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機械設計

ベルトコンベヤ所要動力シミュレーター

バラ物(鉱石・砂利・穀物など)を運ぶベルトコンベヤの駆動所要動力を見積もるツールです。搬送量・ベルト速度・距離・揚程を変えると、摩擦動力と揚程動力の内訳、合計の所要動力、駆動プーリの有効張力がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
搬送量(質量流量)
t/h
1時間あたりに運ぶ材料の質量
ベルト速度 v
m/s
水平搬送距離 L
m
機長(テールプーリ〜ヘッドプーリ)
揚程(持ち上げ高さ)H
m
マイナスで下り搬送。負の揚程動力になる
運動抵抗係数 f
ローラ軸受・ベルト撓みなどの摩擦相当
ベルト+回転部の単位長さ質量
kg/m
ベルトとアイドラ回転部の合計
計算結果
所要動力 P (kW)
摩擦損失動力 (kW)
揚程動力 (kW)
有効張力 Te (N)
ベルト上の材料質量 (kg/m)
揚程動力の割合 (%)
傾斜ベルトコンベヤ — 搬送アニメーション

低い積込点から高い排出点へ、バラ物を傾斜ベルトで運び上げます。ベルトと材料の塊が斜面を上り、端でこぼれ落ちます。H は揚程、v はベルト速度です。

所要動力 vs 搬送量
所要動力 vs 揚程
理論・主要公式

$$P=\underbrace{f\,q_{total}\,g\,L\,v}_{\text{摩擦}}+\underbrace{\dot m\,g\,H}_{\text{揚程}}$$

所要動力 P [W] は摩擦(運動抵抗)動力と揚程動力の和。f:運動抵抗係数、q_total:ベルト上の全移動質量 [kg/m]、L:搬送距離 [m]、v:ベルト速度 [m/s]、ṁ:材料の質量流量 [kg/s]、H:揚程 [m]、g=9.81 m/s²。

$$T_e=\frac{P}{v}$$

有効張力 Te [N] は所要動力をベルト速度で割った、駆動プーリがベルトに加える正味の周方向力。ベルト強度・プーリ摩擦・テンション装置の選定基準になる。

ベルトコンベヤの所要動力とは

🙋
工場や鉱山で見る、長いベルトでモノを運ぶあのコンベヤ。あれを回すモータって、どれくらいの大きさが必要なんですか?
🎓
いい質問だ。ベルトコンベヤの所要動力は、ざっくり言うと「2つの足し算」で決まるんだ。ひとつは摩擦動力——ベルトとその上の材料を、ローラの上で水平方向に引きずり続けるための動力。もうひとつは揚程動力——材料を高い場所へ持ち上げるための動力。左で「揚程 H」を上げてみて。揚程動力カードの数字がぐっと増えるのが見えるはずだ。
🙋
なるほど。じゃあ水平にしか運ばないコンベヤなら、揚程動力はゼロで、摩擦だけ考えればいいんですね。
🎓
その通り。そして摩擦動力が曲者でね。式は P_f = f·q_total·g·L·v で、搬送距離 L に比例している。鉱山の数キロある長距離コンベヤだと、材料を運ぶ前に「ベルト自身と回転するローラを引きずる抵抗」だけで巨大な動力を食うんだ。だから q_total には材料の質量だけでなく、ベルトとアイドラ回転部の質量も足し込む。左の「ベルト+回転部の単位長さ質量」がそれだよ。
🙋
運動抵抗係数 f って何ですか?摩擦係数とは違うんですか?
🎓
f は「みかけの摩擦係数」と呼ばれるもので、純粋な滑り摩擦じゃないんだ。アイドラ軸受の転がり抵抗、材料がベルトと一緒に上下にたわむときの内部損失、ベルトがローラに乗り上げる抵抗——そういう細々した抵抗を全部ひとまとめにした係数。標準的な据付なら f=0.020〜0.025 くらい。据付が悪い、低温で潤滑が固い、粉じんが多いと f は大きくなる。DIN 22101 などの規格でも、この f が動力計算の中心だよ。
🙋
揚程 H をマイナスにできますよね。下り坂のコンベヤって、モータがいらないんですか?
🎓
面白いところに気づいたね。H をマイナスにすると揚程動力が負になる。材料が落ちる位置エネルギーがコンベヤを「押してくれる」んだ。摩擦動力よりこの負の揚程動力が大きくなると、所要動力 P 自体がマイナスになる。こうなるとコンベヤは駆動ではなくブレーキ。発電ブレーキや回生で余剰エネルギーを吸わせ、暴走しないように制御するのが設計の主題になる。鉱山で原料を山から下ろす急傾斜コンベヤでは、実際に発電しながら運んでいる例もあるんだ。
🙋
有効張力 Te っていうのも出ていますが、これは動力とどう違うんですか?
🎓
動力 P は「単位時間あたりの仕事」、Te は「ベルトに加わる正味の力」。Te = P/v の関係でつながっている。同じ動力でも、ベルトをゆっくり回すほど Te は大きくなる。そして Te こそ、ベルトの引張強度を決め、駆動プーリで滑らないための摩擦余裕(オイラーの式)を決め、テンションウェイトの重さを決める数字なんだ。動力でモータを選び、Te でベルトとプーリを選ぶ——両方そろって初めてコンベヤの設計になる。

よくある質問

所要動力は「摩擦(運動抵抗)動力」と「揚程動力」の和で求めます。摩擦動力は P_f = f·q_total·g·L·v で、運動抵抗係数 f、ベルト上の全移動質量 q_total(材料+ベルト+回転部の単位長さ質量)、搬送距離 L、ベルト速度 v に比例します。揚程動力は P_h = ṁ·g·H で、材料の質量流量 ṁ と持ち上げ高さ H だけで決まります。本ツールはこの2つを合算して所要動力 P_total を表示します。
長くてほぼ水平のコンベヤでは摩擦動力が支配的になります。摩擦動力は搬送距離 L に比例するため、数百メートルの長距離搬送ではベルト自身を引きずる抵抗だけで大きな動力を食うからです。逆に短くて急な傾斜コンベヤでは揚程動力が支配的になります。本ツールの「揚程動力の割合」カードで内訳を確認できます。デフォルト条件(L=100m・H=10m)では揚程が約74%を占めます。
揚程 H をマイナス(下り搬送)にすると揚程動力 P_h は負になり、材料が落ちる位置エネルギーがコンベヤを助けます。摩擦動力よりこの負の揚程動力が大きくなると所要動力 P_total 自体が負になり、コンベヤは駆動ではなく「ブレーキ」になります。このとき発電ブレーキや回生で余剰エネルギーを処理する必要があり、暴走(オーバーラン)防止が設計の主題に変わります。本ツールは P_total が負になる条件も正しく表示します。
有効張力 Te は駆動プーリがベルトに加える正味の周方向力で、Te = P_total / v で求めます。所要動力が同じでも、ベルト速度 v が遅いほど Te は大きくなります。Te はベルトの引張強度の選定、駆動プーリの摩擦伝達(オイラーの式によるスリップ余裕)、テンションウェイトの重さを決める基準値です。動力だけでなく Te を確認することで、ベルトが切れない・滑らない設計かを判断できます。

実世界での応用

鉱山・砕石プラント:露天掘り鉱山や採石場では、掘った鉱石・砕石を破砕機や貯鉱場へ運ぶのに長距離ベルトコンベヤが使われます。機長が数キロに及ぶこともあり、このスケールでは摩擦動力が圧倒的に支配的です。運動抵抗係数 f をわずかに下げる(高効率アイドラ、低抵抗ベルトカバーゴム)だけで、年間の電力費が大きく変わります。山の上から下へ原料を下ろす急傾斜コンベヤでは揚程動力が負になり、回生発電でプラント内の電力を一部まかなう例もあります。

港湾・バルク荷役:石炭・鉄鉱石・穀物・セメントクリンカなどを船からヤード、ヤードから船へ積み替えるバルクターミナルでは、シップローダ・スタッカ・リクレーマと組み合わせた多段のコンベヤ系が組まれます。各コンベヤの所要動力と有効張力を積み上げて、駆動方式(単一プーリ駆動か複数プーリ駆動か)とテンション装置を選定します。搬送量が時間で変動するため、ピーク搬送量で動力を見積もるのが基本です。

火力発電所・セメント工場:石炭火力発電所のボイラへの石炭供給、セメント工場の原料・クリンカ搬送など、プロセスの心臓部にベルトコンベヤがあります。連続運転が前提のため、所要動力は電力コストに直結し、わずかな効率改善が長期で大きな差になります。傾斜部の揚程動力、水平部の摩擦動力を切り分けて、区間ごとに最適な速度・ベルト幅を選びます。

物流センター・空港:箱物(ケース・小包・手荷物)を運ぶ搬送コンベヤは、バラ物コンベヤより搬送量・揚程が小さいものの、本ツールの考え方はそのまま使えます。コンベヤの台数が多いため、一台あたりの摩擦動力を抑えることが施設全体の消費電力に効きます。空港の手荷物システムでは、合流・分岐・傾斜区間ごとに動力を見積もり、モータとインバータを選定します。

よくある誤解と注意点

まず大きな誤解が、「揚程動力だけ考えればよい」というものです。材料を H メートル持ち上げる仕事は直感的に分かりやすいため、揚程動力 ṁgH だけでモータを選んでしまうことがあります。しかし水平に近い長距離コンベヤでは、摩擦動力 f·q_total·g·L·v のほうがはるかに大きくなります。摩擦動力は搬送距離 L に比例し、しかも q_total には材料だけでなくベルトとアイドラ回転部の質量が含まれます。空荷で運転していても摩擦動力はゼロにならない——これが揚程動力との決定的な違いです。本ツールで L を伸ばしてみると、摩擦動力が揚程動力を追い越す様子が確認できます。

次に、「運動抵抗係数 f は固定値でよい」という思い込みです。本ツールのデフォルト f=0.022 は、標準的な据付・常温・標準速度を想定した代表値です。実際の f は、据付精度(アイドラの心ずれ・段差)、温度(低温でグリースが固くなり抵抗増)、ベルトの撓み、材料の含水・粘着性、メンテナンス状態によって 0.015〜0.05 の範囲で変動します。さらに長距離コンベヤでは、起動時に静止摩擦と慣性が加わり、定常運転時より大きな動力・張力が一瞬必要になります。f を楽観的に取ると、起動できない・ベルトが滑るという現場トラブルにつながります。

最後に、「所要動力=モータ容量」ではないという点です。本ツールが計算するのは駆動プーリ軸での所要動力です。実際のモータ容量は、これに減速機・カップリングの伝達効率(おおむね0.85〜0.95)で割り戻し、さらに起動余裕・負荷変動・将来増設を見込んだ余裕率(1.1〜1.25程度)を掛けて選定します。一方、有効張力 Te は別の検討軸です。同じ所要動力でもベルト速度が遅いほど Te が大きくなり、ベルトの引張強度や駆動プーリの摩擦伝達(巻付角とオイラーの式)が成立するかを左右します。動力でモータを、有効張力でベルトとプーリを——両方を必ずセットで検討してください。

使い方ガイド

  1. 搬送量(t/h)、ベルト速度(m/min)、水平搬送距離(m)、揚程高さ(m)を入力欄に設定する
  2. 「シミュレーション実行」ボタンをクリックすると、摩擦動力と揚程動力がリアルタイム計算される
  3. 出力される所要動力P(kW)、有効張力Te(N)、ベルト上材料質量(kg/m)から駆動モーター選定と張力調整の必要値を判定する
  4. 揚程動力の割合(%)が全体の30%を超える場合は傾斜搬送の負荷を確認し、プーリ径の見直しを検討する

具体的な計算例

石灰石粉100t/h、ベルト速度2.5m/min、水平距離30m、揚程高さ8mの鉱山向けベルトコンベヤを想定する。摩擦係数0.4、ベルト自重考慮時、摩擦損失動力は約12.8kWに対し、揚程動力は重力加速度g=9.8m/s²で算出され約21.8kWとなる。所要動力P=34.6kW、有効張力Te=8,304N、ベルト上材料質量16.7kg/mが出力される。この場合、37kW級モーター選定が妥当である。

実務での注意点

  1. 揚程動力の割合が全搬送動力の60%以上に達する急傾斜搬送では、逆転防止機構とスリップ検知センサーの装備が必須となる
  2. 鋼製スクレーパー付きフレーム搬送や含水率25%以上の湿潤物料では摩擦係数を0.5~0.6に修正し、所要動力を15~20%増加させる
  3. スチールコード芯ベルト(最大張力5,000N/mm幅)を使用する場合、計算値のTeがベルト幅あたりの許容張力上限を超えないか確認する
  4. 環境温度-10℃以下ではゴム弾性低下でスリップリスクが増加するため、張力を5~10%増加させ、モーター効率低下(90%→87%)を見込む