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構造解析 / 材料力学

応力テンソル変換シミュレーター

3次元応力テンソルの6成分を入力し、主応力・Von Mises応力・Tresca応力を即時計算。3Dモール円・応力要素図・降伏マージンをタブで可視化します。

応力テンソル [MPa]

青: 垂直応力 / オレンジ: せん断応力(対称のため上三角のみ入力)


計算結果
主応力 σ₁
MPa
主応力 σ₂
MPa
主応力 σ₃
MPa
Von Mises σvm
MPa
τmax (Tresca)
MPa
静水圧 σm
MPa
モール円
要素
理論・主要公式
$$\sigma^3 - I_1\sigma^2 + I_2\sigma - I_3 = 0$$

\(I_1=\sigma_{xx}+\sigma_{yy}+\sigma_{zz}\)(第1不変量)
Von Mises: \(\sigma_{vm}=\sqrt{\tfrac{(\sigma_1-\sigma_2)^2+(\sigma_2-\sigma_3)^2+(\sigma_3-\sigma_1)^2}{2}}\)

応力テンソルって何を表してるの?

🙋
「応力テンソル」って名前だけ聞くとすごく難しそうで…σxxとかτxyとか、これって全部別々の意味があるんですか?
🎓
大まかに言うと、物体の中の1点を骰子(サイコロ)みたいな小さな立方体で切り取ったとき、その6面それぞれにかかる力を表しているんだ。σxxはx方向を向いた面にx方向に押す(引く)力、τxyはx方向を向いた面をy方向にずらそうとする力。3次元だと面が6つ(対称なので実際は3面)あって、それぞれに垂直と横向きの2つの力がかかるから、合計6成分になるってわけ。
🙋
なるほど。でも、じゃあ「主応力」って何ですか?ツールで「純引張り」プリセットを選ぶとσ1だけ値が出て、σ2とσ3がゼロになりましたけど…
🎓
鋭い!主応力は「骰子を回転させてせん断応力がぴったりゼロになる特別な向き」のときの垂直応力だよ。純引張りなら最初からτがゼロだからそのまま出る。面白いのは「純せん断」プリセット。τxyだけ入れてみて。σ1とσ3に値が出て、それが+とーの対称になるでしょ? せん断力も回転させた目で見ると、斜め方向の引張りと圧縮になるんだ。
🙋
本当だ!せん断だけなのに主応力が出てきた。あとVon Mises応力って、材料の降伏強さと比べるものですよね?降伏マージンタブで「σy」スライダーを動かしてみたら、棒グラフが変わりました。
🎓
そう、そのσyがその材料の「降伏しない限界」。Von Mises応力がそれを超えたら降伏する。実務では、CAE解析で部品全体のVon Mises応力分布を見て、「降伏強さの何割まで使っているか?」を確認するんだ。マージンが小さいと設計を見直す。3Dモール円タブでは、最外円の半径が最大せん断応力τmax で、これがTresca基準の判定値になるよ。Tresca基準はVon Misesより少し保守的(安全側)な設計に使われる。
🙋
「複合荷重」プリセットで試したら、Von MisesがTrescaより少し低くなりました。これはなぜですか?
🎓
Von Mises基準は「せん断ひずみエネルギー」が一定になる楕円形の降伏曲面を使うのに対して、Tresca基準は六角形の降伏曲面を使う。楕円は六角形の外側に収まるから、Von Mises基準では少し「余裕がある」と判断される場合があるんだ。実験的には、延性金属ではVon Misesの方が実際の降伏をよく再現することが多い。でも保守的な設計のためにあえてTrescaを使うこともあるよ。

主応力の算出理論

任意の応力テンソルから主応力を求めるには、テンソルの固有値問題を解きます。固有方程式を展開すると3次方程式になります:

$$\sigma^3 - I_1\sigma^2 + I_2\sigma - I_3 = 0$$

応力不変量は \(I_1 = \sigma_{xx}+\sigma_{yy}+\sigma_{zz}\), \(I_2 = \sigma_{xx}\sigma_{yy}+\sigma_{yy}\sigma_{zz}+\sigma_{zz}\sigma_{xx} - \tau_{xy}^2 - \tau_{yz}^2 - \tau_{zx}^2\), \(I_3 = \det(\boldsymbol{\sigma})\) です。

主応力 \(\sigma_1 \ge \sigma_2 \ge \sigma_3\) から、降伏判定のための等価応力を計算します:

$$\sigma_{vm} = \sqrt{\frac{(\sigma_1-\sigma_2)^2 + (\sigma_2-\sigma_3)^2 + (\sigma_3-\sigma_1)^2}{2}}, \quad \tau_{max} = \frac{\sigma_1 - \sigma_3}{2}$$

Von Mises基準:\(\sigma_{vm} \le \sigma_y\)(降伏強さ)
Tresca基準:\(\tau_{max} \le \sigma_y/2\)(等価的に \(\sigma_1 - \sigma_3 \le \sigma_y\))

実際の設計への応用

軸の強度設計:回転軸には曲げによる垂直応力とトルクによるせん断応力が同時に作用します。このシミュレーターにσxxに曲げ応力、τxyにねじり応力を入力することで、合成応力状態を正確に評価できます。危険断面でのVon Mises応力が降伏強さを超えないように軸径を決定します。

圧力容器:内圧を受けるシリンダーの胴部には、周方向応力(フープ応力)と軸方向応力が作用します。2軸プリセットを参考に応力を入力し、Von Mises応力と材料の許容値を比較することで板厚設計を行います。

地盤・土木構造:土の中の応力状態を評価し、主応力方向から破壊面の方向を予測するのに使います。3DモールΙの最外円の半径が最大せん断応力で、モール・クーロン破壊基準との比較が可能です。

よくある質問

応力テンソルは9成分のうちτij=τjiの関係(対称性)が成り立つため、独立成分は6つです(σxx, σyy, σzz, τxy, τyz, τzx)。この対称性は角運動量の釣り合い条件から導かれます。つまり、τxy(x面のy方向せん断)とτyx(y面のx方向せん断)は必ず等しくなります。このシミュレーターでも対称成分は参照値のみ表示し、入力は6成分です。
延性金属では、Von Mises応力が降伏強さ(0.2%耐力)を超えると塑性変形(永久変形)が始まります。「壊れる(破断)」のではなく「変形が残る」状態です。破断は引張強さを超えた段階です。ただし、脆性材料(鋳鉄、セラミックス)では降伏と破断がほぼ同時に起こるため、降伏強さと引張強さがほぼ同じになります。材料の種類によって適切な破壊基準を選ぶ必要があります。
3次元の応力状態には3つの主応力があり、任意の2つの主応力の組み合わせ(σ1-σ2, σ2-σ3, σ1-σ3)それぞれに対してモール円が描けるためです。最外側の円(σ1-σ3)の半径が最大せん断応力τmax=(σ1-σ3)/2です。任意の断面での応力状態は、この3円が形成する領域内に必ず存在します。2次元(平面応力)では1つの円だけですが、3次元では必ず3つ描く必要があります。
\(I_1\)(第1不変量)は応力テンソルのトレースで、3つの垂直応力の和です。静水圧的な体積変化(膨張・収縮)に関係します。\(I_2\)(第2不変量)はせん断ひずみエネルギーに関連し、Von Mises応力の算出にも使われます。\(I_3\)(第3不変量)はテンソルの行列式で、応力状態の「偏り」(引張主体か圧縮主体か)を表すLode角の計算に使われます。これらは座標系をどう選んでも変わらない「物理量の本質」です。
Abaqus、Ansys、Nastranなどの主要CAEソフトでは、各要素・節点の応力成分(S11, S22, S33, S12, S23, S13などの表記)を数値で出力できます。注目したい点(応力集中部など)の座標を特定し、その点の6成分を読み取ってこのシミュレーターに入力することで、より詳細な手計算確認ができます。また、CAEソフト自体もVon Mises応力を直接出力しますが、このツールで個別に確認することで理解が深まります。
応力空間での降伏曲面の形状の違いによります。Von Mises基準は円柱(3次元では)または楕円形(π平面投影では)の降伏曲面を持ちます。Tresca基準は正六角形(プリズム状)の降伏曲面を持ち、Von Misesの楕円の内側に収まります。つまりTresca基準では、降伏楕円の辺の部分(2軸応力状態)で15%程度Von Misesより早く降伏と判断されます。純せん断状態での降伏強さは、Von Misesで\(\sigma_y/\sqrt{3}\)、Tresca で\(\sigma_y/2\)となります。

応力テンソル変換シミュレーターとは

3次元応力状態は、任意の直交座標系において対称テンソル\(\boldsymbol{\sigma} = \sigma_{ij}\)(\(i,j = x,y,z\))で記述され、6つの独立成分(\(\sigma_{xx}, \sigma_{yy}, \sigma_{zz}, \tau_{xy}, \tau_{yz}, \tau_{zx}\))により完全に定義されます。座標変換に伴う応力テンソルの成分変化は、方向余弦\(l_{ij}\)を用いて\(\sigma'_{pq} = l_{pi} l_{qj} \sigma_{ij}\)と表され、この変換則により主応力\(\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3\)(\(\sigma_1 \geq \sigma_2 \geq \sigma_3\))が固有値問題\(\det(\boldsymbol{\sigma} - \sigma \boldsymbol{I}) = 0\)の解として得られます。主応力から、せん断変形の指標であるTresca応力は\(\sigma_{\text{Tresca}} = \sigma_1 - \sigma_3\)、またエネルギー基準に基づくVon Mises応力は\(\sigma_{\text{VM}} = \sqrt{\frac{1}{2}[(\sigma_1 - \sigma_2)^2 + (\sigma_2 - \sigma_3)^2 + (\sigma_3 - \sigma_1)^2]}\)で計算されます。本シミュレーターはこれらの物理量をリアルタイムで算出し、降伏条件(例:\(\sigma_{\text{VM}} \leq \sigma_Y\))に基づく安全余裕を可視化することで、材料の塑性開始を直感的に評価可能とします。

実世界での応用

産業での実際の使用例
航空機産業(例:ボーイング787の主翼結合部)では、複合材と金属の接合部に生じる3軸応力状態を本シミュレーターで即座に主応力変換。設計段階でVon Mises応力を監視し、アルミ合金7075の降伏基準(耐力505MPa)に対するマージンをリアルタイム評価。自動車分野では、トヨタのエンジンブロック鋳造工程で、冷却時の熱応力テンソルを入力し、Tresca応力による割れ危険領域を特定。金型設計の試行錯誤を70%削減した実績があります。

研究・教育での活用
東北大学の材料力学講義では、学生が3Dモール円を操作し、任意切断面の応力ベクトルを可視化。従来の手計算では困難だった「せん断応力が最大となる面の方向」を直感的に理解。研究では、東京工業大学のマグネシウム合金圧延プロセスで、結晶塑性モデルの検証用に応力テンソル変換結果を使用。実験データとCAE予測の乖離を0.5%以内に収める校正ツールとして機能しています。

CAE解析との連携や実務での位置付け
ANSYSやAbaqusの大規模FEM解析後、全要素の応力テンソル6成分をCSV出力し、本ツールで降伏マージンを一括計算。従来はポスト処理に30分要した疲労評価が、即時フィルタリングにより重要箇所のみ抽出可能に。実務では、設計レビューの場で「応力要素図」を共有し、非専門家でも危険方向を把握。ISO 9001の設計検証プロセスにおいて、応力変換のトレーサビリティを担保する補助ツールとして位置づけられています。

よくある誤解と注意点

「主応力の方向は材料の変形方向と一致する」と思いがちですが、実際は主応力はあくまで「せん断応力がゼロとなる座標軸方向」を指すもので、変形の主軸とは必ずしも一致しません。特に異方性材料では応力とひずみの方向が異なるため、注意が必要です。

「Von Mises応力が降伏応力を下回れば絶対に安全」と思いがちですが、実際は降伏条件は材料の種類や負荷履歴、温度環境に依存します。特に脆性材料では最大主応力基準が適切な場合が多く、Von Mises基準を万能と見なさないように注意が必要です。

「3Dモール円の3つの円すべてが材料の破壊に関係する」と思いがちですが、実際は最大せん断応力は最大円の半径で決まります。Tresca基準では最小円と中間円は直接関係せず、3円すべてを同時に評価すると誤った降伏判定を招く恐れがあるため、注意が必要です。

使い方ガイド

  1. 6成分の応力値を入力:σxx、σyy、σzz(垂直応力)、τxy、τyz、τzx(せん断応力)をPa単位で入力
  2. シミュレーターが対称応力テンソルを自動構築し、固有値問題を解いて3つの主応力σ1≧σ2≧σ3を算出
  3. Von Mises応力(相当応力)とTresca応力を同時計算し、降伏判定と3Dモール円を可視化

具体的な計算例

軟鋼(降伏応力250 MPa)の溶接部に引張応力が作用する場合:σxx=180 MPa、σyy=60 MPa、σzz=0 MPa、τxy=40 MPa、τyz=0、τzx=0を入力すると、主応力σ1≈194 MPa、σ2=46 MPa、σ3=0 MPaが得られ、Von Mises応力は約184 MPa、Tresca応力は194 MPaとなり、安全率は1.36倍と判定されます。

実務での注意点