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地中熱・GSHP

地中熱ヒートポンプ 垂直ボーアホール COP シミュレーター

地中の安定温度(8〜15°C)を熱源にする「地中熱ヒートポンプ(GSHP)」を設計するツールです。建物の暖冷房負荷・地質・ボーアホール本数を変えると、年間 COP・必要孔長合計・1 孔長・年間電力・CO₂ 削減量がリアルタイムに分かり、垂直地埋管型の熱交換器をサイジングできます。

パラメータ設定
建物暖房負荷 Q_h
kW
建物冷房負荷 Q_c
kW
地質
熱伝導率 k と熱拡散率 α を自動設定
地中温度 T_g
°C
深さ 10m 以下のほぼ一定温度
ボーアホール本数
孔径 D
mm
グラウト
熱伝導性強化品で R_b が低下
運転時間
hr/年
暖房 60%、冷房 40% で配分
計算結果
暖房 COP
冷房 EER
総熱抵抗 R (K·m/W)
必要孔長合計 (m)
1 孔長 (m)
年間 CO₂ 削減 (kg)
地中断面・ボーアホール・ヒートポンプ — 熱流アニメーション

建物 → ヒートポンプ → U-tube → 地中の流れを示します。熱流の色は地中温度 T_g とグラウト熱伝導率に応じて変化します。

COP vs 地中温度
地質別 熱伝導率 k_ground 比較
理論・主要公式

$$L = \frac{Q_h\,\bigl(1 - 1/COP_h\bigr)}{q/m},\qquad COP_h = \frac{T_{cond}}{T_{cond} - T_{evap}} \cdot \eta_{Carnot}$$

L:ボーアホール総長 [m]、Q_h:暖房負荷 [W]、q/m:単位長熱抽出率 [W/m]、η_Carnot:Carnot 効率比(0.45〜0.6)。

$$R_b = \frac{1}{2\pi k_{grout}}\,\ln\!\frac{D}{2 r_{tube}},\quad R_g = \frac{1}{4\pi k_{ground}}\,\bigl(\ln(4 Fo) - 0.5772\bigr)$$

R_b:孔内熱抵抗、R_g:地盤熱抵抗(Infinite Line Source 解)。Fo = α·t / r² はフーリエ数(25 年運転で計算)。

地中熱ヒートポンプ GSHP — ボーアホール長さ・COP

🙋
「地中熱ヒートポンプ」って、地面の中が暖かいから温泉みたいに使うってことですか?普通のエアコン(空気熱源ヒートポンプ)と何が違うんでしょう?
🎓
温泉ほど熱くはなくて、深さ 10m を超えると年間ほぼ一定の 8〜15°C なんだ。外気が −10°C や 35°C に振れても、この「ぬるい」温度を熱源・熱捨て先に使えるのが GSHP(Ground Source Heat Pump)。エアコン(ASHP)は冬は冷えた外気から熱を汲み上げないといけないから COP が落ちるんだけど、GSHP は冬も 8〜15°C から汲めるから COP が 1.5〜2 倍高い。ざっくり ASHP が COP 2〜3 のとき、GSHP は 4〜5 出る、と覚えておけばいいよ。
🙋
じゃあ「ボーアホール」って、その地中の熱を取ってくる穴ですよね?このツールでは 6 本×98m って出ますけど、なんでそんなに長いんですか?
🎓
いいところに気づいた。地中から取れる熱は意外と細くて、典型的には 1m あたり 30〜90W しかない。粘土だと 40W くらい、花崗岩だと 90W くらい。30kW の暖房に必要なのが「暖房負荷 × (1 − 1/COP) ÷ 単位長熱抽出率」だから、(30000·0.83) ÷ 42 ≈ 590m。これを 6 本に分けて 1 本約 100m、というわけ。長くする代わりに本数を増やすこともできるけど、本数を増やすと敷地が要るから、住宅地では深く×少なく、商業ビルでは浅め×多くが多い。
🙋
地質を「粘土→花崗岩」に変えると 1 孔長がガクッと短くなりますね。これはなぜ?
🎓
熱伝導率 k_ground が違うからだよ。粘土は k=1.4、花崗岩は k=3.4 と 2.4 倍。地中から熱が「絞り出される」量は k と温度差におよそ比例するから、花崗岩の方が同じ孔長で 2 倍以上の熱を取れる。だから北欧(スウェーデン、フィンランド)や山岳地は岩盤質で GSHP の本場、対して日本の関東平野のような厚い沖積層だと孔長を伸ばすかボーアホールを増やすか、TRT(Thermal Response Test)で実測の k を取って設計する必要がある。
🙋
「グラウト」を熱伝導性強化に変えても COP 自体は変わらず、R 抵抗だけ変わるんですね。なんで COP が動かないんですか?
🎓
COP は蒸発温度 T_evap と凝縮温度 T_cond の差で決まるから、グラウトを変えても式の上では COP は動かさないようにしている。ただし実機では、R が小さいほど熱が取れて T_evap が地中温度に近づき、結果的に COP が少し上がる。だからグラウトの熱伝導性強化(k=0.6→1.5)は「同じ孔長でより多く熱を取れる」=「孔長を 10〜20% 短くできる」と読んでもらえれば OK。コスト的にもグラウト代の差より掘削費の節約のほうが大きいから、商業案件では強化グラウトがほぼ標準。
🙋
最後に、年間 CO₂ 削減 10,000kg ってかなり大きい数字に見えます。これって本当ですか?
🎓
ガスボイラー(0.18 kg-CO₂/kWh)・チラー(0.32 kg/kWh 相当)と比較した値だから、暖房 45,000kWh + 冷房 25,000kWh 規模なら 1 万 kg/年は妥当。日本の標準的な家庭が年間 4t-CO₂ なので、その 2.5 軒分。だから米国の IRA 2022 で 30% 税額控除、欧州の REPowerEU で補助金、と政策的に強烈に押されている技術。Dandelion Energy(Alphabet 系)、Bosch、Waterfurnace、ClimateMaster が主要メーカーで、Stockholm Royal Seaport、Cornell University、Wal-Mart の 1000+ 店舗が大規模導入事例だよ。

よくある質問

GSHP は地中の年間ほぼ一定の温度(8〜15°C)を熱源・熱汲み出し先に使うため、外気温が −10°C や 35°C になっても蒸発・凝縮温度差を小さく保てます。Carnot 効率 COP_Carnot = T_cond / (T_cond − T_evap) は温度差が小さいほど大きくなるため、GSHP の年間 COP は 3.5〜5.5 と、空気熱源(ASHP)の 1.5〜3.5 に対しおよそ 1.5〜2 倍高くなります。本ツールでは Carnot 効率の 55% を実機の暖房 COP の目安として表示しています。
IGSHPA Sizing Manual 等の簡略式では、必要孔長は L = Q_h·(1 − 1/COP_h) / q_per_m で求めます。q_per_m は単位長さあたりの熱抽出率で、典型値は地質によって 30〜90 W/m(粘土で 30〜45、花崗岩で 80〜100)。本ツールでは q_per_m を地質の熱伝導率 k とグラウトの熱伝導率から推定しています。より正確には Thermal Response Test(TRT, 24〜72 時間)で実測した k_ground を入力します。
R_b は孔内熱抵抗で、U-tube とグラウト・孔壁の伝熱抵抗です。グラウトの熱伝導率に大きく依存し、標準ベントナイト(k≈0.6 W/m·K)と熱伝導性強化グラウト(k≈1.5 W/m·K)で 2〜3 倍違います。R_g は孔外の地盤熱抵抗で、Eskilson の g-function や ILS(Infinite Line Source)解で求めます。25 年運転を考えると Fourier 数が大きくなり R_g がじわじわ大きくなるため、長期運転を見込んで余裕を持ったサイジングが必要です。
ボーアホール掘削が全体コストの 50〜60% を占め、米国の住宅で 1 軒あたり 15,000〜30,000 USD、商業ビルで 1 ボーアホール(150m)あたり 5,000〜8,000 USD が目安です。米国では IRA 2022 の Geothermal Tax Credit(30%)があり、ガス・石油ボイラーからの置き換えで 5〜10 年で回収可能。日本でも環境省の地中熱利用設備導入補助があり、業務用では年間電気代を 30〜50% 削減できる例が報告されています。

実世界での応用

大学キャンパス・公共施設の集中熱源:Cornell University は 70 ボーアホール×600m 級の Earth Source Heat プロジェクトを 2030 年完成目標で建設中、Stockholm Royal Seaport では 1.3MW の地中熱集中熱源システムが住宅 6000 戸の暖冷房を担う。広い敷地と長期運用が前提なら、初期コストの高さを安定運用コストで回収しやすい代表的な GSHP 用途。

住宅・小規模商業:米国では Dandelion Energy(Alphabet 系)が住宅向けに 1〜2 ボーアホール×150m のコンパクト構成を月額リースモデルで普及。日本でも環境省の地中熱利用設備導入補助で、ZEH 住宅(年間一次エネルギー消費量正味ゼロ)の暖冷房・給湯熱源として採用例が増加。Bosch、Waterfurnace、ClimateMaster が住宅レンジを供給。

大規模物流・小売:Wal-Mart は 1000+ 店舗に地中熱を導入し、店舗あたり年間電気代を 20〜30% 削減。広い駐車場下を熱交換用地として活用できるのが大規模商業の強み。垂直ボーアホールだけでなく、駐車場の浅層 1〜3m を水平ループに使うハイブリッド形式も普及している。

北欧・温帯地域の住宅標準:スウェーデン、フィンランド、ドイツでは新築戸建ての 20〜40% が GSHP を採用。岩盤質で熱伝導率 k=3.0〜3.8 と高く、地下数百 m まで掘削が容易な地質条件が GSHP に最適。日本では関東以南の沖積層では k=1.4〜2.0 と低めなので、孔本数を増やすかハイブリッド設計(ピーク時にガスボイラー併用)にするケースが多い。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「地中温度を季節変動なしの定数だと思い込む」こと。本ツールも 25 年運転の平均で計算していますが、実際は冬に長時間暖房を取り続けると孔周辺の温度が 2〜5°C 下がり、夏の冷房で戻る、というサイクルを繰り返します。暖房負荷が冷房負荷より大幅に大きい寒冷地では、年間で熱を「取り過ぎ」になり、10〜20 年後に地中温度が低下して COP が悪化する事例が報告されています。暖冷房負荷の比が極端な場合は、補助的に太陽熱コレクタで夏に熱を地中に戻す(Solar-Assisted GSHP)等の補正が必要です。

次に、「Thermal Response Test(TRT)なしで設計する」こと。本ツールの k_ground は地質カテゴリの代表値ですが、実際は同じ「粘土」でも含水率・締固め度で 0.8〜1.8 W/m·K と倍以上ばらつきます。商業案件で TRT(試験ボーアホール 1 本で 24〜72 時間の発熱・温度応答試験)を省略すると、サイジングが 20〜30% 外れて孔長不足・追加工事になるリスクがあります。建設費 1 億円超のプロジェクトでは TRT 費用 50〜100 万円は必須の投資と考えてください。

最後に、「ボーアホール間隔を狭くしすぎる」こと。1 つのボーアホールの熱影響半径は 25 年運転で 3〜5m に達するため、孔間隔は 6m 以上(理想は 8〜10m)取らないと、隣接孔同士で熱を奪い合って性能が低下します。本ツールは単一孔の熱抵抗で計算しており、g-function による相互干渉は考慮していません。実設計では GLD・EED・GLHEPRO などの専用ソフトウェアでアレイ全体の長期挙動を解析してください。

使い方ガイド

  1. 暖房負荷(kW)と運転時間(h/年)を入力。例:12kW×2000h=24,000kWh/年
  2. 冷房負荷(kW)と運転時間を入力。例:15kW×1800h=27,000kWh/年
  3. 現地の地盤熱伝導率(W/m·K)と平均地中温度(℃)を設定。砂岩層2.0、粘土層1.5など地質調査結果を反映
  4. 想定ボーアホール本数を入力してシミュレーション実行
  5. 出力される総熱抵抗R値と必要孔長合計から、1孔あたりの掘削深さを決定

具体的な計算例

東京近郊の医療施設(延床5,000m²)における設計例:暖房負荷18kW、冷房負荷22kW、地中温度16℃、地盤熱伝導率1.8W/m·K(ローム層)。ボーアホール8本を想定した場合、暖房COP 4.8、冷房EER 5.2、総熱抵抗0.085K·m/W、必要孔長合計1,280m(1孔あたり160m)と算出。年間電力削減量は従来型空冷ヒートポンプ比で約35%、CO₂削減量52tに達する。

実務での注意点