モリソン方程式・波力計算 戻る
流体解析

海洋構造物・波力・流力計算

モリソン方程式による慣性力・抗力・合力をリアルタイム算出。エアリー波理論の速度場可視化、転倒モーメント・KC数の自動計算。

波・構造パラメータ
プリセット
波高 H
m
波周期 T
s
水深 d
m
円柱径 D
m
潮流速度 Uc
m/s
慣性力係数 Cm
抗力係数 Cd
計算結果
最大波力 [kN]
最大慣性力 [kN]
最大抗力 [kN]
転倒モーメント [MN·m]
KC数
可視化
波力時系列(1波周期)
理論・主要公式
$$F = \underbrace{\rho C_m V \frac{du}{dt}}_{\text{慣性力}}+ \underbrace{\frac{1}{2}\rho C_d A \, u|u|}_{\text{抗力}}$$

エアリー波(水平速度):$u(z,t) = \dfrac{\pi H}{T}\dfrac{\cosh k(z+d)}{\sinh kd}\cos(\omega t)$

KC数:$KC = U_{max}T / D$, $KC < 5$:慣性力支配, $KC > 20$:抗力支配

分散関係:$\omega^2 = gk\tanh(kd)$

海洋構造物・波力・流力計算とは

🙋
海洋構造物の設計で「波力」ってどうやって計算するんですか?海の波って複雑すぎて、力の大きさが全然想像つかないです。
🎓
大まかに言うと、細長い構造物(円柱とか)には「モリソン方程式」という半経験式がよく使われるんだ。波の力は、水が動く「加速度」による慣性力と、水がぶつかる「速度」による抗力の2つに分けて考えるのがポイントだよ。このシミュレーターで、上の「波高H」や「円柱径D」のスライダーを動かしてみると、その場で合力がどう変わるか見られるぞ。
🙋
え、慣性力と抗力?じゃあどっちが大事なんですか?パラメータに「慣性力係数Cm」と「抗力係数Cd」ってありますけど。
🎓
それが状況によって変わるんだ。例えば、波周期が短くて柱が太い(直径が大きい)と、水の加速度の影響が強くなって慣性力が支配的になる。逆に、細い柱にゆっくりした波が当たると、抗力がメインになる。支配的な力を判別する目安が「KC数」で、このツールでは自動計算されるよ。「抗力係数Cd」を0.6から1.2の間で変えてみると、合力の波形がどう変わるか確認してみて。
🙋
実務では、この計算結果をどう使うんですか?「潮流速度Uc」も設定できますけど。
🎓
いいところに気づいたね。実際の海は波だけじゃなくて、常に流れ(潮流)もある。だから「潮流速度Uc」を加えることで、より現実的な流体力が計算できる。この合力の時系列データは、そのままジャケット式海洋構造物の脚部にかかる外力として、FEM(有限要素法)による応力解析の入力データになるんだ。ツールの下の方では「転倒モーメント」も出るから、構造物が倒れないかどうかのチェックにも使えるよ。

よくある質問

係数は部材の形状やレイノルズ数、KC数に依存します。円柱の場合、Cmは約2.0、Cdは0.7〜1.2が一般的です。本ツールではKC数が自動計算されるため、その値を参考に設計基準や実験値に基づいて調整してください。
水深が浅いほど水粒子の軌道は扁平な楕円になり、海底付近での速度が減少します。波高を大きくすると速度・加速度が増加し、慣性力と抗力の両方が大きくなります。可視化により、構造物のどの位置に大きな力が作用するか直感的に把握できます。
まず部材径や長さを小さくして投影面積と排水体積を減らすか、波浪条件(波高・周期)を下げてみてください。また、抗力係数Cdを適正範囲内で小さく見直すことも効果的です。構造物の設置水深を深くすると海底での流速が減り、転倒モーメントが低減します。
KC数が小さい(<5)と慣性力が支配的で、抗力は無視できるほど小さくなります。KC数が大きい(>20)と抗力が支配的になり、渦放出による振動のリスクが高まります。本ツールではKC数が自動計算されるため、設計時に支配的な力のモードを判断する指標として活用できます。

実世界での応用

海洋石油・ガスプラットフォーム(ジャケット構造)の設計:モリソン方程式は、ジャケットを構成する細長い鋼管脚部に作用する波力・流力を評価する国際規格(ISO 19902, DNV規格)で規定された標準手法です。計算された力はFEM解析への入力荷重となり、構造全体の強度と疲労寿命を検証します。

洋上風力発電の支持構造(モノパイル)設計:単管の巨大な鋼管(モノパイル)を支持構造に用いる洋上風力発電では、波と潮流による転倒モーメントが設計上の重要項目です。本ツールで計算される基底モーメントは、基礎の安定性照査に直接活用されます。

係留ブイや浮体式構造物の係留力算定:浮体式の海洋構造物を係留するチェーンやワイヤーには、浮体に作用する波力・流力が伝達されます。浮体の主要部材が円柱形状の場合、モリソン方程式を用いて係留システム設計の基礎外力を求めます。

CFD解析の検証と設計係数の決定:OpenFOAMなどのCFDソフトウェアで詳細な流れの解析を行い、得られた力の時系列データをモリソン方程式でフィッティングすることで、実際の形状に応じた慣性力係数$C_m$と抗力係数$C_d$を決定する、高度な設計プロセスに利用されます。

よくある誤解と注意点

まず最初に、「モリソン方程式は何でも計算できる万能ツール」と思わないでください。これは細長い円柱状の部材(スレンダーボディ)が対象です。例えば、大きな浮体式構造物(船やセミサブ型プラットフォーム)全体の波浪中での動揺を計算するには、別の理論(ポテンシャル流理論)が必要になります。また、「抗力係数Cd」と「慣性力係数Cm」は定数ではないという点も重要です。既存の解説でKC数が支配性を判別するとありましたが、実際には表面粗さ(生物付着など)、流れの乱れ(乱流)、柱の配置(群柱効果)によってこれらの係数は大きく変わります。例えば、実験値では同じ円柱でもCdが0.6から1.2以上まで変動することがあります。ツールで係数を変えてみるのは感覚をつかむのに良いですが、実設計では対象環境に合った実験値や規格推奨値を参照することが必須です。

もう一点、エアリー波理論の限界を理解しておきましょう。この理論は波高が波長に比べて小さい「微小振幅波」が前提です。つまり、台風時のような巨大で険しい波(非線形性が強い波)を厳密に表現できません。例えば、波高5m、波長50m(波高/波長=0.1)ならまだ使えますが、波高10m、波長60m(同0.17)となると、ストークス波理論など高次理論の検討が必要になります。ツールの結果を鵜呑みにせず、「入力した波は微小振幅波の仮定を満たしているか?」と常に自問するクセをつけましょう。