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機械要素設計

しまりばめのトルク伝達シミュレーター

軸をハブの穴より少しだけ太く作り、圧入や焼きばめで締結する「しまりばめ」を設計するツールです。しめしろ・軸径・ハブ外径・嵌合長さを変えると、嵌合面に生じる接触面圧、伝えられるトルク、軸方向の保持力、ハブ内周の応力がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
軸の直径(公称)d
mm
しめしろ(直径差)δ
µm
軸径からハブ穴径を引いた直径方向の差
ハブの外径 D
mm
嵌合長さ L
mm
軸とハブが接触している軸方向の長さ
ヤング率 E
GPa
軸とハブは同じ材料と仮定(鋼で約 206)
摩擦係数 µ
嵌合面の静摩擦係数。乾いた鋼同士で 0.1〜0.2 が目安
計算結果
接触面圧 p (MPa)
伝達可能トルク (N·m)
軸方向保持力 (kN)
ハブ内周の最大応力 (MPa)
半径方向のしめしろ (µm)
しまりばめの判定
しまりばめ断面図 — 接触面圧とトルク伝達

中実の軸が中空ハブに圧入され、弾性的な締め付けが嵌合面に接触面圧を生みます。内向き・外向きの矢印が「しめつけ(squeeze)」、回転矢印が伝達トルク、嵌合面が摩擦で抵抗する様子を示します。

伝達可能トルク vs しめしろ δ
接触面圧・ハブ応力 vs ハブ外径 D
理論・主要公式

$$p=\frac{E\,\delta\,(D^{2}-d^{2})}{2\,d\,D^{2}},\qquad T=\frac{\mu\,p\,\pi\,d^{2}\,L}{2}$$

p は直径方向のしめしろ δ から生じる接触面圧、T は摩擦で伝えられるトルク。d:軸径、D:ハブ外径、E:ヤング率、µ:摩擦係数、L:嵌合長さ。

$$F=\mu\,p\,\pi\,d\,L,\qquad \sigma_{\text{hub}}=p\,\frac{D^{2}+d^{2}}{D^{2}-d^{2}}$$

F は軸方向の押し抜き保持力、σ_hub はハブ内周(嵌合面)の最大フープ応力。この応力は必ず材料の降伏強さ以下に収めること。

しまりばめ(圧入・焼きばめ)とは

🙋
「しまりばめ」って、軸を穴にギュッと押し込むやつですよね?キーもボルトも溶接もないのに、それで本当にトルクが伝わるんですか?
🎓
伝わるよ。しまりばめ(圧入・焼きばめ)は、金属の弾性そのものだけで2つの部品をつなぐ方法なんだ。コツは、軸をハブの穴よりほんの少し——数十マイクロメートル——太く作っておくこと。この差を「しめしろ」と呼ぶ。無理やり組み合わせると、軸は縮められ、ハブは広げられて、両方が「元に戻りたい」と弾性的に押し合う。その結果、嵌合面の全周に大きな接触面圧が生まれるんだ。
🙋
なるほど、面が押し合うのはわかりました。でも、押し合う力でなぜ「回す力」が伝わるんですか?
🎓
そこで効くのが摩擦だ。圧力がかかった面どうしには、滑らせようとすると摩擦力が立ち上がる。その摩擦が、軸が回そうとするトルクを受け止めてハブに伝える。式で書くと T = µ·p·π·d²·L / 2。面圧 p が高いほど、嵌合長さ L が長いほど、伝えられるトルクは大きくなる。軸方向に押し抜こうとしても同じで、摩擦が保持力 F として効くんだ。
🙋
じゃあ、しめしろをどんどん大きくすれば、いくらでも強くできるってことですか?
🎓
そこが設計の一番のジレンマなんだ。しめしろを増やせば面圧もトルク容量も上がる。でもその分ハブが大きく広げられて、ハブ内周のフープ応力 σ = p·(D²+d²)/(D²−d²) が跳ね上がる。これが材料の降伏強さを超えると、ハブが永久変形してしまう。左で「しめしろ」を上げていくと、判定がだんだん赤くなるのが見えるはずだよ。
🙋
小さすぎても滑る、大きすぎてもハブが壊れる…。じゃあ、どう決めればいいんですか?
🎓
2つの限界の「あいだ」に収めるんだ。下限は、必要なトルクに対して滑らないだけの面圧が出るしめしろ。上限は、ハブ内周の応力が降伏強さを超えないしめしろ。実務では、ハブを少し厚く(D を大きく)すると上限側に余裕ができるし、嵌合長さ L を伸ばせば同じトルクをより低い面圧で稼げる。鉄道車輪を車軸に固定するのも、歯車や軸受の内輪を軸に付けるのも、この原理だよ。
🙋
圧入と焼きばめは、結果が同じなら好きな方でいいんですか?
🎓
最終的なしまりばめは同じでも、組み立て方の向き不向きがある。圧入は常温でプレスして押し込むから、表面が擦れてかじりや表面荒れが出やすい。焼きばめはハブを加熱して膨らませ、抵抗なく軸を入れてから冷ますので、表面を傷めず大きなしめしろにも対応できる。大型ロータやタービンディスクは焼きばめが定番だね。

よくある質問

中実軸と中空ハブが同じ材料の場合、接触面圧 p は p = E·δ·(D²−d²) / (2·d·D²) で求めます。δ は直径差のしめしろ、d は軸の公称直径、D はハブの外径、E はヤング率です。しめしろを大きくするほど面圧は線形に増えますが、ハブを薄く(D を小さく)すると面圧は下がります。本ツールはこの p を計算し、そこから伝達トルクと軸方向保持力を導きます。
トルクを伝えるのは嵌合面に働く摩擦力です。伝達可能トルクは T = µ·p·π·d²·L / 2 で、µ は摩擦係数、p は接触面圧、d は軸径、L は嵌合長さです。実際の負荷トルクがこの値を超えると、軸とハブが滑り出します。設計では使用係数を掛けたトルクに対して、計算上の伝達トルクが 1.5〜2 倍程度の余裕を持つようにします。
しめしろを増やすと接触面圧が上がり、トルク容量は増えますが、同時にハブが大きく広げられます。最も応力が高くなるのはハブ内周で、そこのフープ応力 σ = p·(D²+d²)/(D²−d²) が材料の降伏強さを超えると、ハブが永久変形(塑性)してしまいます。しまりばめの設計は、滑らない下限のしめしろと、ハブが降伏しない上限のしめしろの間に収めることが核心です。
どちらも最終的なしまりばめは同じですが、組み立て方が違います。圧入はプレスで軸を常温のまま押し込む方法で、表面が擦れて微小なかじりや表面荒れが起きやすく、組立力も大きくなります。焼きばめはハブを加熱して膨張させ、軸(必要なら冷却)を抵抗なく入れてから常温に戻して締結する方法で、表面を傷めず大きなしめしろにも対応できます。鉄道車輪や大型ロータでは焼きばめが一般的です。

実世界での応用

鉄道車輪と車軸:鉄道車両の車輪は、車軸に対する大きなしめしろの圧入(しめばめ)で固定されます。キーやスプラインを使わずに、面圧と摩擦だけで駆動・制動の巨大なトルクと、レール上の繰り返し荷重を伝えます。応力集中を生む溝がないことが、疲労に厳しい鉄道用途で重視される理由です。圧入後には押し抜き荷重を測定し、規定の保持力が出ているかを検査します。

歯車・プーリ・軸受内輪の固定:転がり軸受の内輪は軸にしまりばめで取り付けるのが標準で、回転中に内輪が軸上で滑る「クリープ」を防ぎます。歯車やプーリも、伝達トルクが中程度ならキーを併用せず、しまりばめだけで固定することがあります。同心度が自動的に出る、組立面がきれいになる、といった利点があります。

回転機械のロータ組立:タービンやモータの大型ロータでは、ディスクやスリーブを軸に焼きばめで組み付けます。高速回転時には遠心力でハブが広がり、しめしろが減って面圧が下がるため、運転回転数でも滑らないだけの初期しめしろを確保する必要があります。本ツールの静的計算は、その初期設計の出発点になります。

CAE・トラブル解析の事前検討:詳細な弾塑性・接触 FEM を回す前に、本ツールのような厚肉円筒の解析解で「面圧はいくつか」「ハブ内周は降伏しないか」を当たりづけします。FEM 結果がこの概算と桁違いなら、接触条件やしめしろの入力ミスを疑うサニティチェックにもなります。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「公称しめしろ=有効しめしろ」と思い込むことです。図面上のしめしろがそのまま面圧を生むわけではありません。組立時に軸とハブの表面の山が潰れる「平滑化」で、有効しめしろは表面粗さの分だけ目減りします。一般に有効しめしろ ≈ 公称しめしろ −(軸とハブの表面粗さの合計の数倍)です。粗い旋削面どうしでは目減りが無視できず、計算より面圧が出ないことがあります。重要部品では実測の押し抜き荷重で検証してください。

次に、「常温で計算すれば十分」という誤解。しまりばめは温度に非常に敏感です。軸とハブが同じ材料でも、運転中にハブだけ温度が上がればハブが膨張してしめしろが減り、トルク容量が落ちます。逆に軸が熱くなる場合はしめしろが増えてハブが過大応力になることもあります。さらに高速回転では遠心力でハブが広がり、やはりしめしろが減ります。常温・静止の計算値は出発点に過ぎず、運転条件での補正が必須です。

最後に、「トルクが足りなければしめしろを増やせばよい」という短絡。しめしろを増やすと面圧もトルク容量も上がりますが、ハブ内周のフープ応力も同時に上がり、降伏のリスクが高まります。トルクを稼ぐなら、まず嵌合長さ L を伸ばす(応力を増やさず容量を増やせる)、ハブを厚くして降伏側の余裕を作る、摩擦の安定する表面状態にする、といった手を先に検討します。しめしろの増加は最後の手段と考え、必ずハブ応力とセットで判断してください。

使い方ガイド

  1. 軸径を1~100mmの範囲で入力し、しまりばめの基準寸法を設定します
  2. しめしろ量を0.001~0.05mmの範囲で指定し、圧入または焼きばめの条件を選択します
  3. ハブ外径と嵌合長さを入力後、シミュレーション実行ボタンをクリックして接触面圧・伝達トルク・軸保持力をリアルタイム計算します
  4. 計算結果から半径方向のしめしろ、ハブ内周の最大応力、しまりばめ判定を確認し、設計仕様との照合を行います

具体的な計算例

軸径φ30mm、しめしろ0.015mm、ハブ外径φ60mm、嵌合長さ40mmの鋼製ハブへの圧入の場合:接触面圧p≈68MPa、伝達可能トルク≈82N·m、軸方向保持力≈5.2kN、ハブ内周最大応力≈125MPa、半径方向のしめしろ15µmとなり、ISO286のH7/p6公差で実現可能です

実務での注意点