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古典力学シミュレーター

フーコー振り子 シミュレーター — 自転による歳差

緯度・振り子長さ・重力加速度・経過時間を変えて、フーコー振り子の振動面が地球自転によってゆっくり回転していく様子を可視化。Ω·sinφ から歳差角速度と一回転時間をリアルタイム計算します。

パラメータ設定
緯度 φ
°
振り子長さ L
m
重力加速度 g
m/s²
経過時間 t
h

恒星日 86164.1 秒(地球の自転1回分)を基準に Ω_earth = 2π/T を用います。北半球では振動面が時計回り、南半球では反時計回りに見えます。

計算結果
振り子周期 T_osc
一回転に要する時間
歳差角速度
経過時間での歳差角
上から見た振動面(床)

中心=振り子の真下/青実線=現在の振動軸/灰破線=t=0 の振動軸/橙弧=歳差角 Δθ/N/E/S/W=方位

歳差角の時間変化(緯度比較)

横軸=経過時間 t (h)/縦軸=歳差角 Δθ (°)/青=現在の緯度/灰=赤道 (0°)、35°、極 (90°)/黄点=現在の (t, Δθ)

理論・主要公式

地球の自転角速度 $\Omega_\oplus$ は鉛直軸まわりに緯度 $\varphi$ の正弦倍だけ作用します。これがフーコー振り子の振動面を回転させる本質です。

単振り子の振動周期(微小振幅):

$$T_{\mathrm{osc}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{L}{g}}$$

緯度 $\varphi$ における歳差角速度:

$$\Omega_{\mathrm{pre}} = \Omega_\oplus \sin|\varphi|,\qquad \Omega_\oplus = \dfrac{2\pi}{86164.1\,\mathrm{s}} \approx 7.292\times10^{-5}\,\mathrm{rad/s}$$

一回転に要する時間と経過時間 $t$ における歳差角:

$$T_{\mathrm{pre}} = \dfrac{2\pi}{\Omega_{\mathrm{pre}}},\qquad \Delta\theta = \Omega_{\mathrm{pre}}\,t$$

$L$ は振り子長さ [m]、$g$ は重力加速度 [m/s²]。歳差は緯度の正弦のみに依存し、$L$ や質量に依存しません。北半球で時計回り、南半球で反時計回り、赤道で 0 です。

フーコー振り子 シミュレーターとは

🙋
理科の博物館でフーコー振り子を見たんですけど、なんで振り子の方向がだんだんズレていくんですか?振り子自体が回ってるんですか?
🎓
いい質問だ。振り子そのものは「絶対空間」では同じ方向に振れ続けてるんだ。動いてるのは地面のほう。地球が一日で1回転するから、床の上に立っている観測者から見ると振動面が逆向きにゆっくり回って見える。1851年にフーコーがパリのパンテオンで全長 67m、重さ 28kg の振り子を吊るして、地球自転を実験室の中で初めて目に見える形で証明した実験だよ。
🙋
上のシミュレーターで緯度を 0°(赤道)にすると、全然回らなくなりましたね。逆に北極にすると 1日でちょうど1回転します。
🎓
それが本質だ。歳差角速度は $\Omega_\oplus \sin\varphi$ で、緯度の正弦に比例する。北極では sin90°=1 で恒星日(23.93時間)と同じ周期で1回転、東京(緯度 35°)では sin35°≈0.574 だから約 41.7時間で1回転、赤道では sin0°=0 で全く回転しない。これだけで「自分が地球のどこにいるか」が振り子だけで分かるって、すごい話だろう?
🙋
じゃあ振り子を長くしても、回転速度は変わらないんですか?
🎓
変わらない。歳差は緯度だけの関数で、長さ L にも質量にも振幅にも依存しない。L が決めるのは振動の周期 $T = 2\pi\sqrt{L/g}$ のほうで、長くするとゆっくり振れるだけだ。じゃあなぜ実物のフーコー振り子は 60〜70m もあるかというと、空気抵抗で減衰しても何時間も振動を続けられるよう、重い錘と長い吊り線で慣性を稼ぐためだよ。
🙋
「コリオリ力」って言葉をよく聞きますが、フーコー振り子と関係ありますか?
🎓
同じ現象の別の見方だ。地球(回転系)から振り子を見ると、振動方向に対して常に直角にコリオリ力 $F = -2m\,\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}$ が働く。北半球ではこの力が運動方向の右側を向くため、振動面がじわじわ右(時計回り)に回されていく。南半球では左側=反時計回り。台風の渦の向きや弾道ミサイルの偏向と全く同じメカニズムなんだよ。
🙋
「歳差」っていう言葉、コマの首振りでも聞いたことがあるんですが?
🎓
よく気がついたね。広い意味で「ある軸の方向がゆっくり回ること」を歳差と呼ぶんだ。コマの軸が重力トルクで円錐を描く運動も、地球の自転軸が 26000年で1周する春分点歳差も、フーコー振り子の振動面の回転も、数学的には同じ枠組みで扱える。理学部の力学の授業では、最終週あたりにこれらが同じ式で繋がる感動を味わうよ。

よくある質問

フーコー振り子の振動面は「慣性系(遠くの恒星に対して固定された座標系)」で一定方向を向き続けます。地面が回る速さも慣性系基準で測る必要があり、これは恒星日 86164.1 秒に相当します。普段使う「1日 = 86400秒(太陽日)」は、地球が太陽に対して同じ向きを向くまでの時間で、自転に加えて公転による約 1° の余分な回転を含んでいます。北極でフーコー振り子が1回転する時間は太陽日ではなく恒星日で、約 23.934 時間です。
逆向き(反時計回り)になります。歳差角速度の大きさは |sin φ| で同じですが、コリオリ力の符号が反転するためです。シドニー(緯度 −34°)では振動面が反時計回りに約 43時間で1回転、赤道では sin0=0 で回転は起こりません。シミュレーターで緯度スライダーをマイナス側にすると、上から見た図の弧が逆向きに描かれることが確認できます。実際に南半球の博物館(ブエノスアイレスやメルボルン)のフーコー振り子は、北半球と逆方向に回って見えます。
日本では国立科学博物館(東京・上野)、京都大学の総合博物館、名古屋市科学館などに常設されています。世界では原型のフーコー振り子がパリ工芸博物館(CNAM)にあり、パンテオンにもレプリカがあります。多くの科学博物館では、振動の減衰を補うため磁気ドライブ装置で連続加振し、目盛り板の上を順に倒していくピンを並べて歳差を「見える化」する展示が定番です。緯度の異なる施設で観察を比較すると、回転速度の違いを実感できます。
本ツールは (1) 振幅が小さい単振り子近似、(2) 線形コリオリ理論(振動と歳差を分離)、(3) 摩擦・空気抵抗を無視、という前提で計算しています。実物では振幅が大きいと「楕円軌道」が発生して見かけの歳差を生む(マジョラナ効果)、空気抵抗で振動が減衰する、温度変化で吊り線の長さが変わる、などの摂動が混じります。実験室で正確に Ω·sinφ を測るには、振幅・温度・初期速度を厳密に制御する必要があります。それでも本式は実物の歳差を 1% 以内の精度で予測できます。

実世界での応用

地球自転の直接実証実験:1851年にフーコーがパンテオンで行った歴史的実験は、それまで天体観測でしか確認できなかった地球自転を、実験室規模で誰の目にも見える形で証明した最初の実例です。現代でも科学博物館の定番展示として、緯度依存性を持つ歳差を観察することで、地球が球状で自転している事実を体感できます。教育現場では「動かないものから動くものを推測する」という物理学の発想法を学ぶ教材として使われています。

慣性航法システム(INS):潜水艦・航空機・ミサイルの航法装置で使われる機械式ジャイロコンパスは、フーコー振り子と同じ「慣性系で軸方向が保たれる」性質を利用しています。コマの軸が地球自転を感じて方位を指し示すのは、まさに $\Omega_\oplus \sin\varphi$ が水平軸まわりにトルクを生むためです。GPSが使えない深海・宇宙・電子戦下では、レーザーリングジャイロや光ファイバージャイロなどフーコー振り子の現代版が依然として主役です。

気象・海洋のコリオリ力解析:台風が北半球で反時計回り(地表付近の収束流)、南半球で時計回りに渦を巻くのは、振り子と同じく Ω·sinφ のコリオリパラメータが南北半球で符号反転するためです。気象庁の数値予報モデルや海洋大循環モデルでは、この「フーコー項」を運動方程式に直接組み込んで計算します。シミュレーターで緯度スライダーを動かしたときに歳差角速度が変わる感覚は、台風の発達緯度依存性とも繋がっています。

地震学・地球内部構造の推定:地球の自由振動(地震波の長周期成分)は、自転によりわずかにスペクトルが分裂します。これは振動モードがフーコー的歳差を受けるためで、観測されるピーク分裂幅から内核の自転速度のずれや地球内部のコア構造を逆推定する研究に使われています。1960年代以降の地震観測網がこのフーコー的効果を検出することで、地球内部の精密な像が得られるようになりました。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「振り子そのものが回っている」と考えることです。実際には振動面は慣性系で固定されており、観測者の足元(地球)が回っているために回転して見えます。シミュレーターの上部キャンバスでは、慣性系で固定された軸線(青)と、t=0 の地面基準軸(破線)の差として歳差を表現していますが、現実には「地面から見た図」を描いているため逆向きに回転しているように見える、という二重の見方を意識してください。

次に多いのが、「振り子の長さや質量を変えれば回転速度が変わる」と思うことです。シミュレーターで L や g を動かしても、歳差角速度(°/h)の値は全く変化しません。変わるのは振動周期 T_osc(往復にかかる秒数)だけです。実物のフーコー振り子で 60〜70 m の長尺が選ばれるのは、回転速度のためではなく、空気抵抗による減衰を抑え、長時間にわたって振動を持続させるためです(緩やかに振れるほど摩擦損失が小さい)。

最後に、「赤道では永遠に回らないからフーコー振り子の意味がない」と決めつけるのも誤りです。確かに歳差角速度は緯度の正弦に比例するためゼロになりますが、赤道近傍では水平方向の Ω 成分(コリオリ力の別の現れ方)が最大となり、振り子の運動には別の摂動(マジョラナ効果による楕円軌道の自発的発生など)が現れます。理論的には「鉛直軸まわりの歳差はゼロ、しかし水平面内の楕円化は最大」という区別が必要で、実物の振り子は完璧に直線運動をするわけではありません。