二元系状態図・レバー則 戻る
材料・破壊

二元系状態図・レバー則計算機

等晶系・共晶系・包晶系の状態図をリアルタイム描画。任意の温度・組成でレバー則による相分率と平衡組成を自動計算。

パラメータ設定
合金プリセット(組成)
成分 A 融点 T_mA
°C
成分 B 融点 T_mB
°C
合金組成 C₀ (mol%B)
%
凝固ギャップ係数 κ
冷却アニメーション
現在温度 T(スクラブ)
°C
冷却速度
×
計算結果(ライブ)
現在温度 T
存在相
液相分率 f_L
固相分率 f_α
液相組成 C_L
固相組成 C_α
液相線温度 T_L
固相線温度 T_S
冷却中の状態図(タイライン+レバー)
ミクロ組織(液中で成長する固相結晶)
理論・主要公式

二相共存領域(温度 T、合金組成 $C_0$)の相分率はレバー則で決まる:

$$f_\alpha = \frac{C_0 - C_L}{C_\alpha - C_L}, \quad f_L = 1 - f_\alpha = \frac{C_\alpha - C_0}{C_\alpha - C_L}$$

$C_L$:その温度の液相線組成、$C_\alpha$:固相線組成。タイラインの両端が $C_L,\,C_\alpha$、合金組成 $C_0$ が支点で、各相の分率はレバーアームの長さの逆比になる。

平衡凝固 vs 非平衡(シャイル式):

$$C_S = k\,C_0\,(1-f_S)^{k-1}, \quad k = \frac{C_\alpha}{C_L}$$

$k$:分配係数。$k<1$ のとき溶質は液相へ偏析(後退偏析)。

二元系状態図・レバー則計算機とは

🙋
「二元系状態図」って何ですか?教科書の図は複雑で、どこを見ればいいのかわかりません。
🎓
大まかに言うと、合金が温度と組成でどんな「状態」(液体か固体か、何という相か)になるかを示した地図だよ。このシミュレーターは等晶系(Cu-Niのように全組成で溶け合うタイプ)を題材に、合金組成C₀の溶湯を「再生」ボタンで冷やしていく様子を見せる。赤いマーカーが組成線に沿って温度軸を下りていき、液相線を横切ると凝固が始まり、固相線まで来ると完全に固まる。液相線より上は全部液体、固相線より下は全部固体、その間が「液体と固体が混ざった二相共存領域」だ。
🙋
二相共存領域って、液体と固体が混ざっているなら、どっちがどれくらいの割合でいるか知りたいです。どうやって計算するんですか?
🎓
そこで使うのが「レバー則」だ。冷却中、二相共存領域に入るとマーカーの高さに水平な「タイライン」が引かれ、両端が液相組成$C_L$と固相組成$C_\alpha$を示す。合金組成$C_0$を支点(テコの支点)に見立て、$C_L$側・$C_\alpha$側へのレバーアームの長さの逆比が、各相の分率になる。アニメ中は液相分率$f_L$・固相分率$f_\alpha$が刻々と変わるのが上の数値とミクロ組織(液中で成長する固相結晶)でわかる。「現在温度T」スライダーで手動スクラブもできるよ。実務では、鋳造品の凝固過程で出てくる液体と固体の量を予測するのに使うね。
🙋
「平衡凝固」と「非平衡凝固」の違いも出てきますが、現場ではどっちを考えるんですか?シミュレーターでどう見ればいいですか?
🎓
良い質問だ。平衡凝固は拡散が完全で均一な理想状態、非平衡凝固は拡散が遅くて組成が偏る現実に近い状態だ。このページではScheil式を参考式として示すだけで、偏析モデルのタブや分配係数kのスライダーは提供していない。実務では専用の凝固解析やCALPHADデータと照合して扱う必要がある。

よくある質問

いいえ、手動入力は不要です。本ツールでは等晶系・共晶系・包晶系の状態図を内蔵しており、選択した系に応じて液相線・固相線が自動で描画されます。温度スライダーを動かすだけで、その温度における平衡組成が計算され、レバー則による相分率も即座に表示されます。
レバー則は平衡状態における相分率を与えるもので、冷却速度が十分遅く拡散が完了する理想的な条件で成り立ちます。実際の鋳造など非平衡凝固では、シャイル方程式など別モデルが必要です。本ツールでは平衡計算が主ですが、非平衡の参考値としてシャイル方程式の結果も確認できます。
全体組成が単相領域から二相共存領域に入る境界(液相線や固相線)を跨ぐと、存在する相の種類が変わるため相分率が不連続に変化します。これは状態図上で組成が相境界を横切る際の正しい挙動であり、ツールはその境界を自動検出して計算を切り替えています。
現時点ではグラフの画像保存機能はありませんが、画面下部に表示される各相の分率・組成の数値を手動でコピーしてご利用いただけます。また、温度や全体組成を変えたときの変化をリアルタイムで確認できるため、教育資料や現象理解のためのデモ用途に最適です。

実世界での応用

合金設計・鋳造工程設計:新しい合金を開発する際、状態図とレバー則から予想される凝固シーケンス(どの温度でどの相がどれだけ析出するか)を計算します。これにより、鋳造時の収縮孔や偏析の発生しにくい組成範囲を絞り込むことができます。

溶接熱影響部(HAZ)の組織予測:溶接により急熱急冷される部分では、非平衡な凝固・相変態が起こります。二元系状態図と非平衡凝固モデルは、この部分で生じる脆い相の析出や組成偏析を予測する基礎データとして利用されます。

CAE凝固シミュレーションの前処理・検証:FEMなどによる大規模な凝固シミュレーションを行う前に、対象材料の状態図と簡単なレバー則計算で大局的な凝固挙動(凝固温度範囲、最終凝固部の位置など)を把握し、シミュレーション設定や結果の妥当性チェックに用います。

CALPHAD法による多元系計算の基礎理解:実用合金は3元素以上がほとんどです。その相平衡を計算するCALPHAD法の核心は、二元系状態図の熱力学データを拡張することにあります。本ツールで二元系の挙動を直感的に理解することが、複雑な多元系計算結果を解釈する第一歩になります。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始めるとき、いくつかつまずきやすいポイントがあるから気をつけてね。まず一つ目は、「全体組成は重さの割合(wt%)なのか、原子の割合(at%)なのか」を意識することだ。シミュレーターの入力はモル分率(at%に近い)が基本だけど、実務の材料規格表はwt%で書かれていることが多い。例えば、Al-Si合金の共晶点は約12.6wt%Siだけど、at%だと約18.6%になる。単位を混同すると、状態図上の位置を完全に間違えるから要注意だよ。

二つ目は、レバー則は「平衡状態」での計算だということ。実際の鋳造では冷却速度が速いから、計算通りに液相と固相の組成が均一にならない。ツールで平衡計算した結果は「理想的な限界値」として捉え、参考式として示したシャイル方程式と見比べて、どれだけ現実がズレるかを感覚的に掴むのがコツだ。例えば、分配係数kが0.5の合金で、凝固分率$f_S$が0.5のときの固相組成$C_S$は、平衡だと$C_0$に戻るけど、非平衡(シャイル式)だと$C_S = 0.5 C_0 (1-0.5)^{-0.5} \approx 0.707 C_0$ と、大幅に低いままになる。これが偏析の本質だ。

三つ目は、「二元系」の限界を理解すること。実用合金のほとんどはFe-Cr-Niのような三元系以上だ。このツールで学ぶ原理は基礎だけど、実際には第三の元素の影響で液相線や共晶温度が大きく動く。二元系の計算結果をそのまま実務に適用するのは危険で、あくまで「相平衡の考え方のトレーニングツール」と割り切ろう。

使い方ガイド

  1. 状態図パラメータを設定:純金属Aの融点(TmA、例:1538°C)と純金属Bの融点(TmB、例:1083°C)、共晶点の組成(xE、例:61.9 wt%)と温度(TE、例:1084°C)を入力します
  2. 調査対象の温度と組成を指定:レバー則で相分率を求めたい温度(例:1200°C)と合金組成(例:40 wt% B)を入力します
  3. 液相分率・固相分率を自動計算:二相共存領域では液相線と固相線の交点から両相の組成を読み取り、レバー則により f_L = (x₀-x_α)/(x_L-x_α) を計算します

具体的な計算例

Pb-Sn共晶系でxB=40wt%Sn、T=200°Cを設定すると、液相+α相領域になります。モデル上の液相組成は約54.6wt%Sn、α相組成は約5.5wt%Snで、レバー則により液相率は約70.3%、α相率は約29.7%です。

実務での注意点

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