OpenFOAM多相流解析
理論:体積率で界面を追う
VOF法は水と空気などの相の体積率alphaを輸送し、密度・粘度を相分率から求めて流れと界面を連成させる。気泡や液滴がちぎれる流れを扱えるが、最小液滴や液膜が格子より小さければ解像できない。
V_iはセル体積、V_lは液体体積。閉じた領域なら初期液量との差を追い、流入口・出口があれば体積流量の積分を収支に加える。Coはここでは1次元の見積もりで、ソルバーの面流束による定義と一致するとは限らない。
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OpenCFD版のinterFoamとFoundation版は設定ファイルや実行方法が異なる。Foundation v13のダム崩壊例はfoamRunとincompressibleVoFモジュールを使う。別の版の辞書をそのままコピーせず、インストール済み版に付属するdamBreak例から始めよう。
計算例:時間刻みの桁を確かめる
表は示した理想モデルへの代入による時間尺度で、OpenFOAMの実行結果・安定性保証ではない。実験との比較や液量保存、格子・時間刻み依存性の確認を別に行う。
高さ0.292 mの水柱とCo = 0.5
| セル幅 | Coによる刻みの目安 |
|---|---|
| 5 mm | 7.39×10⁻⁴ s |
| 2 mm | 2.95×10⁻⁴ s |
g = 9.81 m/s²。この速度は乾いた床上への理想的な浅水ダム崩壊(Ritter)の尺度で、OpenFOAMを実行して得た前縁速度ではない。壁への衝突後や鉛直加速度の大きい初期流れにはそのまま適用しない。計算中は実際の最大Coと界面Coをログで確認する。
表面張力による時間尺度
| セル幅 | この係数での時間尺度 |
|---|---|
| 1 mm | 1.05×10⁻³ s |
| 0.1 mm | 3.33×10⁻⁵ s |
| 0.01 mm | 1.05×10⁻⁶ s |
水1,000 kg/m³・空気1.2 kg/m³・表面張力0.072 N/mを仮定。これは離散化に依存する係数を選んだ教育用の尺度で、すべてのVOF法の保証付き安定条件ではない。格子を10分の1にするとこの尺度は約31.6分の1になる。maxCoだけでは表面張力の制約を管理できない場合があり、使用ソルバーの実装と時間刻み依存性を確かめる。
検証の進め方
- 付属のdamBreakを変更せず実行し、版と辞書を記録する。
- alphaの最小・最大、液量、流入出の収支を記録する。
- 格子と時間刻みを別々に細かくし、前縁位置や圧力を比較する。
- 実験と比べる場合は形状・初期液量・計測位置・時刻をそろえる。
よくある間違い
| 確認箇所 | 対策 |
|---|---|
| 液量が減る | 境界流束とalpha輸送を確認し、界面Coと刻みを見直す。 |
| 静止液滴の周りに流れ | 寄生流の可能性。曲率・格子・表面張力の釣合いを検証する。 |
| 液膜が消える | 膜厚とセル幅を比較し、必要なら局所細分化する。 |
よくある質問
VOFのalphaは何を表しますか?
セル内を各相が占める体積の割合です。水相のalphaが1なら水、0なら他相、0と1の間なら界面を含むセルです。セル平均量なので界面の幾何学的厚さそのものではありません。
maxCoだけで時間刻みを決めてよいですか?
十分ではありません。界面のクーラン数maxAlphaCo、表面張力、界面移流の設定も確認します。設定名は版により異なるため、使用版のチュートリアルとソースを参照し、時間刻みを半分にした比較で精度を確認します。
ダム崩壊で何を検証しますか?
液量保存、alphaの有界性、前縁位置と時刻、圧力や衝撃を確認します。2√(gH)は乾いた床上の理想浅水モデルの速度尺度で、壁・障害物・粘性を含むVOF結果への合否判定値ではありません。
参考資料・検算の位置づけ
- OpenFOAM Foundation v13 — Dam break
- Brackbill, Kothe & Zemach — Continuum surface force method (1992)
掲載値は本文の仮定に基づく教育用の参考計算。資料は理論・設定の参照先であり、本記事の数値を各ソフトで再現した証明ではない。設計・製造の判断には対象条件での検証が必要。
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