どちらも測定値を「過大評価から下げる」補正だね。K₁ は暗騒音補正。機械を止めて測った周囲騒音 L_bg が運転中の ⟨L_p⟩ に紛れ込んでいる分を差し引く。ΔLp = ⟨L_p⟩ − L_bg が大きいほど補正は小さくて、15 dB 以上なら K₁ = 0、10 dB で約 0.46 dB、6 dB だと 1.26 dB。ΔLp が 6 dB 未満になると暗騒音が大きすぎて ISO 3744 では「測定不可」になる。K₂ は環境補正で、壁や床から戻ってくる反射音の分。半無響室なら 1〜2 dB、普通の工場床なら 3〜5 dB を引く感じだよ。
🙋
マイクロホンの数って、デフォルトが 10 個になってますね。これって多いほどいいんですか?
🎓
ISO 3744 では半球面で最低 10 点、並行六面体で最低 9 点の標準位置が決められている。それより少ないと正規の測定とは認められない(このツールでも警告が出る)。多くするほど空間平均が安定して不確かさが下がるけど、効果は 12〜20 点でほぼ飽和する。指向性の強い機械(例えば送風機の吸い込み口)では 20 点以上にしたり、コンフォーマル法に切り替えて製品輪郭から 1 m の等距離面で密に測ったりするんだ。
🙋
「計測等級」って工学級とサーベイ級がありますが、どう使い分けるんですか?
🎓
工学級(ISO 3744)は不確かさ ±1.5 dB で、製品カタログ表示・規制適合・形式試験など「公の場に出す数値」に使う。K₂ ≤ 2 dB、Class 1 メータ(精度 0.7 dB 以下)が条件。サーベイ級(ISO 3746)は ±3 dB で、工場の概略チェック、改善前後の比較、安全衛生のスクリーニングに使う。屋外でいい加減に測ったような場合や、Class 2 メータの簡易測定がこれに該当する。さらに精度が必要なら残響室を使う精密級(ISO 3741, ±0.5 dB)に上げる流れだね。左の K₂ と計測精度を動かすと、自動で等級判定が切り替わるよ。
よくある質問
ISO 3744 は自由音場(半無響室または屋外平坦地)における工学級(不確かさ ±1.5 dB)の音響パワー測定法です。ISO 3746 は同じ自由音場でもサーベイ級(±3 dB)の簡易法で、マイク数や環境条件が緩い代わりに精度が落ちます。ISO 3741 は残響室を用いる精密級(±0.5 dB)で、研究用や標準音源校正に使われます。製品カタログの dB(A) 表示は ISO 3744 のデータがほとんどです。
K₁ は機械を停止して測った暗騒音 L_bg と運転時の SPL L_p の差 ΔL = L_p − L_bg から決まります。ΔL ≥ 15 dB なら K₁ = 0(暗騒音無視)、10 ≤ ΔL < 15 dB なら K₁ = −10·log10(1 − 10^(−ΔL/10)) で 0.3 dB 未満、6 ≤ ΔL < 10 dB なら同式で最大 1.3 dB の補正を引きます。ΔL < 6 dB では暗騒音が支配的で ISO 3744 では測定不適、最大補正 1.3 dB のみ適用し参考値扱いとします。
K₂ は反射壁や床から戻ってくる反射音が測定面上の SPL を持ち上げる分の補正で、室の吸音度と機械−壁距離で決まります。半無響室なら通常 1〜2 dB、一般の工場床なら 3〜5 dB、ライブな室なら 6〜7 dB です。小さくするには、(1) 吸音材を壁・天井に追加、(2) 機械を壁から十分離す(半径の2倍以上)、(3) 屋外平坦地で測定する、などが有効です。K₂ ≤ 2 dB が工学級の目安、K₂ > 4 dB ではサーベイ級扱いになります。
ISO 3744 では半球面で最低 10 点、並行六面体では最低 9 点の標準マイク位置が規定されています。半球面の場合は機械を中心とした半径 r m の半球上に等しい面積分担となる10点を配置し、各点で時間平均 SPL を測ります。マイク数が増えるほど不確かさは下がりますが、12〜20 点で実用的に飽和します。標準位置から外れたカスタム配置は ISO 3744 では認められず、必要ならコンフォーマル法(製品輪郭から一定距離)に切り替えて 20 点以上で測定します。
実世界での応用
家電・OA機器の騒音表示:洗濯機、エアコン室外機、冷蔵庫、レーザープリンタなど、家庭・オフィス機器のカタログに記載される L_WA はほぼ全て ISO 3744 で測定されます。EU エコデザイン指令や日本の省エネラベル制度でも音響パワー値の表示が義務化されており、開発段階で目標 dB(A) を設定し、本ツールのような事前検討で測定面・室条件を最適化します。
産業機械・建設機械:射出成形機、コンプレッサ、油圧ポンプ、発電機などの大型機械の出荷試験では、屋外平坦地または工場の半無響室で ISO 3744 試験を行います。EU の Outdoor Noise Directive 2000/14/EC は屋外用機械の L_WA 表示を義務付けており、半径 4〜10 m の大きな半球面測定が必要です。本ツールで測定半径を変えると S が r² で増え、同じ SPL でも L_W が増えるのが確認できます。
HVAC設備・ファン・ダクト:送風機、空調機(AHU)、チラーなどの設備機器では ISO 3744 に加えて、設備固有の AMCA 300(北米)や ISO 13347(インダクト法)も使われます。建築設備の選定では機械の L_W を入力に、室内の SPL を予測する音響計算(NC値判定)を行うため、L_W は設計の出発点となる最重要量です。
自動車・玩具・電動工具:自動車の通過騒音は別規格(ISO 362)ですが、エンジン単体、補機(オルタネータ、ウォーターポンプ)、電動モータの開発では ISO 3744 で L_W を測定し、車両搭載時の予測に使います。玩具については EN 71-1 が音響パワー上限を定めており、電動工具は EN 60745 が同様の規制を行っています。
よくある誤解と注意点
第一の落とし穴は、「測定半径を大きくすれば値が変わらないと思い込む」こと。L_W は機械固有量なので理論上は半径に依存しませんが、実測ではそうはいきません。半径を小さくしすぎる(例:r < 1 m)と、機械が点音源と見なせない近接音場効果が出て、半球面上で SPL が大きくばらつき、空間平均の不確かさが急増します。逆に半径を大きくしすぎると、暗騒音 L_bg との差 ΔLp が縮まって K₁ 補正が大きくなり、6 dB を切ると測定不可。ISO 3744 は r ≥ 1 m かつ機械の最大寸法の半分以上を推奨しており、実機サイズに応じて 2〜4 m が現実的な範囲です。