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熱機関シミュレーター

ブレイトンサイクル シミュレーター — ガスタービンの熱効率

ガスタービン・ジェットエンジンの理論サイクルであるブレイトンサイクルを可視化。圧力比・比熱比・吸気温度・タービン入口温度を変えて、T-s線図と効率曲線で熱効率の決まり方を学べます。

パラメータ設定
圧力比 r_p = P_2/P_1
比熱比 γ
吸気温度 T_1
K
タービン入口温度 T_3
K

空気の比熱 c_p = 1.005 kJ/(kg·K) を仮定した空気標準サイクルとして計算しています。

計算結果
熱効率 η
圧縮機出口温度 T_2
タービン出口温度 T_4
ネット仕事 w_net
T-s 線図(温度-エントロピー)

1→2 等エントロピー圧縮/2→3 定圧加熱/3→4 等エントロピー膨張/4→1 定圧放熱(薄線=定圧線 P_1, P_2)

圧力比に対する熱効率 η(r_p)

横軸=圧力比 r_p/縦軸=熱効率 η(黄点=現在の r_p、現在の γ で η = 1 − 1/r_p^((γ−1)/γ))

理論・主要公式

ブレイトンサイクルは、圧縮機・燃焼器・タービンからなるガスタービンの理想サイクルで、空気を作動流体とする「空気標準サイクル」として解析されます。

等エントロピー圧縮の温度比。指数 (γ−1)/γ で書かれます:

$$\frac{T_2}{T_1} = r_p^{(\gamma-1)/\gamma}, \qquad \frac{T_3}{T_4} = r_p^{(\gamma-1)/\gamma}$$

熱効率(理想サイクル)。圧力比 r_p と比熱比 γ だけで決まります:

$$\eta = 1 - \frac{1}{r_p^{(\gamma-1)/\gamma}}$$

投入熱量(燃焼器)とネット仕事(タービン仕事 − 圧縮機仕事):

$$q_\text{in} = c_p (T_3 - T_2), \qquad w_\text{net} = c_p\bigl[(T_3 - T_4) - (T_2 - T_1)\bigr]$$

熱効率は圧力比とともに単調増加しますが、TIT に上限がある実機では、ネット仕事が最大となる「最適圧力比」が存在します。

ブレイトンサイクルとは

🙋
ジェットエンジンとか発電所のガスタービンって、中ではどんなサイクルが回っているんですか?
🎓
それがブレイトンサイクルだよ。ざっくり言うと「圧縮 → 燃焼 → 膨張 → 排気」の4過程をぐるぐる回す。空気を圧縮機でぐっと押し縮めて、燃焼器で燃料を加えて高温にして、タービンで膨張させて仕事を取り出す。最後は排気として大気に捨てる。上のシミュレーターで T-s 線図を見ると、4 つの状態が箱型に並んでいるのがわかる。
🙋
「圧力比」スライダーを上げると効率が上がりますね。これってどこまで上げてもいいんですか?
🎓
理論上は圧力比を上げるほど効率は単調に上がる。式で書くと $\eta = 1 - 1/r_p^{(\gamma-1)/\gamma}$ で、r_p が大きくなるほど 1 に近づく。でも実機ではそう簡単にはいかない。圧縮するほど圧縮機出口温度 T_2 が上がるから、燃焼で投入できる温度差(T_3 − T_2)が小さくなって、ネット仕事が逆に減ってしまう。だから「効率最大」と「仕事最大」の圧力比は別物なんだ。シミュレーターで r_p を 4 から 50 までスイープしながら w_net カードを見てごらん。
🙋
タービン入口温度(TIT)も大事って聞きました。なんで?
🎓
理想式では効率は r_p と γ だけで決まるけど、ネット仕事 w_net は TIT と T_1 の差にダイレクトに効く。TIT が高いほど膨張時に取り出せるエンタルピー差が大きくて、同じ流量でも大きな出力になる。だからガスタービン開発の歴史って、要するに「いかに高い TIT に耐える翼材料・冷却・コーティングを作るか」の歴史でもあるんだよ。最新の航空エンジンでは 1700 ℃ を超える TIT が実現されている。
🙋
ランキンサイクル(蒸気タービン)とは何が違うんですか?
🎓
作動流体と相変化の有無だね。ブレイトンは気体だけ、ランキンは水と蒸気の相変化を使う。ガスタービンは起動が速く小型化しやすいけど、排気温度が高いという欠点がある。逆に言うと「捨ててる熱がもったいない」。そこで排気熱で蒸気タービンを回すのが「複合サイクル発電(コンバインドサイクル)」で、総合効率は 60% を超える。今日の高効率火力発電所はだいたいこの方式だよ。

よくある質問

空気を理想気体・比熱一定と仮定し、圧縮とタービンが等エントロピーで損失なし、燃焼が定圧で行われる「空気標準サイクル」では、熱効率は厳密に η = 1 − 1/r_p^((γ−1)/γ) となり、圧力比 r_p と比熱比 γ だけで決まります。実機では翼の損失、燃焼圧損、空気漏れなどがあるため、同じ r_p でも実効効率はこれより 5〜15 ポイント低い値になります。
タービン入口温度 T_3 が一定という制約のもとで、ネット仕事 w_net = c_p[(T_3−T_4) − (T_2−T_1)] が最大になる圧力比です。T_3/T_1 を τ とすると、最適圧力比は r_p,opt = τ^(γ/(2(γ−1))) で与えられます。例えば τ = 5(T_1=290, T_3=1450)、γ=1.4 のとき r_p,opt ≈ 11.2 になります。効率最大の圧力比は別で、r_p を上げるほど効率は単調に増えます。
航空用は推力重量比を最重視するため、軽量化と高い圧力比(最新では 50:1 級)を追求します。発電用は燃費と耐久性を重視し、低めの圧力比でも複合サイクルにして総合効率を稼ぎます。航空用の代表が CFM56・GE90、発電用は GE 9HA・三菱パワー M501J などで、発電用は数千時間の連続運転を前提にメンテナンス性も大きな設計要素です。
再生ブレイトンサイクルでは、タービン排気の熱で圧縮機出口空気を予熱します。条件は T_4 > T_2 のときのみ有効で、これは圧力比が低いときに成り立ちます。再生器付きでは効率は η_regen = 1 − (T_1/T_3)·r_p^((γ−1)/γ) となり、低圧力比領域で大幅に改善します。マイクロガスタービンや高効率コージェネで採用される構成です。

実世界での応用

航空用ジェットエンジン:ターボジェット・ターボファン・ターボプロップは全てブレイトンサイクルが基本です。圧縮機・燃焼器・タービンの中核は同じで、出力を「ジェット噴流の運動エネルギー」として取り出すか「シャフトの回転」として取り出すかの違いです。最新のターボファンエンジンは圧力比 50:1 級、TIT 1700℃ 超、推進効率 70% 以上を達成しています。

発電用ガスタービン:都市ガスや天然ガスを燃料とする発電所の中核機関で、起動が速く負荷追従性に優れるため、需要変動の大きい電力系統で重要な役割を担います。排気熱を蒸気タービンで回収する複合サイクル発電(CCGT)では総合効率 60% を超え、現在の火力発電の主流形式となっています。

機械駆動・パイプライン圧縮機駆動:長距離天然ガスパイプラインの中継圧縮機や、洋上プラットフォームの大型ポンプ駆動には、独立したガスタービンが使われます。電力網に頼らず自前で大出力を出せるため、遠隔地のエネルギーインフラを支えています。

マイクロガスタービン・小型分散電源:30〜300kW 級の小型ガスタービンに再生器を組み合わせ、コージェネレーション(熱電併給)として商業ビル・病院・工場で使われます。圧力比は低めの 4〜5 で再生器の効果を最大化し、総合エネルギー効率(電気+熱)80% を超える設計が可能です。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「圧力比を上げれば上げるほどエンジンの出力が上がる」と考えてしまうことです。確かに熱効率 η は r_p に対して単調増加しますが、ネット仕事 w_net は r_p に対して山型のカーブを描き、ある最適圧力比 r_p,opt で最大になります。それを超えると圧縮機が消費する仕事が増えすぎ、タービンが取り出す仕事との差が縮まってしまうためです。シミュレーターで圧力比を 4 から 50 までスイープしながら w_net カードを見ると、後半で値が下がり始めるのが体感できます。「効率最大」と「仕事最大」は別の最適化問題であることを理解してください。

次に多いのが、このシミュレーターが示すのは「理想空気標準サイクル」の効率であり、実機の効率とは異なる点です。実機では圧縮機効率 85〜90%、タービン効率 88〜92%、燃焼圧損 3〜5%、空気漏れ、機械損失などで、理想式の効率から 5〜15 ポイント低い値になります。例えば理想式で η=50% でも、実機では 40% 前後になることが普通です。実際のガスタービン製品カタログの「効率」値は、こうした損失を全て織り込んだ値です。

最後に、γ(比熱比)を一定として扱うことの限界に注意が必要です。空気は常温で γ ≒ 1.40 ですが、燃焼後の高温ガスでは γ ≒ 1.30 に下がります。シミュレーターで γ を 1.20 から 1.50 まで動かしてみると、効率カードが大きく変わるのがわかります。実機の精密な性能予測では「冷側 γ」と「熱側 γ」を別々に扱う「変動比熱解析」が必要で、シミュレーター結果は概算値として使うのが適切です。理論サイクル → 損失補正 → 実測校正、という段階的アプローチが工学設計の標準的な流れです。