JSOL JMAG — 日本発の電磁場解析ソフトの歴史と技術
JMAGの起源と歴史
JMAGって日本製のCAEソフトなんですか? 海外製が多い中で珍しいですよね。
そうだね、日本発のCAEソフトで世界的にシェアを持っているのは数えるほどしかない。JMAGの歴史は1983年まで遡る。当時のJRI(日本総合研究所)が科学技術振興機構の支援を受けて電磁場解析の研究プロジェクトを始めたのが出発点だ。
40年以上の歴史があるんですね。JSOLとJRIの関係ってどうなってるんですか?
JSOL Corporationは日本総合研究所(JRI)のCAE事業部門が分社化して設立された会社だ。JMAGの開発を引き継ぎつつ、LS-DYNAの日本国内代理店としても活動している。JMAGは初期にはDesignerとStudioの2ラインに分かれていたが、現在はJMAG-Designerに統一されて、プリポスト一体型の解析環境になっている。
モータ設計に特化した機能群
電磁場解析ならAnsys MaxwellやCOMSOLでもできると思うんですけど、JMAGは何が特別なんですか?
JMAGの最大の差別化ポイントはモータ設計に特化した専用機能が豊富なことだ。具体的には:
- 効率マップの自動生成 — 回転数×トルクの全動作範囲で効率を計算して等高線マップを自動出力。モータの最適動作点がひと目でわかる
- 鉄損解析 — ヒステリシス損と渦電流損を分離して計算。iGSE(improved Generalized Steinmetz Equation)に対応し、PWMインバータ駆動時の高調波鉄損も精度よく予測できる
- 永久磁石の減磁解析 — 高温・逆磁場条件での不可逆減磁を予測。EV用モータでは必須の評価項目だ
- コギングトルク・トルクリップル解析 — 回転角度ごとのトルク変動を高精度に計算
効率マップの自動生成ってすごいですね。これって他のソフトだと手動でやるんですか?
他のソフトでもやれなくはないけど、JMAGの場合はモータのジオメトリを定義してパラメータ範囲を設定するだけで、自動的にFEA解析を回して効率マップを出してくれる。例えばIPMモータの効率マップを作るのに、Maxwellだとマクロを自分で書く必要があるケースでも、JMAGならGUIのウィザードで完結する。この「モータ設計者が本当に欲しいアウトプットに直結する」設計思想がJMAGの強みだ。
JMAG-RTと制御連携
JMAG-RTっていうのをたまに聞くんですけど、あれは何ですか?
これはJMAGの非常にユニークな機能だ。JMAG-RTは、FEA解析の結果をもとにモータの応答曲面モデル(ROMともいう)を自動生成する。このRTモデルをMATLAB/SimulinkやdSPACEなどのリアルタイムシミュレーション環境にそのまま組み込める。
つまり、FEMの精度を持ったモータモデルを制御シミュレーションに使えるってことですか?
その通り。従来はモータの制御設計をする人が簡略化した等価回路モデルを使っていたけど、JMAG-RTなら磁気飽和や空間高調波を含む高精度なモデルで制御ロジックを検証できる。EV用インバータの制御開発では特に重要で、トヨタやデンソーがJMAGを使う大きな理由の一つがこのJMAG-RT連携だよ。
世界展開と主要ユーザー
日本のソフトだと、海外ではあまり使われてなかったりしませんか?
実はJMAGは海外でもかなり浸透している。日本国内ではトヨタ、日産、ホンダ、デンソー、アイシンなどの自動車・部品メーカーが主要ユーザーだけど、海外でもBosch、Continental、ZF、Nidecといった欧州の大手Tier1サプライヤーで採用されている。特にEVシフトが加速してからは、モータ設計の需要が世界的に急増して、JMAGの存在感が高まっているよ。
日本発のソフトが世界の自動車メーカーで標準的に使われてるんですね。それはすごい。
他社電磁場ツールとの比較
JMAGとAnsys Maxwellって、どう使い分けるんですか?
ざっくりまとめるとこうだ:
- JMAG — モータ設計に特化。効率マップ、JMAG-RT、コギングトルクなど専用機能が豊富。日本語サポートも万全
- Ansys Maxwell — 汎用的な電磁場解析。モータだけでなくアンテナ、EMC、高周波デバイスまで幅広い。Ansysエコシステム(Mechanical、Fluentなど)との連成が強み
- COMSOL AC/DC — PDEベースで自由度が高い。研究用途やニッチなマルチフィジックス連成に向いている。モータ設計の専用機能は少ない
モータ設計がメインの仕事なら、まずJMAGを検討するのが合理的だ。汎用的な電磁場解析も必要ならMaxwellとの併用が多い。
今後の展望
EVの普及でモータの需要はさらに増えますよね。JMAGは今後どう進化するんでしょう?
大きな方向性としては3つある。第一に、NVH解析の強化。電磁加振力から構造振動、さらに放射音までを一貫して予測する「電磁-構造-音響」連成の高度化だ。EVは内燃機関のマスキング音がないから、モータの電磁ノイズが直接乗員に聞こえてしまう。この問題を解決するためにJMAGの音響連成機能が重要視されている。
第二に、AIを活用した最適化。多数のパラメータを持つモータ形状を、ディープラーニングのサロゲートモデルで高速に探索する取り組みが進んでいる。第三に、クラウド対応。大規模な3D-FEA解析をクラウドで実行して、設計者の手元には結果だけ返す仕組みだ。
日本製のソフトがモータ設計の世界標準になってるって、日本のエンジニアとしてちょっと誇らしいです。実際にJMAGを触ってみたくなりました!
JMAGはトライアルライセンスもあるし、JSOLが定期的にセミナーや技術講習会を開催しているから、まずはそこから入るといいよ。電磁場解析の基礎を学びながら実際にモータモデルを動かしてみると、理論がぐっと身近になるはずだ。
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