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医工学・呼吸器

肺機能検査 FEV1/FVC・COPD GOLD 重症度シミュレーター

スパイロメトリーで測定した 1 秒量 (FEV1) と努力性肺活量 (FVC) から、年齢・身長・性別・人種に応じた予測値・% 予測値・FEV1/FVC 比を計算し、COPD GOLD 1〜4 のステージと拘束性換気障害の疑いを自動判定します。

パラメータ設定
年齢
year
身長
cm
性別
人種
GLI 2012 の人種補正係数を適用
測定 FEV1
L
post-bronchodilator の 1 秒量
測定 FVC
L
努力性肺活量
喫煙歴
pack-y
1 日箱数 × 年数 (COPD リスク評価)
計算結果
予測 FEV1 (L)
予測 FVC (L)
FEV1/FVC 比
FEV1 % 予測値 (%)
FVC % 予測値 (%)
COPD GOLD 病期
肺断面・気管支樹・フローボリュームループ

中央:肺断面と気管支樹(呼気フェーズで収縮)。右:呼気フローボリュームループ(青:正常、橙:患者)。COPD では「コンケービティ」と呼ばれる下凸の波形になります。

フローボリュームループ — 正常 vs 患者
GOLD ステージ別人口割合(参考)
理論・主要公式

$$\frac{FEV_1}{FVC} \lt 0.7 \;\Rightarrow\; \text{COPD},\qquad GOLD = f(FEV_1\%\text{predicted})$$

post-bronchodilator FEV1/FVC < 0.7 で閉塞性換気障害 (COPD)、% 予測値 80 / 50 / 30 を境に GOLD 1〜4 の 4 ステージに分類。

$$FEV_{1,\text{pred}}^{\,male} = (0.0395\,H - 0.025\,A - 2.6)\cdot k_e$$

Knudson 1983 (男性)。H:身長 (cm)、A:年齢 (year)、k_e:人種係数 (アジア系 0.94、白人 1.00、黒人 0.88)。女性は係数が異なる。

$$\%\text{pred} = \frac{FEV_{1,\text{meas}}}{FEV_{1,\text{pred}}}\times 100,\quad \text{restrictive} \Leftarrow FVC\%\lt 80 \wedge FEV_1/FVC\ge 0.7$$

% 予測値で重症度を判定。拘束性換気障害 (restrictive) は FVC 低下+FEV1/FVC 正常で疑い、TLC 測定で確定する。

肺機能検査 — FEV1/FVC・COPD GOLD 重症度評価

🙋
健康診断で「スパイロメトリー」って白いマウスピースに思い切り息を吹き込む検査があったんですけど、あれって何を測ってるんですか?
🎓
あれが肺機能検査の主役だよ。最初にスーッと最大まで吸ってから、「フッ!」と一気に全部吐き切る。このとき最初の 1 秒間で吐き出せた量を FEV1、最後まで吐き切った総量を FVC と呼ぶんだ。健康な人なら FVC の 70% 以上を最初の 1 秒で吐き出せる。逆にこの「FEV1/FVC 比」が 0.7 を切ると、気道のどこかが狭くなって息が一気に出せない状態、つまり閉塞性換気障害=ほぼ COPD と診断される。
🙋
左のスライダーで FEV1 を 2.0 L、FVC を 3.0 L にしたら、比が 0.67 で「COPD あり」、GOLD 1 軽症って出ました。同じ 2.0 L でも年齢や身長で評価が変わるんですか?
🎓
そこが肺機能のキモなんだ。体格が大きい人ほど肺も大きいから、絶対量だけで評価しちゃダメ。年齢・身長・性別・人種から「この人ならこのくらい吐けるはず」という予測値を計算して、それの何 % かで判断する。Knudson 1983 や GLI 2012 がその予測式で、170cm・60 歳・男性なら予測 FEV1 は 2.46 L。測定値 2.0 L はその 81% だから GOLD 1 という具合。同じ 2.0 L でも 150cm・80 歳のおばあちゃんなら予測 1.5 L 程度で、% 予測値 130% つまり「正常域」になるんだよ。
🙋
人種係数って初めて聞きました。アジア系は 0.94 倍って、日本人は欧米人より肺が小さいってことですか?
🎓
同じ身長・年齢で比較すると、確かにアジア系は欧米人 (白人) より肺容量がおよそ 6% 小さい傾向がある。骨格・胸郭の形状の違いが主因と考えられている。逆に黒人 (アフリカ系) は 12% ほど小さく出るんだ。GLI 2012 はこの民族差を統計的に補正していて、世界中どこでも同じ判定基準が使えるようになった。日本だと LMS 法ベースの「日本人予測式 2014」もよく使われるよ。本ツールは GLI 互換の Knudson+人種係数で計算しているから、Vyaire や Chest の臨床機と概ね一致するはずだ。
🙋
FVC が 80% を切ったら「拘束性換気障害の疑い」って出るんですね。COPD とは別の病気なんですか?
🎓
そう、対極にあるのが「拘束性」。COPD は気道が狭くて吐けない (FEV1/FVC ↓)、拘束性は肺が広がらないから吸えない (FVC ↓、比は正常)。代表は特発性肺線維症 (IPF)、間質性肺炎、強皮症肺、胸郭変形、神経筋疾患など。スパイロメトリーだけでは TLC が測れないから「疑い」止まりで、確定診断には body plethysmography で全肺気量を測る必要がある。患者さんによっては「混合性 (両方ある)」もいて、これがやっかい。本ツールでは比が正常で FVC だけ低いケースを自動検出して警告するから、次の検査オーダーの目安になるよ。
🙋
喫煙歴 pack-years って、どのくらいから危険なんですか?
🎓
1 日 1 箱 × 1 年 = 1 pack-year。20 pack-year を超えると COPD 発症リスクが急上昇、40 pack-year 以上は肺がんスクリーニング (低線量 CT) の保険適応になる国もある。本ツールのデフォルトの 30 pack-year は、典型的な COPD ハイリスク症例の値だ。GOLD ガイドラインでは「40 歳以上+喫煙歴あり+慢性咳嗽・喀痰・労作時呼吸困難のいずれか」があればスパイロメトリーを強く推奨している。禁煙すれば FEV1 低下速度は健常者並みに戻せるから、結果を本人に見せて行動変容を促すのも臨床医の大事な仕事だね。

よくある質問

GOLD ガイドラインは post-bronchodilator (気管支拡張剤吸入後) の FEV1/FVC < 0.7 を「閉塞性換気障害あり」、すなわち COPD と定義しています。本来は年齢で正常下限が変化する (LLN) ため GLI 2012 では下位 5 パーセンタイル基準も使われますが、0.7 は世界中の臨床で使いやすい単一閾値として残っています。本ツールは 0.7 を超えれば「正常」、下回れば COPD として GOLD ステージング (1〜4) を行います。
FEV1/FVC < 0.7 で COPD と診断した後、FEV1 % 予測値 で重症度を 4 段階に分けます。GOLD 1 (軽症): FEV1 ≥ 80% 予測、GOLD 2 (中等症): 50〜80%、GOLD 3 (重症): 30〜50%、GOLD 4 (最重症): < 30%。本ツールは Knudson 1983 式に GLI 2012 の人種係数 (アジア系 0.94、白人 1.00、黒人 0.88) を掛けて予測 FEV1 を計算し、% 予測値から自動的にステージ判定します。
拘束性は FVC が低下しているのに FEV1/FVC 比は正常 (≥ 0.7) というパターンです。本ツールでは FVC % 予測 < 80% かつ FEV1/FVC ≥ 0.7 のときに「拘束性換気障害の疑い」を verdict で表示します。確定診断には全肺気量 (TLC) の測定 (body plethysmography) が必要で、TLC < 80% 予測で確定します。代表疾患は間質性肺炎、肺線維症、神経筋疾患、胸郭変形などです。
短時間作用型 β2 刺激薬 (サルブタモール 400μg 等) 吸入 15 分後に再度スパイロメトリーを行い、FEV1 が 12% 以上かつ 200mL 以上増加すれば「気管支拡張剤反応性あり」と判定します。これは COPD と気管支喘息の鑑別、および ACO (Asthma-COPD Overlap) の検出に重要です。本ツールは post-bronchodilator 値の入力を想定しており、反応性試験はベッドサイドで別途行ってください。

実世界での応用

呼吸器内科の外来診療:40 歳以上の喫煙者で慢性咳嗽・喀痰・労作時呼吸困難のいずれかがあれば、GOLD ガイドラインはスパイロメトリーを強く推奨しています。Vyaire (旧 CardinalHealth) CareFusion、Chest Vmax、ミナト医科学 AS-507、MIR Spirobank といった据置型・携帯型スパイロメーターで FEV1/FVC を測り、本ツールと同じ判定アルゴリズムで GOLD ステージを確定します。早期発見すれば LAMA/LABA 吸入や禁煙指導で進行を遅らせられます。

術前評価・周術期管理:胸部・上腹部の大手術 (肺切除、食道がん、開心術) では術前に必ず肺機能を測定します。FEV1 < 1 L または FEV1 % 予測 < 40% は術後肺合併症 (PPC) の高リスクで、肺切除なら % 予測肺機能 (ppoFEV1) で残存肺機能を予測し、ppoFEV1 < 40% は手術不能と判定されます。本ツールの計算はこの術前リスク層別化のラフな第一段階として有用です。

産業医学・じん肺診断:石綿、シリカ、石炭粉じん曝露者の定期健康診断では、スパイロメトリーで拘束性変化 (FVC 低下) を年次フォローします。労災認定では「予測 FVC < 60%」が PR 区分 4 の基準の一つ。建設業・鉱業・造船業では本ツールで使う Knudson/GLI ベースの % 予測値が法的判断にも使われます。

運動生理学・スポーツ医学:マラソン選手や水泳選手は FVC が予測値の 120〜140% に達することがあります。逆に運動誘発性気管支収縮 (EIB) は安静時 FEV1 は正常でも運動負荷後に FEV1 が 10% 以上低下するパターンで、本ツールのような安静時評価では検出できません。ピークフローメーターや運動負荷スパイロメトリーが必要です。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「pre-bronchodilator 値で COPD 診断してしまう」こと。本ツールも GOLD ガイドラインも、診断は必ず気管支拡張剤吸入後 (post-bronchodilator) の値で行います。喘息や可逆性気道閉塞のある患者では吸入前後で FEV1 が 12%・200mL 以上変動するため、吸入前の値だけで COPD と確定すると過剰診断につながります。臨床ではサルブタモール 400μg 吸入の 15 分後にもう一度測定し、その値で本ツールに入力するのが正解です。

次に、「FEV1/FVC 0.7 の固定閾値で全年齢を判定するのは不正確」という議論があります。実は健常者でも FEV1/FVC 比は加齢で低下し、80 歳代では正常下限 (LLN) が 0.65〜0.68 になります。0.7 を一律使うと高齢者で過剰診断、若年者で見逃しが起きる。GLI 2012 では年齢別 LLN (z-score < -1.645) での判定が推奨されており、GOLD も近年は「FEV1/FVC < LLN」併記を推奨する流れです。本ツールは臨床現場での簡便性を優先して 0.7 固定閾値を採用していますが、境界例 (比 0.65〜0.75) では LLN ベースの再評価をおすすめします。

最後に、「スパイロメトリーの再現性と努力依存性」。FEV1/FVC は患者が「最大努力で最後まで吐き切る」ことに完全に依存します。ATS/ERS ガイドラインでは「3 回測定して上位 2 つの FEV1 と FVC が 150mL 以内」を再現性基準とし、満たさない測定は破棄します。途中で咳き込んだり、口を緩めたり、呼出時間が 6 秒未満だと FVC が過小評価され、結果として FEV1/FVC 比が偽高値になり「正常」と誤判定されることがあります。判定の前にフローボリュームループの形状 (鋭い立ち上がり・滑らかな下降) を必ず確認してください。

使い方ガイド

  1. 患者の年齢(18~90歳)と身長(140~210cm)を入力する
  2. スパイロメトリー検査で測定した実測値FEV1とFVCをリットル単位で入力する
  3. 「計算実行」ボタンをクリックすると、GLI 2012予測式またはKnudson式に基づいて予測値が自動計算される
  4. 表示された% 予測値とFEV1/FVC比からCOPD GOLD病期(G1~G4)が自動判定される
  5. FVC % 予測値が低い場合は拘束性換気障害の疑いが表示される

具体的な計算例

65歳、身長170cmの男性患者:実測FEV1=1.8L、実測FVC=3.2Lの場合、GLI 2012予測式で予測FEV1=2.7L、予測FVC=3.8LとなりFEV1/FVC比=56.3%、FEV1 % 予測値=66.7%、FVC % 予測値=84.2%と計算されます。FEV1/FVC 70%未満かつFEV1 % 予測値50~79%よりCOPD GOLD G2(中等症)と判定されます。

実務での注意点

  1. GLI 2012とKnudson式は人種・地域差があるため、施設の標準予測式を確認してから使用する
  2. 気管支拡張薬投与前後のFEV1差が12%以上かつ200mL以上の場合は可逆性気流閉塞を示唆し、喘息の除外診断が必要
  3. 急性増悪期や感染症合併時の測定は避け、安定期に3回以上の検査を繰り返す
  4. FEV1 % 予測値が25%未満のG4症例は肺移植適応評価の対象になる可能性がある