射出成形反り解析
理論:反りは「収縮の差」から生まれる
概要
成形品が均一に縮めば反らないはずですよね。どこで差が生まれるのですか?
板厚方向、部位、方向の3つで差が生まれる。射出された樹脂は金型に触れた面から固まり、冷え方が表と裏で違えば、先に冷えた側と後から冷えた側で収縮量が変わって板が曲がる。肉厚の部分は冷えるのが遅く、保圧が届きにくいので収縮が大きく、周りの薄い部分を引っ張る。さらに流れに沿って分子や繊維が並ぶと、流れ方向と直角方向で収縮が違う。反り解析は、充填・保圧・冷却の解析で各点の温度・圧力の履歴と配向を求め、そこから残留ひずみ(収縮)を計算して、構造解析で部品全体の変形を求める流れで行う。部品が薄いので、肉厚方向の収縮差が曲げとして大きく効くのが特徴だ。
収縮差・曲率・反り量
Δs は表と裏の収縮率の差、h は板厚、κ は曲率、δ は長さ L の平板の中央の反り(弓なりの高さ)、α_eff は実効的な熱膨張係数、ΔT は金型の固定側と可動側の温度差。
金型を削る前に反りを知る
射出成形の反り対策は、かつては試作した金型で成形しては削り直す「金型の修正」の繰り返しだった。金型の修正には数週間と大きな費用がかかるため、1980年代から充填と冷却の解析が商用化され、1990年代には繊維配向と反りまで一貫して解くソフトが広まった。今では、反りを見込んで金型の形をあらかじめ逆向きに補正する(逆反り)設計にもシミュレーションが使われている。
計算例
κ = Δs/hは板厚方向に収縮ひずみが線形に変わる、自由で均質な薄板の近似。表裏2層だけのモデルでは係数が変わる。方向別の収縮差1.4 mmは寸法差で、反りの高さそのものではない。
例1:板厚2 mmの平板の反り(実効熱膨張係数 1×10⁻⁴/K と仮定)
| 金型の温度差 | 収縮差 | 曲率 | 反り L = 100 mm | 反り L = 200 mm |
|---|---|---|---|---|
| 5 K | 0.05% | 0.00025 /mm | 0.31 mm | 1.25 mm |
| 10 K | 0.10% | 0.00050 /mm | 0.62 mm | 2.50 mm |
| 20 K | 0.20% | 0.00100 /mm | 1.25 mm | 5.00 mm |
反りは長さの2乗に比例するので、同じ収縮差でも部品が2倍長いと4倍反る。収縮差は温度差だけで決まるわけではなく、ここでは傾向を見るための簡易な見積もり。
例2:ガラス繊維入り材料の配向による収縮差(長さ200 mm)
| 材料・方向 | 収縮率 | 200 mmでの収縮 |
|---|---|---|
| 繊維入り・流れ方向 | 0.3% | 0.6 mm |
| 繊維入り・直角方向 | 1.0% | 2.0 mm |
| 繊維なしPP(参考) | 1.5% | 3.0 mm |
繊維入りは全体の収縮は小さいが、方向の差が1.4 mmと大きく、箱形の部品ではねじれや角の倒れになって現れる。収縮率は代表的な値。
反り解析の結果を見ると、全体が1 mm程度しか変形していないのに、組み付けると隙間が3 mmも開きます。解析が間違っているのでしょうか?
変形量の見方と拘束条件を確かめよう。反り解析の変形は、どこを固定したと仮定して表示しているかで見え方が大きく変わる。部品の中央を基準にすると端の変形は小さく見えるが、組み付けで基準になる取付穴やボスで拘束して表示し直すと、反対側の端が3 mm浮いて見えることは珍しくない。ねじれは特にこの違いが大きい。また、成形直後の反りと、数日たって吸湿や応力緩和が進んだ後の反りが違う材料もある。比べるときは、測定と同じ基準(取付点)で拘束した変形を、同じ時点の条件で比べる。そのうえで差が大きければ、繊維配向の予測や、保圧・冷却の条件(実機の金型温度の分布)を見直す。
実務での進め方
- 材料のPVT特性(圧力・体積・温度)、粘度、熱物性、繊維入りなら配向に関わるデータを用意する。
- 充填・保圧解析でウェルドラインや保圧の届き方を確かめる。
- 冷却回路を含めて冷却解析を行い、固定側と可動側の金型温度の差を確かめる。
- 反り解析で、収縮差の原因(冷却・部位・配向)ごとの寄与を分けて見る。
- 組付けの基準点で拘束した変形を、試作品の測定と比べる。
「原因ごとに分けて見る」
多くの反り解析ソフトには、反りを「冷却の差」「収縮の差(部位)」「配向の差」に分けて表示する機能がある。合計の反りだけを見て金型温度を変えても、実は配向が主因なら効果は小さい。どの原因が支配的かが分かれば、冷却回路を直すのか、ゲートの位置を変えて流れの向きを変えるのか、肉厚をそろえるのか、と対策の方向が決まる。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 拘束点が測定と違う | 反りの比較が合わない | 組付け基準で拘束 |
| 金型温度を一様に設定 | 板厚方向の差を見逃す | 冷却回路を解析 |
| 繊維配向を無視 | ねじれを見逃す | 配向解析を連成 |
| PVTデータが別グレード | 収縮量がずれる | 使用グレードのデータ |
| 保圧条件を実機と変える | 厚肉部の収縮がずれる | 実機の条件を入力 |
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よくある質問
射出成形品はなぜ反るのですか?
部位や方向によって収縮量が違うからです。主な原因は3つで、(1) 金型の固定側と可動側の温度差などによる板厚方向の冷却の差、(2) 肉厚の違いによる部位ごとの冷却と収縮の差、(3) 樹脂の分子や繊維の向き(配向)による方向ごとの収縮の差です。反り解析では、充填・保圧・冷却の解析結果から各部の収縮を求め、構造解析で変形を計算します。
金型の温度差でどれくらい反りますか?
板厚2 mmの平板で表と裏の収縮差が0.1%あると、曲率は0.0005/mmになり、長さ100 mmで0.62 mm、200 mmで2.5 mmの反りになります。実効的な熱膨張係数を1×10⁻⁴/Kとすると、固定側と可動側の温度差10 Kでこの程度の収縮差が生じうるため、金型の冷却回路の設計が反りに直結します。
繊維入り材料の反りは何が違いますか?
繊維の向きで収縮が大きく変わることです。ガラス繊維入りの材料では、流れ方向の収縮が0.3%、直角方向が1.0%といった差があり、200 mmの部品ではそれぞれ0.6 mmと2.0 mmで1.4 mmも違います。繊維配向を予測し、方向ごとの収縮と剛性を構造解析に渡すことが反りの予測に欠かせません。
参考資料・検算の位置づけ
掲載値は本文の仮定に基づく教育用の参考計算。資料は理論・設定の参照先であり、本記事の数値を各ソフトで再現した証明ではない。設計・製造の判断には対象条件での検証が必要。
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