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解析ツール

ナイキスト線図・安定余裕シミュレーター

開ループ伝達関数を選択しゲインを調整するだけで、ナイキスト線図・ボード線図をリアルタイム描画。ゲイン余裕・位相余裕・交差周波数を自動計算。

開ループ伝達関数
伝達関数の形式
ゲイン K
極 a
極 b
零点 z
安定余裕まとめ

一時停止中はスライダーを動かすと結果が即座に更新されます。

計算結果
GM (dB)
PM (°)
ωgc (rad/s)
0
巻き数 N(-1の囲み)
安定性 Z=N+P
ナイキスト線図
Note: 赤×が(-1, 0)臨界点。青軌跡がω>0、破線がω<0(鏡像)。軌跡が(-1,0)を反時計回りに囲むと閉ループ不安定化。
理論・主要公式

ナイキストの安定判別則

閉ループ不安定極の数 $Z = P - N$

$N$: ナイキスト軌跡 $L(j\omega)$($\omega:-\infty\to+\infty$)が点(-1,0)を囲む正味の回数(反時計回りを正)。開ループ安定($P=0$)の系では、(-1,0)を時計回りに囲む($N<0$)と閉ループ不安定。

$P$: 開ループの右半平面(RHP)極の数

$Z = 0$ → 閉ループ安定

ゲイン余裕: $GM = 20\log_{10}\frac{1}{|G(j\omega_{pc})|}$ (dB)

位相余裕: $PM = 180° + \angle G(j\omega_{gc})$

ナイキスト線図・安定余裕とは

🙋
ナイキスト線図って、複素平面上にぐるぐる描くあの曲線ですよね?これを見てどうやって「安定」か判断するんですか?
🎓
大まかに言うと、そのぐるぐるした軌跡が「臨界点」と呼ばれる(-1, 0)をどう回るかで決まるんだ。このシミュレーターで、上のゲインKのスライダーを大きくしていくと、軌跡がだんだん(-1, 0)に近づいて、ついには囲み始める様子がリアルタイムで見えるよ。囲むと不安定になるんだ。
🙋
え、囲むとダメなんですか?「ゲイン余裕」や「位相余裕」って表示されてますけど、これとどう関係あるんですか?
🎓
いいところに気づいたね。軌跡がギリギリ囲まない状態でも、(-1, 0)に近すぎると実用上は危険なんだ。例えばロボットの制御で振動が起きたりする。そこで「あとどれだけ余裕があるか」を数値化したのがゲイン余裕(GM)と位相余裕(PM)だ。シミュレーターで極aや零点zを変えると、この余裕がどう変わるか、すぐに確かめられるよ。
🙋
なるほど!でも、右側に同時に出てるボード線図と、ナイキスト線図ってどう対応してるんですか?見方が大きく異なる気がするんですが…。
🎓
実は表裏一体なんだ。ボード線図でゲインが0dBになる周波数(ゲイン交差周波数)での位相を見れば、それが位相余裕(PM)だ。逆に、位相が-180度になる周波数でのゲインを見れば、それがゲイン余裕(GM)だ。シミュレーターでパラメータをいじりながら、両方の図で同じ値が強調表示されるのを確認してみて。現場のエンジニアは、周波数特性の直感的理解にボード線図、安定性の厳密な判定や余裕の視覚化にナイキスト線図を使い分けてるんだ。

物理モデルと主要な数式

このシミュレーターで扱う標準形の開ループ伝達関数 $L(s)$ です。パラメータK, a, b, zは画面上のスライダーで変更できます。

$$L(s) = G(s)H(s) = K \frac{(s + z)}{(s + a)(s + b)}$$

$K$: ゲイン(定数), $z$: 零点の値, $a, b$: 極の値。ここで $s = j\omega$ (虚数単位×角周波数) を代入することで、周波数応答 $L(j\omega)$ が得られ、ナイキスト線図が描けます。

ナイキストの安定判別則。閉ループ系の安定性を、開ループの情報だけから判定できる強力な定理です。

$$Z = N + P$$

$P$: 開ループ伝達関数 $L(s)$ の右半平面(実部が正)にある極の数。
$N$: ナイキスト軌跡 $L(j\omega)$ ($\omega: -\infty \to +\infty$) が点 $(-1, 0)$ を 反時計回り に囲む回数。
$Z$: 求めたい閉ループ系の不安定極の数。$Z=0$ なら閉ループ系は安定です。

よくある質問

ゲイン余裕は位相が-180°のときのゲイン[dB]の絶対値、位相余裕はゲインが0dBのときの位相と-180°の差です。ボード線図上で該当周波数の値を確認するか、画面右の自動計算結果を参照してください。余裕が正なら安定、負なら不安定です。
スライダーをドラッグ後、マウスを離すか、数値入力欄でEnterキーを押すとリアルタイム更新されます。ブラウザのJavaScriptが有効か確認し、ページをリロードしても改善しない場合は、キャッシュをクリアして再度アクセスしてください。
ゲインKを小さくするとゲイン余裕が増え安定化しやすくなります。また、零点zを大きく(左半平面に移動)すると位相進み効果で位相余裕が改善します。極a,bを小さくすると応答が遅くなりますが安定性は向上します。各パラメータを試しながらナイキスト線図が(-1,0)を左に見るように調整してください。
Pは開ループ伝達関数L(s)の右半平面(実部>0)にある極の数です。本ツールの伝達関数は K(s+z)/((s+a)(s+b)) の形式なので、極は s=−a, −b に位置します。a,b>0 なら極はすべて左半平面にあり P=0 です。スライダー範囲(a,b≧0.1)では常に P=0 となります。

実世界での応用

航空機・ドローンの姿勢制御:飛行中の機体は常に外乱(風など)を受けます。ナイキスト線図で安定余裕(GM, PM)を十分に確保することで、この外乱に対しても振動することなく安定した飛行を維持できる制御系を設計します。余裕が小さいとパイロットの操作に対して危険な振動(ピオー現象)が発生する可能性があります。

自動車のクルーズコントロール:設定した速度を維持するためのエンジンやブレーキの制御です。坂道など負荷が変動しても速度が大きくぶれないようにするため、制御系の安定性と応答性が重要です。ナイキスト線図を用いて、追従性能と安定性のバランスの取れたコントローラゲインを決定します。

ロボットアームの位置決め制御:工場の生産ラインで精密な部品を組み立てるロボットは、指定された位置に素早く、かつオーバーシュート(行き過ぎ)なく移動する必要があります。位相余裕(PM)はこの過渡応答の振動特性と強く関連しており、設計の重要な指標となります。

電力系統の安定度解析:大規模な送電網では、発電機同士の同期を保つことがシステム全体の安定性に直結します。ナイキスト判別法は、このような高次元で複雑なシステムの安定性を周波数領域で評価するための古典的かつ有効な手法として今も用いられています。

よくある誤解と注意点

まず、「ナイキスト線図が(-1,0)を囲まなければ絶対に安定」とは限らないという点に注意だ。これはナイキストの安定判別則を適用する大前提として、開ループ系が安定(P=0)である場合の話だからだ。例えば、倒立振子のような元々不安定なプラント(P>0)を制御する場合、この前提が崩れる。なお本シミュレーターの極 a, b は正の値のみ設定でき(極は s=−a, −b で常に左半平面、P=0)、この前提が常に成り立つようになっている。

次に、安定余裕の数値だけを盲信しないこと。例えば、ゲイン余裕(GM)が10dB、位相余裕(PM)が45度あれば教科書的には十分そうに見える。しかし、ナイキスト軌跡のカーブの形状が鋭く尖っていたり、(-1,0)のすぐ近くをかすめていくような形だと、モデルのわずかな誤差や外乱で簡単に不安定領域に飛び込んでしまう。このツールでKを上げ下げしながら、余裕の「質」、つまり軌跡の(-1,0)への近づき方も目視で確認する習慣をつけよう。

最後に、シミュレーターの伝達関数モデルと現実のギャップを理解しておくこと。このツールで扱っているのはごくシンプルな2次系モデルだ。実際の制御対象には、むだ時間やより高次の振動モード、非線形性が必ず含まれる。例えば、むだ時間 $e^{-Ls}$ が加わると位相がさらに遅れ、ナイキスト軌跡はらせん状に無限に回り込む。ツールで学んだ基本原理を、より現実に近い複雑なモデルへどう拡張していくかを常に考えてほしい。

使い方ガイド

  1. 開ループ伝達関数の形式を選択し、ゲインK、極a・b、零点zを設定
  2. ゲイン調整スライダーでゲインKを0.1~20の範囲で変更し、ナイキスト線図上の(-1, 0)点への接近度を観察
  3. ゲイン余裕GM(dB)、位相余裕PM(°)、ゲイン交差周波数ωgc(rad/s)がリアルタイムに自動算出され、安定性が判定される

具体的な計算例

形式 K/(s(s+a)) を選び、K=2、a=1 とした開ループ伝達関数 G(s)=2/(s(s+1)) の場合:位相は-90°から-180°へ漸近して交差しないためゲイン余裕は GM=∞、ゲイン交差周波数 ωgc≈1.25rad/s での位相余裕は PM≈38.7° となり、閉ループ系は安定と判定されます。ゲインKを大きくすると ωgc が高周波側に移動して PM が減少し(例:K=10 で PM≈18.0°)、ナイキスト軌跡が(-1, 0)点へ近づく様子を確認できます。

実務での注意点

  1. 制御遅延(むだ時間)がある場合、位相は周波数に比例して低下するため ωgc 近傍で PM が急減する:ウォーターポンプ制御では 50ms の遅延で位相損失 15°/rad·s
  2. I 動作(積分項 1/s)を含む系統では ω→0 でゲインが無限大となり、ナイキスト軌跡が y 軸に沿って伸びるため、低周波での安定性確認が重須
  3. 油圧サーボ系や BLDC モーター では周波数応答の非線形性により計算値と実測値に 10~15% の誤差が生じる場合があるため、検証試験を実施

準拠規格・前提条件

準拠/参考: ナイキスト安定判別法 \(Z = P - N\)(\(N\):開ループ伝達関数 \(L(j\omega)\) が点(-1,0)を囲む正味回数、反時計回りを正、\(\omega:-\infty\to+\infty\)。\(P\):開ループ右半平面極数)。安定 \(\Leftrightarrow Z=0\)。安定余裕 \(GM=20\log_{10}(1/|L(j\omega_{pc})|)\)、\(PM=180^\circ+\angle L(j\omega_{gc})\)(Ogata/Nise)。

モデルの前提: 1〜2 次の有理伝達関数。本ツールの極は \(s=-a,-b\)(\(a,b>0\))で常に左半平面 → \(P=0\)。安定判定は \(L(j\omega)\) の周波数掃引から GM・PM を求めて行う。

適用範囲・限界: 古典制御の安定余裕を学ぶ教育用ツール。むだ時間 \(e^{-Ls}\)・高次モード・非線形性は未考慮で、これらがあると軌跡はより複雑になる。設計目標の目安は \(GM\ge 6\,\mathrm{dB}\)、\(PM\ge 30^\circ\)。