Altair Engineering ― 最適化とオープンライセンスのCAE革新者
創業と原点 ― 自動車業界から生まれたCAE企業
AltairってOptiStructのトポロジー最適化で有名ですよね? どういう会社なんですか?
1985年にJames Scapaがアメリカのミシガン州トロイで創業した会社だ。ミシガンはGM・Ford・Chrysler(現Stellantis)のお膝元で、Altairは最初から自動車業界向けのCAEコンサルティングとして出発した。
ソフトウェア会社じゃなくて、コンサルが出発点だったんですか?
そう。当時のCAEソフト(NASTRAN等)はプリ処理(メッシュ作成)が非常に面倒だった。AltairのエンジニアたちはOEMから受託してメッシュ作成や解析実務をやっているうちに、「もっと効率的なプリポストツールが必要だ」と感じて自社開発を始めた。それがHyperMeshの原型だ。つまり「現場の困りごとから生まれたツール」なんだよ。
HyperMeshとOptiStruct ― Altairの二枚看板
HyperMeshって今でもよく使われてますよね。何がそんなに良いんですか?
HyperMeshの最大の強みはマルチソルバー対応だ。一つのモデルに対して、NASTRAN、Abaqus、LS-DYNA、OptiStruct、RADIOSSなど、異なるソルバーの入力フォーマットで出力できる。自動車メーカーは複数のソルバーを使い分けることが多いから、「メッシャーだけはHyperMesh一択」という現場はかなり多い。
なるほど、ソルバーはバラバラでもプリポストはHyperMeshで統一できるんですね。じゃあOptiStructは?
OptiStructはトポロジー最適化を最初に商用化したソルバーと言っていい。1990年代にOptiStructが登場するまで、トポロジー最適化は大学の論文の中だけの技術だった。
例えば「ブラケットの設計空間を指定して、剛性を最大化しつつ重量を50%削減する形状を自動生成する」といったことが実務でできるようになったのは、OptiStructの功績が大きい。自動車のサスペンション部品やエンジンマウントの軽量化に革命をもたらした。
最近は3Dプリンタと組み合わせたトポロジー最適化の事例も多いですよね。
その通り。従来の切削加工では作れなかった有機的な形状も、金属3Dプリンタ(SLM/EBM)なら製造できる。OptiStructで最適化した形状をそのままAMで造形するワークフローは、航空宇宙やメディカルで急速に普及している。AltairのInspireという製品は、さらに直感的にトポロジー最適化ができるツールとして設計者向けに展開されているよ。
買収による製品拡充
Altairも他社と同じように買収で製品を増やしてきたんですか?
Ansysほど大型ではないけど、的確な買収で製品ラインナップを拡充してきた:
- 2006年:Mecalog(RADIOSS) ― フランスの陽解法ソルバー。自動車の衝突安全シミュレーションに使われる。LS-DYNAの競合製品だ
- 2014年:Cedrat(Flux) ― 電磁場解析ソルバー。モーター設計、変圧器、誘導加熱などに使用
- 2017年:solidThinking(Inspire / Evolve) ― 設計者向けの直感的シミュレーション・最適化ツール
- 2017年:Click2Cast ― 鋳造シミュレーション。鋳巣や湯流れの予測
- 2019年:Datawatch / Monarch ― データ準備・分析プラットフォーム。CAEからデータサイエンスへの展開
- 2022年:World Programming(WPS) ― SAS互換のデータ分析環境
後半はCAEというよりデータ分析系が多いですね。
いい着眼点だ。Altairは近年「CAE+データ分析+AI」を融合させたSimulation-Driven Innovationを掲げていて、従来のCAEベンダーとは少し違う方向に進化している。それについては後で詳しく話すよ。
ユニットベースライセンス ― 業界を変えた課金モデル
Altairの「ユニットライセンス」ってどういう仕組みですか? よく画期的だったと聞くんですけど。
Altair Units(旧HyperWorks Units)は、一定数のトークン(ユニット)を購入すると、Altairの全製品を使い分けられる仕組みだ。例えば月曜はHyperMeshでメッシュ作成、火曜はOptiStructで最適化、水曜はRADIOSSで衝突解析、木曜はFluxでモーター解析…という使い方ができる。
えっ、それってすごく便利じゃないですか? 普通は製品ごとにライセンスを買わないといけないですよね?
そう、従来のCAEライセンスは「Ansys Mechanical 1本」「Fluent 1本」のように製品ごとに購入するモデルだった。小規模なチームだと、使用頻度の低いツールにもフルライセンス費用がかかるのが問題だったんだ。
Altairのユニット制は「使いたいときに使いたいものを使う」ことを可能にした。特に中小企業やスタートアップにとっては、少ないユニット数で多様なソルバーを試せるのが魅力だ。この課金モデルは業界に大きな影響を与えて、後にAnsysも「Elastic Licensing」を導入するなど、他社も追随している。
データ分析とAIへの展開
さっきのデータ分析との融合って、具体的にどういうことですか?
AltairはRapidMiner(機械学習プラットフォーム)やDatawatch、SmartWorksなどを買収・統合して、CAEの結果データをAI/MLで活用するワークフローを構築している。例えば:
- サロゲートモデル:OptiStructやRADIOSSの解析結果を学習して、新しい設計パラメータに対する性能を瞬時に予測するAIモデルを構築
- 品質管理:製造データとシミュレーションデータを統合分析して、不良品の原因を特定
- PBS Professional:HPCジョブスケジューラー。大量の解析ジョブを効率的にクラスターに配分する
「シミュレーション」「データ分析」「HPC」の三位一体が今のAltairの戦略だ。純粋なCAEベンダーというよりは、「計算に関わるすべてをカバーする企業」を目指しているように見える。
まとめ
Altairのポイントをまとめるとこうなる:
- 1985年:James Scapaがミシガンで創業。自動車向けCAEコンサルが出発点
- 二枚看板:HyperMesh(マルチソルバー対応プリポスト)+OptiStruct(トポロジー最適化の先駆者)
- 買収戦略:RADIOSS(衝突)、Flux(電磁場)、Click2Cast(鋳造)で解析ドメインを拡充
- ライセンス革命:ユニットベースライセンスで「使いたいときに使いたいツールを」を実現。業界の課金モデルを変えた
- 進化の方向:CAE+データ分析+AI/ML+HPCを融合する「Simulation-Driven Innovation」
Ansys・Siemens・Dassaultの3大ベンダーに比べると規模は小さいけど、最適化とライセンスモデルという明確な差別化ポイントを持っている。「ニッチだけど鋭い」のがAltairの立ち位置だね。
最適化から始まって、ライセンスモデルでも革新を起こして、今はAIにも展開しているって、一貫して「新しいことを先にやる」会社なんですね。ありがとうございます!
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