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地球科学・地震工学

地震波到達時刻シミュレーター

P波・S波の速度差から震源距離を推定。大森公式・緊急地震速報の仕組みを視覚的に理解できます。

パラメータ設定

計算結果
P波到達時刻
25.0 s
S波到達時刻
42.9 s
PS時間差 Δt
17.9 s
大森公式 推定距離
133 km
走時曲線
地震波形
Vp/Vs比分析
Travel

青: P波走時曲線、赤: S波走時曲線。縦点線は選択した震源距離。

理論・主要公式

$t_P = D / V_P$, $\quad t_S = D / V_S$

初期微動継続時間(PS時差)
$\Delta t = t_S - t_P = D \left(\dfrac{1}{V_S} - \dfrac{1}{V_P}\right)$

大森公式(近似)
$D \approx 7.42 \cdot \Delta t$ [km]

💬 地震波について話してみよう

🙋
地震が起きたとき、最初に小さい揺れが来てから大きい揺れが来ますよね?あれはなぜですか?
🎓
それがまさにP波とS波の違いだ。P波(Primary wave)は縦波で岩盤を音波みたいに圧縮・膨張しながら伝わる。速度は約6km/s。S波(Secondary wave)は横波で岩盤を左右・上下に揺するから大きい揺れになる。速度は約3.5km/s。速いP波が先に来て「初期微動」、遅いS波が後から来て「主要動」になるんだ。東京の地下60km で地震が起きると、P波は約10秒後、S波は約17秒後に届く計算になる。
🙋
緊急地震速報ってどうやって「S波より先に」警報を出せるんですか?
🎓
P波はS波より速いから、震源近くの地震計がP波を検知した時点ではS波はまだ遠くにある。気象庁の全国約4,000地点の地震計ネットワークが最初にP波を捕まえ、震源位置・深さ・マグニチュードを数秒で計算して「S波が来る前に」スマホや緊急放送で警報を出す。震源から遠い場所ほど猶予時間が長い。震源直上(直下)は「直下型」で猶予がほぼないのが怖いところだ。
🙋
「大森公式」って初期微動継続時間から距離を計算する式ですが、7.42という数字はどこから来たんですか?
🎓
大森房吉(1900年ごろ)が日本各地の地震記録を統計的にまとめた経験式だ。PS時差 $\Delta t = D(1/V_S - 1/V_P)$ を $D$ について解くと $D = \Delta t / (1/V_S - 1/V_P)$。日本の地殻平均でVp≈7km/s、Vs≈4km/sを代入すると $1/4 - 1/7 = 0.107$、その逆数は約9.3 になる。7.42はVp≈6, Vs≈3.5に対応する値で、実測データへの当てはまりから決めた。現代の緊急地震速報は地殻構造モデルをより精密に使うが、大森公式は今でも教育・概算に使われる。
🙋
CAEでの構造解析に地震波の知識は使えますか?
🎓
直結してるよ。耐震設計では「地震動の入力スペクトル」を建物の固有周期と対応させるが、これはS波速度(VS30: 地表から30m平均の横波速度)で決まる地盤増幅特性に依存する。Abaqus・Ansysでの地震応答解析では、地盤のS波速度プロファイルから時刻歴地震動を入力する。また地震探査(石油・ガス探索)ではP波反射法を使って地下構造を「CAEメッシュ」のように可視化する——地球全体が有限要素モデルになってるわけだ。
🙋
S波が液体の中を伝わらないというのはなぜですか?
🎓
S波は「せん断変形(ずり)」を利用した波だ。固体は隣の粒子を横方向に引っ張る力(せん断剛性G)があるから横波が伝わる。でも液体・気体はせん断力に対してGゼロ——変形しても元に戻らない。だから S波は液体を通過できない。実はこれが地球の内部構造を明らかにした重大な発見だ。1906年に地震学者レーマンがS波の「影」(shadow zone)を発見して「地球には液体の外核がある」と証明した。外核は鉄・ニッケルの融解した液体なんだ。

よくある質問

はい、可能です。P波速度(Vp)とS波速度(Vs)の値をスライダーや入力欄で調整できます。速度を変えると到達時刻や大森公式の係数がリアルタイムに変化し、地震波伝播の物理的関係を直感的に理解できます。
本シミュレーターは理想的な均質地盤を仮定した理論値です。実際の地震では地質構造や震源の深さの影響で誤差が生じますが、大森公式の原理理解や緊急地震速報の仕組みを学ぶ教育目的には十分な精度です。
可能です。P波検出からS波到達までの猶予時間を、設定した震源距離と速度差から自動計算します。警報発令の閾値(例:震源から〇km以内)を変更することで、実際の速報システムの判断基準を体験できます。
直接のデータ連携機能はありませんが、出力された震源距離や到達時刻差を、構造解析ソフトの入力パラメータ(例:地震動の位相特性や入力遅延時間)として手動で転用できます。地震応答解析の事前検討に役立ててください。
P波とS波の速度比(Vp/Vs)は何を表しますか?

Vp/Vsはポアソン比と直接関係します。$\nu = (Vp^2 - 2Vs^2) / (2(Vp^2 - Vs^2))$。花崗岩(Vp/Vs≈1.73、ν≈0.25)、飽和砂岩(Vp/Vs≈2以上、ν≈0.3〜0.4)のように岩石の種類・含水状態でVp/Vs比が変わります。地震トモグラフィーではこの比を使って火山の溶岩溜まりや流体の存在を検出します。

地震の深さ(震源深さ)はどう推定するのですか?

複数の地震計の到達時刻差から3次元的に逆算(ハイポセンター法)します。震源距離Dは震央距離(水平方向)と震源深さhの合成 $D = \sqrt{r^2 + h^2}$。深発地震(300km超)は沈み込むプレート内で起き、日本では特有の深発地震面(和達-ベニオフ帯)が観測されます。

「初期微動継続時間」から規模(M)は推定できますか?

距離だけでは規模は推定できません。規模の推定にはP波の振幅(最大変位)やP波波形の立ち上がり急峻さ(周波数内容)を使います。緊急地震速報ではP波到達後3秒以内の波形振幅から「マグニチュード推定」と「震源距離推定」を組み合わせて揺れの強さを予測します。

地震波トモグラフィーとは何ですか?

多数の地震・地震計ペアの走時データから地球内部の3次元速度構造を画像化する手法。医療CTスキャンの地球版です。沈み込むプレート(スラブ)は周囲より冷たく密度が高いためP波速度が高く見え、ホットスポット(マントルプルーム)は高温で速度が低く見えます。地球規模のCFD/構造解析のようなものですね。

この計算ツールの精度はどの程度ですか?

本ツールは均一速度構造(一層モデル)を仮定しています。実際の地球は地殻・上部マントル・遷移帯・下部マントル・外核・内核の多層構造で、深部では地震波が屈折・反射します。精密な走時計算にはJEFFreys-Bullen表(JB表)やiaspei91速度モデル(IASP91)などを用います。

地震波到達時刻シミュレーターとは

地震波到達時刻シミュレーターは、工学・物理の重要なトピックの一つです。P波・S波の速度差から震源距離を推定。大森公式・緊急地震速報の仕組みを視覚的に理解できます。

このシミュレーターでは、パラメータを直接操作しながら、現象の本質的な挙動を体験的に理解できます。計算結果はリアルタイムで更新され、数値と可視化の両面から直感的な理解を深めることができます。

地震波到達時刻シミュレーターでは、震源から放射されるP波(縦波)とS波(横波)の伝播速度の違いに基づき、観測点における各波の到達時刻を計算する。P波の速度を\(V_p\)、S波の速度を\(V_s\)とし、震源距離を\(D\)とすると、P波到達時刻\(t_p\)とS波到達時刻\(t_s\)はそれぞれ\(t_p = D / V_p\)、\(t_s = D / V_s\)で表される。このとき、両者の到達時刻差\(\Delta t = t_s - t_p\)は大森公式として知られ、\(\Delta t = D (1/V_s - 1/V_p)\)と整理できる。本シミュレーターはこの関係を用いて、観測点で計測された\(\Delta t\)から震源距離\(D\)を逆算する過程を可視化する。また、P波の早期検出によりS波到達前に警報を発する緊急地震速報の原理も、\(V_p > V_s\)という速度差に依存している。これにより、地震波の伝播特性と防災技術の物理的基盤を直感的に理解できる。

実世界での応用

産業での実際の使用例
建設業界では、大成建設や大林組が耐震設計の高度化に本シミュレーターを活用。例えば超高層ビル「あべのハルカス」の基礎設計では、P波・S波の到達時間差を基に、想定震源からの距離別に免震・制振デバイスの配置を最適化。鉄道分野ではJR東日本が新幹線の早期停止システムに応用し、地震検知からブレーキ作動までのタイムラグをシミュレート。緊急地震速報と連動した列車制御の信頼性向上に寄与しています。

研究・教育での活用
東京大学地震研究所では、大森公式の可視化教材として採用。学生が震源距離とP波・S波の速度差(約1.7倍)の関係を直感的に理解できるため、地震学入門の実習で必須ツール化。また防災科学技術研究所が、リアルタイム波形データとシミュレーション結果を比較し、地盤構造の不均質性が到達時刻に与える影響を研究。教育現場では、中学校の理科授業で「緊急地震速報の仕組み」を体感学習する際に利用されています。

CAE解析との連携や実務での位置付け
本シミュレーターは、構造解析ソフト「ANSYS」や「Abaqus」の入力条件生成に連携。例えば、橋梁の地震応答解析では、本ツールで推定した震源距離から算出した地震動波形を境界条件として設定。これにより、従来の一律な地震波入力より実現象に即した非線形動的解析が可能に。実務では、建築確認申請時の性能評価書作成において、想定地震動の妥当性を視覚的に説明するエビデンスとして位置付けられ、設計者と審査機関の合意形成を円滑化しています。

よくある誤解と注意点

「P波とS波の到着時刻差が大きいほど震源は遠い」と思いがちですが、実際は震源の深さや地盤の構造によって波の伝播速度が変化するため、単純な比例関係にはならない点に注意が必要です。また、「P波が到達してからS波が来るまでの時間がそのまま震源距離に直結する」と考えられがちですが、大森公式はあくまで均質な地盤を仮定した近似式であり、実際の地震では地殻の不均質性や反射・屈折の影響で誤差が生じます。さらに、「緊急地震速報はP波検知後すぐに震源を特定できる」と思われがちですが、実際は複数の観測点のデータを解析するために数秒の処理時間がかかり、震源に近い地域ではS波が到達してから警報が出る可能性があることを理解しておく必要があります。