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ラジオの「AM」「FM」って、放送局の種類か何かだと思ってました。あれって、そもそも何が違うんですか?
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ざっくり言うと「音声を電波に乗せる方法」の違いだよ。音声みたいな低い周波数の信号は、そのままだとアンテナから飛ばせない。だから高い周波数の「搬送波」に音声を背負わせる——これが変調だ。AM は搬送波の振幅 を音声に合わせて伸び縮みさせる方式。FM は振幅は一定のまま、搬送波の周波数 を音声に合わせて速くしたり遅くしたりする方式なんだ。
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なるほど、振幅か周波数か、ですか。左の波形を見ると、AM のときは波の高さがウネウネしてますね。FM に切り替えると、高さは同じで波の「混み具合」が変わってる。
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そう、まさにそれ。AM の波形を囲む破線が「包絡線」で、これが元の音声の形そのものなんだ。受信機は包絡線をなぞるだけで音声を取り出せる——だから AM ラジオは回路がすごく簡単で安い。FM のほうは波が密になったり疎になったりしてるだろう? 密なところは瞬時周波数が高く、疎なところは低い。音声の振幅が「周波数のずれ」に変換されているんだ。
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AM のほうが簡単なら、AM だけでよさそうですけど…なんで FM があるんですか?
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弱点があるんだ。雑音は基本的に「振幅のゆらぎ」として電波に乗ってくる。AM は情報を振幅に入れているから、雑音がそのまま音に化ける。雷が鳴ると AM ラジオがバリバリいうのはこれだ。FM は情報を周波数に入れていて、振幅は受信側でバッサリ削ってしまえる。だから FM は雑音に強く高音質なんだ。実際、FM 放送は音楽向き、AM は遠くまで届きやすいのでニュースや非常放送向き、と棲み分けている。
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じゃあ FM が全部勝ちじゃないですか。AM が使われ続ける理由ってあるんですか?
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FM にもコストがある。下の「周波数スペクトル」を見てごらん。AM は搬送波の両側に側波帯が1対だけで、占有帯域幅は 2f_m で固定。ところが FM は変調指数 β を上げると側波帯が何対も広がって、帯域をどんどん食う。電波は有限の資源だから、1局あたり広い帯域を使う FM は「割り当てられる局数」が減る。AM は帯域が狭くて省エネ、しかも回路が安い。だから「広く薄く届けたい」用途では今も AM が現役なんだよ。
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変調指数 μ を 1 より大きくすると、波形に赤い警告が出ました。これは何が起きてるんですか?
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それが「過変調」だ。AM で μ>1 にすると、包絡線 1+μ·m(t) が一瞬マイナスになる。包絡線検波器はマイナスを扱えないから、その部分が折り返されて音がひずむ。スペクトルも余計に広がって隣の局を妨害する。だから実際の AM 放送局は μ をだいたい 0.7〜0.9 に抑えて、ピークでも 100% を超えないよう厳しく管理しているんだ。スライダーを 1.0 の前後で動かして、波形の底が反転する様子を見てみるといいよ。
AM変調とFM変調は何が違いますか?
AM(振幅変調)は搬送波の「振幅」をメッセージ信号に合わせて変える方式で、s(t)=[1+μ·m(t)]·cos(2πf_c t) と書けます。FM(周波数変調)は搬送波の「瞬時周波数」をメッセージに合わせて変える方式で、s(t)=cos(2πf_c t+β·sin(2πf_m t)) です。AMは回路が簡単で受信機が安価ですが、雑音が振幅に直接乗るためノイズに弱く、過変調すると包絡線がつぶれます。FMは振幅一定なので振幅性の雑音に強く高音質ですが、占有帯域幅が広くなります。
AMの過変調(オーバーモジュレーション)とは何ですか?
AMでは変調指数(変調度)μ が 1 を超えると過変調になります。包絡線 1+μ·m(t) が負の値を取る瞬間が生じ、包絡線検波器ではその部分が折り返されて再生波形がひずみます。さらにスペクトルが広がって隣接チャンネルに干渉します。実用の放送AMでは μ を 1 未満(おおむね 0.7〜0.9)に保ち、ピークでも 100% を超えないように制御します。本シミュレーターは μ>1 で過変調を警告します。
FMの占有帯域幅はどう求めますか?
FMの帯域幅はカーソンの法則 B_FM = 2·(β+1)·f_m で見積もります。β は FM の変調指数、f_m はメッセージ周波数です。β を大きくすると周波数偏移 Δf=β·f_m が増え、有効な側波帯の対数(およそ β+1 対)も増えて帯域が広がります。一方 AM の占有帯域幅は変調指数によらず常に 2·f_m で固定です。FMが「広帯域と引き換えに高音質・耐雑音性」を得ているのが、この式の対比から読み取れます。
FMのスペクトルに複数の側波帯が出るのはなぜですか?
FM波は cos(2πf_c t+β·sin(2πf_m t)) で、これを三角関数の展開で書き直すと、搬送波 f_c に加えて f_c±n·f_m(n=1,2,3…)の無限個の側波帯が現れます。各側波帯の振幅は第一種ベッセル関数 J_n(β) で決まります。β が小さいと J_1 までが支配的で AM に近い 3 本スペクトルになり、β が大きいほど高次の側波帯まで広く分布します。本シミュレーターは J_n(β) を級数で近似してスペクトルを表示します。
ラジオ放送: 最も身近な応用です。中波(MW)AM放送は1局あたりの占有帯域が狭く、電離層反射で遠方まで届くため、広域のニュース・気象・災害情報に使われます。FM放送は変調指数を大きく取って高音質を実現し、音楽番組やコミュニティ放送に向きます。同じ「ラジオ」でも、AMは到達距離と省帯域、FMは音質と耐雑音性、という設計思想の違いが現れています。
無線通信・業務無線: アナログの業務無線やアマチュア無線では、音声に狭帯域FM(NFM)が広く使われてきました。振幅性の雑音やフェージングに強く、リミッタで振幅を一定化できるため、移動体通信に適しているからです。航空無線では今もAM(振幅変調)が使われ、複数局が同時送信したときに「キャプチャ効果で1局だけ生き残る」FMと違い、混信が重なって聞こえることが安全上むしろ望まれています。
計測・センサ信号の伝送: FMの考え方はテレメトリやセンサ信号の伝送にも応用されます。電圧をいったん周波数に変換するV-F変換は、長い配線でも振幅の減衰やノイズの影響を受けにくく、周波数カウンタで正確に復元できます。回転センサのパルス出力や、光ファイバ経由のアナログ伝送など、「振幅より周波数のほうが頑健」という性質が活きる場面は多くあります。
音響・電子楽器: FM変調はシンセサイザの音作り(FM音源)にも使われます。1980年代のFMシンセは、可聴域の搬送波を別の可聴域信号でFM変調し、ベッセル関数で決まる豊富な側波帯から金属的・倍音豊かな音色を生み出しました。本シミュレーターで変調指数βを大きくしたときにスペクトルが広がる現象は、まさにFM音源の音色変化の原理そのものです。
まず多いのが、「変調指数を上げれば上げるほど良い」という誤解 です。AMでは変調度μを1に近づけるほど側波帯に乗る電力が増え、伝送効率は上がりますが、μが1を超えた瞬間に過変調となり包絡線がつぶれて音がひずみます。FMでも変調指数βを上げると周波数偏移が増えてS/Nは改善しますが、カーソン則 B=2(β+1)f_m に従って占有帯域幅が際限なく広がり、隣接チャンネルを侵食します。変調指数は「効率・音質」と「帯域・干渉」のトレードオフであり、無条件に大きくしてよいパラメータではありません。
次に、「AMは搬送波にこそ情報が入っている」という思い込み です。実は搬送波そのものには情報がまったく含まれていません。情報を運んでいるのは両側の側波帯だけで、搬送波は復調の基準として送られているにすぎません。AMの電力効率 η=μ²/(2+μ²) が μ=1 でも 33% 止まりなのはこのためで、送信電力の大半が「情報を運ばない搬送波」に消えています。だからこそ実務では搬送波や片側側波帯を抑圧するDSB-SC・SSBといった方式が生まれました。本ツールは基本の標準AMを扱いますが、効率の低さは設計上の重要な出発点です。
最後に、「FMは帯域が広いほど音が良いから無制限に広げてよい」という誤解 です。確かに広帯域FMはS/Nに優れますが、受信機の入力S/Nがある閾値を下回ると、出力が急激に劣化する「スレッショルド効果(FMしきい値)」が現れます。帯域を広げるほど受信機に入る雑音電力も増えるため、しきい値はかえって悪化します。弱電界では狭帯域FMのほうが粘り強いことも多く、「広帯域FM=常に高音質」ではありません。帯域設計は、対象とする受信環境のS/Nを前提に決める必要があります。