接触熱抵抗 — CAE用語解説
接触熱抵抗
先生、接触熱抵抗って熱解析で見かけるんですが、2つの部品が接触しているのに熱が伝わりにくいんですか?
そう、これは直感に反するところだ。固体どうしが「接触している」ように見えても、表面の粗さ(マイクロメートルスケールのでこぼこ)があるから実際の金属接触は接触面積の1〜2%程度しかない。残りの98%は空気の薄層だ。金属は熱伝導率100〜400 W/(m・K)あるが、静止空気は0.026 W/(m・K)しかない——この空気の薄膜が熱抵抗を大きくする。CPUのヒートシンク、パワー半導体のモジュール、ターボ機械の嵌め合い部では接触熱抵抗が設計を左右する重要パラメータだ。
定義
接触熱抵抗はどうやって定量化するんですか?
接触熱コンダクタンスhc [W/(m^2・K)]で表す(熱抵抗の逆数)。界面を挟んだ温度差deltaT と熱流束q から hc = q / deltaT で定義する。典型値は——荒い機械加工面で hc = 1000〜3000 W/(m^2・K)、研磨面で 10000〜40000 W/(m^2・K)、サーマルグリース充填で 100000 W/(m^2・K)以上——という幅がある。表面粗さRa、接触圧力、充填材の有無によって桁で変わるから、FEM熱解析ではこの値の不確かさを感度解析で評価することが重要だ。
FEM解析での扱い
FEMで接触熱抵抗をどう設定するんですか?
AbaqusではGAP CONDUCTANCEキーワードで界面コンダクタンスを設定する。接触圧力の関数として定義できるから「押し付け力が高いほど接触面積が増えて熱抵抗が下がる」という実際の物理を再現できる。OpenFOAMのCHT解析では界面のthermalResistanceまたはthermalConductivityに相当する値を境界に設定する。実務での一番の難しさはhcの値の取得で——サプライヤーのデータシート、文献値、あるいは自社測定(ASTM E1530規格の試験装置)から取得する。
パワー半導体では特に重要と聞きました。どういう問題があるんですか?
EVのインバーターに使われるIGBTやSiCデバイスは小さな面積に数百Wを超える発熱がある。チップ→ハンダ→銅板→TIM(Thermal Interface Material)→ヒートシンクという積層構造で、各界面の接触熱抵抗が積み重なって全体の熱抵抗を決める。特にTIMの経時劣化——熱サイクルで膨張収縮を繰り返すと密着性が低下して熱抵抗が増加する——が電子機器の寿命設計の核心問題だ。FEMで寿命モデルと連成してTIM劣化→温度上昇→さらに劣化という連鎖を予測する研究が進んでいる。
サーマルグリースを使えばかなり改善するんですか?
劇的に改善する。研磨面どうしの直接接触でhc = 5000 W/(m^2・K)程度が、良質なサーマルグリース(高充填型:ShinEtsu X-23やThermal Grizzly Conductonaut)を使うと実効的なhcが50000〜200000 W/(m^2・K)に跳ね上がる。ただしグリースの「pump-out(熱サイクルで絞り出される)」現象があって、何千サイクルかすると界面から染み出して効果が落ちる。位相変化材料(PCM)や液体金属InGaはpump-outに強いが扱いが難しい——どの材料を選ぶかはFEM寿命解析と現場試験で判断する。
関連用語
表面の粗さが見えない熱抵抗になっているんですね。パワー半導体の熱管理の難しさが実感できました!
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