ESI GroupとKeysight買収 — 製造プロセスCAEからテスト統合へ
ESI Groupの起源とPAM-CRASH
ESI Groupって何が得意なメーカーですか? 名前はたまに聞くんですけど、AnsysやAbaqusほどメジャーじゃない気がして。
ESI Groupはフランスのパリで1973年に設立されたCAE企業だ。原点はPAM-CRASHという陽解法の衝突解析ソルバー。1980年代に自動車のフルビークル衝突シミュレーションを世界で初めて実用化した先駆的存在だよ。
え、衝突解析の先駆けだったんですか? でも今は衝突解析といえばLS-DYNAが圧倒的ですよね?
いい指摘だ。確かにLS-DYNAが市場シェアでは圧倒的だけど、ESIの強みは衝突解析だけではなく、その前工程の製造プロセスシミュレーションにある。例えばプレス成形で板金がどう変形するかをシミュレーションして、その板厚変化や残留応力をそのまま衝突解析モデルに引き渡せる。この「製造から性能評価まで一貫した解析チェーン」がESI独自の価値だ。
製造プロセスCAEの強み
製造プロセスのCAEって、具体的にどんな製品があるんですか?
ESIの製造プロセス系の主力製品はこんな感じだ:
- PAM-STAMP — プレス成形シミュレーション。自動車のボディパネルや構造部材の絞り加工、スプリングバック予測。金型設計の現場で広く使われている
- ProCAST — 鋳造シミュレーション。溶湯の充填、凝固、収縮巣の予測。インベストメント鋳造や重力鋳造に強い
- SYSWELD — 溶接シミュレーション。熱影響部の残留応力と変形を予測。自動車のスポット溶接やアーク溶接の品質管理に使う
- VA One — 振動音響解析(SEA法+FEM/BEMのハイブリッド)。中高周波域のNVH解析では業界標準的な位置づけ
成形→溶接→衝突試験って、まさに自動車の製造ラインの流れそのものですね。
その通り。ESIは「Virtual Prototyping(バーチャル試作)」を標榜していて、実物を作る前にシミュレーションだけで製品の製造性と性能を検証するコンセプトを早くから提唱していた。Renault、PSA(現Stellantis)、Volkswagenなどの欧州自動車メーカーが古くからのユーザーだよ。
VPS統合プラットフォーム
VPSっていうのはPAM-CRASHとは別物ですか?
Virtual Performance Solution(VPS)はPAM-CRASHを核として、乗員安全(ダミーモデル)、エアバッグ展開、シートベルト挙動、さらにはプレス成形結果の取り込みまでを一つの統合プラットフォームにまとめたものだ。名前はVPSに変わったけど、ソルバーのDNAはPAM-CRASHそのものだよ。
PAM-STAMP(成形)→SYSWELD(溶接)→VPS(衝突)で、製造から試験まで全部つながるんですね。
まさにそれがESIの一貫解析チェーンだ。実際の現場では、プレス成形後の板厚減少や加工硬化を無視して衝突解析すると、変形モードが実験と合わないことがある。ESIのワークフローなら、その影響を忠実に反映できる。
Keysightによる買収の背景
2023年にKeysight Technologiesに買収されたそうですが、Keysightってどういう会社ですか?
Keysight Technologiesは、かつてのHP(ヒューレット・パッカード)から分離したAgilent Technologiesの、さらにエレクトロニクス計測部門が2014年に独立した会社だ。オシロスコープ、ネットワークアナライザ、スペクトラムアナライザなど、電子計測機器の世界最大手の一角を占めている。
計測機器の会社がCAEソフトを買うって、Hexagonの話と似てますね。目的は何だったんですか?
鋭い。Keysightの狙いは「物理テストとバーチャルテストの融合」だ。従来は実物のプロトタイプを作って計測器でテストしていたけど、シミュレーションで事前に予測できれば試作回数を大幅に減らせる。特に5G/6G通信やEV/自動運転のような先端分野では、テストパターンが爆発的に増えていて、全部実物でやるのは現実的じゃない。ESIのシミュレーション技術を取り込んで、「テスト戦略の最適化」を提供するのが買収の狙いだ。買収金額は約12.9億ドルだった。
テストとシミュレーションの統合戦略
具体的にどうやってテストとシミュレーションを統合するんですか?
例えば自動車のEMC(電磁両立性)試験を考えてみよう。従来はアンテナ付きの電波暗室で実車テストしていたけど、Keysightの計測技術とESIの電磁場シミュレーションを組み合わせれば:
- シミュレーションで問題の大枠を絞り込む(どの周波数帯が危ないか)
- 実物テストは問題箇所のみに集中して実施
- テスト結果をシミュレーションモデルにフィードバックして精度を向上
このループを回すことで、テスト工数を半減させつつカバレッジを上げられる。これが「テスト・シミュレーション融合」のコンセプトだ。
今後の展望
Keysight傘下になったESIの製品は、今後どうなっていくんでしょうか?
ESIの既存製品(VPS、ProCAST、VA One、PAM-STAMP)は引き続き開発・販売が継続されている。Keysightとの統合では、特に電磁場解析(EMC/アンテナ)と5G/車載通信の領域でシナジーが期待されている。一方で、衝突解析ではLS-DYNAとの市場競争は続くし、プレス成形ではAutoFormという強力な競合もいる。Keysightの資金力とグローバル営業力を活かして、これまでリーチできなかった顧客層に製品を届けられるかが今後のカギだね。
計測の会社がCAEを買うって、業界の大きな流れなんですね。テストとシミュレーションの融合は、確かに今後の開発効率化のカギになりそうです。
HexagonがMSCを買ったのも、SiemensがCD-adapcoを買ったのも、根っこにあるのは同じ「デジタルとフィジカルの融合」という潮流だ。CAEベンダーの勢力図は、もはやCAE単体では語れない時代に入っている。こういう業界動向を把握しておくと、ソフトウェア選定や投資判断で有利になるよ。
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