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ガス輸送・パイプライン

天然ガスパイプライン流量 AGA 10・Weymouth シミュレーター

長距離高圧の天然ガス幹線パイプラインの輸送容量を計算するツールです。管径・パイプ長・入口/出口圧力・ガス比重・温度・粗さを変えると、Weymouth/Panhandle A・B/AGA 10 の各式での流量、管内流速、圧力勾配、浸食限界速度、Reynolds 数がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
管内径 D
inch
DN500=20", DN1000=40" 目安
パイプ長 L
km
圧縮機ステーション間の距離
入口圧力 P₁
MPa
出口圧力 P₂
MPa
ガス比重 G
空気=1.0、純メタン≈0.554
ガス温度 T
K
流量式
距離・管径・粗さに応じて選択
管粗さ k
mm
新管 0.04〜0.07、内面コート 0.005〜0.01
計算結果
流量 (MMSCFD)
流量 (m³/h, 基準)
パイプ流速 (m/s)
圧力勾配 (kPa/km)
浸食限界速度 (m/s)
Reynolds 数
パイプライン断面・ガス流アニメーション

青いパイプを流れる粒子はガス分子、左から右へ高圧→低圧のグラデーション。両端の四角形は圧縮機ステーション、流速ベクトルの長さが管内流速に比例します。

流量 vs 入口圧力 P₁
流量式の比較(同条件・MMSCFD)
理論・主要公式

$$Q = 3.23 \cdot \frac{T_b}{P_b}\sqrt{\frac{P_1^{2} - P_2^{2}}{G \cdot T \cdot L}} \cdot D^{8/3}$$

Weymouth 式(英単位、MMSCFD)。P₁/P₂=圧力 psi、L=距離 mi、D=直径 inch、G=ガス比重、T=温度 °R。基準条件 T_b=519.67 °R、P_b=14.73 psia。

$$F_{t} = 4\,\log_{10}\!\left(\frac{3.7\,D}{k}\right), \qquad Q \propto F_{t}\cdot D^{2.5}\sqrt{\Delta(P^2)/G\,T\,L}$$

AGA 10 完全乱流式:Nikuradse の伝達係数 F_t を粗さ k から計算。粗さが小さいほど F_t が増え、流量も増える。

$$v_e = \frac{C}{\sqrt{\rho_g}}, \qquad Re = \frac{\rho_g\,v\,D}{\mu_g}$$

API RP 14E のエロージョン速度 v_e(C=100 SI、ρ_g 管内ガス密度 kg/m³)と Reynolds 数 Re。乾燥ガスで Re 10⁶〜10⁷ オーダー。

天然ガスパイプライン流量 — AGA 10・Weymouth・Panhandle

🙋
ガスパイプラインって、ただの「太い鉄パイプ」じゃないんですか?なんで流量計算にいろんな式があるんでしょう?
🎓
見た目は鉄パイプだけど、中はちょっと複雑なんだ。ガスは圧縮性流体だから、入口 7 MPa・出口 6 MPa みたいに圧力が落ちると体積が膨らんで、同じ「秒あたり質量流量」でも管内の体積流量や流速が場所によって変わる。だから水道のような単純な Darcy-Weisbach じゃなく、入口・出口の圧力差を P₁²-P₂² として扱う特殊な式群——Weymouth(1912)、Panhandle A(1956)、Panhandle B(1962)、AGA 10——を使い分けるんだよ。
🙋
なるほど!じゃあ、どの式をいつ使えばいいんですか?左の「流量式」セレクタを変えると、流量の数字がけっこう変わりますね。
🎓
いい質問だね。Weymouth は摩擦係数を f∝1/D^(1/3) と決め打ちにする一番古典的な式で、短中距離(〜200 mi)・〜20 inch くらいまでの幹線で標準的に使われる。Panhandle A は中 Reynolds(Re≈5×10⁶ 以下)の長距離大径管に、Panhandle B は高 Reynolds(Re≈10⁷ 以上、24 inch 超)の長距離幹線に合いやすい。AGA 10 は粗さ k から伝達係数 F_t を直接計算するので、運用段階で実測ヘッダー圧と摺り合わせる精度検証に向いている。下のバーチャートで4式の差を見比べると感覚がつかめるよ。
🙋
流量だけじゃなく「浸食限界速度」というのも出てきました。流速が速すぎると何がまずいんですか?
🎓
パイプライン内のガスには、どうしても液滴(凝縮した重質分・水)やサンド(砂粒)が混ざる。これが高速で曲り部や継手の内壁を叩くと、エルボやティーの内側が局所的に削られる——これがエロージョン摩耗だ。API RP 14E では v_e = 100/√ρ(SI)という経験式で限界速度を与えていて、乾燥クリーンガスで 18〜25 m/s、湿性ガスや井戸出口で 10〜15 m/s が目安。本ツールでは管内ガス密度から v_e を出して、実流速と比較してくれる。これを越えるとリークの起点になりやすく、特にメタン漏洩規制が厳しい今は要注意なんだ。
🙋
「圧縮機ステーション 100〜150 km おき」って書いてありますね。L=2000 km とかにすると流量が一気に落ちますけど、これは現実にはどう設計するんですか?
🎓
そう、長くすればするほど P₁²-P₂² が同じでも分母の L が大きくなって、流量は L^(-0.5) に近いオーダーで落ちる。だから実際の幹線は「圧縮機ステーションを 100〜150 km おきに置いて P₁ を回復させ、短いセグメントごとに高流量を維持する」設計になっている。例えば China の West-East Pipeline は 4 線合計 18,000 km、圧縮機ステーションは数十カ所。Power of Siberia(3,000 km)や Nord Stream(1,224 km、Baltic 海底双線)も同じ思想だ。本ツールに 100〜150 km を入れて P₁=10 MPa、P₂=7 MPa あたりで眺めると、1セグメントあたりの容量感がよく分かるよ。
🙋
最後に1つだけ:脱炭素の時代にガスパイプラインを設計する意味って、まだあるんですか?
🎓
移行期エネルギーとしての天然ガスはまだ 2050 年代まで重要だし、最近は水素/アンモニアを既存パイプラインで送る「リパーパス」検討も活発だ。水素は分子が小さいから漏洩・脆化リスクが上がり、密度が低いから同じ管径・圧力で流量(質量基準)は天然ガスの 1/3 程度になる。Panhandle や AGA の式に G=0.07(H₂)を入れて感覚を試してみると、「同じ管に切り替えても容量が大きく変わる」ことが体感できる。流量計算は新規建設だけでなく、既存インフラ転用のフィージビリティ評価にも欠かせないんだ。

よくある質問

短中距離(〜200 mi 程度)の小〜中径管は Weymouth(1912 年)が定番で、摩擦係数を管径の関数 f∝1/D^(1/3) と仮定するため計算が単純です。長距離の大径管(24〜56 inch、500〜数千 km)は乱流粗度が緩い Panhandle A(1956、Re≈5×10⁶ 以下)や Panhandle B(1962、Re≈1×10⁷ 以上)が一致しやすい。AGA 10 は Nikuradse の完全乱流式から伝達係数 F を作るため、管粗さを直接反映でき最も精度が高く、運用検討やシステム解析で用いられます。
API RP 14E では液滴やサンドを含むガス流での管摩耗を防ぐ目安として、混相流の限界速度を v_e = C/√ρ(SI で C=100, ρ は kg/m³)と定めています。乾燥クリーンガスでは 18〜25 m/s 程度、湿性ガスや砂を含む井戸管では 10〜15 m/s 程度が経験則。本ツールでは管内ガス密度から v_e を計算し、実流速が超えていれば NG 判定します。これを超えると曲管部・継手で局所摩耗が進み、内面コーティング剥離やリーク(特にメタン漏洩)の原因になります。
入口 7.5 MPa・出口 6.0 MPa、ガス比重 0.6、温度 20°C で Weymouth 式を解くと、おおむね 330 MMSCFD(≈ 935 万 m³/d、≈ 39 万 m³/h)です。流速は管内で 5〜6 m/s 程度、Reynolds 数は 10⁷ オーダー、圧力勾配は 7.5 kPa/km。これは中型の幹線ガスパイプラインの典型値で、圧縮機ステーションは 100〜150 km おきに設置して圧力を回復させます。
天然ガスの主成分メタン CH₄ は、100 年で CO₂ の約 28〜34 倍、20 年では 80 倍超の温室効果を持つ強力な GHG です。長距離パイプラインのバルブシール・コネクタ・圧縮機ベント・ピグ受入トラップなどから定常的にリークし、世界の人為起源メタン排出の大部分を占めます。2015 年の Aliso Canyon 貯蔵リーク(10 万トン CH₄)以降、各国で漏洩定量化(OGI カメラ、衛星 GHGSat 等)と LDAR 規制が強化されています。設計面では圧縮機間隔の最適化、リカバリーコンプレッサの導入、ベント回収などで漏洩量を削減します。

実世界での応用

長距離大陸横断幹線:世界の天然ガスパイプライン総延長は約 200 万 km。代表例として Trans Alaska(1,287 km)、Nord Stream(1,224 km、Baltic 海底双線)、Power of Siberia(3,000 km)、TurkStream(930 km、Black 海底)、Yamal Europe(4,107 km)、West-East Pipeline(China、4 線合計 18,000 km)など。これらは 20〜56 inch・5〜10 MPa 運用で 100〜150 km おきに圧縮機ステーションを置き、本ツールのような流量式で各セグメントの容量を決めます。

圧縮機ステーションの間隔最適化:圧縮機の所要動力は P₁/P₂ 比と質量流量に比例します。間隔を 100 km から 150 km に伸ばすと圧縮回数は減りますが、各セグメントでの P₁ 必要圧力が上がり、ヘッダー設備の最大運用圧力(MAOP)と肉厚(API 5L X70 等)に影響します。実務では Weymouth/AGA 計算と熱流体シミュレータ(AspenTech HYSYS、Pipephase、Synergi など)を組合せ、運転コストと初期投資の最適点を求めます。

水素・アンモニア混合ガス輸送のフィージビリティ:欧米では既存メタンパイプラインに H₂ を 5〜20% 混合する実証が進んでおり、英 HyDeploy、独 GET H2 などが代表例。水素は G≈0.07 と圧倒的に軽いため、本ツールに G=0.07 を入れると同じ管径・圧力で MMSCFD は天然ガスの倍以上に増えますが、質量流量(エネルギー輸送量)は逆に 1/3 程度に落ちます。さらに鋼材の水素脆化と漏洩リスクで運用圧力に制約が出るため、リパーパス検討は流量と材料の両面から評価が必要です。

運用シミュレーションと LDAR 規制対応:OpenFOAM や AspenTech HYSYS、NIST REFPROP(物性)と組み合わせ、過渡応答(圧縮機トリップ時のラインパック変化、緊急遮断時の dP 伝播)を解析します。漏洩定量化では OGI(光学ガスイメージング)カメラ、衛星観測(GHGSat、MethaneSAT)、エアボーン LDAR がメタン排出のホットスポットを特定し、本ツールで得た理論流量との差分から漏洩率を推定する研究も進んでいます。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「Weymouth と Panhandle の係数を文献ごとに混ぜて使う」こと。教科書・論文・各社マニュアルで Q の単位(SCFD/MMSCFD/m³/h)、圧力(psi/kPa/bar)、温度(°R/K)、長さ(mi/km)の組合せが少しずつ違い、それに合わせて係数(871、433.5、3.23、38.774 など)も変わります。本ツールはすべて「P:psi、L:mi、T:°R、D:inch、Q:SCFD」の英単位系で統一し、SI 出力(m³/h、m/s)は内部で換算しています。手計算で答え合わせするときは、必ず単位系を1つに決めて係数を確認してください。

次に、「圧縮性ファクター Z を 1 とした概算をそのまま運用に使う」こと。本ツールも教育用途のため Z≈1(または 0.9 固定)で計算していますが、実運用では入口 7 MPa・温度 20°C の天然ガスで Z≈0.85〜0.90、出口 6 MPa で 0.88 程度と無視できない差が出ます。さらに低温(冬季の砂漠管・北極圏管)では Z がさらに低下し、流量が 5〜10% ずれます。実プラント設計では BWRS/GERG-2008 等の状態方程式と REFPROP/HYSYS の物性を用いて Z(P,T) を反復計算するのが標準で、本ツールはあくまで一次検討用の早見ツールとして使ってください。

最後に、「浸食速度 v_e を超えていなければ安全」という誤解。API RP 14E の v_e = 100/√ρ は、あくまで連続相が乾燥ガスで微量の液滴を含む場合の保守的な目安です。実際の井戸出口管やスラグフローを含むウェットガス、サンド含有量が高い未脱砂ガスでは、エルボ内側で局所流速が 2〜3 倍に達し、Erosion-Corrosion 速度が桁違いに上がります。重要なのは v_e との比較だけでなく、エルボ R/D 比の確保(R/D≥3)、サンドフィルター・スラグキャッチャの設置、メタン漏洩定量化と組み合わせた継続モニタリングで、計算上 OK でも現場のリスクを下げる多重防護を組むことです。

使い方ガイド

  1. パイプ内径(mm)と長さ(km)を入力。一般的な長距離幹線は内径508~762mm、距離50~500kmの範囲です。
  2. 入口圧力P1と出口圧力P2(MPaG)を設定。例えば圧縮機出口7.0 MPaG、受取側4.5 MPaGなど現場値を使用します。
  3. ガス比重(空気比)と温度(℃)を入力後、計算式(AGA 10・Weymouth・Panhandle A/B)を選択して実行。

具体的な計算例

内径609.6mm、長さ120km、入口7.5 MPaG、出口5.2 MPaG、ガス比重0.65、温度15℃のパイプラインでWeymouth式を適用した場合、流量は約240 MMSCFD(基準換算で約68,000 m³/h)、流速6.8 m/s、圧力勾配19.2 kPa/kmが得られます。浸食限界速度は約14.5 m/sであり余裕があります。Reynolds数は約2.1×10⁶で完全乱流領域です。

実務での注意点

  1. Panhandle A式は高圧・大流量時に精度が高く、Weymouth式は中圧範囲で汎用。AGA 10は最新基準で摩擦係数が精密です。
  2. 浸食限界速度(約15 m/s基準)を超えるとパイプ内壁の粒子衝撃損傷が加速。実測粗さε値の入力が流量計算精度を大きく左右します。
  3. 温度変化により密度と粘性が変わるため、季節別・昼夜別に圧力設定を変えて複数シミュレーションすることを推奨します。