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風力エネルギー・都市風車

垂直軸風車 VAWT 性能設計シミュレーター — Darrieus・Savonius

垂直軸風車(Darrieus H-rotor、φ 形、Savonius、ヘリカル)のロータ寸法・翼数・翼弦長・風速・TSR を変えて、出力係数 Cp と発電出力、ソリディティ、年間発電量を即座に確認できます。都市・住宅用の小型風車設計の初期検討に。

パラメータ設定
VAWT 種別
タイプごとに Cp ピークと最適 TSR を自動設定
ロータ半径 R
m
ロータ高 H
m
翼数 N
翼弦長 c
m
風速 V_∞
m/s
TSR(翼端速度比)λ
λ = ωR/V。Darrieus は 4 前後、Savonius は 0.8 前後が最適
計算結果
掃過面積 A (m²)
翼端速度 (m/s)
出力 P (kW)
出力係数 Cp
ソリディティ σ
年間発電量 (kWh)
VAWT 平面図 — ロータ回転と風向

上から見たロータの平面図。青矢印は風向、翼の周方向位置に応じて揚力(赤)・抗力(橙)ベクトルが変化します。色は Cp/Cp_peak の比に応じて緑→橙→赤と推移。

Cp 対 TSR(タイプ別 性能曲線)
VAWT vs HAWT 出力比較(同一掃過面積)
理論・主要公式

$$P = \tfrac{1}{2}\,\rho\,A\,V_\infty^{3}\,C_p,\qquad \mathrm{TSR}=\lambda=\frac{\omega R}{V_\infty},\qquad \sigma=\frac{N\,c}{2\pi R}$$

P:出力 [W]、ρ:空気密度(1.225 kg/m³)、A:掃過面積(VAWT は 2RH)、V_∞:自由流風速 [m/s]、C_p:出力係数(ベッツ限界 16/27 ≈ 0.593)、λ:翼端速度比、σ:ソリディティ、N:翼数、c:翼弦長、R:ロータ半径。

$$C_p(\lambda)\approx C_{p,\mathrm{peak}}\left[1-\left(\frac{\lambda-\lambda_{\mathrm{opt}}}{\lambda_{\mathrm{opt}}}\right)^{2}\right]_{+}$$

タイプ別の経験的 Cp(λ) 曲線(最適 TSR まわりで放物線近似)。Darrieus H-rotor は C_p,peak ≈ 0.43、λ_opt ≈ 4。Savonius は C_p,peak ≈ 0.18、λ_opt ≈ 0.8。

垂直軸風車 (VAWT) — Darrieus・Savonius の Cp 設計

🙋
「垂直軸風車」って、横向きじゃなくて、縦にクルクル回るやつですよね?普通の風車(プロペラ型)と何が違うんですか?
🎓
いいところに気づいたね。普通の風車はプロペラ型で、ロータ軸が地面と「水平」に伸びてる。これを HAWT(Horizontal Axis Wind Turbine)と呼ぶ。一方、垂直軸風車 VAWT は軸が地面に対して「垂直」、つまり立っている。最大のメリットは風向が変わってもそのまま回り続けることだ。HAWT は風向きが変わるたびにロータごとヨー(首振り)して向き直さないといけないけど、VAWT は最初から全方位の風を受けられる。だから街中みたいに風向きが暴れる場所で強いんだ。あと、発電機を地面に置けるからメンテナンスがラクで、騒音も小さい。
🙋
じゃあ全部 VAWT でいいじゃん…って思っちゃいますけど、なんで街中以外では普通の風車ばっかりなんですか?
🎓
理由は「効率」。出力係数 Cp で言うと、HAWT は良いもので 0.45〜0.50 出るのに対して、VAWT は Darrieus でも 0.40 前後、Savonius は 0.18 くらいしかない。理論限界(ベッツ限界)が 16/27 ≈ 0.593 だから、HAWT は限界の 85%、Darrieus は 70% に達するけど、Savonius は 30% にとどまる。広い平地や洋上では、効率の良い HAWT を大型化するほうが圧倒的に発電単価が安いんだ。VAWT が活きるのは「効率は多少劣っても、設置性・静音性・全方位風応答の方が大事な場面」、つまり都市部や住宅、ビル屋上、浮体洋上といったニッチだね。
🙋
左の「VAWT 種別」に Darrieus と Savonius って書いてあるんですけど、これって何が違うんですか?
🎓
これは「回る原理」が違う。Darrieus は翼形(翼弦のある翼)が前縁を風に向けて、揚力(lift)で回る。飛行機の翼と同じだ。だから速く回せて、効率も高い。最適な翼端速度比 TSR は 4 前後で、Cp 0.40 を超える。一方 Savonius は半円バケットを2枚向かい合わせにしただけの「抗力(drag)型」で、風が当たる側と逃げる側の抵抗差で回る。シンプルだから自分で回り始められる(自起動)し、トルクも強い。でも最適 TSR は 0.8 しかなくて、効率は半分以下。発電量を稼ぐなら Darrieus、起動と信頼性なら Savonius、両方欲しいなら Savonius を Darrieus の起動補助に組み合わせるハイブリッド、というのが定石だよ。
🙋
ヘリカル(Quietrevolution)っていうのは何ですか?街でビルの上に立ってる、ねじれた形のやつ?
🎓
そう、それだ。直翼の Darrieus H-rotor は、翼が真っ直ぐで、回転中の各方位(風上・横・風下)で受ける翼角が瞬間ごとに変わる。だから1回転中にトルクが大きく脈動して、振動と騒音の原因になる。これを和らげるために翼を周方向にねじってある(ヘリカル)のが Quietrevolution QR5 みたいなタイプ。常にどこかの翼が最適角にいる状態を作るから、トルクが平滑化されて低騒音・低振動になる。都市の屋上向きの設計だね。Cp はストレート H-rotor よりわずかに低い 0.35 前後だけど、街中の美観・住民の苦情対策まで含めて考えると、ヘリカルの方が現実的に選ばれることが多い。
🙋
出力 P がデフォルトで 2.1 kW くらいなんですけど、これって家1軒分の電気を賄えるんですか?
🎓
いい質問。瞬間出力 2.1 kW は風速 8 m/s 時の話で、年中ずっとこの風が吹くわけじゃない。年間発電量カードを見ると 4,600 kWh くらい出てるけど、これは「容量係数 25%」つまり 1 年の 4 分の 1 だけ定格出力相当で回ったと仮定した値だ。日本の一般家庭の年間消費電力は 4,000〜4,500 kWh くらいだから、計算上は1軒分に届く規模なんだ。ただし注意点がある。都市部の実測平均風速は 4 m/s を切ることが多くて、その場合の年間発電量はカード値の 1/8 程度まで落ちる。だから「家1軒賄える」というのは、平均風速 6 m/s 以上が確保できる屋上や郊外の話。設置前に必ず実測風速を取ることが大事だよ。

よくある質問

VAWT はロータ軸が地面に垂直なため、風向変化に対してヨー制御が不要で、突風や乱れた風が多い都市部・屋上で扱いやすいのが特徴です。発電機・ギアボックスを地上に置けるため保守性に優れ、低い翼端速度で動くため騒音も小さくなります。一方、効率は Darrieus でも Cp≈0.40、Savonius は 0.18 程度で、Cp 0.45〜0.50 を狙える大型 HAWT には及びません。また Darrieus は単独起動が難しい・翼に脈動的な疲労応力がかかるという欠点があります。住宅・建物一体型・浮体洋上といったニッチで強みを発揮する形式です。
Darrieus は揚力(lift)で回る高速・高効率タイプで、最適 TSR ≈ 4〜5、Cp ≈ 0.35〜0.43。発電向きですが自起動が苦手で、Savonius を起動用に組み合わせるハイブリッド構成も一般的です。Savonius はドラッグ(抗力)で回る低速・低効率タイプで、最適 TSR ≈ 0.8、Cp ≈ 0.15〜0.20。トルクが大きく低風速でも自起動するため、ポンプや換気扇、Darrieus の起動補助に向きます。発電量だけなら Darrieus、信頼性と起動性なら Savonius、街中での美観・静音性を狙うならヘリカル(QR5 タイプ)、と使い分けるのが基本です。
ソリディティは σ = Nc/(2πR) で定義され、Darrieus 系は 0.1〜0.25 が最適、Savonius は σ≈1.0(バケットが半周を覆う)が目安です。Darrieus でソリディティが大きすぎると、最適 TSR が下がり、翼同士の干渉や失速が起きて Cp が落ちます。逆に小さすぎると単位面積あたりの揚力が不足します。本ツールはデフォルト値(σ=0.15)からの乖離が ±50% を超えると warn 判定を出すので、翼数 N と翼弦長 c の組み合わせを調整して σ を最適域に入れてください。
実測の都市風速は気象台公表値より 30〜50% 低いことが多く、建物周りの剥離・乱流で実効風速はさらに下がります。年間平均風速 4 m/s 未満では小型 VAWT の経済性は厳しく、年間発電量も本ツールの試算(容量係数 0.25 想定)を大きく下回ります。設置高さは屋根面から 2D(ロータ直径の 2 倍)以上を確保し、最寄りの障害物までの距離も確保すること。騒音は HAWT より小さいものの、共振やインバータノイズが問題になることがあるため、防振架台と低周波対策を併用します。日本では NEDO 小型風車ガイドライン、IEC 61400-2 への適合確認が事実上必要です。

実世界での応用

住宅・小型風力発電:Aeolos-V 1 kW、Windspire 1.2 kW、Quietrevolution QR5 6 kW など、屋根上・庭先に設置する家庭向け小型 VAWT が代表例です。年平均風速 5 m/s 程度の郊外で、太陽光と組み合わせたオフグリッド・自家消費用途に使われます。導入コストは kW あたり 60〜120 万円と HAWT より高めですが、騒音が小さく住宅地でも設置許可が下りやすいのが利点です。

ビル屋上・建物一体型風力発電(BIWT):都市の高層ビル屋上に設置するヘリカル VAWT は、建物外観の象徴的な意匠としても採用されます。バーレーンのワールドトレードセンターや、ロンドンの Strata SE1 ビルが有名。建物周りの加速された風(風洞効果)を利用できる一方、乱流の影響も大きく、設計には実環境の風況シミュレーションが必須です。

浮体洋上 VAWT(FOWT-VAWT):欧州の DeepWind プロジェクトや SeaTwirl、AeroGenerator プロジェクトなど、大型 VAWT を浮体に載せた洋上風力発電が研究中です。重心の低さから波浪揺動に強く、メンテナンスを海上ではなく海面付近で行える利点があります。Mainstream Renewable Power なども参画し、5〜10 MW 級の構想が検討されています。

水流・潮流発電への転用:VAWT のコンセプトは水中タービンにも応用され、ダリウス型クロスフロー水車として河川や潮流での発電に使われます。Verdant Power のニューヨーク東河での実証や、Andritz Hydro のクロスフロー機が代表例です。空気と水で密度が約 800 倍違うため、同じトルクを小さい寸法で取り出せます。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「メーカーカタログの定格出力 = 実際の発電量」と思い込むこと。1 kW VAWT といっても、それは定格風速(多くは 11〜12 m/s)でのピーク出力に過ぎません。日本の年平均風速は内陸 3〜4 m/s、沿岸でも 5〜6 m/s で、出力は風速の 3 乗に比例するため、平均風速 5 m/s では定格の 8〜10% 程度しか出ない計算になります。本ツールの「年間発電量」も容量係数 0.25 を前提にした楽観値であり、都市部で実際にこの値を達成するには丁寧な風況実測が前提です。

次に、「ソリディティを大きくすればトルクが増えて良い」という誤解。Savonius のような抗力型ではソリディティ≈1 が正解ですが、Darrieus のような揚力型で σ を 0.3 以上にすると、隣接翼の後流が次の翼の流れを乱して翼が失速し、最適 TSR が下がってピーク Cp も落ちます。翼数 N を増やすほどソリディティが上がるため、N=2〜3 でしっかり翼弦を取るのが教科書的な設計で、N=5〜6 は構造剛性目的以外ではほぼ採用されません。本ツールでデフォルト値からの乖離が ±50% を超えると warn を出すのはこのためです。

最後に、「都市の風は建物で加速されるから発電量が増える」という思い込み。たしかにビル間や角部では局所的に風速が増えますが、同時に剥離・乱流・上下方向のせん断が激しく、実際には Cp が大きく下がるうえに、翼に過大な疲労荷重がかかって寿命が短くなります。屋上設置の場合、ロータは屋根面から少なくとも 2D(ロータ直径の 2 倍)以上の高さに上げ、近傍に乱流源(ペントハウス、塔屋、煙突)がないことを確認すべきです。事前に CFD か風洞試験で乱流強度を 18% 以下に抑えられる位置を選んでください。

使い方ガイド

  1. ロータ半径(m)と高さ(m)を入力し、掃過面積を決定します。Darrieus型の場合、典型値は半径1.5m・高さ3mです
  2. 翼数(3~6枚)と翼弦長(0.3~0.8m)を設定し、ソリディティσを調整します。ソリディティが高いほど低TSR域で出力係数Cpが向上しますが、共振リスクが増加します
  3. 平均風速と目標TSR(翼端速度比、通常1.5~3.5)を指定し、計算ボタンを押すと翼端速度・出力・Cp・年間発電量が自動算出されます

具体的な計算例

半径1.2m・高さ2.4m・翼数3枚・翼弦長0.5m・平均風速8m/sのSavonius型モデル:掃過面積2.88m²、ソリディティ0.625、TSR=2.0時の翼端速度4.8m/s、出力2.1kW、Cp=0.32。年間平均風速6.5m/sの都市立地で推定発電量8,200kWh/年となります

実務での注意点