - I_3 = 0$$
$I_1=\sigma_{xx}+\sigma_{yy}+\sigma_{zz}$(第1不変量)
Von Mises: $\sigma_{vm}=\sqrt{\tfrac{(\sigma_1-\sigma_2)^2+(\sigma_2-\sigma_3)^2+(\sigma_3-\sigma_1)^2}{2}}$
応力テンソルって何を表してるの?
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「応力テンソル」って名前だけ聞くとすごく難しそうで…σxxとかτxyとか、これって全部別々の意味があるんですか?
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ざっくり言うと、物体の中の1点を骰子(サイコロ)みたいな小さな立方体で切り取ったとき、その6面それぞれにかかる力を表しているんだ。σxxはx方向を向いた面にx方向に押す(引く)力、τxyはx方向を向いた面をy方向にずらそうとする力。3次元だと面が6つ(対称なので実際は3面)あって、それぞれに垂直と横向きの2つの力がかかるから、合計6成分になるってわけ。
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なるほど。でも、じゃあ「主応力」って何ですか?ツールで「純引張り」プリセットを選ぶとσ1だけ値が出て、σ2とσ3がゼロになりましたけど…
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鋭い!主応力は「骰子を回転させてせん断応力がぴったりゼロになる特別な向き」のときの垂直応力だよ。純引張りなら最初からτがゼロだからそのまま出る。面白いのは「純せん断」プリセット。τxyだけ入れてみて。σ1とσ3に値が出て、それが+とーの対称になるでしょ? せん断力も回転させた目で見ると、斜め方向の引張りと圧縮になるんだ。
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本当だ!せん断だけなのに主応力が出てきた。あとVon Mises応力って、材料の降伏強さと比べるものですよね?降伏マージンタブで「σy」スライダーを動かしてみたら、棒グラフが変わりました。
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そう、そのσyがその材料の「降伏しない限界」。Von Mises応力がそれを超えたら降伏する。実務では、CAE解析で部品全体のVon Mises応力分布を見て、「降伏強さの何割まで使っているか?」を確認するんだ。マージンが小さいと設計を見直す。3Dモール円タブでは、最外円の半径が最大せん断応力τmax で、これがTresca基準の判定値になるよ。Tresca基準はVon Misesより少し保守的(安全側)な設計に使われる。
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「複合荷重」プリセットで試したら、Von MisesがTrescaより少し低くなりました。これはなぜですか?
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Von Mises基準は「せん断ひずみエネルギー」が一定になる楕円形の降伏曲面を使うのに対して、Tresca基準は六角形の降伏曲面を使う。楕円は六角形の外側に収まるから、Von Mises基準では少し「余裕がある」と判断される場合があるんだ。実験的には、延性金属ではVon Misesの方が実際の降伏をよく再現することが多い。でも保守的な設計のためにあえてTrescaを使うこともあるよ。
主応力の算出理論
任意の応力テンソルから主応力を求めるには、テンソルの固有値問題を解きます。固有方程式を展開すると3次方程式になります:
$$\sigma^3 - I_1\sigma^2 + I_2\sigma - I_3 = 0$$
応力不変量は $I_1 = \sigma_{xx}+\sigma_{yy}+\sigma_{zz}$, $I_2 = \sigma_{xx}\sigma_{yy}+\sigma_{yy}\sigma_{zz}+\sigma_{zz}\sigma_{xx} - \tau_{xy}^2 - \tau_{yz}^2 - \tau_{zx}^2$, $I_3 = \det(\boldsymbol{\sigma})$ です。
主応力 $\sigma_1 \ge \sigma_2 \ge \sigma_3$ から、降伏判定のための等価応力を計算します:
$$\sigma_{vm} = \sqrt{\frac{(\sigma_1-\sigma_2)^2 + (\sigma_2-\sigma_3)^2 + (\sigma_3-\sigma_1)^2}{2}}, \quad \tau_{max} = \frac{\sigma_1 - \sigma_3}{2}$$
Von Mises基準:$\sigma_{vm} \le \sigma_y$(降伏強さ) Tresca基準:$\tau_{max} \le \sigma_y/2$(等価的に $\sigma_1 - \sigma_3 \le \sigma_y$)
実際の設計への応用
軸の強度設計: 回転軸には曲げによる垂直応力とトルクによるせん断応力が同時に作用します。このシミュレーターにσxxに曲げ応力、τxyにねじり応力を入力することで、合成応力状態を正確に評価できます。危険断面でのVon Mises応力が降伏強さを超えないように軸径を決定します。
圧力容器: 内圧を受けるシリンダーの胴部には、周方向応力(フープ応力)と軸方向応力が作用します。2軸プリセットを参考に応力を入力し、Von Mises応力と材料の許容値を比較することで板厚設計を行います。
地盤・土木構造: 土の中の応力状態を評価し、主応力方向から破壊面の方向を予測するのに使います。3DモールΙの最外円の半径が最大せん断応力で、モール・クーロン破壊基準との比較が可能です。
よくある質問
応力テンソルが対称というのはどういう意味ですか?
応力テンソルは9成分のうちτij=τjiの関係(対称性)が成り立つため、独立成分は6つです(σxx, σyy, σzz, τxy, τyz, τzx)。この対称性は角運動量の釣り合い条件から導かれます。つまり、τxy(x面のy方向せん断)とτyx(y面のx方向せん断)は必ず等しくなります。このシミュレーターでも対称成分は参照値のみ表示し、入力は6成分です。
Von Mises応力が降伏強さを超えたら必ず壊れますか?
延性金属では、Von Mises応力が降伏強さ(0.2%耐力)を超えると塑性変形(永久変形)が始まります。「壊れる(破断)」のではなく「変形が残る」状態です。破断は引張強さを超えた段階です。ただし、脆性材料(鋳鉄、セラミックス)では降伏と破断がほぼ同時に起こるため、降伏強さと引張強さがほぼ同じになります。材料の種類によって適切な破壊基準を選ぶ必要があります。
3Dモール円で3つの円が描かれるのはなぜですか?
3次元の応力状態には3つの主応力があり、任意の2つの主応力の組み合わせ(σ1-σ2, σ2-σ3, σ1-σ3)それぞれに対してモール円が描けるためです。最外側の円(σ1-σ3)の半径が最大せん断応力τmax=(σ1-σ3)/2です。任意の断面での応力状態は、この3円が形成する領域内に必ず存在します。2次元(平面応力)では1つの円だけですが、3次元では必ず3つ描く必要があります。
応力不変量$I_1, I_2, I_3$の物理的意味は何ですか?
$I_1$(第1不変量)は応力テンソルのトレースで、3つの垂直応力の和です。静水圧的な体積変化(膨張・収縮)に関係します。$I_2$(第2不変量)はせん断ひずみエネルギーに関連し、Von Mises応力の算出にも使われます。$I_3$(第3不変量)はテンソルの行列式で、応力状態の「偏り」(引張主体か圧縮主体か)を表すLode角の計算に使われます。これらは座標系をどう選んでも変わらない「物理量の本質」です。
CAEソフトの解析結果から6成分をどうやって取り出しますか?
Abaqus、Ansys、Nastranなどの主要CAEソフトでは、各要素・節点の応力成分(S11, S22, S33, S12, S23, S13などの表記)を数値で出力できます。注目したい点(応力集中部など)の座標を特定し、その点の6成分を読み取ってこのシミュレーターに入力することで、より詳細な手計算確認ができます。また、CAEソフト自体もVon Mises応力を直接出力しますが、このツールで個別に確認することで理解が深まります。
Tresca基準はなぜVon Mises基準より保守的なのですか?
応力空間での降伏曲面の形状の違いによります。Von Mises基準は円柱(3次元では)または楕円形(π平面投影では)の降伏曲面を持ちます。Tresca基準は正六角形(プリズム状)の降伏曲面を持ち、Von Misesの楕円の内側に収まります。つまりTresca基準では、降伏楕円の辺の部分(2軸応力状態)で15%程度Von Misesより早く降伏と判断されます。純せん断状態での降伏強さは、Von Misesで$\sigma_y/\sqrt{3}$、Tresca で$\sigma_y/2$となります。