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HVAC・地中熱

地中熱ヒートポンプ GSHP ボアホール設計シミュレーター

地中熱ヒートポンプ (Ground-Source Heat Pump, GSHP) のボアホール熱交換器を ASHRAE/IGSHPA 簡易法で設計します。建物の暖房・冷房負荷、地盤熱伝導率、地中温度、年間運転時間、1 孔深さを入力すると、必要総ボアホール長・孔数・敷地面積・COP・年間 CO₂ 削減量がリアルタイムに更新されます。

パラメータ設定
暖房負荷 Q_h
kW
建物のピーク暖房負荷(熱出力)
冷房負荷 Q_c
kW
建物のピーク冷房負荷(除熱量)
暖房 COP
定格 EWT・LWT 条件での暖房 COP
冷房 COP (EER相当)
冷房時の COP(EER を 3.412 で除した値)
地盤熱伝導率 k_g
W/(m·K)
乾燥砂 1.5 / 湿った粘土 2.0 / 花崗岩 3.0 程度
地中初期温度 T_g
°C
深さ 10m 以深の年平均地中温度
暖房運転時間
h/y
フルロード換算の年間運転時間
1 孔あたり深さ
m
標準は 100〜200m、住宅は 100m 前後
U-tube/double-U 係数 R_b
m·K/W
単U 0.11〜0.13、ダブルU 0.08〜0.10
計算結果
地盤熱負荷(最大) (kW)
必要総ボアホール長 (m)
ボアホール数
必要敷地面積 (m²)
電力入力(暖房時) (kW)
年間 CO₂ 削減 (kg)
ボアホール断面図 — 地中循環アニメーション

地表に建物、地下にボアホール(垂直 U字管)と循環する不凍液。暖房時(冬)は地中から熱を採取(青→赤)、冷房時(夏)は地中へ排熱(赤→青)。地盤温度は深部でほぼ一定です。

熱フロー比較 — 暖房・冷房・地盤負荷
COP vs 流体温度(EWT)
理論・主要公式

$$L = \frac{Q\,(R_b + R_g)}{\Delta T},\qquad COP_{actual} = 0.85\cdot COP_{steady}$$

L:総ボアホール長 [m]、Q:地盤側熱量 [W]、R_b:ボアホール内熱抵抗 [m·K/W]、R_g:地盤側熱抵抗 [m·K/W]、ΔT:設計温度差(典型 8K)。R_g は熱伝導率 k と運転負荷率の関数。SPF は瞬時 COP の約 85% を目安とする。

$$Q_{ground,heat} = Q_h\,\frac{COP_h-1}{COP_h},\quad Q_{ground,cool} = Q_c\,\frac{COP_c+1}{COP_c}$$

暖房時に地盤から採取する熱と、冷房時に地盤へ捨てる熱(圧縮機仕事を含む)。設計はこの二つの大きい方で決める。

$$N_{bh}=\left\lceil \frac{L}{H_{bh}}\right\rceil,\quad A_{field}\approx N_{bh}\cdot s^2$$

ボアホール数 N_bh、敷地面積 A_field、孔間隔 s(典型 6m)。住宅は s=4〜6m、商業ビルは長期負荷不均衡を避けるため s=6〜8m を取る。

地中熱ヒートポンプ (GSHP) — ボアホール設計と COP

🙋
「地中熱ヒートポンプ」って、地面を掘ってお湯を取り出すんですか?温泉みたいに?
🎓
いい質問だね。実は温泉とは別物で、地中の「ぬるさ」を使う技術なんだ。深さ 10m より下は外気と関係なく、日本だとだいたい 13〜16°C で一年中ほぼ一定。冬は外気 0°C より暖かく、夏は外気 35°C より涼しい。この「いつでも 15°C くらい」という安定温度を、ヒートポンプの「熱源/熱シンク」として使う。冬は地中から熱をくみ上げて床暖房に、夏は逆に建物の熱を地中に捨てて冷房に使うんだ。空気熱源 (ASHP) と比べて、真冬・真夏でも効率が落ちないのが最大の特徴だよ。
🙋
じゃあ、地面の中に何を埋めるんですか?タンク?
🎓
いや、もっとシンプルで、ボアホール(垂直の穴)を 100〜200m 掘って、その中に PE 管(ポリエチレン)の U字管を入れるだけだ。これを「ボアホール熱交換器」(BHE) と呼ぶ。穴と U字管の隙間には熱伝導の良いベントナイト系グラウト材を充填する。U字管の中には不凍液(プロピレングリコール水溶液など)を循環させて、地中とヒートポンプの間で熱をやり取りする。穴 1 本で 5〜10 kW くらい、住宅 1 軒なら 1〜2 孔、商業ビルなら 30〜100 孔の「ボアホールフィールド」を作る。左のスライダーで負荷を変えると、必要な孔数と敷地面積が即時に出るよ。
🙋
必要なボアホールの長さって、どう決めるんですか?「暖房 30kW なら何メートル掘る」みたいなのは決まってますか?
🎓
ASHRAE と IGSHPA という設計法があって、ざっくり言うとこうだ。地盤側に出し入れする熱量 Q(kW)に対して、ボアホール内熱抵抗 R_b と地盤熱抵抗 R_g の和に比例して長さが必要になる。式で書くと L = Q·(R_b+R_g)/ΔT。ΔT は許容温度差で、設計上は 8K くらいを取る。R_b は U字管とグラウトで決まって 0.08〜0.13、R_g は地盤の熱伝導率 k と運転負荷率で決まる。デフォルトの暖房 30kW・冷房 25kW、k=2.4、運転 2000h/y、孔深 150m だと、総長 約 430m、3 孔、敷地 108m² と出る。住宅 1 軒の敷地(駐車場 1 〜 2 台分)に十分収まるサイズだ。
🙋
地盤熱伝導率 k は、現場でどう調べるんですか?感覚的に「砂」「岩」みたいなことしか分からないんですけど…
🎓
実務では、まず 1 孔だけ試掘して「熱応答試験 (TRT, Thermal Response Test)」をやる。48 時間ほど一定の電力で温水を循環させて、出入口温度の対数応答から k と R_b を実測するんだ。これが標準的なやり方で、ANSI/CSA C448 や IEA Annex 21 に手順がある。住宅レベルでは TRT までやらず、地質図と既存井戸のデータから k=1.8〜2.5 W/(m·K) を当てるのが普通だね。注意したいのは「地下水流動」で、流れがあると見かけの k が 2〜3 倍になる。逆に乾いた火山岩だと 1 を切ることもある。設計では安全側に小さめの k を使うのが鉄則だよ。
🙋
COP が 4 とか出てますけど、これって実際の電気代でもそのくらい得するんですか?
🎓
瞬時 COP と通年の SPF(季節成績係数)は別物だ、というのが大事なポイント。COP は「定格条件で瞬間的に測ったときの熱出力 ÷ 電力入力」、SPF は「1 シーズンの総熱量 ÷ 総電力」。循環ポンプの消費電力、部分負荷運転、外気急変などで、SPF は COP の 75〜90% に下がる。本ツールでは SPF ≈ 0.85·COP として CO₂ 削減量を見積もっているよ。それでも、デフォルト条件で年 5250 kg-CO₂ の削減になる。これはガス暖房から GSHP に置き換えた場合の数字で、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)達成の主力技術として注目されている理由が分かるよね。

よくある質問

GSHP は地中 10m 以深の年中ほぼ一定温度(日本で 13〜16°C 程度)を熱源/熱シンクに使うため、真冬・真夏でも蒸発温度・凝縮温度が安定します。結果として COP は通年 4〜5 が出やすく、外気温に振り回される ASHP(COP 2〜3、−10°C で 1.5 まで低下)より省エネで、霜取り運転も不要です。一方で初期費用はボアホール掘削が必要なため ASHP の 2〜3 倍。本ツールでは必要ボアホール長と年間電力・CO₂ を見積もって、その投資判断に必要な数値を出します。
ASHRAE/IGSHPA 簡易法では、地盤側に出し入れする熱量 q [W] と、ボアホール内熱抵抗 R_b・地盤側熱抵抗 R_g、許容温度差 ΔT から L = q·(R_b+R_g)/ΔT で総長を求めます。R_b は U字管 1〜2 本+グラウト材で 0.08〜0.13 m·K/W、R_g は地盤熱伝導率 k と運転負荷率で決まります。1 孔深さ(典型 100〜200m)で総長を割れば本数。本ツールでは ΔT=8K を典型値として用い、デフォルト条件で 430m・3 孔となります。
確度の高い数値が欲しい場合は、現地で 1 孔だけ試掘し、48 時間程度の熱応答試験 (TRT, Thermal Response Test) を行います。これにより有効熱伝導率 k_eff(無乱層平均)と R_b が実測できます。簡易設計では地質図から砂・粘土・岩盤の代表値(1.5〜3.5 W/(m·K))を当てます。地中温度はその土地の年平均気温+1〜2°C が目安で、北海道は約 10°C、関東で 16〜17°C 程度です。本ツールではこれらをスライダーで動かして感度を確認できます。
COP は定格条件(例 EWT 0°C /供給水 35°C)での瞬時効率、SPF(Seasonal Performance Factor)はシーズン全体での「総熱出力 ÷ 総電力入力」です。実際の SPF は循環ポンプ電力・部分負荷運転・外気急変などで COP の 75〜90% に下がります。本ツールでは SPF ≈ 0.85·COP として大まかに評価し、年間電力と CO₂ 削減量を試算します。詳細評価は VDI 4650 や ISO 17742 の手順で行います。

実世界での応用

住宅用 GSHP(北海道・東北・北陸):暖房負荷 8〜15kW 程度の戸建てに対し、深さ 80〜120m の縦穴を 1〜2 本掘って施工する例が多い。北海道では灯油暖房比で年間 30〜50% のランニングコスト削減、CO₂ も同等比率で削減。寒冷地でも COP が落ちないため、ASHP よりも有利。札幌市・帯広市など自治体補助金がつくケースもあり、初期費用(150〜350 万円)の回収年数は 10〜15 年が目安。

商業ビル・庁舎の地域冷暖房 (DHC):東京・横浜・名古屋の再開発地区では、延床 5,000〜50,000m² 規模のオフィスや庁舎で 30〜200 孔のボアホールフィールドを敷地下に配置する。冷暖房負荷の年間バランスを設計時に確認し、長期的に地盤温度が下降/上昇しないよう、孔間隔 6〜8m を確保。CASBEE・LEED の高評価取得に直結。例:東京スカイツリータウン、虎ノ門ヒルズ等で大規模採用。

農業ハウス・温水養殖:イチゴ・トマト・キュウリの周年栽培ハウスでは、地中熱で根域加温・気温維持を行うことで重油使用量を 50〜70% 削減した実績がある。北海道・新潟・長野の事例多数。養殖ではマス・チョウザメ・ウナギの育成に利用し、夏場の水温管理と冬場の温水確保を 1 系統でまかなえる点が特徴。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)達成:太陽光発電 + 高断熱外皮 + GSHP の三点セットは ZEB 達成の標準解。GSHP の SPF 4 以上を確保することで「ZEB ready」「Nearly ZEB」「ZEB」の閾値に直結する。本ツールで得られる必要ボアホール長と CO₂ 削減量は、ZEB 認証の評価書類で要求される基本指標と整合する。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「ボアホールは深ければ深いほど良い」というもの。確かに深部の方が地盤温度は安定するが、深さ 200m を超えると掘削単価が急激に上がり(住宅用ボーリング機の限界)、しかも穴の下端で地下水を貫通すると揚水規制に抵触するリスクがある。実務では「総長は同じでも、深さを稼ぐより孔数を増やす」のが定石。例えば 600m 必要なら 150m×4 孔 で済ませ、300m×2 孔 にはしない。本ツールも 1 孔深さをスライダーで変えると、必要孔数と敷地面積のトレードオフが見えるので、現地の制約に合わせて検討してほしい。

次が、「冷暖房負荷の年間バランスを取らないと長期的に地盤温度が変わる」こと。冷房偏重の地域(沖縄・東南アジア)では地盤に熱を捨て続けるため、10〜20 年で地盤平均温度が 2〜5°C 上昇し、冷房 COP が低下する。逆に北海道のような暖房偏重地域では地盤温度が低下する。設計時には「年間採熱量 ÷ 排熱量」がおおむね 0.6〜1.4 に収まるかを確認し、外れる場合は補助熱源(クーリングタワー・太陽熱パネル)でバランスを取る。本ツールは単年負荷しか見ないので、長期評価は g関数法や EED, GLHEPRO 等の専用ソフトで補完すること。

最後に、「COP が高い=電気代が安い」とは限らない。GSHP の電力消費にはヒートポンプ本体に加え、地中循環ポンプ・建物側ファンコイル・制御機器の補機電力が含まれる。これらが総消費の 15〜25% を占めることがあり、特に大規模ビルでは循環ポンプの設計が悪いと SPF が 3 を切ることもある。配管径を太く取り、流速を 0.7〜1.2 m/s に抑え、可変速インバータポンプを採用するのが基本。さらに、夜間・部分負荷でも高効率を維持できるよう、ヒートポンプ本体もインバータ機を選定する。設計時の COP 4 を、現場で SPF 3.5〜4.0 として実現できるかどうかが、本物のエンジニアリングの腕の見せどころだ。

使い方ガイド

  1. 暖房能力(kW)と冷房能力(kW)を入力。例:暖房30kW、冷房25kW
  2. COP値を設定。暖房時COP=4.5、冷房時COP=5.0が標準値
  3. シミュレーターが ASHRAE/IGSHPA 法に基づき、必要総ボアホール長・孔数・敷地面積・電力入力・CO₂削減量を自動計算

具体的な計算例

東京の低層事務所(暖房負荷30kW、冷房負荷25kW)を想定。地盤熱伝導率 2.5 W/m・K、平均地中温度 15℃、年間運転時間 2000 時間とした場合、COP 暖房 4.5・冷房 5.0 では、必要総ボアホール長 800m、孔数 8 本(100m/孔)、敷地面積 400m²、暖房時電力入力 6.7kW、年間 CO₂ 削減量 約 45 トン となります。

実務での注意点

  1. 地盤調査で熱伝導率を実測すること。砂岩 2.3 W/m・K、花崗岩 3.5 W/m・K で設計値が大きく変わる
  2. 暖房冷房の時間率バランスが悪い場合(例:冷房 8 割以上)、地中温度上昇により COP が低下するため、年間シミュレーションで検証が必須
  3. 敷地面積が制限される場合、ボアホール深度を 150m~200m に設計し、孔数を削減する戦略も検討
  4. 配管抵抗損失(通常 2~5kPa/100m)を折込みすると実際の COP は 5~10% 低下する