減磁 — CAE用語解説
減磁
先生、減磁ってEVのモーターで問題になると聞いたんですが、どういう現象ですか?
永久磁石(Nd-Fe-B等)が外部磁場や高温に晒されることで磁化量が永続的に低下する現象だ。モーターの磁石は固定子コイルから逆方向の強い磁場(短絡電流時やターンオフ時)を受けることがある——これが保磁力HcJを超えると磁石が「脱磁」して元に戻らなくなる。EV駆動モーターで減磁が起きるとトルクが低下してシステム性能が落ちる。特に温度が上がると保磁力HcJが低下するから、高温動作(100〜150℃)中の短絡故障が最も危険なシナリオだ。
定義
FEMで減磁リスクをどうやって評価するんですか?
電磁場FEA(JMAGやAnsys Maxwell)でモーター内部の磁束密度分布B(x,y,z)と反磁場H(x,y,z)を計算する。次に各磁石要素での動作点(B-H曲線上の位置)が「Bd(減磁ひざ点)」以下になっていないかをチェックする——Bd以下になると不可逆減磁が起きる。この解析を「最悪ケース電流(短絡電流3倍)」と「最高温度条件(150℃)」の組み合わせで実施する。JMAGの磁石減磁率コンター図で「減磁が起きている要素」を赤で可視化できる。
磁石設計での対策
減磁を防ぐ設計対策にはどんなものがありますか?
いくつかある。①Dy(ジスプロシウム)添加で保磁力HcJを向上させる——ただしDyはレアアース依存が増えてコスト増になる。②Grain Boundary Diffusion(GBD):Dyを磁石全体に添加する代わりに粒界だけに拡散させる技術——Dy使用量を大幅削減しながらHcJを改善できる。③磁石形状の最適化——IPM(埋込磁石型)モーターの磁石を分割・傾斜配置して逆方向磁場が集中する箇所を避ける。④熱設計で磁石温度の上限管理——FEM熱解析で磁石が130℃以上にならない冷却設計をする。
不可逆減磁と可逆減磁は違うんですか?
違う。可逆減磁は温度が上がって磁化が一時的に低下するが、冷却すると元に戻る——これは設計に織り込み済みの現象だ。問題は不可逆減磁で、磁気的ヒステリシス曲線の「ひざ点」(Bd)を超えて反磁場が加わると磁化量が永続的に低下する。動作温度での完全なB-H曲線(温度依存)を材料データとして持って、FEA結果を曲線上にプロットして「ひざを超えていないか」を確認するのが正確な評価だ。SUMITOMOやTDKなどの磁石メーカーが100〜180℃の温度パラメーターを持つB-Hデータを提供している。
関連用語
高温+大電流の組み合わせが最悪ケースなんですね。GBD技術でDy削減できるのは知りませんでした!
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